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第十三話
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月日は流れて4月、すっかり寒さも雪もなくなって、若葉が芽吹いているある日、俺達は近所の公園に来ていた。その目的は、前に話していたピクニックだ。
「いいお天気ですね。絶好のピクニック日和です」
「そうですね。茉莉ちゃんも今日のピクニックを楽しみにしてましたし、晴れてよかったです」
「お日様も楽しみにしてくれてたのかな?」
「そうかもね。さてと、どこにシートを敷こうかな」
俺は芝生の上に立ちながら辺りを見回した。桜が咲いている時期というのもあるからかお花見をしている人もチラホラ見受けられ、いつもより賑やかになっていた。
「場所はもう結構取られてるな……でも、探せばありそうですし、少し見てみましょうか」
「そうですね。茉莉ちゃんも一緒に探してくれる?」
「うん! 場所探し、しっかりと手伝うよ」
「うん、ありがとう」
茉莉ちゃんにお礼を言った後、俺達は場所探しを始めた。そして数分が経った頃、茉莉ちゃんが嬉しそうな声を上げた。
「あっ、あったよ!」
「お、早速見つけてくれたんだね」
茉莉ちゃんが指差す方を見ると、そこは綺麗な桜が咲いていて、お花見をするのにもいいスポットだったけれど、何故か近くに人の姿は見当たらなかった。
「珍しいな、こんなによさそうな場所なのに誰もいないなんて」
「そうですね。ですが、せっかく茉莉ちゃんが見つけてくれたスポットですし、ここにシートを敷いてピクニックしましょうか」
「わーい!」
嬉しそうな茉莉ちゃんの姿に俺達はクスリと笑った後、シートを敷いたりお弁当を広げたりしてピクニックの準備を始めた。そして準備が整い、茉莉ちゃんが広げられたお弁当に目を輝かせる中、真夏さんは髪を耳にかけながら桜の木を見上げた。
桜の花びらが舞い散る中に立つ真夏さんの姿はとても綺麗で、まるで一枚の絵画のように見えた。
「綺麗だな……」
「え?」
「あ、いや……真夏さんが綺麗だなと思って」
「ふふ、そこは桜が綺麗って誤魔化すところじゃないんですか?」
「誤魔化しても仕方ないですし、綺麗だなと思ったのは事実ですから」
俺の言葉に真夏さんは少し照れた様子で笑う。その姿もまた愛おしく見え、もっと見ていたいと思わせる物だった。
「なんかいいな、こういうの」
「そうですね。さて、それじゃあそろそろお弁当を食べましょうか」
「はーい! おにぎりにサンドイッチ、唐揚げにイチゴ! どれから食べようかな……」
「お弁当は逃げないからゆっくり選んで。でも、その前にやる事があるよね?」
「うん! それじゃあ手を合わせて……」
『いただきます』
俺達は声を揃えて言った。そして待ちきれない様子の茉莉ちゃんがどれから食べようか迷う中、その姿を見て俺は自分の小さい頃を思い出した。
「俺も小学生の頃は母さんが運動会とかで作ってくれた弁当でどれから食べようか悩んだりしたなあ」
「運動会や遠足で食べるお弁当はどこか特別感がありますよね。私もお母様達が作って下さるお弁当を楽しみにしていましたし、やっぱり小さい頃はそれが楽しみの一つになるんですよね」
「ですね。それにしても、この生活を始めてからもう三ヶ月になりますね」
「そうですね。ある程度のルールを初めの頃に決めていたからか衝突などもなく来られましたし、これからもそうしていきたいですね」
「はい」
微笑みながら答える。たしかにケンカなどもせずにここまで来られたけれど、それはルールがあったからだけじゃなく、真夏さんも茉莉ちゃんも分別のついている人達だからだ。まだ小学三年生であるにも関わらず茉莉ちゃんは手伝いを率先してやってくれるし、勉強なども怠けずにやっているし、真夏さんも俺達を色々気遣いながらこの共同生活が今後どのようになっていけばよりよい生活が出来るかを常に考えてくれている。そんな二人がいるからこそ、この生活は成り立っているし、なにもなくここまで来られたんだ。
