四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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120話 後付けされたシステム

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 湯上りの後も頭をひねっていたが、土属性石の有効活用なんて、精々クワなどの農具に土操作魔法を付与する程度のことしか浮かばない。
 そんなものは国や領主がやることであって、俺がやるようなことではない。

「ちなみに魔道具の施工費って相場的にどれくらいですか?」
「水道一口で金貨5枚といったところじゃな」

 たっか!?
 いやでも水汲みの手間から解放されることを考えると、それも納得か。
 家は土間を出てすぐのところにポンプ式の井戸があり、水はパイプを通りながしに直接来る仕様だからまだ楽だが、本来ならば水を汲んで水瓶に溜める作業をしなければならないところだ。
 土属性石や魔道具の利用法などは、俺自身が魔道具作成出来るようになればやっている内に思いつくかもだな。

 そう結論付け、本題に入ることにした。
 
「イルミナさんに聞きたかったんですが、俺も練習すればオリジナル魔法を作れるようになりますか?」
「魔法の素質と訓練次第ではあるがな。まぁお主の戦闘を見る限り、その素養も十分な様じゃな」

 午前中のよしのんとモーディーンさんの如く、俺もイルミナさんに尋ねてみると、謎の太鼓判を押されてしまった。

「魔法の素質って?」
「ほれ、魔法の形状変化や、軌道や出現場所を自在に操っておったであろう? あれらが出来るのは魔力を感覚的に扱える資質を備えていることにほかならぬ」
「そうなんですか」
「うむ、これが出来ると出来ぬとでは大きな違いじゃ。魔法はジョブによって習得可能じゃが、それらを自在に扱える者は多くはない」

 そんなものなのか?
 俺の周りは大体それらが出来ているみたいだけど。
 
「でもリシア達は普通に出来てますよ?」
「それはこの者達の才能もあろうが、お主の影響下にあるからやもしれぬ」
「俺の影響下?」
「異世界人は……、特殊なスキル以外にも、周囲の才能を引き出す力が備わっているとする説があります……」
「うむうむ♪」

 補足を入れたセシルにイルミナさんが満足げに頷きながら抱擁すると、本人は恥ずかしがりながらもどこか嬉しそうな表情を浮かべた。

 異世界人にそんな能力があったのか!?

 それを微笑みを浮かべて見ていたフィローラの顔に、かすかだが寂し気なモノが混じる。
 だが何かを決意すると、イルミナさんに横から抱き着いた。
 完全に母に甘える娘である。

「メリーも来てもよいのじゃぞ?」
「いや、いい」

 トトと手遊び歌で遊んでいたメリティエが、実母の誘いを一瞥すらせずに拒絶しイルミナさんを撃沈させた。
 ちなみに2人の手遊び歌だが、はたから見てると座った状態で打撃を交わす〝変則組手〟みたくなっている。
 物理的に2人を止められるのは、もうククにしか不可能だ。

「そ、それで、ジョブ以外の魔法を習得したいということじゃが」

 そんな2人を見てとある香港出身のハリウッドスターが脳裏に浮かべていたら、イルミナさんが無理やり気を持ち直した。

「マナロードには魔法作成スキルという便利なものがあろう、それではいかんのかえ?」
「選択肢が攻撃と防御くらいしかなくて、なんか自由度的に独自開発の方が目的までの道がひらけそうだなと」

 戦闘面ではそれでも良いが、マナロードのスキルでは戦闘に特化し過ぎている。
 俺の最終目標はあくまでもレンさん達との合流だ。
 レンさんとシンくんは国の庇護下に入っているとはいえ、レンさんは戦禍に晒されることだってあるかもだし、シンくんに至っては勇者と対面しなければならない事態がすぐそこまで迫っている。
 そして国の庇護下に無い大福さんは、俺と同じでいつどのような危機に見舞われるかわかったものではない。
 一刻も早く彼らと合流するには、戦闘面だけを見ている訳には行かないのだ。
 それこそワープゲートを発展させれば、明日にでもレンさん達と合流できる可能性もある。
 そういった方面での独自開発も、出来る様にはなっておきたい。

