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四 充稀 16 years

こんな僕にも part2

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 学校にいる時が一番幸せ。
自分が好きなこと学べて、気の合う友達もいて、蔑まれることもない。それに、毎日が新しいことばかりで胸が弾むってこういうことかな?僕にもやっと幸せな人生が廻ってきたのかな。
(神様、ありがと)
 くふって心の中で笑ったつもりが、
「え?なに笑ってんの?」
 心の声が聞こえた?あまりの高校生活の嬉しさが溢れちゃったみたい‥‥
「ううん‥‥何でもないよ」
「変な奴ぅ」
「ごめん、ごめん」
 にやけてる僕を横に見ながら智哉くんはちょっとだけ怪訝そうな顔をしてた。
それでも嬉しさが込み上げてきて、僕は笑ってた。

 二限目の授業が終わって僕と智哉くんはクラスに戻る。

 一番端っこの三棟目の校舎が専門科目コースのクラスになっていて、一階が一年生クラス。その上が二年生クラスと専門科目コースの授業を担当する先生の控え室になってる。三階はほぼ専門科目コースが使う教室でパソコン室や技術室が並んでた。僕が知ってるのは一部の先生たち。まだまだ入学したばっかでどれだけ先生がいるのかさえも把握できてない。ま、これから追々慣れていけばいいか。ゆっくり高校生活、楽しもう。

 でもさ、やっぱ、腐れ縁?てのあるのかな‥‥?

 僕と智哉くんがクラスに戻る途中だった。

 校舎を繋ぐ吹き抜けの渡り廊下でと会った。もちろん、忘れもしない顔。


 『お前、クモこいつと友達なんだろ?』

  くくく‥‥って笑いながら変なもの見るような目は絶対に忘れない。

どうやら向こうも僕に気づいたらしく、一瞬、目が合った。

 同じ中学出身の奴が何人か高校ここを受験したことは知ってたけど、まさかと、小中、高まで一緒なんて腐れ縁にも程がある。
(神様ぁ‥‥そこは勘弁してくださいよぉ)
 奴と目が合って、僕の背中に嫌ぁな寒気が奔る。
持っていた教科書をぎゅっと握り締めて、
(何ともない。何ともない。何とも‥‥)
 心の中で呪文のように繰り返しながらこの場を早く切り抜けようって、急ぎ足になってた。
「‥‥‥‥へっ‥‥」
 すれ違いざまだった。
奴の鼻で笑う声が耳元で聞こえた。
と思ったら、僕の身体が宙を浮いて?る?
 すれ違った時に足に何かが引っかかったのと、急ぎ足だった勢いとで、僕の軽い身体は躓くどころの反応じゃなかったみたい。
「‥‥!わぁぁっ!充稀!」
 智哉くんの声が聞こえてたけど、よく分かんないや‥‥‥‥

 「‥‥っお‥‥っとぉ‥‥?」
  ふわぁって、後ろから僕の身体が引っ張られた。
僕のお腹のところにその腕が回ってきて、倒れそうになる僕を支えてくれたんだ。
「‥‥へ‥‥ぇ?」
「お前、何やってんの?」
 何が起こってるか状況もつかめないままで、僕は恐る恐る背後を振り返った。
「新田ぁ、お前、なに?飛ぼうとしたの?」
「‥‥あ?‥‥え?‥‥‥‥へ?」
 僕の視界に映ったのは、
「‥‥は‥‥長谷川せん‥‥せ?」
 満面、にこっと清潔感いっぱいの笑顔で冗談言うんだもん。
なんだろ、急に顔が‥‥赤くなってくの見え見えだぁ。
(う‥‥わっ‥‥こっち見ないでくださ――いっ!恥ずか‥‥し)
 長谷川先生の黒い優しい目と笑顔に、僕は初めてドキドキする気持ちを感じたんだ。

「気をつけろよっ!」
 そう言って先生はまた、にこって笑って渡り廊下を去ってった。

 こんな僕にも‥‥ひょっとして春がきた?!

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