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225 開戦
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「バラドリンドがついに動きましたか」
「ワープゲートでいつでも陣を敷ける状態だっただろうに、妙におとなしいと思ってたけど。どうせなら一生おとなしくしてればよかったのにな」
アイヴィナーゼ王国王城の廊下を、俺とフリッツが並んで歩く。
昨晩こそ祭りではルージュやトモノリくんのエスコートをしていたが、やはりウィッシュタニア側での俺付きの御用聞きなことには変わらないようだ。
アイヴィナーゼ側だとクラウディアがそれにあたるっぽいことをしている。
「彼らがおとなしくなるとトシオ様の存在意義にかかわるのでは?」
「戦争が無いと発揮できないクソみたいな存在意義、ゴブリンにでも食わせてやれ。痛くもかゆくもないどころかむしろ迷惑以外の何ものでもないわ」
「ははは、そういうところだけはブレませんね」
「だけ!?」
フリッツの嫌味のような冗談にこちらも軽口で返す。
そんなくだらない言い合いをしていると、すぐに目的地であるアイヴィナーゼ&ウィッシュタニア連合軍の大本営と化したアイヴィナーゼ城の玉座の間に。
ウィッシュタニアの会議室では広さが足りないからと移されたその場所は、安全性を重視して戦地から大本営を離すのと警備のし易さで選ばれた。
扉の前で緊張した若い兵士に止められるも、すぐに責任者らしき中年騎士が若い男の言葉を遮り中へと通してくれた。
広い玉座の間には白いテーブルクロスの長大な卓があり、テーブルの中央ではアイヴィナーゼ国王グレアム陛下とウィッシュタニア国王エルネストをはじめとする両陣営の幹部連中が向かい合っていた。
でっかいテーブルだと思ったら机を集めてテーブルクロスで1つにしてるのね。
初めて見る顔も幾人か増えているも、それでも用意されたテーブルに比べて人の数が少ない印象を受けた。
ウィッシュタニアの老将ヴィクトルの背後には先日俺と死闘を繰り広げた元近衛騎士団団長であるバレンティンが立っていたのにギョッとする。
まぁウィッシュタニアの近衛騎士団はほぼ壊滅させたから戦力ダウンしてるし、ウィッシュタニア的にはバレンティンのケツを蹴り上げてでも現場復帰させないといけない事情があるんだろうなぁ。
その隣のフェンレントってのはたしかルージュのお守りをしていたやつだよな。
名前が話題に上がったとたん、我が家のエセエルフことダークエルフのセシルの笑いのツボを独占していたことを思い出し、金髪イケメンなのに面白いとか男として負けた気分になる。
「急に暗い顔してどうされました? もしかしてフェンレントさんに嫉妬ですか?」
こちらの視線と表情にフリッツが憎たらしい笑みでズバリ言い当てやがる。
勝手に心を読むんじゃねぇ。
「んな訳ないだろアホらしい。お前のそういうところマジで嫌いだわ」
「おやおや、それは申し訳ありません。以後気を付けましょう」
口では謝罪を述べるも全然悪びれていないフリッツ。
これ絶対『気を付けるとは言ったが直すとは言っていない』とかいうぱてーんや……。
更にフェンレントたちの背後では、玉座の間の壁際では軍人が念話で忙しなく連絡を行っており、盗み聞く限りではすでにバラドリンドとの戦闘が始まっているようだ。
「ねこ殿~、フリッツ殿~、こちらでござるぞ~」
影剣さんがグレアム陛下の左隣りに座ってこちらに手を振り、フリッツも小さく手を挙げて応える。
「すでに顔合わせを済ませた者も居るであろうが、こやつが先程話に出ておったトシオだ」
「あ、どうも」
影剣さんの席の左隣りに座ろうとしたところでグレアム陛下直々に紹介していただいたので適当に挨拶しながら席に着くと、周囲からは不安げな視線を浴びた。
そんな視線が俺の対面の席に居たルージュやトモノリ君にも向けられる。
中学生のような見た目の小柄なルージュとオドオドした小太りの少年、そこへ童顔で頼りなさそうな俺が来たとなれば、そりゃ不安にもなるというものだ。
だからと言って安心させてやるつもりもないため、取り合えずそれらは無視することに。
「んで、何があったの?」
「まずはその地図をご覧あれでござる」
影剣さんに促されるままにテーブルを見ると、アイヴィナーゼとウィッシュタニアの全域を網羅したであろう2枚の地図が並べられていた。
「んで?」
