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第十二話
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「ど、どうして……え、だって名字は武蔵野のはずじゃ……」
「中学生の頃に両親が離婚したんだけど、父さんが義母さんの姓を名乗るようになったから太子になったんですよ。由利さんとは小学校を卒業してから会う機会はなかったから」
「違う中学校だったしね……」
冷静を装いながら話しているけれど、本音としてはすぐにでもこの場からいなくなりたかった。あの日、私のスカートをめくってとても楽しそうに笑っていた彼が目の前にいるという状況がとても怖くて、当時のトラウマを刺激したことで恥ずかしさも込み上げてきたからだ。
「美音、大丈夫かい?」
凛莉さんが心配そうに見てくる。その姿がとても頼もしく見え、私は少しだけ気分がよくなった気がした。
「だ、大丈夫です……恋斗さんが、小学生の頃の知り合いだった事がわかっただけなので……」
「そんな風になる小学生の時の知り合い……まさか、アンタが……!」
「太刀川さんは由利さんから当時の話を聞いていたんですね」
「ああ、聞いてたさ。こういう場だからこらえるけど、アンタのせいで美音がトラウマを抱える事になったのだけは本当に怒ってる。そもそも、どうしてここにいるのさ?」
「それは……」
「恋斗が当時の事を由利さんに謝りたかったからだそうよ」
考え事を止めた太子編集長が代わりに答える。
「謝りたかった?」
「恋斗、しっかりあなたの口から言いなさい」
「うん、義母さん。言い訳にしか聞こえないと思うし、由利さんからしたら信じられないと思うけど、僕はあの頃由利さんの事が好きだったんだ」
「え……」
恋斗さんの言葉に私は驚いた。
「由利さんはクラスの女の子の中では目立たない方ではあったし、いつも本を読んでたり勉強してたりで誰かと話す姿は中々見かけなかったけど、僕はそんな由利さんの姿が綺麗だなと思ってたし、由利さんと色々な話をしたり出来るなら付き合いたいと思ったりしていたんだ」
「ふーん……なのに、どうしてアンタはそんな好きな相手にトラウマを与えるような事をしたのさ? 美音が当時からおとなしめの子なのがわかってたなら、そういう事をされたら傷つくとか思わなかったの?」
「その頃の僕も周りから一歩引いたところにいたから、クラスのガキ大将みたいな子に目をつけられてた上に由利さんの事が好きなのもバレてたんです。それで、その子からそれを由利さんにバラすと言われて止めてほしいと言ったら、それなら由利さんのスカートをめくるイタズラを代わりにしろと命令されたんです」
「ガキ大将みたいな子……あ、たしかにいたかも。女子側にもカースト上位みたいな子はいたけど、男子の方にも周りの子に対して偉そうな態度を取ってる子はいた気がする」
「女の子、それも好きな子が嫌がりそうなイタズラをするのは嫌だったけど、好きだという気持ちは自分の口で伝えたかったから渋々その命令を聞く事にして僕はあの日それを実行した。ただその瞬間、僕は嬉しさを感じてしまったんだ」
「嬉しさ……」
恋斗さんはとても辛そうな表情で頷いた。
「好きな子が嫌がる顔、そして好きな子のスカートの中を見られたという事実がとても嬉しくなってしまって、思わず笑顔を浮かべてしまったんだ。それを見た由利さんがどんな風に思うかも考えずに……」
「恋斗君……」
「由利さん、あの時は本当にごめん。謝って許される事じゃないのはわかってるけど、やっぱりしっかりと謝りたくて義母さんに頼んでこの場に来させてもらったんだ」
恋斗君が深々と頭を下げる。その姿から心から謝りたいと感じていた事がはっきりとわかった。
「でも、どうして美音だってわかったんだい? ペンネームと本名が同じとはいえ、同姓同名の別人とは思わなかったのかい?」
「実は一度義母さんに忘れ物を届けるために会社まで来たんですが、その時に由利さんがちょうど来ていてそれでわかったんです。由利さんは当時と顔つきがまったく変わらなかったですから」
「なるほどね。それで、謝ったのはいいけどそれで終わりでいいのかい? 謝ったアンタはスッキリすると思うけど、美音の心の傷は残ったままだよ」
「凛莉さん……」
凛莉さんは敵意を剥き出しにしながら恋斗さんを見ている。それだけ凛莉さんは怒ってくれているのだ。
「もちろんそれだけで終わりにはしません。だからこそもう一度言います。由利美音さん、僕はあなたが女性として好きです。あなたの心の傷は深いものだとわかっているからこそ、今度こそあなたと付き合ってその傷を癒したいと思ってます」
「私が恋斗さんと……」
「はい。一生かけて幸せにすると誓います」
その言葉に嘘はないんだろう。恋斗さんの目は真剣で、その目から過去の出来事についての後悔や私との交際についての真剣さはしっかりと伝わってくる。でも、やっぱりすぐに答える事は出来ない。
「ごめんなさい。突然の事過ぎてまだ頭の整理がついてなくて……」
「大丈夫。返事はすぐじゃなくていいし、由利さんの気持ちが固まってからでいいから」
「ありがとうございます……あ、そういえば太子編集長は作品について何か意見はありますか?」
「そうね……あなたの色がしっかりと表れていると思うし、これでも満足はしていいと思う。けれど、私としてはもう一つ何か欲しいところなのよね。意外性的な何かがね。眞喜志さん、あなたも同じ意見じゃない?」
「そうですね。これだけでも十分に百合の波動は感じられますが、もう一つあればよりこの作品はいい物になると思います」
「もう一つ……」
そのもう一つがわからないけれど、それを間違えばたぶんこの作品は全部を損なう。それだけはどうにか避けないといけない。
