四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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205話 時間よ戻れ

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「トシオ、用があるから付いてきてくれ」

 会議を終わり影剣さんを連れて帰宅しようとしたところを、エルネストに呼び止められた。

「影剣さんは?」
「一緒でも構わん」
「こちらです」

 クロードの先導で連れられて来たのは会議室のすぐ近く、執務室のような部屋だった。
 エルネストは部屋の主が座るべき大きな机に着くなり、引き出しから取り出した小さな革袋を机の上に置いた。
 それをクロードが手に取りこちらに差し出してきたので受け取った。

「中を見ても?」
「あぁ」

 了解をもらったのでずいぶんと軽い袋を逆さにして中身を右手に落とすと、500円玉サイズの硬貨が1枚出てきた。
 
「ほぅ、白金貨でござるな」
「……これは?」
「先日言っていたクーデターの報奨金と、クロードとヴィクトルの命に対する支払いだ」

 白金貨か。

 最低でも日本円で約2000万円ほどの価値を持つ白金貨、確かにこれ1枚でも大金ではある。
 しかし、別に大金を期待していたわけではないのだが、実際に渡されてみるとエルネストの救出にクーデターの成功、そしてこの国の参謀と大将軍の命の対価がたった白金貨1枚とは、子供の小遣いレベルに随分と安い金額である。
 
「どうした、浮かない顔だな」
「んー、まぁこんなものかなっと」
「ははは、そう言うな。今のウィッシュタニアにはとにかく金が無い。そこでだ」

 次にエルネストが発した言葉に、俺は耳を疑った。

「それをお前が死ぬまで、もしくはウィッシュタニアが存続する限り、毎年必ず同額を支払い続けると約束しよう」
「え、それって、白金貨のことだよな?」
「そうだ」
「……マジか!?」
「マジだ」

 驚く俺にニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべたエルネストが、報酬の支払いを約束する書類2枚と万年筆を渡して来た。
 書類にはウィッシュタニア国王の印も入っている。

 俺が死ぬまで毎年白金貨1枚が湧いて出る、だと……?。
 それってつまり、よっぽど馬鹿な使い方をしない限り一生遊んで暮らせることじゃないか!
 おおおおお!

 念のため内容文を2回読み返し、エルネストの気が変わる前に近くにあるテーブルで契約書にサラサラっと署名してクロードに渡すと、「はい、確認しました。こちらはトシオ様がお持ちください」と1枚を俺に返してきた。

 これで一生左うちわだ!

「後からやっぱ無しとか、それこそ無しだからな!」
「あぁ当然だとも。なにせ王印付きの約定だ、何があっても反故には出来んさ」

 俺の念押しにエルネストが即答で頷く。

「仮にあと50年生きたとしても白金貨50枚でござるか、豪胆でござるな」
「マジで天才か?」

 その太っ腹具合が凄まじいの一言に尽きる。

〝それを俺が死ぬまで、もしくはウィッシュタニアが存続する限りは毎年必ず同額の金品を支払われる〟か。
 イヤッホオオオオオオオオオウ!
 みなぎってきたああああああああああ!

 興奮を隠せないまま再度約定を確認していると、ふとあることに気付き、俺の顔が凍り付いた。

「ウィッシュタニアガソンゾクスルカギリ……?」
「あっ、此度こたびの戦でもしウィッシュタニアが戦争に敗れ、モンテハナムやハッシュリングと分割され国の体を成さなくなれば、2枚目の白金貨すら拝め無いということでござるな」

 クーデターと2人の命の対価にしては十分な金額を提示しつつ、莫大な報奨金の後払いによる今後の協力の取り付けを、たった白金貨1枚と空手形だけで成立させられた。

「時すでにお寿司。エルネスト殿はまことに豪胆でござるな……」

 影剣さんの言葉を背に、表情を凍らせたままエルネストに顔を向けると、満面の笑みが待ち受けていた。

「やっぱ無しとか、それこそ無しだからな?」

 先程自分が吐いたセリフを異口同音で告げたエルネストの口元が、途端に悪戯小僧の笑みから悪魔のそれに変化し、もう1枚の契約書を右手でつまんでひらひらとさせ俺に見せつけた。

 こんな単純なことに引っかかる数十秒前の自分をぶん殴りたくなる。

 俺の淀んだ心とは裏腹に、窓の外に広がる空はどこまでも青かった。

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