「赤い字で印が打たれた箇所があるでござろう? 場所はウィッシュタニアとバラドリンドとの国境にある例の砦と、ウィッシュタニアとハッシュリングとの国境にあるターミラル砦、アイヴィナーゼとモンテハナムとの国境にある大都市レーヌでござる」
細い棒で赤く×印が書かれた場所を指す影剣さん。
3ヵ所とも地図の端、つまりは国境付近ということだ。
ちなみに例の砦とは攻め入られた際にバラドリンド軍を中に引き入れ爆破しようとしていた所だ。
「今そこが敵兵からの襲撃を受け、東の砦は予定通り敵を誘い込み爆破して見方は既に引き上げた後にござる。しかし残りの南の街と北の砦は現在も市中にて交戦中でござる」
「マジか」
「残念ながら大マジでござる。まさか敵が内側に湧いてくるとは想定していなかったゆえに、どこも被害は甚大でござる」
都市内部での戦闘となると、戦闘能力のない民間人に多くの被害者が出ているだろう。
それも質の悪いことに現在進行形でだ。
「それと爆破した砦の方でござるが、敵の数が想定よりも少なく、砦を失った代償に比べて大した損害を与えられていないと推測致す」
「マジかぁ……」
「相手の作戦はこちらが各地から兵力をかき集めているのを逆手に取り、手薄となった地方をワープゲートを用いて襲撃。こちらのワープゲートで対応できない場所を順に潰すのが狙いでしょう。砦に引き入れて敵を殲滅する作戦の効果が薄かったのも、相手の複数拠点同時襲撃作戦でハシゴを外された形となったのが原因でしょう。受け身に過ぎました」
ウィッシュタニアの作戦参謀である黒髪の青年クロードが影剣さんの後にそう付け加えた。
敵は東の砦の手前にある丘に布陣して普通に戦闘を開始するものと思い込み、ここまで多角的でアクティブに攻めて来るとは予想も出来なかった。
相手にしてやられた、そしてこちらが間抜けだったとしか言いようがない。
しかし今は嘆くよりも襲撃を受けている所をどうにかしなければ。
問題はどちらも行ったことがない場所なだけに、初手からワープゲートで急行出来ない場所であるという点だ。
「次に狙われるのは順当にいけば現在被害を受けている周辺、ターミラルの南にあるエヴァスレイン、レーヌの北のパッシム辺りか?」
「このまま外周から攻略するつもりであるなら、アイヴィナーゼの北にあるセシトーン砦、ウィッシュタニアの南東――」
「お待ちください陛下、マイコット侯爵領への帰還をお許しください!」
グレアム陛下たちが現在襲撃を受けている拠点を切り捨てた物言いで予想を口にし始めると、レージン・マイコットという名の青年が悲痛な表情でそれを遮り嘆願した。
マイコット領はモンテハナムとの国境にある領地で、地図上でに×印が付いている街があるところだ。
「マイコット家は兵3千を引き連れ王都に駆け付けたがゆえ、街には最低限の守備隊しかおりませぬ! このままでは国に家族を残して来た兵士たちの士気にも関わります!」
兵の士気もさることながら、このまま次の街次の街と戦火が拡大すれば、やがてはなけなしの兵を連れてきた貴族たちから離反者が出かねない。
「……レージン卿、兵を動かすのは許さぬ」
「陛下!?」
「今からマイコット領まで2週間かかる岐路に着いたところで、到着したころには戦闘は終っておろう」
「っ――ですが!」
なおも食い下がるレージンに、グレアム陛下が手で制する。
「トシオよ、聞いての通りだ。何とかならんか?」
「そこで俺にフリます!?」
「お前ならば策があるかと思ってな」
「んな無茶な」
「出来ぬのであれば、こちらもバラドリンド首都へ直接攻め込み、攻める手を止めさせるまでだが?」
「っ……」
目には目を、歯には歯を。
打開策をグレアム陛下が静かだが揺るぎのない声音で述べた。
受け身のままよりも攻めに回って余計な場所を攻撃する余裕を無くすためには効果的だ。
しかも初手で首都を攻めなかったということは、相手に直接こちらの首都を攻め入れないことを意味しているため、影剣さんのワープゲートで相手の首都を攻められるこちらが断然優位な状況である。
しかし、それを受け入れれば今度はバラドリンドの民間人に被害が出る。
綺麗事なのは重々承知しているし、グレアム陛下も民間人の犠牲者を極力出したくないという俺と影剣さんの意思を尊重しつつ、されど王として自国民のこれ以上の犠牲を出すわけにもいかないための無茶ぶりだ。
打開策が無ければ俺もバラドリンド首都への攻撃に参加せざるを得ない。
どうすればいい?