「修練次第では魔法に限らず、どのジョブのどのスキルも習得は可能じゃからのう」
「やっぱりそうなんだ」

 シーフ系ジョブのモーディーンさんが、ファイター系スキルのオーラブレードからその発展形であるマクマレート流を使える辺りで、何となくそんな気はしていたが。

「まずお主には〈スキル〉や〈ジョブ〉から教えておいた方が良いかのう。お前様はジョブをなんと思うておる?」
「なにと聞かれても……ん~~~……〝誰かに造られた世界のルール〟って感じですか?」
「そう認識しているのであれば話が早かろう。そもそもジョブとは、古代魔法人が世界に満ちたマナを用い、誰しもが魔物に対抗する術を習得出来る様にと構築された〈戦闘スキル簡易習得システム〉じゃ」
「マジですか……」

 以前魔道書に書かれていた内容を読んで〝魔法とはこう使うのですよと教えられてる様だ〟と思ったのは間違いではなかったのか。

「それについてはここにも書かれておる」

 魔導書Ⅲの最初の方のページを見せつけてくるイルミナさん。

 そこは先程読み飛ばしてましたごめんなさい。
 しかし、魔導書にそこまで書かれているとなると、本の著者はこの世界にかなり精通しているな。
 本に細工が施せるほどの人物となると、古代魔法人である可能性は極めて濃厚だ。
 それはさて置き、各ジョブの美味しい所だけをピックアップして習得していけば、一般の冒険者だって剣士が魔法を使うなど、全く別系統のスキルや魔法を習得することだって――あ。

「だからこその〝マクマレート流〟か」
「自身の戦闘スタイルに適したスキルをジョブで習得し、足りないものを修練で補えば、効率的で手堅いでしょうね」
 
 栗色の長い髪をアップヘアにしてまとめた湯上りケンタウロスが、真剣な面持ちで俺の言葉を引き継ぐ。
 モーディーンさんがトリックスターのスキルをジョブで習得しつつ、ファイター系の高火力を修練で習得していたところに、現地人のしたたかさを垣間見た。

 その後、イルミナさんが魔導書片手に解説してくれた話を要訳すると。


1.各ジョブは、設定することで目指した道に必要であろうスキルを自動的に習得させてくれる戦闘機能拡張パック。
2.近接攻撃スキルは体内のマナで生命エネルギーを活性化させ、物理エネルギーとして行使する技術。マナを使っているがあくまでも体内で完結しているためマナ消失の影響を受けない。
3.魔法は言葉を用いて発現させたい現象を明確にイメージし、魔法としてマナを放つ技術。なのでイメージさえきっちりと出来ていれば呪文は不要。でも放つのはマナなので、マナ消失の影響をもろに受ける。
4.スキルや魔法は練習次第で習得できるため、ジョブに頼らなくても習得可能。


 とのことだ。

「我やメリーの変身魔法や、フィローラの変化スキルの様な特殊なものはちと難しいが、発想とイメージ次第では大体のことは可能となるであろう」
「おお~。あ、それと俺も魔道具とか作ってみたいです」
「なんじゃ、お主も魔道具に興味があるのかえ?」
「武器や防具に魔法効果があれば強力かな~と」 

 自身の得意分野に俺も興味があると知るや、嬉しそうに顔を綻ばせるイルミナさん。
 序に先程出した分も含め、迷宮産のドロップアイテムを人数分に分けて彼女達に渡しておいた。

