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47.昔のよう
しおりを挟むルシウスはレミリアを連れて屋敷の外に出ると、一頭の馬を連れた使用人から手綱を手渡され、馬に跨った。
そしてレミリアに手をさしだしたかと思うと、軽々とレミリアが伸ばした手を引いて、横抱きにし乗せられる。
ルシウスが今まで馬に乗るのを、学園の授業で遠目に見た事があったが、普段でもだいぶ乗り慣れているのか、レミリアを引き上げるのに躊躇がなかった。
ルシウスの大きくがっしりとした手で、腰をささえられ、胸元に寄りかかるように引き寄せられてしまった。
「2人、馬、ダメ、体勢も」
「大丈夫だ。レミリアは軽いし、この馬は馬力がある。それに、長時間走らせるわけではないから問題ない。体勢に関してはレミリアは馬に跨がるのに慣れていないから、この方が寄りかかれるし楽なはずだ」
ルシウスに寄りかかり、腕に抱かれる形になるのが恥ずかしくて、レミリアはなんとかしたかったのだが・・・ルシウスは譲る気はないようで少し我慢してくれ、と言って馬を走らせ始めてしまった。
そして屋敷を見下ろせる、開けた丘までやってくると、手綱を引いて馬を止める。花が所々に咲いているだけで、周りには何もなく視界が広く見晴らしのよい丘だ。
「レミリア、おいで」
周りを見ていたら、いつの間にか馬から降りていたルシウスが、レミリアをおろすため、両手を伸ばして抱えようと構えていた。
レミリアが馬から降りるには、ルシウスに抱えられるしか方法はないのだが、やはり自分からルシウスに抱きつく形で降りるのは恥ずかしく、あの火事の事を思い出してしまい戸惑ってしまう。
「レミリア、大丈夫だからおいで」
ルシウスはそんなレミリアの心境には気づかず、距離をつめてきたので、レミリアは体勢を崩してしまい、自分からルシウスに抱き付くような形でうけとめられる。
「ごめん、なさい」
「大丈夫だ。そんなにやわじゃない。それに、あの時もちゃんと受け止めただろう」
そういい、ルシウスは昔のように表情を和らげてみせた。
レミリアはルシウスの表情が、自分が向けられたものだと認識し、嬉しい感情で胸が締め付けられ、目頭が熱くなった。
「レミリア、どうした」
ルシウスはそんなレミリアの顔を覗きこみ、伝い落ちてしまっていた涙をぬぐってくれたけれど、ルシウスからの問いには上手く答えられず、首を振ってルシウスに微笑んだ。
「ッレミリア」
ルシウスはレミリアの名を呟くと、なんの前触れもなく性急に口付けられ、口付けの合間に幾度となく名前を呼ばれながら、今は自分がもとめられているのだという錯覚した気持ちになり、レミリアはルシウスを受け入れるのだった。
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