「魔法装甲車で向かうにしても、到着するころには戦闘は終わっているって意味では同じだしな」
「それなら少数精鋭で聖都――バラドリンドの首都にある大聖堂へ直接攻め入った方がまだましでござる。ただし、魔法封じの神器が首都より動いていないのは潜入中の拙者の配下から報告が来ているでござる」
「そんな魔法の使えない場所に乗り込むとか、それはもう作戦というよりただの自殺以外の何ものでもないんだよなぁ」
「腹を括るよりほかにないでござるか……」
「ん~……」
「少しよろしいでしょうか?」
2人して頭をひねり無い知恵を絞っていると、俺たちの背後に控えていたフリッツが声をかけてきた。
「トシオ様がウィッシュタニアに攻め込んだ日に、攻め入る前にライシーンでウィッシュタニア軍人を捕らえた際に用いた方法は使えませんか? 確か行ったこともない建物の中にワープゲートを開いていたと思われますが」
「……あー、あれかぁ」
フリッツの進言に、以前チンピラに我が家を襲撃してきた際のことを思いだす。
あの時は索敵スキルで当たりを付けて広域複合索敵魔法で犯人と思しき奴らのいた周辺を把握し、超長距離から捕縛魔法で捕まえてワープゲートで引きずり出した。
「原理的には全く同じことなんだけど、でもあれはライシーンの街中って限定で出来たことだからなぁ。今回は距離が離れすぎてるし、広域索敵魔法は距離に応じて脳への負担がかかるからかなり厳しいんじゃないかなぁ。……いやでも場所の方角を限定して索敵を伸ばせば何とかなる――のか? 〈マップ〉」
席から立ちあがりボーナススキルの〈マップ〉を起動。
黒い球状の物体が出現すると、でこぼこの凹凸が表面に浮き上がる。
球体の天辺には緑色の▼がゆっくりとその場で回転し続けた。
「逆三角が回転してるところがアイヴィナーゼの首都で、地図的にはマイコット領は大体この辺で良いのかな?」
「はい、私の国はおおよそこの辺りです!」
レージンの元まで行って球体のマップを見せると、地形を確認して場所を指さした。
そこへ赤い光点で印が打つ。
「ねこ殿、何をするつもりでござる?」
「んー、街道沿いにのみ索敵を伸ばせば脳への負担が減るだろうし、距離さえわかればあとはその周辺だけ索敵をかけてワープゲートで飛べるかなっと。世界を見渡す高座!」
やや南西へとアイヴィナーゼから延びる街道沿いに広域複合索敵魔法を走らせた。
街道に沿って大きな森を抜け、町と小さな村を5つ超えたところで脳が悲鳴を上げる。
「んぎっ……」
索敵魔法は今まで到達したことのない距離まで進んだが、それに比例して脳を締め付けるような痛みに襲われ片膝を着く。
頭に心臓があるのかと思えるほどの頭痛がズキンズキンと喚き散らし、鼻から垂れた液体を腕で拭うと赤いものが付着した。
肉体に驚異的な再生能力を与える勇者の遺物〈生命の雫〉が起動していることから、索敵魔法の負荷で確実にダメージを受けているのが分かる。
けど――
「これで、良いんだろ?」
俺は歯を食いしばるついでにニヤリと笑ってワープゲートを開いた。
鼻血のかっこ悪さを取り繕うための不敵な笑みを浮かべたつもりだが、はたからは鼻血垂らした変態の薄気味悪い変態の出来上がりでしかないなと自虐する。
だが笑ってもいられない。
むせ返るような熱気、様々なものが焼けて混ざった強烈な臭い、飛び交う怒号、家屋が燃え無数の死者が横たわる凄惨な光景が飛び込んできたからだ。
「レーヌ街が、俺の故郷が!?」
レージンが言葉遣いが乱れるほど取り乱しながらワープゲートに飛び込み、俺も後に続こうとしたが足がもつれて上手く立ち上がれない。
ダメージやべぇ、もしかして後遺症とか残らないよな?
視界が歪みそのまま倒れそうになるのを、フリッツと影剣さんが脇を掴んで支えてくれた。
「貴方という人は、まさか本当に出来てしまうとは」
「あとは拙者に任せるでござる」
2人が俺を椅子に座らせると、影剣さんがバラドリンドを出奔した聖騎士ガーランドと共にワープゲートのその先に足を踏み出し、無音で現れた忍び衆の男たちが2人の後を追う。
「兵を集めよバクストン! 我々も行くぞ!」
「はっ!」
マクシミリアンさんの指示にアイヴィナーゼの近衛騎士団長が念話を飛ばしながら作戦指令室を走り去る。
「……本当にやってくれるとは、なんでも言ってみるものだな」
「まったくですね」
一瞬静かになった室内で、グレアム陛下のつぶやきにフリッツが軽い口調で同意しやがった。
「言い出した本人が出来ると思ってなかったみたいに言わないでもらえる?」
「ははは、そこに気付かれるとはさすがはトシオ様ですね」
「さすがの使うところ違くない?」
フリッツのからかいに俺の代わりにルージュがツッコミを入れるも、聞こえなかったかのようにスルーを決め込みやがった。
お前絶対俺をおもちゃか何かだと勘違いしてるだろ?
