四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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67話 モンスターテイミングその2

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「これまでと同じ左側から攻略していく。クク、三十階層と同じ感じで頼むね」
「では進みます」

 三十一階層に踏み入れると三叉路を左へ移動。
 しばらくすると近くで〈サーチエネミー〉に反応あり。しかし反応こそしているが、クク達が警告を発することは無く、疑問に思って前を歩く二人に敵の反応を聞いてみたが、特に音は聞こえていないとの事。

「敵対反応はするから警戒して進んでくれ」
「畏まりました」

 進軍を再開するククがエネミー反応のあった場所にたどり着くも、ぱっと見では何もなかった。
 だが反応のある場所に目を向けていた俺は見逃さない。
 そこにはかなり大きな水溜りのようなモノが蠢いていた。
 
 スライムLv31
 属性:なし
 耐性:物理無効。
 弱点:火属性ダメージ2倍。
 状態異常:なし

 ここに来てファンタジー物でお馴染み、異世界初のスライムである。
 某国民的RPGのせいで最弱のイメージが付いているが、液体生物で生物を取り込んで溶かして殺すような物体が弱い訳が無いので油断はしない。

「スライムだ。物理無効か……トト、メリティエ、相手が一匹でも突っ込むな。この階層は全て魔法で処理していく。弱点は火だから火属性魔法で対処しよう」

 皆に作戦を伝えると、火付盗賊改方の御用になるレベルで片っ端から火をつけてまわった。
 そのスライムのドロップ品は〈魔核〉。
 〈魔核〉はMPの少ない人がマジックアイテムを使用する際にバッテリーとして用いる物で、お金持ちや魔術師ギルドが良く利用しているのだとリシアが教えてくれた。

「スライムは身体の中心にコアがあるので、そこを攻撃すれば武器でも倒せます」
「そうなのか」

 フィローラが噛まなかったことでドヤ顔をしたため、頭をぽんぽんと叩いて労っておく。

 愛いヤツめ。
 スライムのその特性はレンさんが言ってた〝弱点部位には耐性が機能しない〟ってヤツの典型だな。

「まぁ今はフィローラのサモンエレメンタルもあるし、このまま魔法で押し進もう」
 
 押し進んだ結果、スライム10匹ほどを狩ったところであっさりとボス部屋へ到着する。

「ここのボスってどんなの?」
「スライムキングかクイーンです」
「性質はスライムと同じだそうですが、知能が高いとも聞いています……」

 キングorクイーン。
 ゲル状生物に性別ってなんだ?
 いやいや、いまはそんなことより別の事を考えるべきだ。
 なにせ知性があるなら仲間にすればそこそこ有能かもしれない。

 再び称号を【魔物使い】に変更する。

 だが期待はするな。
 ぶっちゃけウンディーネの亜種みたく、水の身体をしただけの女の可能性だってあるのだ。
 期待して裏切られたら悲しみで枕を涙で濡らすはめになる。
 さすがにそこまではならないけど。

 なんちゃってモン娘と決め付けて扉を開くと、魔法陣から煙と共に出現したのは体長3メートルはある大きく赤いナメクジにも似た液体状の生物だった。
 その透明度のある赤い身体を持ち上げた内側には、本体のナメクジ部分を被っているような艶かしい全裸の女の身体がそこにあった。


 スライムクイーンLv31
 属性:なし
 耐性:物理無効
 弱点:火属性ダメージ増加
 状態異常:なし

 
 目元が見えないが整った顔立ちに正面のみ女性の形状をしているが、その大半は液体状の生物のそれであり、ミネルバ並みにリアルガチなモンスター娘である。

 はい、裏切られるのが怖くてまた舐めてました。
 水の身体をしてるだけの人型だと思い込もうとしてました。
 まったくこの世界は俺の期待以上のステキワールドだ。
 これは是が非でもお持ち帰りしなければ。

「皆止まってくれ、会話が出来るなら仲間になるか試してみたい」

 そう言って前に出ると、速攻でフレアランスを多重展開。
 目の前に炎の槍を突きつけ魔物使いの称号にある固有スキル〈魔物使役〉を発動。

「それを受け入れ俺のモノになれ。そうすればお前の命は助けてやる」

 一瞬戸惑いの素振りを見せたが口元がにやりと笑い、槍の軌道を避け地面を高速で這うように向かって来た。
 スライムとは思えない高機動でだ。

 一撃入れれば大人しくなるか?

 仕方なくスライムの足元から新たな炎槍を突き上げると、下腹部辺りに刺さり水分をぶちまけ四散した。
 運が悪いことに、どうやら核に直撃してしまったようだ。

「言葉を理解するほどの知性は無かったか……」
「あるいは理解しても無視したかですね」

 傍に来たリシアの頭を撫で、遣る瀬無さを紛らわす。

 テイムもままならないものである。
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