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第八話
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「そっかあ……軽くは聞いてたけど、あの日ケンカ別れした後にそんな事があったんだ」
数分後、リビングでコーヒーを飲みながら改めて話をすると、友美さんは申し訳なさそうな顔をしながら言った後、凛莉さんの方を見た。
「凛莉ちゃん、本当にごめんね。あのままだと凛莉ちゃんのためにならないと思って結構キツイ言い方しちゃったし……」
「いや、アタシこそごめん。友美がしっかり心配してくれたのに強く言い返しちゃってさ」
二人が謝り合う中、私は友美さんの事が少し気になって話しかけた。
「そういえば、友美さんって凛莉さんとはいつ頃からのお友だちなんですか?」
「高校の時からだよ。この前まではだいぶ暗くなってたけど、凛莉ちゃんはいつもみんなを引っ張るお姉さんって感じで、私達が通ってたのが女子高だったからもうファンが多いのなんの」
「自分から何かしたわけじゃないけどね。なんか困ってるようだから助けたら感謝されて、その内にいつの間にか慕ってくれる奴が増えてただけさ。まあでも、友達って言えるのは友美くらいで、クラスメートの一部とか自分のオンナがアタシを慕ってくれてた奴からはだいぶ嫌われたもんさ」
「え、それじゃあ結構同性カップルって多かったんですね」
「だねえ。私はそうじゃなかったけど、凛莉ちゃんは何人か付き合ってみた人はいたし、他にも同性カップルは多かったかも」
「そうなんですね……」
それを聞いて私は笑みを浮かべながらも心がズキズキとしていた。凛莉さんはたしかにモテそうだし、その姉御肌なところに惹かれる人は多そうだから付き合うだけじゃなくてそういう事があってもおかしくない。でも、それを聞くのはやっぱり心が痛くなる。
「ただまあ……そんなに深い仲になった子はいなかったんじゃなかったかな? だから心配してるような事はなかったはずだよ、美音ちゃん」
「え?」
「いま、ちょっと思ったんじゃない? 凛莉ちゃんが他の女の子とくんずほぐれつ……」
「ちょ、待ってください! それはちょっと……!」
「あれ、違ったかな?」
顔が赤くなってくる中、友美さんが首を傾げていると、凛莉さんは小さくため息をついた。
「……友美、美音はそういう話題が苦手らしいんだよ」
「あ、そういう事か……ごめんね、美音ちゃん」
「いえ、大丈夫です……けど、凛莉さんって結構ボディタッチとかなんかそれっぽい事を平気で言ってきたりするし、わりと女性とのそういう事に慣れてるのかなとかちょっと思ってました」
「え、そんな事はないような……だって、凛莉ちゃんって何だかんだでちょっと性的な話題は苦手な方だったし、この前まで付き合ってた人ともそういう事どころか腕を組むみたいな事すらもしてないって……」
私達は揃って凛莉さんの方を見る。当の本人は軽くそっぽを向いてからボソボソと言った。
「……別に悪意はないけど、美音の反応を見てるともう少しそういうところを見たくなるんだよ。それに、最近はちょこちょこ美音の方から何かしてくる事も増えたし、それに対して顔が赤くならないようにするので精いっぱいなところもあるし」
「へー……凛莉ちゃんからすれば美音ちゃんってそういう事をしたくなる相手なんだねえ。高校時代からの仲としては少し妬けちゃうなあ……」
「そんな事思ってないくせに」
「まあね」
クスクス笑いながら友美さんが言う。そして私の方を見ると、友美さんは笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「それで、美音ちゃんから見たら凛莉ちゃんってどんな子? どうも思ってないわけじゃないでしょ?」
「それは……」
まだ整理がついていないこの気持ちを口にしていいのかわからなくて私は口をつぐみかけた。けれど、あえて口に出すことで自分の気持ちを再確認して、この気持ちについてしっかりとした答えを出すのはいいのかもしれない。
「少なくとも、頼りになるお姉さんという印象はあります。出会った直後は、雨の日に捨てられている猫みたいな感じでしたけど、その翌日からは色々な料理を作ってくれたり書いてる小説に対して感想を言ってくれたりしていますし、そばにいてくれて助かるなと思ってます」
「うんうん」
「そうしてる内に私の中で凛莉さんの存在は大きくなってて、もっと色々なお話をしたり色々な事をしたりしたいなと思い始めてて……」
「美音……」
凛莉さんの声が聞こえる中、私は溢れてくる思いをゆっくり口にした。
「だから、凛莉さんとは今後も一緒に暮らせたらなと思っています。凛莉さんはとてもかっこよくて頼りになる人ですし、今度は私がそのサポートをしたいですから」
「美音、アンタ……」
「ふふ、なるほどね。凛莉ちゃんもいい子を見つけたみたいだし、私としても安心だよ。あとは凛莉ちゃんが付き合ってたっていう来栖さんとも一度会ってみたいけど……結構な頻度でここに来るんだよね?」