思ってますとか言われたらむせび泣きたくなるたくなるので言葉を飲み込む。
それに影剣さんには任せろと言われたが、今は泣いてなんていられない。
緊急の案件がまだ1ヵ所残っているからだ。
「んじゃ、次はターミラル砦だな」
「ターミナルもやってくれるのか!?」
エルネストの驚きに頷く。
「当たり前だろ? バラドリンドの民間人よりも味方の方が優先順位は上なんだ、見捨てるくらいならたとえ民間人に被害が出るとしてもバラドリンドの大聖堂を爆撃する」
「助かる。この借りは必ず返す! ヴィクトル、至急援軍の編成しろ!」
「はっ!」
俺がウィッシュタニアの会議室に移動してから索敵魔法を走らせると、エルネストもウィッシュタニアの老いた英雄に指示を出した。
脳への負担を軽減するためにさっきよりもよりも細く、糸のように細く細く……。
伸ばした索敵魔法がウィッシュタニアの王城から超高速で北を目指す。
頭痛に耐えながらもやがて索敵魔法はターミラル砦に到達し、その伸ばした先を起点に索敵魔法を球状に展開して徐々に円を広げその周囲を明確にした。
索敵範囲の中では複数の人間が武器を手に激しい攻防が行われていた。
普通に戦闘中といった感じである。
さっきと比べて片頭痛程度で済んで本当に良かった。
「ゲートを開くぞ」
「待て。バレンティン、フェンレント、名誉挽回の機会だ。援軍を編成するまでの時間を稼げ」
「「御意!」」
「トシオ、頼む」
「はいよ」
ワープゲートを展開すると、バレンティンがウィッシュタニア王エルネストに一礼するなり戦地への門を潜った。
ゲートを潜る直前、バレンティンがこちらに一瞥をくれるもすぐに鋭い眼光を戦場に向ける。
ははは、今の俺なら簡単に殺せるとでも思ったら大間違いだぞクソつよおっさん。
少しビビってしまった悔しさを打ち消すように心の中で悪態をつく。
「ちょっ、あーしも行くし!」
「ルージュ!」
バレンティンたちの後を追うようにワープゲートへ飛び込もうとしたルージュを、俺は咄嗟に呼び止めてしまった。
だがどういう言い方をすれば良いか分からず、すぐに言葉が出てこない。
「……気を付けろよ、危なくなったらすぐに戻って来て良いから」
「わかってるし!」
当たり障りのない言葉をかけると、元気な笑みで走っていった。
「ルージュさん行かせても大丈夫でしょうか?」
トモノリくんがルージュが出て行ったワープゲートを心配そうに見つめてながら問いかけてくる。
「んー、まぁあの3人が裏切ったら今度こそ殺してやれば良いかな」
「え、心配してたんじゃなかったんですか!?」
「フェンレントってやつの実力は知らないけどあの2人、ルージュとバレンティンに裏切られたら正直洒落にならないからすんごく心配。もし3人が裏切ったらバラドリンドの人たちまで気にかけられなくなる」
「そっちの心配なんですか!?」
「え、他になにがあるの?」
なぜか驚くトモノリくん。
おかしなことを言う子である。
ただルージュを呼び止めた際、「裏切るなよ」なんてやる気を出した相手のモチベーションを下げるようなことを言う訳にもいかず、かといってどう注意すれば良いかもわからなかったため、雑な言葉で見送ることしかできなかったのが心残りだ。
裏切らなきゃいいけど、ルージュには前にクギを刺しておいたしまぁ大丈夫か。
「是が非でもバラドリンド人を守りたいという訳ではなかったのですね」
フリッツが俺の認識を確認するかのように聞いてきた。
「そりゃぁね。俺にだって守れるものの限界があるし、もちろん守りたいものの優劣だってちゃんとあるし。 あの2人に裏切られたらなり振り構ってられなくなるから、行動方針的な意味では逆に裏切ってくれた方が楽なんだけどね。罪悪感でその後の人生潰れなきゃいいけど」
「まるで他人事のようないいかたですね」
「人生潰れるのは未来の俺の話だからな」
「コウカイサキニタタズというやつですか」
「急に日本語で言われると違和感すごいな……」
学校で教えてるのかってくらい元の世界の文化や言葉が知れ渡ってるのホント草。
俺の頭痛が収まりはじめた頃、不穏な念話が通信兵にもたらされた。
先んじて傍受した俺は報告よりも前に眉間にしわが寄る。
「緊急! 更にアイヴィナーゼの北方、タキオン領セシトレーン砦内にて敵兵出現!」
「同じくウィッシュタニア南東、パーファシー領ゼフェリアに敵兵!」
「ウィッシュタニア、マーク領エヴァスレインにて街の外門が崩壊! 敵兵多数!」
国の外側と襲撃中の周辺の街、先ほどグレアム陛下たちがしていた襲撃予想ポイントの両方が当たっていたいたことになる。