「ほんと、二人には感謝しかないよな」
あの日に出会ってくれた事も含めて俺は二人に感謝しているし、今後も楽しい生活をしていきたい。そのためには俺も色々努力をしないといけない。俺だけ怠けるなんて事は出来ないのだ。
「そういえば茉莉ちゃん、何から食べるか決まった?」
「んーとね……あっ、このサンドイッチがいいな!」
「これは真夏さんが考案したサンドイッチか。それじゃあ俺は……このおにぎりにしようかな」
「ふふ、それも私が考えたおにぎりじゃないですか」
「やっぱり真夏さんが考えたものが俺達は好きなのかもしれないです。茉莉ちゃんが好きなご飯も真夏さんが考えた献立の方が多いしね」
「うん! でも、パパのご飯も私は好きだよ。ママのご飯がふんわりポカポカって感じなら、パパのご飯はじんわりフワフワって感じだよ!」
「そっか。ありがとう、茉莉ちゃん」
茉莉ちゃんは頭を撫でながら嬉しそうに笑う。茉莉ちゃんの表現は子供特有の擬音が多い物だったけれど、その気持ちは伝わってきたし、好きだと言ってもらえてとても嬉しかった。そしてお弁当を食べながら色々な事を話し、だいぶ時間が経った頃、茉莉ちゃんは少しウトウトし始めた。
「茉莉ちゃん、眠たい?」
「ん……」
「せっかくだから少し寝てみたら?」
「で、も……パパとママともっと……おはなし、したい……」
「起きてからでも出来るよ。ほら、お膝を貸してあげるから」
「うん……」
茉莉ちゃんは眠たそうなままで答えると、俺の膝に頭を乗せた。そしてスヤスヤと寝息を立て始め、その入眠速度の速さに俺は思わず笑ってしまった。
「はは、もう寝ちゃった。昨日から楽しみにしてたもんなあ」
「遠足の前日に楽しみで眠れないのと同じ感じですね。それにしても、いい寝顔ですね」
「はい。こんなに安心してもらえるとやっぱり嬉しいです」
茉莉ちゃんの寝顔は安心しきった物であり、その可愛らしい寝顔を見ながら頭を撫でていた時、突然真夏さんが俺のもう片方の膝に頭を乗せてきた。
「え、真夏さん?」
「私も楽しみで昨日は中々眠れなかったので膝をお借りします」
「わかりました。満足するまで俺の膝を堪能してくださいね」
「もちろんです。それにしても、もう三ヶ月……あと季節が三回巡ればこの生活も終わりなんだと思うとなんだか寂しいです」
「たしかにそうですね……」
楽しくてあっという間に過ぎていったこの三ヶ月だけど、真夏さんが言うように夏が来て秋が来て、また冬が来て年が明けたらこの生活の終わりはすぐに来てしまう。二人ともう会えないわけじゃないけれど、一緒に暮らすのは終わってしまう。それはたしかに寂しかった。
「茉莉ちゃんが泣いちゃうのが今からでも想像出来ますね」
「たしかに……茉莉ちゃん、本当にこの生活を楽しんでくれてますからね」
「ええ。でも、だからこそ最後まで楽しい生活にしてあげましょう。茉莉ちゃんが笑って終われるようなそんな楽しい生活に」
「はい。でも、それは真夏さんも同じですからね」
「冬矢さんもですよ。そのために色々頑張りますからね」
「はい」
やる気十分な真夏さんの姿を見て俺は嬉しくなった。自分のために頑張ってくれる人がいる。それは本当に幸せな事だし、そのために自分も頑張りたいという気持ちになる。だから俺も色々考えていこう。三人がこの生活を笑顔で終わらせ、この先の人生でも最高の思い出だったと言えるようになる方法を。
「俺も頑張りますからね、真夏さ……って、ふふ」
いつの間にか真夏さんも寝てしまっていた。従姉妹同士でありながらもどこか本当の親子のようにも見える二人の寝顔を見てクスリと笑った後、俺はこんな事もあろうかと思って用意していたブランケットをリュックから取り出して一枚ずつ二人にかけた。