「そうだね。美音の事をだいぶ気に入ったみたいで、何かと来るようになったんだよ」
「ふむふむ。それなら凛莉ちゃんに会いにここに来ればいつか出会えそうだね」
友美さんは頷きながら言う。愛奈さんに会いたい気持ちはあっても、それはどうやら単なる興味によるもので、敵意とかはないようだった。
「あ、そうだ」
「ん、どうしたんだい?」
「今の内に友美さんにも書いてる話について説明しておこうと思って」
「書いてる……あ、そういえば小説書いてるって言ってたね。もしかして作家さんとか?」
友美さんの問いかけに私は頷く。
「はい。女の子同士の恋愛を描いたラブコメを書いてるんです。本当は違うものを書こうとしていたんですが、編集者さんに乗せられてしまって……」
「あははっ、なるほどね。それで、いま書いてる作品に私も関係してくるってこと?」
「少し脚色は加えますが、友美さんをモデルにしたキャラクターにも出てきてもらおうかなと。もし嫌ならそれでもいいですよ?」
「ううん、せっかくだから出させてもらおうかな。どんな風になるのか楽しみにさせてもらうね」
「はい」
友美さんの言葉に私は笑みを浮かべながら頷く。愛奈さんもそうだったけど、凛莉さんの知り合いはいい人が多いようだ。もちろん、そういう人達ばかりではないんだろうけど、それでも愛奈さんも友美さんもいい人達で、そんな人達との繋がりを持てているのは本当に嬉しいし、今後もいい関係を続けていきたいと思う。
「あのさ、美音」
凛莉さんが話しかけてくる。その声はどこか真剣で、真面目な話なんだなと感じた。
「どうしました?」
「えっと、さ……幻滅とかしなかったかなって」
「幻滅?」
「ほら、アタシはいつもアンタに対して結構スキンシップをしようとしたり少しからかったりするけど、そういうのが本当はニガテなのがわかっただろ? だから、思ってたような人間じゃなくて幻滅させちゃったかと思ったんだよ」
「そんなことないですよ。普段の攻め攻めな凛莉さんもいいですけど、実はそういうのが苦手な凛莉さんもどちらもいいと思います。でも、そういうとこを知っちゃったわけだし、今度からは私の方から攻めてみるのもいいのかなあ」
「ちょ、調子に乗ってると痛い目見るからね……!」
少し顔を赤くしながら言う凛莉さんの姿を見ながら友美さんがニコニコ笑う。いいキャラクターのモデルとも出会えたし、凛莉さんの新しい一面も見られた。それだけで満足はしていたけれど、もっと凛莉さんの色々な顔が見たい。そのためには私ももっと成長していかないといけないんだろう。
「頑張ろう、もっと。私が見たい世界のために」
そして私は凛莉さんと友美さんとの会話を楽しみながら友美さんをモデルにしたキャラクターの構想を練り始めた。
数分後、リビングでコーヒーを飲みながら改めて話をすると、友美さんは申し訳なさそうな顔をしながら言った後、凛莉さんの方を見た。
「凛莉ちゃん、本当にごめんね。あのままだと凛莉ちゃんのためにならないと思って結構キツイ言い方しちゃったし……」
「いや、アタシこそごめん。友美がしっかり心配してくれたのに強く言い返しちゃってさ」
二人が謝り合う中、私は友美さんの事が少し気になって話しかけた。
「そういえば、友美さんって凛莉さんとはいつ頃からのお友だちなんですか?」
「高校の時からだよ。この前まではだいぶ暗くなってたけど、凛莉ちゃんはいつもみんなを引っ張るお姉さんって感じで、私達が通ってたのが女子高だったからもうファンが多いのなんの」
「自分から何かしたわけじゃないけどね。なんか困ってるようだから助けたら感謝されて、その内にいつの間にか慕ってくれる奴が増えてただけさ。まあでも、友達って言えるのは友美くらいで、クラスメートの一部とか自分のオンナがアタシを慕ってくれてた奴からはだいぶ嫌われたもんさ」
「え、それじゃあ結構同性カップルって多かったんですね」
「だねえ。私はそうじゃなかったけど、凛莉ちゃんは何人か付き合ってみた人はいたし、他にも同性カップルは多かったかも」
「そうなんですね……」
それを聞いて私は笑みを浮かべながらも心がズキズキとしていた。凛莉さんはたしかにモテそうだし、その姉御肌なところに惹かれる人は多そうだから付き合うだけじゃなくてそういう事があってもおかしくない。でも、それを聞くのはやっぱり心が痛くなる。
「ただまあ……そんなに深い仲になった子はいなかったんじゃなかったかな? だから心配してるような事はなかったはずだよ、美音ちゃん」
「え?」
「いま、ちょっと思ったんじゃない? 凛莉ちゃんが他の女の子とくんずほぐれつ……」
「ちょ、待ってください! それはちょっと……!」
「あれ、違ったかな?」
顔が赤くなってくる中、友美さんが首を傾げていると、凛莉さんは小さくため息をついた。
「……友美、美音はそういう話題が苦手らしいんだよ」
「あ、そういう事か……ごめんね、美音ちゃん」
「いえ、大丈夫です……けど、凛莉さんって結構ボディタッチとかなんかそれっぽい事を平気で言ってきたりするし、わりと女性とのそういう事に慣れてるのかなとかちょっと思ってました」