「6ヵ所同時侵攻とはやってくれるではないか」
「ですが、これは兵がばらけ過ぎではありませんか?」
怒りを押し殺したグレアム陛下に、セドリック大臣が違和感を指摘する。
「予め兵を1ヵ所にまとめ、ワープゲートでその都度適量を送り込んでくるのでしょう」
「我らの国全てを戦場の盤面に見立てているのか」
クロードが状況を分析し、エルネストが苦虫をかみつぶした顔になる。
逼迫する状況に、余裕なんて最初から無かったのではと自分の見通しの甘さを痛感させられた。
「ワープゲートでいつでも陣を敷ける状態だっただろうに、妙におとなしいと思ってたけど。どうせなら一生おとなしくしてればよかったのにな」
アイヴィナーゼ王国王城の廊下を、俺とフリッツが並んで歩く。
昨晩こそ祭りではルージュやトモノリくんのエスコートをしていたが、やはりウィッシュタニア側での俺付きの御用聞きなことには変わらないようだ。
アイヴィナーゼ側だとクラウディアがそれにあたるっぽいことをしている。
「彼らがおとなしくなるとトシオ様の存在意義にかかわるのでは?」
「戦争が無いと発揮できないクソみたいな存在意義、ゴブリンにでも食わせてやれ。痛くもかゆくもないどころかむしろ迷惑以外の何ものでもないわ」
「ははは、そういうところだけはブレませんね」
「だけ!?」
フリッツの嫌味のような冗談にこちらも軽口で返す。
そんなくだらない言い合いをしていると、すぐに目的地であるアイヴィナーゼ&ウィッシュタニア連合軍の大本営と化したアイヴィナーゼ城の玉座の間に。
ウィッシュタニアの会議室では広さが足りないからと移されたその場所は、安全性を重視して戦地から大本営を離すのと警備のし易さで選ばれた。
扉の前で緊張した若い兵士に止められるも、すぐに責任者らしき中年騎士が若い男の言葉を遮り中へと通してくれた。
広い玉座の間には白いテーブルクロスの長大な卓があり、テーブルの中央ではアイヴィナーゼ国王グレアム陛下とウィッシュタニア国王エルネストをはじめとする両陣営の幹部連中が向かい合っていた。
でっかいテーブルだと思ったら机を集めてテーブルクロスで1つにしてるのね。
初めて見る顔も幾人か増えているも、それでも用意されたテーブルに比べて人の数が少ない印象を受けた。
ウィッシュタニアの老将ヴィクトルの背後には先日俺と死闘を繰り広げた元近衛騎士団団長であるバレンティンが立っていたのにギョッとする。
まぁウィッシュタニアの近衛騎士団はほぼ壊滅させたから戦力ダウンしてるし、ウィッシュタニア的にはバレンティンのケツを蹴り上げてでも現場復帰させないといけない事情があるんだろうなぁ。
その隣のフェンレントってのはたしかルージュのお守りをしていたやつだよな。
名前が話題に上がったとたん、我が家のエセエルフことダークエルフのセシルの笑いのツボを独占していたことを思い出し、金髪イケメンなのに面白いとか男として負けた気分になる。
「急に暗い顔してどうされました? もしかしてフェンレントさんに嫉妬ですか?」
こちらの視線と表情にフリッツが憎たらしい笑みでズバリ言い当てやがる。
勝手に心を読むんじゃねぇ。
「んな訳ないだろアホらしい。お前のそういうところマジで嫌いだわ」
「おやおや、それは申し訳ありません。以後気を付けましょう」
口では謝罪を述べるも全然悪びれていないフリッツ。
これ絶対『気を付けるとは言ったが直すとは言っていない』とかいうぱてーんや……。
更にフェンレントたちの背後では、玉座の間の壁際では軍人が念話で忙しなく連絡を行っており、盗み聞く限りではすでにバラドリンドとの戦闘が始まっているようだ。
「ねこ殿~、フリッツ殿~、こちらでござるぞ~」
影剣さんがグレアム陛下の左隣りに座ってこちらに手を振り、フリッツも小さく手を挙げて応える。
「すでに顔合わせを済ませた者も居るであろうが、こやつが先程話に出ておったトシオだ」
「あ、どうも」
影剣さんの席の左隣りに座ろうとしたところでグレアム陛下直々に紹介していただいたので適当に挨拶しながら席に着くと、周囲からは不安げな視線を浴びた。
そんな視線が俺の対面の席に居たルージュやトモノリ君にも向けられる。
中学生のような見た目の小柄なルージュとオドオドした小太りの少年、そこへ童顔で頼りなさそうな俺が来たとなれば、そりゃ不安にもなるというものだ。
だからと言って安心させてやるつもりもないため、取り合えずそれらは無視することに。
「んで、何があったの?」
「まずはその地図をご覧あれでござる」