 レスティー達には明日の朝にでも渡しておけば良いだろう。

 すぐにでもレスティーに渡そうかと思ったが、今から行って万が一彼らのお楽しみの最中に遭遇したら怖――もとい、無粋なので思い止まった。

 どうせならユーベルトも巻き込まれてしまえ。

 自分の安寧のために内心で呪いをかける奴を仲間と呼べるのかと疑問を抱くも、この程度であればたぶん許される範囲に収まっているはずだ。

 うん、きっとそうに違いない。

「魔法剣などは確かに強力じゃが、強力な魔道具は冒険者ギルドで渡される魔道具袋と違うて周囲のマナだけでは賄えぬ。肝心な時にMP不足に陥るなどといった間抜けな事態になりかねんえ」
「物によってはモンしゅターカードを付与した方が効率が良いでふね」
「そう言えばカードもかなり拾ってるなぁ」
 
 残念なことにまともに使えそうなのがあまり無いというオチもあるが。

 使えそうなところで言えば、ゴルゴーンカードは100枚以上あり、使えなさそうなキカードに至っては300枚を超えている。

 どんだけ食い散らかしてんだよあの蛇神エキドナは……。

 ちなみにゴルゴーンカードは武器に石化攻撃付与、キカードは武器攻撃時オートスペルでライトニングストームとアイスストームが発動する。
 今更ライトニングストームが必要だとは思えないので売り払いたいが、一気に流して相場が暴落する可能性を考えるとうかつに売れない。

 逆に考えれば、市場に流して初心者に行き渡らせるという考えもあるか。
 いかんせんこの町の初心者のほとんどが1~2週間前からすでに中級者くらいの実力を持っているけど。
 ドラゴンフライおいしいです。
 まぁこのカード一種くらい暴落しても構わないかとさえ思えるが、数が数なだけに、そのせいで他の品まで暴落しかねないのでうかつに売り払えない。

「とりあえず、練習がてらナイフやロングソードとか、あと革装備辺りに付与してみましょうか?」
「初めの内は失敗するものじゃ、それなりに数を用意しておくが良い」
「ならあたしんとこの装備に付与してみるかい?」

 廊下の方から声がしたのでそちらに顔を向けると、風呂上りのモリーさんがモティナを連れて入ってきた。

 大きな胸は汗と湯気で肌着に密着しているため、ものすごくエロいです。

 思わずモリーさんに向けて笑みと共に親指を立てると、真っ赤な顔してまっすぐこちらに向かって来た彼女に頭をはたかれた。

 スタイル抜群の湯上り美女の半裸姿が間近で拝めるのなら、平手の一発なんぞ安いものだ。

「もう、お母さんだけじゃなく私も見てよー」
「それこそモリーさんに殺されるからダメ」

 モリーさんに続いて俺のそばに寄って来たモティナが首に腕を絡めて抱きついてくるが、いつものことなので軽くあしらう。
 嫌いじゃないどころか彼女の正体を知っているだけに襲いたくて堪らないが、モリーさんとの約束があるので我慢である。
 だが湯上りのせいで体温がかなり高く、それが彼女の熱として意識させられる。

「それよりも良いんですか? 売り物でしょ?」
「いまさら革の防具や鉄の剣を買い求める客なんてあまり居ないからかまわないよ。むしろこないだアンタが買ったのが物珍しいくらいさ」

 あぁ、だから初めて会った時に初心者サービスしてくれたのか。

 正体がミノタウロスとは思えない親切な人である。
 ミノタウロスがどういった種族なのか知らないので偏見も良い所だ。

「じゃが武器への付与の前に、まずは属性石から魔力の抽出が出来るようにならんとのう」
「魔力の抽出?」
「言うた通りじゃ。属性石に宿った魔力を抜き出し、それを武器に付与したものが属性武器じゃ」
「属性武器は魔法剣と違い魔法ダメージは無いが、弱点属性を持つ魔物に大ダメージを与えられるのさ」
「へー」

 イルミナさんとモリーさんの説明に、ここに来てファンタジーのだいご味である魔道具の作成がはじまるのかとワクワクする。

「先ずは我が手本を見せる故、マナ感知にてしかと確認するのじゃぞ」

 イルミナさんが属性石を手に取り手元に集中。

 その表情は真剣だが、とても得意げなものだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――
 お待たせしました。
 急に書けなくなり、自分でも「なにやってんだ俺は?」状態でした。
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