「色々頑張らないと……」
その後、私達は会食を続けたが、考え事に集中していた事や恋斗さんとの件で正直料理の味はわからなかった。
「中学生の頃に両親が離婚したんだけど、父さんが義母さんの姓を名乗るようになったから太子になったんですよ。由利さんとは小学校を卒業してから会う機会はなかったから」
「違う中学校だったしね……」
冷静を装いながら話しているけれど、本音としてはすぐにでもこの場からいなくなりたかった。あの日、私のスカートをめくってとても楽しそうに笑っていた彼が目の前にいるという状況がとても怖くて、当時のトラウマを刺激したことで恥ずかしさも込み上げてきたからだ。
「美音、大丈夫かい?」
凛莉さんが心配そうに見てくる。その姿がとても頼もしく見え、私は少しだけ気分がよくなった気がした。
「だ、大丈夫です……恋斗さんが、小学生の頃の知り合いだった事がわかっただけなので……」
「そんな風になる小学生の時の知り合い……まさか、アンタが……!」
「太刀川さんは由利さんから当時の話を聞いていたんですね」
「ああ、聞いてたさ。こういう場だからこらえるけど、アンタのせいで美音がトラウマを抱える事になったのだけは本当に怒ってる。そもそも、どうしてここにいるのさ?」
「それは……」
「恋斗が当時の事を由利さんに謝りたかったからだそうよ」
考え事を止めた太子編集長が代わりに答える。
「謝りたかった?」
「恋斗、しっかりあなたの口から言いなさい」
「うん、義母さん。言い訳にしか聞こえないと思うし、由利さんからしたら信じられないと思うけど、僕はあの頃由利さんの事が好きだったんだ」
「え……」
恋斗さんの言葉に私は驚いた。
「由利さんはクラスの女の子の中では目立たない方ではあったし、いつも本を読んでたり勉強してたりで誰かと話す姿は中々見かけなかったけど、僕はそんな由利さんの姿が綺麗だなと思ってたし、由利さんと色々な話をしたり出来るなら付き合いたいと思ったりしていたんだ」
「ふーん……なのに、どうしてアンタはそんな好きな相手にトラウマを与えるような事をしたのさ? 美音が当時からおとなしめの子なのがわかってたなら、そういう事をされたら傷つくとか思わなかったの?」
「その頃の僕も周りから一歩引いたところにいたから、クラスのガキ大将みたいな子に目をつけられてた上に由利さんの事が好きなのもバレてたんです。それで、その子からそれを由利さんにバラすと言われて止めてほしいと言ったら、それなら由利さんのスカートをめくるイタズラを代わりにしろと命令されたんです」
「ガキ大将みたいな子……あ、たしかにいたかも。女子側にもカースト上位みたいな子はいたけど、男子の方にも周りの子に対して偉そうな態度を取ってる子はいた気がする」
「女の子、それも好きな子が嫌がりそうなイタズラをするのは嫌だったけど、好きだという気持ちは自分の口で伝えたかったから渋々その命令を聞く事にして僕はあの日それを実行した。ただその瞬間、僕は嬉しさを感じてしまったんだ」
「嬉しさ……」
恋斗さんはとても辛そうな表情で頷いた。
「好きな子が嫌がる顔、そして好きな子のスカートの中を見られたという事実がとても嬉しくなってしまって、思わず笑顔を浮かべてしまったんだ。それを見た由利さんがどんな風に思うかも考えずに……」
「恋斗君……」
「由利さん、あの時は本当にごめん。謝って許される事じゃないのはわかってるけど、やっぱりしっかりと謝りたくて義母さんに頼んでこの場に来させてもらったんだ」
恋斗君が深々と頭を下げる。その姿から心から謝りたいと感じていた事がはっきりとわかった。
「でも、どうして美音だってわかったんだい? ペンネームと本名が同じとはいえ、同姓同名の別人とは思わなかったのかい?」
「実は一度義母さんに忘れ物を届けるために会社まで来たんですが、その時に由利さんがちょうど来ていてそれでわかったんです。由利さんは当時と顔つきがまったく変わらなかったですから」
「なるほどね。それで、謝ったのはいいけどそれで終わりでいいのかい? 謝ったアンタはスッキリすると思うけど、美音の心の傷は残ったままだよ」
「凛莉さん……」
凛莉さんは敵意を剥き出しにしながら恋斗さんを見ている。それだけ凛莉さんは怒ってくれているのだ。
「もちろんそれだけで終わりにはしません。だからこそもう一度言います。由利美音さん、僕はあなたが女性として好きです。あなたの心の傷は深いものだとわかっているからこそ、今度こそあなたと付き合ってその傷を癒したいと思ってます」
「私が恋斗さんと……」
「はい。一生かけて幸せにすると誓います」
その言葉に嘘はないんだろう。恋斗さんの目は真剣で、その目から過去の出来事についての後悔や私との交際についての真剣さはしっかりと伝わってくる。でも、やっぱりすぐに答える事は出来ない。
「ごめんなさい。突然の事過ぎてまだ頭の整理がついてなくて……」
「大丈夫。返事はすぐじゃなくていいし、由利さんの気持ちが固まってからでいいから」
「ありがとうございます……あ、そういえば太子編集長は作品について何か意見はありますか?」
「そうね……あなたの色がしっかりと表れていると思うし、これでも満足はしていいと思う。けれど、私としてはもう一つ何か欲しいところなのよね。意外性的な何かがね。眞喜志さん、あなたも同じ意見じゃない?」
「そうですね。これだけでも十分に百合の波動は感じられますが、もう一つあればよりこの作品はいい物になると思います」
「もう一つ……」
そのもう一つがわからないけれど、それを間違えばたぶんこの作品は全部を損なう。それだけはどうにか避けないといけない。
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