影剣さんに促されるままにテーブルを見ると、アイヴィナーゼとウィッシュタニアの全域を網羅したであろう2枚の地図が並べられていた。
「んで?」
「赤い字で印が打たれた箇所があるでござろう? 場所はウィッシュタニアとバラドリンドとの国境にある例の砦と、ウィッシュタニアとハッシュリングとの国境にあるターミラル砦、アイヴィナーゼとモンテハナムとの国境にある大都市レーヌでござる」
細い棒で赤く×印が書かれた場所を指す影剣さん。
3ヵ所とも地図の端、つまりは国境付近ということだ。
ちなみに例の砦とは攻め入られた際にバラドリンド軍を中に引き入れ爆破しようとしていた所だ。
「今そこが敵兵からの襲撃を受け、東の砦は予定通り敵を誘い込み爆破して見方は既に引き上げた後にござる。しかし残りの南の街と北の砦は現在も市中にて交戦中でござる」
「マジか」
「残念ながら大マジでござる。まさか敵が内側に湧いてくるとは想定していなかったゆえに、どこも被害は甚大でござる」
都市内部での戦闘となると、戦闘能力のない民間人に多くの被害者が出ているだろう。
それも質の悪いことに現在進行形でだ。
「それと爆破した砦の方でござるが、敵の数が想定よりも少なく、砦を失った代償に比べて大した損害を与えられていないと推測致す」
「マジかぁ……」
「相手の作戦はこちらが各地から兵力をかき集めているのを逆手に取り、手薄となった地方をワープゲートを用いて襲撃。こちらのワープゲートで対応できない場所を順に潰すのが狙いでしょう。砦に引き入れて敵を殲滅する作戦の効果が薄かったのも、相手の複数拠点同時襲撃作戦でハシゴを外された形となったのが原因でしょう。受け身に過ぎました」
ウィッシュタニアの作戦参謀である黒髪の青年クロードが影剣さんの後にそう付け加えた。
敵は東の砦の手前にある丘に布陣して普通に戦闘を開始するものと思い込み、ここまで多角的でアクティブに攻めて来るとは予想も出来なかった。
相手にしてやられた、そしてこちらが間抜けだったとしか言いようがない。
しかし今は嘆くよりも襲撃を受けている所をどうにかしなければ。
問題はどちらも行ったことがない場所なだけに、初手からワープゲートで急行出来ない場所であるという点だ。
「次に狙われるのは順当にいけば現在被害を受けている周辺、ターミラルの南にあるエヴァスレイン、レーヌの北のパッシム辺りか?」
「このまま外周から攻略するつもりであるなら、アイヴィナーゼの北にあるセシトーン砦、ウィッシュタニアの南東――」
「お待ちください陛下、マイコット侯爵領への帰還をお許しください!」
グレアム陛下たちが現在襲撃を受けている拠点を切り捨てた物言いで予想を口にし始めると、レージン・マイコットという名の青年が悲痛な表情でそれを遮り嘆願した。
マイコット領はモンテハナムとの国境にある領地で、地図上でに×印が付いている街があるところだ。
「マイコット家は兵3千を引き連れ王都に駆け付けたがゆえ、街には最低限の守備隊しかおりませぬ! このままでは国に家族を残して来た兵士たちの士気にも関わります!」
兵の士気もさることながら、このまま次の街次の街と戦火が拡大すれば、やがてはなけなしの兵を連れてきた貴族たちから離反者が出かねない。
「……レージン卿、兵を動かすのは許さぬ」
「陛下!?」
「今からマイコット領まで2週間かかる岐路に着いたところで、到着したころには戦闘は終っておろう」
「っ――ですが!」
なおも食い下がるレージンに、グレアム陛下が手で制する。
「トシオよ、聞いての通りだ。何とかならんか?」
「そこで俺にフリます!?」
「お前ならば策があるかと思ってな」
「んな無茶な」
「出来ぬのであれば、こちらもバラドリンド首都へ直接攻め込み、攻める手を止めさせるまでだが?」
「っ……」
目には目を、歯には歯を。
打開策をグレアム陛下が静かだが揺るぎのない声音で述べた。
受け身のままよりも攻めに回って余計な場所を攻撃する余裕を無くすためには効果的だ。
しかも初手で首都を攻めなかったということは、相手に直接こちらの首都を攻め入れないことを意味しているため、影剣さんのワープゲートで相手の首都を攻められるこちらが断然優位な状況である。
しかし、それを受け入れれば今度はバラドリンドの民間人に被害が出る。
綺麗事なのは重々承知しているし、グレアム陛下も民間人の犠牲者を極力出したくないという俺と影剣さんの意思を尊重しつつ、されど王として自国民のこれ以上の犠牲を出すわけにもいかないための無茶ぶりだ。
打開策が無ければ俺もバラドリンド首都への攻撃に参加せざるを得ない。
どうすればいい?
