上 下
3 / 50
二 充稀 10years

僕ってやっぱり変人?

しおりを挟む
 いわゆる、いじめってやつなんだよね、これって。
僕はいつの間にか“いじめられっ子”になってた。今、大きな社会問題になってるけど、当事者の僕から言わせてもらえば、誰かに助けを求めようとしてもいじめって連鎖して結局、また自分に返ってくるんだ。
だから、なんにも言わないで過ごしておこうって思う。

「うへっ、気持ち悪っ。こいつ足取れてるじゃん」
「いやだぁ!ねぇ、早くそれ外やって!」
「えぇっ!俺も触んのイヤだし!」

 朝から教室の後ろの方で騒ぎ立ててる声が廊下まで聞こえてた。
登校時間の中、後ろの方から教室に入ろうとしてた僕にそいつらは気づいて、また茶化しのターゲットになった。
 何をそんなに騒ぎ立ててるのか視線をやると、そいつの足元にわりと大きかったな・・・もう弱々しくなったクモが逃げることもしないでじっとしてたんだ。
 教室に入ってきた僕を見るなりは足元にいたクモを僕の方に向かって蹴ってきた。
蹴られた衝撃でまだ微かな命はあるだろうそのクモが僕の足元まで蹴飛ばされてひっくり返った。
「友達?クモそいつどうかしてよ」
「・・・・え?」
「友達なんだろ?クモそいつと!」
「くくく・・・・」
 また周りの女子が声を抑えて笑った。
なに言ってんの、こいつ。なんか、無性に腹が立った。小さい命をなんとも思わないで。生きてるものの命を粗末に扱うなんて。腹立たしさに握り締めた拳を背中に隠して、もう片方の手に僕はそのクモを乗せた。
「うわぁ!充稀、きもっ!」
「いやぁぁぁ――!!」
 女子たちのぶるっと震える感じが伝わってきた。

 僕は掌にクモを乗せたまま教室を出た。
階段を下りて左側に五年生から六年生用の靴箱がある。そのまま靴履いて、僕は登校してきたばっかりなのに今来た跡を辿っていた。

 途中、道端の植木の下に薄茶色のそのクモを逃がしてやった。ほんとに弱りきってるからひょっとしたら死んでしまうかもしれないけど、にいるよりかはいいよね。
広げた掌を揺すって地面に下ろしたら、弱りながらもゆっくり一本の足を伸ばした。
「踏みつぶされないでね」
 平気だよ。虫くらい。どんな虫でも僕は大丈夫だった。ま、毒があったり、危険な虫はさすがにだけど、平気で触れちゃったりする。から、僕って変なのかな?

 今、家に帰ったら・・・想像はできた。
キーンってする金切り声を上げて責め立てるんだろ。仕事行く前のイライラしたお母さんと鉢合わせになるだろうから、遠回りして帰ろ。
今日は学校、さぼった。

 それから・・・学校の僕の机の上には色んな虫の死骸が置かれることになった。 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔王と使い魔の勇者調教計画

BL / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:122

身の程を知るモブの俺は、イケメンの言葉を真に受けない。

BL / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:3,276

会社を辞めて騎士団長を拾う

BL / 完結 24h.ポイント:584pt お気に入り:34

お前はオレの好みじゃない!

BL / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:50

旦那様は妻の私より幼馴染の方が大切なようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28,392pt お気に入り:5,484

黒い春 (BL)

Oj
BL / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:33

運命の番(同性)と婚約者がバチバチにやりあっています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:667pt お気に入り:29

処理中です...