「これでよし。俺は寝ないけど、二人が安心して寝られるようにこのまま静かにしてよう」
大切な二人の眠りを邪魔しないようにしながら俺は二人の寝息をBGMにして、春の穏やかな陽気の中で静かな時間を過ごし始めた。
「いいお天気ですね。絶好のピクニック日和です」
「そうですね。茉莉ちゃんも今日のピクニックを楽しみにしてましたし、晴れてよかったです」
「お日様も楽しみにしてくれてたのかな?」
「そうかもね。さてと、どこにシートを敷こうかな」
俺は芝生の上に立ちながら辺りを見回した。桜が咲いている時期というのもあるからかお花見をしている人もチラホラ見受けられ、いつもより賑やかになっていた。
「場所はもう結構取られてるな……でも、探せばありそうですし、少し見てみましょうか」
「そうですね。茉莉ちゃんも一緒に探してくれる?」
「うん! 場所探し、しっかりと手伝うよ」
「うん、ありがとう」
茉莉ちゃんにお礼を言った後、俺達は場所探しを始めた。そして数分が経った頃、茉莉ちゃんが嬉しそうな声を上げた。
「あっ、あったよ!」
「お、早速見つけてくれたんだね」
茉莉ちゃんが指差す方を見ると、そこは綺麗な桜が咲いていて、お花見をするのにもいいスポットだったけれど、何故か近くに人の姿は見当たらなかった。
「珍しいな、こんなによさそうな場所なのに誰もいないなんて」
「そうですね。ですが、せっかく茉莉ちゃんが見つけてくれたスポットですし、ここにシートを敷いてピクニックしましょうか」
「わーい!」
嬉しそうな茉莉ちゃんの姿に俺達はクスリと笑った後、シートを敷いたりお弁当を広げたりしてピクニックの準備を始めた。そして準備が整い、茉莉ちゃんが広げられたお弁当に目を輝かせる中、真夏さんは髪を耳にかけながら桜の木を見上げた。
桜の花びらが舞い散る中に立つ真夏さんの姿はとても綺麗で、まるで一枚の絵画のように見えた。
「綺麗だな……」
「え?」
「あ、いや……真夏さんが綺麗だなと思って」
「ふふ、そこは桜が綺麗って誤魔化すところじゃないんですか?」
「誤魔化しても仕方ないですし、綺麗だなと思ったのは事実ですから」
俺の言葉に真夏さんは少し照れた様子で笑う。その姿もまた愛おしく見え、もっと見ていたいと思わせる物だった。
「なんかいいな、こういうの」
「そうですね。さて、それじゃあそろそろお弁当を食べましょうか」
「はーい! おにぎりにサンドイッチ、唐揚げにイチゴ! どれから食べようかな……」
「お弁当は逃げないからゆっくり選んで。でも、その前にやる事があるよね?」
「うん! それじゃあ手を合わせて……」
『いただきます』
俺達は声を揃えて言った。そして待ちきれない様子の茉莉ちゃんがどれから食べようか迷う中、その姿を見て俺は自分の小さい頃を思い出した。
「俺も小学生の頃は母さんが運動会とかで作ってくれた弁当でどれから食べようか悩んだりしたなあ」
「運動会や遠足で食べるお弁当はどこか特別感がありますよね。私もお母様達が作って下さるお弁当を楽しみにしていましたし、やっぱり小さい頃はそれが楽しみの一つになるんですよね」
「ですね。それにしても、この生活を始めてからもう三ヶ月になりますね」
「そうですね。ある程度のルールを初めの頃に決めていたからか衝突などもなく来られましたし、これからもそうしていきたいですね」
「はい」
微笑みながら答える。たしかにケンカなどもせずにここまで来られたけれど、それはルールがあったからだけじゃなく、真夏さんも茉莉ちゃんも分別のついている人達だからだ。まだ小学三年生であるにも関わらず茉莉ちゃんは手伝いを率先してやってくれるし、勉強なども怠けずにやっているし、真夏さんも俺達を色々気遣いながらこの共同生活が今後どのようになっていけばよりよい生活が出来るかを常に考えてくれている。そんな二人がいるからこそ、この生活は成り立っているし、なにもなくここまで来られたんだ。
