四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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176話 夫婦の営みその2

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 自宅の浴場にて、ミルクティー色の優しい金髪がお湯に濡れ普段の2割増しに艶っぽいリシアと心地よい疲労で愛情を分かち合う。
 愛妻がだいしゅきホールドで抱き着いてくれるのは、控えめに言っても最高だ。

「こうして愛されるのも、終わった後の優しいキスも好きです。好き、大好き、あなた」
「俺も好きだよ。リシア、愛してる」
「私も、愛してます……」

 湯舟の中で肌を重ね合わせ、彼女の髪を撫でながら互いに愛をささやく。
 中途半端に温いお湯だが、のぼせずに済むのも程よく心地よい。

 2人きりでのイチャイチャを満喫すると、ピロートークならぬバストークを弾ませた。
 その内容の大半が家族のこととなる。


 ローザがダイエットを始めたようだが、リシアが食後のデザートを彼女の近くにこっそり置くと無意識に摘まんでいるそうだ。

「鬼か……」
「ローザちゃんのあの体型と幸せそうに食べる姿がとても可愛いのでつい……」
「それには激しく同意するけど、ご両親も肥満のせいか胸が痛くなってるみたいだから、健康のためにもやめて差し上げてね?」
「はぁい……」

 魚を持って行った際に本人から直接聞いた話を告げると、リシアが残念そうに返事をした。
 ローザが絡むと途端に精神年齢が低くなるのは、リシア7不思議の1つである。
 ちなみに7不思議最大のミステリーは彼女が俺に愛想を尽かさないところで、最後の謎は今のところ7不思議なのに不思議が3つしか無い所だ。

「それにしても、リベクさんの方も心配ですね」
「痩せるようにとは注意しておいたけど、人に言われてすぐに痩せられるなら、肥満で悩む人なんてこの世に居ないしね」
「体を動かさないと痩せませんから」
「そうだねぇ」

 まぁローザは家事で動き回っているので、節制さえすれば直ぐに痩せてしまいそうだが。
 俺はあまり太れない体質なため彼女の苦しみを分かってあげられないが、慰める意味でもいっぱい愛してあげなければ。
 慰めるのにかこつけて、ローザのわがままボディを堪能したいだけとも言う。


 ククも料理に妹達の面倒にと頑張っている様だ。
 それと、リシアやローザとは互いに敬称無しで呼び合う程に打ち解けて来たとのこと。
 仲が良くなった反面、ローザに料理を習うようになってからは、ローザの料理の腕前と手際の良さを理解し始めた、尊敬を禁じえないのだそうだ。
 そして帰宅後は必ずローザとハグする我が家のルールで、一番長くローザとハグしているらしい。
 帰宅後の風呂場での足洗は、俺が一番最後に浴室乾燥をしてから出るため、俺の知らない事実である。

「これが、寝取られ……!?」
「違います」
「お、おう」

 裸で密着してラブラブしている相手に、こうも無機質無表情で突っ込まれるとは思わなかった。

「それと、最後に迷宮に行った日から、時折溜息を漏らすことが有りますので、それとなく聞いてあげてください」
「うん、わかった。けどなんでだろうね?」
「私が聞いても笑って誤魔化してしまって……」

 最後に迷宮に行ったのは、五十階層での天使戦だ。
 なにか特別なことがあった訳でもないので、思い当たる節が無い。

「明日にでも聞いてみるよ」
「お願いします」

 心配するリシアの不安を和らげるように髪を撫でる。


 トトは相変わらず能天気で底抜けに明るいのだが、ペスルが家に来てからちょっとお姉さん風を吹かすようになったらしく、餌やり水替えは彼女の担当なのだとか。
 そしてペスルのあの巨体をまともに受け止められる人間がククとトト、それにメリティエしかいないため、トトとメリティエが一番の遊び相手でもあるそうだ。
 庭の芝がかなりめくれ上がった惨状になってるのも、メリティエと一緒になってペスルと遊んだのが原因だとか。

 さっきは盗賊達の襲撃で頭がいっぱいだったし、最近は何をするにもワープゲートで移動していたのと、魔法の実験もクレアル湖で済ますので、被害に全く気付かなかった。
 後で確認するとして、これ以上被害を広げないためにも、どこか別の場所で遊ばせないとだな。
 
