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21.異変
しおりを挟むあの日から・・・シリウスは社交の場に姿をみせなくなった。リーディア自身も夜会には参加していない。
今までの夜会では、レティシアのパートナーはシリウスだった。
だが、婚約後は、婚約者であるジルベルトがパートナーを勤めている。リーディアも参加するなら、兄以外の誰かをパートナーにしなければならない。
副団長のエイダンが時々誘って来てくれるのだが、リーディアは断り続けていた。
エイダンと夜会に出るようになれば、彼との噂がたつだろう・・・。もう半年すれば、学園を卒業し、婚約者を探さなくてはならなくなる。
父は、兄の婚約が整い、リーディアにも良縁がないか吟味してくれていた。公爵家であるため、申し込みは卒業近くなると本格的に増えてくるだろう。
今も釣書はちらほら届いていたりする。
父は、リーディアが望まない婚約は、断ってくれるだろう。この国の決まりもあるため、無理に話を進めてくることはないはずだ。
しかし、断れない申し出は存在する。他国であれば、この国の決まりは通用しないだろう。もしくは、能力により結婚を求められる場合もある。家の存続などの問題も、本人が了承さえすれば成立する。
リーディアはシリウスへの僅かな望みに、残りの時間を費やそうと思っていた。僅かな可能性もなくなれば、嫁ぐ覚悟もしていた。
だが、シリウスと過ごせた日々を、忘れて嫁ぐのは自信がなかった。シリウスと過ごした日があるからこそ、他の人を好きになることも、考えられなかった。
シリウスの姿さえ見ることがなくなり、リーディアは屋敷から離れて、1人で過ごす事が増えた。
遠乗りをし、領地をまわったり、薬草採取に行ったりしていた。
令嬢らしからぬ行動をしているが、父は咎めたりはしなかった。
レティシアとは学園で会っているが、あまりシリウスとはうまく話ができていないようだった。屋敷にもあまり帰ってこず、レティシアの呼び出しにも無反応みたいだ。
たまに返事があったかと思うと、レティシアに婚約解消を進めてくるようで、一方的に話しは終わるらしかった。
シリウスを説得するには、時間がかなりかかりそうだ。
しかし、そんな時間はリーディアには残されてはいない。シリウスに会いたい気持ちはあるが、あの時の視線がまた自分に向くことが苦しかった。
だから、一時的にでも、気持ちを切り替えようと、考えないようにしようと、今日も町外れの、ある村まで馬を走らせた。
この国では女性が馬にのることはがあまりない。そのため、乗馬の服は特注になる。その話をレティシアにしたら、すぐにデザインを考えて服を仕立ててしまった。
今着ているのは、その時に考えられた5着のうちの1つである。
リーディアが1番好きなシリウスの瞳の色の生地に、ピッタリしたズボンにブーツが似合う定番のタイプだが、腰辺りからスカートの様に生地が揺れている仕様になっているため、エレガントさがあった。
しかも、しっかり暗器を隠せて動きやすい。戦闘も問題はない。
お気に入りの乗馬服でリーディアは、馬を走らせ村に着いたのだが、いつもとどこか様子が違った。
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