「え、そんな事はないような……だって、凛莉ちゃんって何だかんだでちょっと性的な話題は苦手な方だったし、この前まで付き合ってた人ともそういう事どころか腕を組むみたいな事すらもしてないって……」
私達は揃って凛莉さんの方を見る。当の本人は軽くそっぽを向いてからボソボソと言った。
「……別に悪意はないけど、美音の反応を見てるともう少しそういうところを見たくなるんだよ。それに、最近はちょこちょこ美音の方から何かしてくる事も増えたし、それに対して顔が赤くならないようにするので精いっぱいなところもあるし」
「へー……凛莉ちゃんからすれば美音ちゃんってそういう事をしたくなる相手なんだねえ。高校時代からの仲としては少し妬けちゃうなあ……」
「そんな事思ってないくせに」
「まあね」
クスクス笑いながら友美さんが言う。そして私の方を見ると、友美さんは笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「それで、美音ちゃんから見たら凛莉ちゃんってどんな子? どうも思ってないわけじゃないでしょ?」
「それは……」
まだ整理がついていないこの気持ちを口にしていいのかわからなくて私は口をつぐみかけた。けれど、あえて口に出すことで自分の気持ちを再確認して、この気持ちについてしっかりとした答えを出すのはいいのかもしれない。
「少なくとも、頼りになるお姉さんという印象はあります。出会った直後は、雨の日に捨てられている猫みたいな感じでしたけど、その翌日からは色々な料理を作ってくれたり書いてる小説に対して感想を言ってくれたりしていますし、そばにいてくれて助かるなと思ってます」
「うんうん」
「そうしてる内に私の中で凛莉さんの存在は大きくなってて、もっと色々なお話をしたり色々な事をしたりしたいなと思い始めてて……」
「美音……」
凛莉さんの声が聞こえる中、私は溢れてくる思いをゆっくり口にした。
「だから、凛莉さんとは今後も一緒に暮らせたらなと思っています。凛莉さんはとてもかっこよくて頼りになる人ですし、今度は私がそのサポートをしたいですから」
「美音、アンタ……」
「ふふ、なるほどね。凛莉ちゃんもいい子を見つけたみたいだし、私としても安心だよ。あとは凛莉ちゃんが付き合ってたっていう来栖さんとも一度会ってみたいけど……結構な頻度でここに来るんだよね?」
「そうだね。美音の事をだいぶ気に入ったみたいで、何かと来るようになったんだよ」
「ふむふむ。それなら凛莉ちゃんに会いにここに来ればいつか出会えそうだね」
友美さんは頷きながら言う。愛奈さんに会いたい気持ちはあっても、それはどうやら単なる興味によるもので、敵意とかはないようだった。
「あ、そうだ」
「ん、どうしたんだい?」
「今の内に友美さんにも書いてる話について説明しておこうと思って」
「書いてる……あ、そういえば小説書いてるって言ってたね。もしかして作家さんとか?」
友美さんの問いかけに私は頷く。
「はい。女の子同士の恋愛を描いたラブコメを書いてるんです。本当は違うものを書こうとしていたんですが、編集者さんに乗せられてしまって……」
「あははっ、なるほどね。それで、いま書いてる作品に私も関係してくるってこと?」
「少し脚色は加えますが、友美さんをモデルにしたキャラクターにも出てきてもらおうかなと。もし嫌ならそれでもいいですよ?」
「ううん、せっかくだから出させてもらおうかな。どんな風になるのか楽しみにさせてもらうね」
「はい」
友美さんの言葉に私は笑みを浮かべながら頷く。愛奈さんもそうだったけど、凛莉さんの知り合いはいい人が多いようだ。もちろん、そういう人達ばかりではないんだろうけど、それでも愛奈さんも友美さんもいい人達で、そんな人達との繋がりを持てているのは本当に嬉しいし、今後もいい関係を続けていきたいと思う。
「あのさ、美音」
凛莉さんが話しかけてくる。その声はどこか真剣で、真面目な話なんだなと感じた。
「どうしました?」
「えっと、さ……幻滅とかしなかったかなって」
「幻滅?」
「ほら、アタシはいつもアンタに対して結構スキンシップをしようとしたり少しからかったりするけど、そういうのが本当はニガテなのがわかっただろ? だから、思ってたような人間じゃなくて幻滅させちゃったかと思ったんだよ」
「そんなことないですよ。普段の攻め攻めな凛莉さんもいいですけど、実はそういうのが苦手な凛莉さんもどちらもいいと思います。でも、そういうとこを知っちゃったわけだし、今度からは私の方から攻めてみるのもいいのかなあ」
「ちょ、調子に乗ってると痛い目見るからね……!」
少し顔を赤くしながら言う凛莉さんの姿を見ながら友美さんがニコニコ笑う。いいキャラクターのモデルとも出会えたし、凛莉さんの新しい一面も見られた。それだけで満足はしていたけれど、もっと凛莉さんの色々な顔が見たい。そのためには私ももっと成長していかないといけないんだろう。
「頑張ろう、もっと。私が見たい世界のために」
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