「でもトトがお姉さんなぁ……ペスルの今後が非常に心配だ」
「それは少し酷いと思います」
「なぜ目をそらしながら言うのですかリシアさん?」
「そんなことありませんわ、あなた」

 そのすました顔が実に白々しく、それでいて愛らしかった。


 最近のミネルバとユニスは本当の姉妹の様に仲が良いとのこと。

「ユニスの背中に居る時のミネルバの可愛さと来たら、もうずっと見ていたいくらいです」
「あぁ、分かる」

 身体の大きさを自在に変えられるミネルバは、家に居ると食事時以外はもっぱら生まれた時の幼ハーピーの形態で過ごすことが多い。
 ソフトボールサイズの頭をした美幼女梟が、ユニスの馬の背中の上に乗りだらけきって垂れる〝たれハーピー〟がよく目撃されている。

 完全に我が家のペット系マスコットポジションに納まってしまっているな。

 なんたってあのフリッツが、あまりの愛らしさに撫でさせて欲しいと頼んできたくらいだ。
 許可はミネルバに取れと言ったところ、フリッツに向き直ったミネルバが大きく翼を広げて威嚇した。
 それを見てフリッツが顔を手で覆い天を仰いだ。

 泣いてないよな?

 ユニスはユニスで兄弟は弟ばかりなためずっと妹が欲しかったらしく、念願の夢が叶ったと幸せそうに教えてくれた。
 それと体育会系と思われがちな彼女は結構な読書家で、ミネルバと一緒に本を読んでいると、時折突拍子もないことを言い出すミネルバが面白いのだとか。

 そういえば、迷宮でも休憩中は本を読んでたなぁ。

「ユニスがミネルバに〈人魚姫〉を読み聞かせていた際ですが――」

『王子と結婚できなかった腹いせに竜宮城で風俗嬢になったのね……』
『あのウラシマタロウの竜宮城? だがなぜ風俗嬢に?』
『人魚姫が泡になったから……』
『人魚姫が泡だから風俗嬢? どういうこと?』
『人魚の姫が泡……、姫が泡……、泡姫……、風俗嬢の隠語……』
『そのような隠語があるとは。……つまり、王子を忘れるために夜な夜な知らない男達に身体を差し出す姫の自虐プレイね』
『自暴自棄を装い、稼いだお金と客との間に作った人脈で復讐計画を企ててる……』
『一気にきな臭さを帯びて来たな。竜宮城での働きで得た玉手箱を王子の結婚式に送り付ける気かもしれん』
『王子だけでは飽き足らず、出席者全員を巻き込んだ無差別老化テロ……』
『姫の怨念恐るべし……』
『ちー……』

「なんて、真剣に話し合ってましたよ」
「あの2人、ああ見えて実はアホなのか?」

 あと別の作者の別の話をくっつけるなし。
 いや、この世界にこれらの童話を持ち込んだ過去の勇者が同一人物だった可能性もあるか?
 てか泡姫とか、なんであの子は俺の居た世界の知識を持ち合わせてるんだと一度問い詰めたくなるな。

「そんなバカ話が出来る程打ち解けているんですよ」
「そう見るか……」

 リシアの好意的な物事の捉え方に、思わず感心させられる。
 なんにしろ仲が良いのは良いことか。


 フィローラとセシルは相変わらずイルミナさんにべったりだそうだ。

 べったりしているのは主にイルミナさんの方ともいうが。
 家族の愛情に飢えた娘達と家族への愛情に惜しみない母、こちらもウィンウィンな関係であろう。

 そんな2人はイルミナさんの指導の元、魔法と魔道具の作成でその成長が目覚ましいのだとか。
 なんだかんだ俺もクーラーや冷蔵庫のアイデアを入れ知恵してる所もあるが、それをすぐさま実用化させているのは彼女達の手腕だ。
 次の課題として与えた全自動掃除機がどうなるか楽しみである。

「そう言えば、リシアもフィローラを膝にのせていることが多いけど、イルミナさんと取り合いになったりしないの?」
「むしろ私ごと膝に抱えて猫かわいがりしてくれるので、つい甘えちゃってます」

