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46.姉の相手
しおりを挟むあの事件以来、婚約をしているというのに、キール様は会いには来てくれなかった。
姉とも、あの日以来口を聞いてはいない。姉が話しかけてきてはまだキール様を責める発言ばかり言うので、耳を塞いで聞かないようにしていた。
キール様が会いに来てくれないため、気持ちが沈みながら、外を眺める日が続いた。
今日は、いつもの時間より遅くまでバルコニーから景色を眺めていると、馬車が屋敷前でとまった。
馬車からはキール様が降りてきたため、シルフィは安堵した。連絡もない分、あの事件で嫌われてしまったのではないか、不安だったのだ。
キール様の姿が見えたため、出迎えたくて、急いで身なりを整えて向かった。
着いた時には、リズリーお姉様が、屋敷に入るのを防ぐように遮り、まくしたてるように、キール様を責めていた。
「お姉様!もう、やめて下さい」
リズリーお姉様とキール様の間に立って、訴える。
「フィー」
リズリーお姉様は悲しそうな顔だ・・・。
「私に対しての怒りや不信感は致し方ないと思う。どうか、また挽回できるチャンスを頂けないだろうか・・・」
キール様は姉に罵倒させられようと、紳士的に対応してくれる。
「何度も来て・・・諦めが悪い方ね」
お姉様は何度と言った・・・今まで会いに来てくれないと思っていたけれど、違うようだ・・・。
「どういうことですか・・・お姉様。まさかキール様を追い返したりしていたのですかッ?」
待ち望んだ人が、姉に追い返されていたと知りショックだった。
「貴方のためよ・・・」
リズリーお姉様はまた、悲し気な顔・・・。
キール様の方を向いて、キール様の手を握った・・・。キール様は申し訳なさそうに微笑んでくれる。何も悪くないのに・・・。
姉に許してもらえない事が、責められている事が・・・悲しくなった。
「今日は、リズリー嬢に会ってもらいたい人が居て、連れてきている」
キール様はシルフィの手を握り返してきて、外にいる誰かに入るように声をかけた。
茶色の癖毛の髪に、眼鏡をかけた男の人が入ってくる。
「なんで来たの・・・もう、用はないでしょ」
リズリーお姉様は知っているようだった。
「リズ・・・話がしたい」
彼は姉に近づいた。
「話す事はないわ・・・貴方が終わらせた。もう、愛称で呼ばないで」
リズリーお姉様を、愛称で呼ぶ彼が・・・姉にとって特別な人だとわかった。
キール様は、何故彼をこの場に連れてきたのか、穏やかな姉が何故あんな風になったのか、全てを理解しているようだった。
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