四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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19話 初心者の狩場

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 食後は、修理に出していたリシアの装備をモリーさんの店で回収し、冒険者ギルド近くのHP回復ポーションと毒消しポーションを購入して狩りに出た。

 モリーさんのお店はリベクさんのお宅から近いのと腕が確かなため、護衛隊の皆さんが利用しているとか。
 そんな話しをリシアから聞きながら向かった場所は、ライシーンの街の南西にある森だった。
 獣型の低レベルモンスターが出現する場所として有名で、初心者ご用達の狩場だそうだ。
 食事中の打ち合わせ時にはジスタさんも否定はしなかったので、まず大丈夫だろう。
 ただし、極まれにエリアボスと呼ばれる魔物が出るため、たとえ低級の狩り場であっても油断はするなとのこと。
 俺としてはゴブリン以来の実戦で、初めて自ら向かう狩りとなる。
 少し緊張しているのか、やや足元が覚束ない。

 森へと入っていくと、頻繁にライシーンの方角を示す看板が木に打ち付けられている。

 なるほど、確かに初心者向きの狩場だ。
 初心者のためにわざわざ整備しているのかと思うと、ライシーンの冒険者or冒険者ギルドは本当に親切なようだ。

 それでも気を抜かず森の中を散策していくと、さっそく一頭目の敵が現れた。


 スリープゴート Lv2
 属性:なし
 耐性:なし
 弱点:なし
 状態異常:睡眠


 見た目は少し大きいかなってくらいのふつうの黒毛の山羊だ。
 ベラーナさん情報だが、寝むっている固体がよく目撃されるが、近付くと起きることから近接職的にはその辺の魔物とそう変わらないんだとか。
 つまり、弓兵や魔法使いなどの遠距離職にはカモなのですね、わかります。
 攻略法としては、突進してきたら横に躱してすれ違い様に切りつければ楽だと、ジスタさんが教えてくれた。
 ちなみにベラーナさんは「眠ってる奴にガーっと行ってズバっとやればイチコロよ?」とか言っていた。

 これからはおとーさんのいけんをさんこーにしようとおもいました(確信)

〈鑑定Lv3〉の効果なのか、ゴブリン戦では見えていなかった属性などの大まかなステータスが見える。
 状態異常なんて見るまでもなく眠っているので、ここは後ろから行くか。

「リシア、突っ込んできたら左に避けるから、俺よりもっと左側に居てくれる?」

 俺が避けたすぐ後ろにリシアが居るなんてことになったらしゃれにならんからな。

「わかりました。お気をつけください」

 リシアを後方に下がらせてから接近する。
 山羊から10メートルまで近付いたとき、山羊が目を覚まし、こちらを敵として認識し身構えた。

 マジか、この距離から気配に気付いて起きるとかとんでもないな。
 あ、でも逆に言えば、これ程危険察知に鋭いからこそ無防備をさらして寝てられるのか。

 さて、どこまで近付けば突進してくるのかな?
 じりじりとにじり寄ると、まださほども進んでいないのに突撃姿勢にはいった。

 ならもう行こう。

 こちらが更に一歩前進すると、山羊は猛突進を仕掛けてくる。
 思いのほか速くはないため左に躱すと、同時にその横っ腹にショートスピアをぶっ刺した。
 エグ味のある手応えが槍の先から伝わってくる。

「キ”ュ”ェ”ェ”ェ”ェ”ェ”!」 

 痛みで悲壮な叫びをあげるスリープゴート。

 あ、俺いま生き物を殺してる……。
 
 やってから自覚するマヌケっぷり。
 動物好きとしてはこれはキツイ……。

 ゲームじゃないんだからそら痛いよな……。 

 だがやってしまった以上、早くとどめを刺さなければ。
 暴れもがく山羊に対し、槍へ力と全体重をかけて押し込んだ。
 しかし一度刺さってしまった槍は、暴れる魔物になかなか深く刺さってくれない。

 ダメか。

 槍を左手だけで掴み剣を抜くと、バッシュ! と強く念じて山羊型モンスターの頭に振り下ろす。
 再び嫌な手応えと共に、スリープゴートが粒子を散らして消える。

ジョブLvUP!
ジョブLvUP!

ジョブLvUP!
ジョブLvUP!

 俺達のファーストとセカンドのジョブ同時にLvUPし、跡には〈小さな山羊の角〉と〈山羊肉〉が落ちた。
 モンスターが粒子散乱し、アイテムだけがそのまま落ちるのが不思議でならない。

 ファンタジーだし多少はね?

 そういう世界だと自分に納得させるしかない。
 罪悪感を振り払いながら、〈バッシュ〉のレベルを上げる。
 範囲攻撃の開放条件はLv3なので、少し待ち遠しい。
〈アイスアロー〉のレベルもついでに上げておく。

 でもまぁなんとか行けそうだな。

 ネトゲーあるあるだが、序盤はレベルやステータスなんて低くても、武器の攻撃力だけでどうにかなるものだ。
 高レベルキャラ持ちのセカンドキャラともなれば、育成に高価な武器と回復薬を大量に積んでGOなんてよく見る光景である。

 最悪セーブ地点を狩場付近に設定して、回復薬無しでゾンビアタックするとか……。
 今はゲームじゃないからできないけど。

「山羊の角はカバンなどの素材に使われますよ」
「へー、どう使うんだろ?」

 結構小さな角なので疑問を呟いたら、リシアが俺の背負い袋の口の紐についている小さな棒状の留め具を指差した。
 あぁ、これそうだったのね。

「俺ってあまり物を知らないから助かるよ。これからも教えてくれるとありがたい」
「はい♪」

 リシアに礼を言ってからドロップアイテムに目を向ける。
 このまま狩りを続けるとして、片っ端から背負い袋に入れていったらすぐに入りきらなくなる。

 収納空間に入れるとしても、出し入れを人に見られるのは避けたほうが良いかも?