 美幼女狐娘を膝に乗せた猫耳美女を更に膝に乗せるイルミナさんの図を想像し、その約束された美しさを是非とも生で見てみたいと願った。

「あの人の中ではモリーさん以外を自分の子供として認識しているのではないでしょうか?」
「娘同士で仲良くしているのを更に母として包み込む感じか? なんにしろ、あの人が愛情深い人で良かったよ。てかモリーさんはもう完全に飲み友みたいなのになってるな」
「どちらも大人の女性ですからね。ですが、母が男勝りなだけに、恋する女の子みたいな仕草をするイルミナさんは見ていてきゅんきゅんします」
「わかる」

 自分の十分の一にも満たない年の少女に可愛いと思われちゃうイルミナさん。
 ベラーナさんはリベクさんの護衛頭を務める旦那さんを尻に敷いている女傑なだけに、それと比べてしまう気持ちは分からなくもない。


 そのイルミナさんの実の娘であるメリティエはと言うと、親離れしているからと実の母に構われるのを拒んではいるが、誰も見ていない所では滅茶苦茶甘えているのだそうだ。

「単純に照れ臭いみたいです」
「実の親子なだけに、その辺は難しいところだな。けど、家じゃぁ2人きりになんて滅多になれないだろ?」
「何かしらそうなれる場所を作ってあげてはいかがです? トトと違って素直になれない子ですから」
「トトは甘えたくなったらすぐお姉ちゃんに甘えに行くからなぁ」
「ただ、トトと2人で居る時は元気があり過ぎて手を焼いてます。主にそのお姉ちゃんククが」
「あぁ~」
「そこに最近はペスルが加わりましたから余計に」
「ははは……」

 別宅で頭蓋骨をくわえて来た一件を思い出し、苦笑いを返す。

「まぁ2人共身体を動かすことが得意だし好きみたいだし、どうにかして元気を発散させてやらないとか」
「午前中は訓練で暴れてますけど、お昼から暇を持て余しがちですから。……トトはもともと狩りをして生活していたようですし、そちらの面で満たしてやれば良いのではないです?」
「と言うと、やっぱり近隣での魔物討伐とかかな?」
「そうですね。以前にも話しましたが、魔物の活性化で今は魔物退治に手練れの冒険者は引く手あまたです」

 実は闇組織を掌握した際、荒くれ者達をモンスター討伐部隊に仕立て上げてやろうかと画策した。

 その先頭にメリティエとトトを置けば――だめだ、ブレーキ役が欲しい。
 誰かやってくれないかなぁ~、なぁよしのんさん?

 彼女には彼女のやりたいことがあるだろうし、そうちょくちょくと雑用を頼むのは流石に気が引ける。

「まぁその辺もおいおいってとこかな。一応考えがあるからしばらくは面倒見ててとククに伝えておいてくれる?」
「はい。ですが、ククは家事に妹たちの面倒にと頑張ってますので、何かご褒美は忘れないであげてくださいね?」
「そうだね、またプリンでも買ってくるよ。リシアも好きでしょ?」
「勿論です!」
「そしてローザのお腹には俺達の愛の結晶が……」
「ふふふ……♪」

 先程の気遣いは何処へやら、愛の結晶と称したローザのふくよかな脂肪を想い、2人して悪い笑みを浮かべた。


 モティナは母親であるモリーさんのお店を手伝うかたわら、もう完全によしのんと同調して変な創作活動に打ち込んでいるそうだ。
 なんでもよしのんにこっちの文字を教えたのは彼女なのだとか。

 この短期間で覚えさせたのは彼女の手腕なのかよしのんの才能なのか。

 明らかに後者であることは間違いないが、モティナの貢献も少なくは無いだろう。
 冒険者絡みの話し合いをしていても積極的に案を出してくるし、あの子は俺が思っている以上に賢い。

 いやでも初対面の俺にナチュラルでオパーイを見られるような子が賢いとはとても思えないんだけど。
 だがあれも演技だとしたら末恐ろしい……まさかな。
 
「あの子はあれで要領も良いですし、家事や買い物など色々と手伝ってくれていますので、あまり邪険にはなさらないでくださいね?」
「わかってるよ。なんだかんだ妹が出来たみたいで少し嬉しかったりするしね」
「ユニスとミネルバみたいですね」
「あれは理想の姉妹像みたいな印象で違う気がする。どちらかと言えば本当の兄と妹な感覚かな? 生意気だけど懐いてくる妹みたいな」
「確かにそんな感じはありますね」
「あれ、それを恋愛対象にしてるのは問題しかないんじゃね?」
「兄妹や姉弟という設定で暮らすご夫婦は、この世界では珍しくはありませんよ? 過去の勇者様が持ち込んだ文化ですが」
「なんてもの持ち込んでやがる過去の勇者……」
「トシオ様の世界では普通なのではないのですか?」
「そんな普通、俺の世界じゃ存在しないよ?」
「そうだったのですか、私もお兄ちゃんには少し憧れていたのですが……駄目ですか、お兄ちゃん?」