「ほんと、二人には感謝しかないよな」
あの日に出会ってくれた事も含めて俺は二人に感謝しているし、今後も楽しい生活をしていきたい。そのためには俺も色々努力をしないといけない。俺だけ怠けるなんて事は出来ないのだ。
「そういえば茉莉ちゃん、何から食べるか決まった?」
「んーとね……あっ、このサンドイッチがいいな!」
「これは真夏さんが考案したサンドイッチか。それじゃあ俺は……このおにぎりにしようかな」
「ふふ、それも私が考えたおにぎりじゃないですか」
「やっぱり真夏さんが考えたものが俺達は好きなのかもしれないです。茉莉ちゃんが好きなご飯も真夏さんが考えた献立の方が多いしね」
「うん! でも、パパのご飯も私は好きだよ。ママのご飯がふんわりポカポカって感じなら、パパのご飯はじんわりフワフワって感じだよ!」
「そっか。ありがとう、茉莉ちゃん」
茉莉ちゃんは頭を撫でながら嬉しそうに笑う。茉莉ちゃんの表現は子供特有の擬音が多い物だったけれど、その気持ちは伝わってきたし、好きだと言ってもらえてとても嬉しかった。そしてお弁当を食べながら色々な事を話し、だいぶ時間が経った頃、茉莉ちゃんは少しウトウトし始めた。
「茉莉ちゃん、眠たい?」
「ん……」
「せっかくだから少し寝てみたら?」
「で、も……パパとママともっと……おはなし、したい……」
「起きてからでも出来るよ。ほら、お膝を貸してあげるから」
「うん……」
茉莉ちゃんは眠たそうなままで答えると、俺の膝に頭を乗せた。そしてスヤスヤと寝息を立て始め、その入眠速度の速さに俺は思わず笑ってしまった。
「はは、もう寝ちゃった。昨日から楽しみにしてたもんなあ」
「遠足の前日に楽しみで眠れないのと同じ感じですね。それにしても、いい寝顔ですね」
「はい。こんなに安心してもらえるとやっぱり嬉しいです」
茉莉ちゃんの寝顔は安心しきった物であり、その可愛らしい寝顔を見ながら頭を撫でていた時、突然真夏さんが俺のもう片方の膝に頭を乗せてきた。
「え、真夏さん?」
「私も楽しみで昨日は中々眠れなかったので膝をお借りします」
「わかりました。満足するまで俺の膝を堪能してくださいね」
「もちろんです。それにしても、もう三ヶ月……あと季節が三回巡ればこの生活も終わりなんだと思うとなんだか寂しいです」
「たしかにそうですね……」
楽しくてあっという間に過ぎていったこの三ヶ月だけど、真夏さんが言うように夏が来て秋が来て、また冬が来て年が明けたらこの生活の終わりはすぐに来てしまう。二人ともう会えないわけじゃないけれど、一緒に暮らすのは終わってしまう。それはたしかに寂しかった。
「茉莉ちゃんが泣いちゃうのが今からでも想像出来ますね」
「たしかに……茉莉ちゃん、本当にこの生活を楽しんでくれてますからね」
「ええ。でも、だからこそ最後まで楽しい生活にしてあげましょう。茉莉ちゃんが笑って終われるようなそんな楽しい生活に」
「はい。でも、それは真夏さんも同じですからね」
「冬矢さんもですよ。そのために色々頑張りますからね」
「はい」
やる気十分な真夏さんの姿を見て俺は嬉しくなった。自分のために頑張ってくれる人がいる。それは本当に幸せな事だし、そのために自分も頑張りたいという気持ちになる。だから俺も色々考えていこう。三人がこの生活を笑顔で終わらせ、この先の人生でも最高の思い出だったと言えるようになる方法を。
「俺も頑張りますからね、真夏さ……って、ふふ」
いつの間にか真夏さんも寝てしまっていた。従姉妹同士でありながらもどこか本当の親子のようにも見える二人の寝顔を見てクスリと笑った後、俺はこんな事もあろうかと思って用意していたブランケットをリュックから取り出して一枚ずつ二人にかけた。
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