氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

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仮面の亀裂 3

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ルシアンは、彼女の激しい動揺を察したように、しかし決して彼女を追い詰めることなく、あくまで穏やかで、しかし確信に満ちた声で続けた。
「貴女が長年纏ってこられたその氷の仮面は、おそらく、あまりにも早くから多くのものを背負わされ、傷つきやすい貴女の繊細な心を守るための、必死の、そして痛々しいまでの防衛策だったのでしょう。しかし、その仮面は、いつしかあまりにも厚く、硬く、そして冷たくなりすぎて、貴女自身を深い孤独の中に閉じ込め、本当の感情を押し殺し、まるで息をすることもままならないような状態に追い込んでしまっているように、私には見えました。あの夜会での出来事…リリア嬢の巧妙に計算された嘘と、エドワード殿下の感情的で短絡的な断罪は、まさに貴女の心に植え付けられようとしていた『毒虫』です。それは、貴女の自尊心を蝕み、自己否定を植え付け、ついには貴女を『悪役令嬢』という、他人や貴女自身が作り上げた虚像の檻に、魂ごと永遠に閉じ込めてしまうための、悪意に満ちた罠だったのです」
彼の言葉の一つ一つが、まるで熟練の外科医が振るうメスのように、正確に、しかし驚くほど優しく、エリザベスが長年かけて築き上げてきた、冷たく硬い心の壁の最も脆い部分に触れてくる。彼女が自分自身を守るために、無意識のうちに何重にも張り巡らせていた防御線が、音を立てて崩れ、ひび割れ、そこから今まで見たこともない光が差し込んでくるのを感じた。
「悪役令嬢…」エリザベスはその言葉を、まるで自分自身に言い聞かせるように、呪文のように繰り返した。「もう、わたくしは…わたくし自身でさえ、自分が何者なのか…分からなくなってしまいましたわ。誰も、わたくしの言葉など、もはや信じてはくださらないでしょう…この先、どうすれば…」
絶望が、濃く冷たい霧のように、再び彼女の心を覆い尽くそうとする。これまでずっと、誰にも本当の自分を理解されることなく、孤独の中で、ただひたすらに「完璧な令嬢」という役割を演じ続けてきたのだ。今更、何かが変わるというのだろうか。この深い闇から抜け出すことなど、本当に可能なのだろうか。
「いいえ、決してそうではありません。何も終わってはいませんし、何も手遅れではありません」ルシアンは、エリザベスの瞳の奥に再び揺らめき始めた諦観の色を鋭く見抜き、きっぱりとした、しかし決して高圧的ではない口調で言った。その声には、彼女の心の闇を振り払うような、強い意志と温かな光が込められていた。「エリザベス嬢。貴女の前には、今、確かに二つの道があります。そして、どちらの道を選ぶのかは、他の誰でもない、貴女自身の、自由な意志にかかっています」
ルシアンはそこで一度言葉を切り、馬車の小さな窓から差し込む、遠い街の灯りが彼女の顔にかすかな陰影を落とすのを静かに見つめながら、エリザベスの目を、まるで彼女の魂の最も深い場所に直接語りかけるように、じっと見据えた。
「一つは、この不当な扱いを、運命として甘んじて受け入れ、世間が貴女に貼り付けた『悪役令嬢』というレッテルを、そのまま受け入れ、これまでのようにお心を押し殺し、影の中で静かに、しかし決して満たされることなく生きていく道。それは、ある意味ではこれ以上の波風を立てない、楽な道なのかもしれません。しかし、貴女の魂は、その選択に決して満足することはないでしょう。なぜなら、それは偽りの姿だからです」
彼の言葉は、まるで鏡のように、エリザベスの心の奥底にあった、彼女自身も長い間気づかないふりをしていた、真実への渇望と、偽りの自分への嫌悪感を的確に映し出していた。
「そして、もう一つは…この理不尽な運命と、不当な評価に、敢然と立ち向かい、ご自身の潔白を証明し、長年貴女を縛り付けてきた偽りの仮面を、自らの手で打ち砕き、真実の自分として、一人の人間としての尊厳と誇りを取り戻して生きる道を選ぶことです。それは、疑いようもなく困難で、多くの障害と痛みを伴う茨の道かもしれません。しかし、その道の先には、必ず、貴女が本当に求める光があると、私は信じています。エリザベス嬢、どちらの道を選びますか?」
選択――またしても、選択。
しかし、今度の選択は、あの夜会で、ルシアンが差し出した赤い薔薇を反射的に選んだ時とは、意味合いが違っていた。今度の選択は、彼女が初めて、自分自身の意志で、自分自身の人生を、自分自身の物語を、主体的に選び取るための、最初の、そして最も重要な岐路だった。それは、もはや誰かに与えられた役割を演じるのではなく、自分自身の魂の声に従って生きるための、聖なる問いかけだった。
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