「トシオ様?」
「ごめん、ちょっと待ってね」

 地面に落ちている角と肉を睨みながら呻いている俺を、リシアがいぶかしげに見つめる。
 それを待たせて更に思考にふける。

 見られないように何とかしたいが…いっそ開き直って気にせず使うか?
 もしくは収納空間は貴重品専用で、手持ちの袋を増やして物理的に収納力を上げるか……。
 背負い袋にもっとアイテムが詰められたら良いんだが……あっ。

 俺は背負っていた背負い袋を背中から降ろし、腰の後ろに着けていた収納空間の半透明な袋をそこに入れる。
 背負い袋の入り口に収納空間の袋の入り口をあわせてから少し奥に押し込んだ。

 四次元リュック~~!

 脳内でなぞのBGMと共に変な濁声で叫んでしまう。
 完成した背負い袋に山羊角と肉を放り込み、良い感じの深さでアイテムが消えた。
 これなら外から見ても突然アイテムが沸いて出るようには見えないだろう。
 背負い袋の膨れ具合は要調整だが。
 そして背負い袋を背負い直してからある事に気付いた。

 収納空間が背負い袋に固定されてるじゃないか!?
 手で動かさなくても袋に合わせて動いてくれるのか、パネェなぁ。
 あまりにも便利すぎるので、今後は〈収納袋様〉とお呼びしよう。

 なんて馬鹿なことを考えていると、近くの茂みががさがさと音を立てる。
 二人して振り返る先には、二本角の灰毛ウサギが現れた。


 ホーンラビット Lv3
 属性:なし
 耐性:なし
 弱点:なし
 状態異常:なし


 ウサギ、だがでかい。
 体長1メートルのウサギとかキツイものがあるなぁ。
 足を伸ばしたら2メートルは行くんじゃないのか?
 しかもふてぶてしい見た目で可愛気がない。

「トシオ様、ホーンラビットです! この子はお肉がとても美味しいんですよ!」
「なに、マジか!?」

 興奮気味に叫ぶリシアに、すぐにある有名なウサギの絵本に出てくる主人公のお父さんの死因『パイにされて食べられた』の逸話を思い出す。

 一度食べてみたかったんだよな、ウサギの肉。
 あとワニ肉とか熊肉も食べてみたい。

 若干罪悪感めいたものを感じるが、食物連鎖だと思えば割り切れる。
 
 許せウサギ、俺達の血となり肉となれ。
 貴様が猫科であれば見逃すことも考えなくはなかったというか100%見逃してたがな!
 種族差別も甚だしい。
 だが――、

「いただきます!」

 槍を構えて突撃するも、ウサギはその脚力で素早く俺の脇を抜け、一直線にリシアへと向かう!

「きゃあっ!?」

 しまった!?

 リシアが危ない。
 しかもウサギは俺とリシアの直線状に位置し、ここから攻撃魔法を撃てば最悪リシアに当たりかねない。

 それでも俺はやる、やるのが俺だ!
 
「アイスアロー!」

 魔法を発動させるも、出現位置はリシアの足元。
 至近距離で放たれた氷の矢が、迎撃する形でウサギの死角からその土手っ腹に突き刺さった。
 斜めに吹き飛び地面で2回バウンドし、やはり黄緑色の粒子となって霧散する。

「……今何をされたのですか?」
「魔法って別に手をかざさなくても指定した場所に出せるみたいなんだ。だったら全然違う場所、特に相手の死角とかから出せばいいかなっと」

 こんなこともあろうかと、今朝散々撃ちまくった甲斐があるというものだ。

「魔法ってそういう使い方もできるのですね」

 リシアがひとしきり感心すると、次にドロップアイテムの方に目を向ける。

 〈ウサギの耳〉〈ウサギの肉〉

 お目当てのお肉はドロップしたが、1対の白いうさ耳は何なんだ?
 え、あいつ灰色でしたやん。
 なんで白いの落としてますん?

「あ、これはレアアイテムですよ」
「これが?」
「はい。こうして頭に着けるとですね」

 リシアが拾って土を払い、頭に着けると頭部に完全に付着しピコピコと普通に動きだした。

 おお、うさ耳人間製造機じゃないか!?
 これで誰でもうさ耳っ娘だ!

 だが俺は激しい憤りを禁じ得ない。

「リシアさん、それはいけない頂けない」
「ど、どうかされました?」
「せっかく最高のたれ猫耳の持ち主が、そんなの付けたら色々と汚れる。神の生み出した究極の完全可愛い生物であるリシアが、そんな不純物をつけてはいけません」

 血涙でも流しかねない俺の力説に、リシアが呆れ笑いを浮かべてうさ耳を外すも、こっそり自分のたれ耳を動かしながら、ほんのりと頬を染めて一人で笑う。
 だが俺はそれを見逃さない。

 あー、猫耳万歳、リシアこそ至高……。
 でも何気にそのうさ耳、普通に取り外せるのね。
 一生ついたままだったらどうしようかと心配した。

 ドロップ品を収納袋様に入れ、俺達は森の散策を再開する。
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