「魔法装甲車で向かうにしても、到着するころには戦闘は終わっているって意味では同じだしな」
「それなら少数精鋭で聖都――バラドリンドの首都にある大聖堂へ直接攻め入った方がまだましでござる。ただし、魔法封じの神器が首都より動いていないのは潜入中の拙者の配下から報告が来ているでござる」
「そんな魔法の使えない場所に乗り込むとか、それはもう作戦というよりただの自殺以外の何ものでもないんだよなぁ」
「腹を括るよりほかにないでござるか……」
「ん~……」
「少しよろしいでしょうか?」
2人して頭をひねり無い知恵を絞っていると、俺たちの背後に控えていたフリッツが声をかけてきた。
「トシオ様がウィッシュタニアに攻め込んだ日に、攻め入る前にライシーンでウィッシュタニア軍人を捕らえた際に用いた方法は使えませんか? 確か行ったこともない建物の中にワープゲートを開いていたと思われますが」
「……あー、あれかぁ」
フリッツの進言に、以前チンピラに我が家を襲撃してきた際のことを思いだす。
あの時は索敵スキルで当たりを付けて広域複合索敵魔法で犯人と思しき奴らのいた周辺を把握し、超長距離から捕縛魔法で捕まえてワープゲートで引きずり出した。
「原理的には全く同じことなんだけど、でもあれはライシーンの街中って限定で出来たことだからなぁ。今回は距離が離れすぎてるし、広域索敵魔法は距離に応じて脳への負担がかかるからかなり厳しいんじゃないかなぁ。……いやでも場所の方角を限定して索敵を伸ばせば何とかなる――のか? 〈マップ〉」
席から立ちあがりボーナススキルの〈マップ〉を起動。
黒い球状の物体が出現すると、でこぼこの凹凸が表面に浮き上がる。
球体の天辺には緑色の▼がゆっくりとその場で回転し続けた。
「逆三角が回転してるところがアイヴィナーゼの首都で、地図的にはマイコット領は大体この辺で良いのかな?」
「はい、私の国はおおよそこの辺りです!」
レージンの元まで行って球体のマップを見せると、地形を確認して場所を指さした。
そこへ赤い光点で印が打つ。
「ねこ殿、何をするつもりでござる?」
「んー、街道沿いにのみ索敵を伸ばせば脳への負担が減るだろうし、距離さえわかればあとはその周辺だけ索敵をかけてワープゲートで飛べるかなっと。世界を見渡す高座!」
やや南西へとアイヴィナーゼから延びる街道沿いに広域複合索敵魔法を走らせた。
街道に沿って大きな森を抜け、町と小さな村を5つ超えたところで脳が悲鳴を上げる。
「んぎっ……」
索敵魔法は今まで到達したことのない距離まで進んだが、それに比例して脳を締め付けるような痛みに襲われ片膝を着く。
頭に心臓があるのかと思えるほどの頭痛がズキンズキンと喚き散らし、鼻から垂れた液体を腕で拭うと赤いものが付着した。
肉体に驚異的な再生能力を与える勇者の遺物〈生命の雫〉が起動していることから、索敵魔法の負荷で確実にダメージを受けているのが分かる。
けど――
「これで、良いんだろ?」
俺は歯を食いしばるついでにニヤリと笑ってワープゲートを開いた。
鼻血のかっこ悪さを取り繕うための不敵な笑みを浮かべたつもりだが、はたからは鼻血垂らした変態の薄気味悪い変態の出来上がりでしかないなと自虐する。
だが笑ってもいられない。
むせ返るような熱気、様々なものが焼けて混ざった強烈な臭い、飛び交う怒号、家屋が燃え無数の死者が横たわる凄惨な光景が飛び込んできたからだ。
「レーヌ街が、俺の故郷が!?」
レージンが言葉遣いが乱れるほど取り乱しながらワープゲートに飛び込み、俺も後に続こうとしたが足がもつれて上手く立ち上がれない。
ダメージやべぇ、もしかして後遺症とか残らないよな?
視界が歪みそのまま倒れそうになるのを、フリッツと影剣さんが脇を掴んで支えてくれた。
「貴方という人は、まさか本当に出来てしまうとは」
「あとは拙者に任せるでござる」
2人が俺を椅子に座らせると、影剣さんがバラドリンドを出奔した聖騎士ガーランドと共にワープゲートのその先に足を踏み出し、無音で現れた忍び衆の男たちが2人の後を追う。
「兵を集めよバクストン! 我々も行くぞ!」
「はっ!」
マクシミリアンさんの指示にアイヴィナーゼの近衛騎士団長が念話を飛ばしながら作戦指令室を走り去る。
「……本当にやってくれるとは、なんでも言ってみるものだな」
「まったくですね」
一瞬静かになった室内で、グレアム陛下のつぶやきにフリッツが軽い口調で同意しやがった。
「言い出した本人が出来ると思ってなかったみたいに言わないでもらえる?」
「ははは、そこに気付かれるとはさすがはトシオ様ですね」
「さすがの使うところ違くない?」
フリッツのからかいに俺の代わりにルージュがツッコミを入れるも、聞こえなかったかのようにスルーを決め込みやがった。
お前絶対俺をおもちゃか何かだと勘違いしてるだろ?