 上目遣いで可愛く甘えるリシアに、今度は兄ちゃんプレイで楽しませる。

「これ、少し癖になりそうです……」
「そう? リシアが喜んでくれたのなら良かったよ。リシアは皆のお姉ちゃんをやってるから、いつでも甘えてくれていいからね?」
「そうしたいのは山々ですが、こんなこと皆の前だと恥ずかしすぎて出来ませんよ」

 わかる。
 俺も皆の前だとイルミナさんにオギャれないし。

「それに、やっぱり兄妹より普通に夫婦の方が良いです」
「そうだね」

 愛らしくはにかむリシアを再び襲いたくなる衝動に駆られた。
 

 モリーさんはイルミナさんという互いの悩みを打ち明け合う存在が身近にできたことでストレスが緩和され、出会った頃と比べても生き生きとして見える。
 夕方にも聞かせてもらった通り、娘と2人暮らしでは何かと気を張る事が多かったようで、リビングに居る時の彼女はお店では見せたことのない穏やかな顔をしている。
 その見つめる先は主にモティナではあるが、当の娘さんは異世界人と変態活動をしているなんて口が裂けても言えやしないし、夜な夜ないかがわしいことをしている俺が言えた義理でもないが。
 ただ心配なことは、恋に仕事にと私生活が充実し、妙に色香が増したモリーさん目当てのお客が増えてきた気もする。

「実は2日前のことですが、モリーさんにしつこく言い寄った男性が居りまして、あまりのしつこさにモリーさんがその人に重傷を負わせる事件が起きました」
「んなことあったんだ」

 人の嫁に手を出そうとした不届き者に殺意こそ湧くが、同情なんてこれっぽっちもしやしない。

「てかそれはまたずいぶんと命知らずなスケベ野郎が居たもんだな」

 まぁ一番のスケベ野郎は俺であることは間違いないけど。

「たまたまその場に居合わせた冒険者の方が詰所に突き出したそうです」

 俺のスケベ野郎発言に呆れた眼差しをこちら向けながら、事の顛末を聞かせてくれるリシア。

 そんな目をしたところで、可愛い生物が別の可愛さを見せてくれたくらいにしか思わないが。
 ……冗談はさて置き、やはり店にも番犬替わりの何かを用意するべきか。
 モリーさんは魔水晶の影響で最上級職であるグラディエーターLv50オーバーだったりするが、1人だと対処できない状況もあるだろう。
 ペスルを店に置くにはデカすぎるので、もう少し小さなのが良いなぁ。
 やはりモリーさんの要望もあるし、別宅の人に店員兼用心棒を頼んでみるかな。
 めぼしい所では、レギーネと言うワーウルフの女性が元々冒険者らしく、ウォーリアーのLv25と中級冒険者くらいの実力があった。
 他にもコボルトやオーガの男性にも協力を頼もう。
 彼らの就職にも繋がるし、一石二鳥だろう。
 後は既婚者であることを示して余計なちょっかいを減らすためにも、発注しておいた白金の指輪を取りに行かねばならない。
 指輪を渡したら皆喜んでくれるかな?

「……それで、最近のリシアさんはどうなのですか?」
「私ですか?」
「うん、何か不満があるとか、こうして欲しいってことが有るなら言ってくれると助かるんだけど」
「そうですね~……、旦那様が行動を起こす前に相談してくれたらいいのですが」
「あ、はい……」

 満面の笑みで見つめられながら念を押されてしまった。

「それと、たまにで良いから2人でデートしたり、こうして愛して欲しいです」
「うん、わかった」

 最愛の女性のつつましくも可愛いおねだりに頷き、密着したリシアの髪を撫でながらその唇にキスをした。


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