思ってますとか言われたらむせび泣きたくなるたくなるので言葉を飲み込む。
それに影剣さんには任せろと言われたが、今は泣いてなんていられない。
緊急の案件がまだ1ヵ所残っているからだ。
「んじゃ、次はターミラル砦だな」
「ターミナルもやってくれるのか!?」
エルネストの驚きに頷く。
「当たり前だろ? バラドリンドの民間人よりも味方の方が優先順位は上なんだ、見捨てるくらいならたとえ民間人に被害が出るとしてもバラドリンドの大聖堂を爆撃する」
「助かる。この借りは必ず返す! ヴィクトル、至急援軍の編成しろ!」
「はっ!」
俺がウィッシュタニアの会議室に移動してから索敵魔法を走らせると、エルネストもウィッシュタニアの老いた英雄に指示を出した。
脳への負担を軽減するためにさっきよりもよりも細く、糸のように細く細く……。
伸ばした索敵魔法がウィッシュタニアの王城から超高速で北を目指す。
頭痛に耐えながらもやがて索敵魔法はターミラル砦に到達し、その伸ばした先を起点に索敵魔法を球状に展開して徐々に円を広げその周囲を明確にした。
索敵範囲の中では複数の人間が武器を手に激しい攻防が行われていた。
普通に戦闘中といった感じである。
さっきと比べて片頭痛程度で済んで本当に良かった。
「ゲートを開くぞ」
「待て。バレンティン、フェンレント、名誉挽回の機会だ。援軍を編成するまでの時間を稼げ」
「「御意!」」
「トシオ、頼む」
「はいよ」
ワープゲートを展開すると、バレンティンがウィッシュタニア王エルネストに一礼するなり戦地への門を潜った。
ゲートを潜る直前、バレンティンがこちらに一瞥をくれるもすぐに鋭い眼光を戦場に向ける。
ははは、今の俺なら簡単に殺せるとでも思ったら大間違いだぞクソつよおっさん。
少しビビってしまった悔しさを打ち消すように心の中で悪態をつく。
「ちょっ、あーしも行くし!」
「ルージュ!」
バレンティンたちの後を追うようにワープゲートへ飛び込もうとしたルージュを、俺は咄嗟に呼び止めてしまった。
だがどういう言い方をすれば良いか分からず、すぐに言葉が出てこない。
「……気を付けろよ、危なくなったらすぐに戻って来て良いから」
「わかってるし!」
当たり障りのない言葉をかけると、元気な笑みで走っていった。
「ルージュさん行かせても大丈夫でしょうか?」
トモノリくんがルージュが出て行ったワープゲートを心配そうに見つめてながら問いかけてくる。
「んー、まぁあの3人が裏切ったら今度こそ殺してやれば良いかな」
「え、心配してたんじゃなかったんですか!?」
「フェンレントってやつの実力は知らないけどあの2人、ルージュとバレンティンに裏切られたら正直洒落にならないからすんごく心配。もし3人が裏切ったらバラドリンドの人たちまで気にかけられなくなる」
「そっちの心配なんですか!?」
「え、他になにがあるの?」
なぜか驚くトモノリくん。
おかしなことを言う子である。
ただルージュを呼び止めた際、「裏切るなよ」なんてやる気を出した相手のモチベーションを下げるようなことを言う訳にもいかず、かといってどう注意すれば良いかもわからなかったため、雑な言葉で見送ることしかできなかったのが心残りだ。
裏切らなきゃいいけど、ルージュには前にクギを刺しておいたしまぁ大丈夫か。
「是が非でもバラドリンド人を守りたいという訳ではなかったのですね」
フリッツが俺の認識を確認するかのように聞いてきた。
「そりゃぁね。俺にだって守れるものの限界があるし、もちろん守りたいものの優劣だってちゃんとあるし。 あの2人に裏切られたらなり振り構ってられなくなるから、行動方針的な意味では逆に裏切ってくれた方が楽なんだけどね。罪悪感でその後の人生潰れなきゃいいけど」
「まるで他人事のようないいかたですね」
「人生潰れるのは未来の俺の話だからな」
「コウカイサキニタタズというやつですか」
「急に日本語で言われると違和感すごいな……」
学校で教えてるのかってくらい元の世界の文化や言葉が知れ渡ってるのホント草。
俺の頭痛が収まりはじめた頃、不穏な念話が通信兵にもたらされた。
先んじて傍受した俺は報告よりも前に眉間にしわが寄る。
「緊急! 更にアイヴィナーゼの北方、タキオン領セシトレーン砦内にて敵兵出現!」
「同じくウィッシュタニア南東、パーファシー領ゼフェリアに敵兵!」
「ウィッシュタニア、マーク領エヴァスレインにて街の外門が崩壊! 敵兵多数!」
国の外側と襲撃中の周辺の街、先ほどグレアム陛下たちがしていた襲撃予想ポイントの両方が当たっていたいたことになる。
「6ヵ所同時侵攻とはやってくれるではないか」
「ですが、これは兵がばらけ過ぎではありませんか?」
怒りを押し殺したグレアム陛下に、セドリック大臣が違和感を指摘する。
「予め兵を1ヵ所にまとめ、ワープゲートでその都度適量を送り込んでくるのでしょう」
「我らの国全てを戦場の盤面に見立てているのか」
クロードが状況を分析し、エルネストが苦虫をかみつぶした顔になる。
逼迫する状況に、余裕なんて最初から無かったのではと自分の見通しの甘さを痛感させられた。
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