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入学編
第2話「入寮」
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4月1日 入寮日
入学式が5分で終わり、残された日程は入寮だけとなった。豊開学園の寮は学年別、更にそれぞれ男女別、特別隔離寮と分類される。特別隔離寮など、それこそ怪物どもが行く所だろうから、まあ、俺は1年男子寮に配属された。寮はそれなりに新しくて、風呂や便所も綺麗に維持・管理されており、快適そうだった。
ロビーで鍵を受け取ると、俺は急いで部屋に向かった。今日一日の出来事で疲れており、一刻も早く寝て休みたかった。
221、俺の部屋番号だ。なんて事ない、普通の部屋のようだ。ドアを開錠して入ると、スーツ姿の黒人が3人ほど所狭しと立っていた。意味が分からなかった。ドアを開けた俺に視線が集まり、部屋は一瞬静寂に包まれた。
鍵の番号を見て、部屋を間違えていない事を確認した上で、部屋の奥を見た。すると見覚えのある金髪の少年の後ろ姿が見えた。八森ルイだ。ヘリで登校してきた、財団の御曹司である。よりにもよってなんでこんな奴とルームメイトになってしまったのだろう。だが、豊開に来るからには、ある程度の事は覚悟していたし、他の、学校を破壊するような奴らと一緒じゃなかった事が寧ろラッキーなんだと思った。
この意味の分からない状況のままだとらちが開かないので、俺は意を決して話しかけた。
「俺、山本 亮って言うんだ。君もこの部屋なんだね。」
ルイは振り向いて応えた。
「ああ、宜しく。俺、八森ルイ。八森財団の御曹司さ。」
何故こいつはやたらと御曹司をアピールしてくるのだろうか。まあいい。
「この屈強なお兄さん達はルイ君の知り合いかな?」
「ああ、こいつら?SPだよ。気にしなくていいよ。」
いや、こんな狭い2人部屋にコイツらがいたら暑苦しすぎて気にせざるを得ないわ。
「そ、そうか。すごいねえルイ君は。」
「まあ、御曹司だからね。」
御曹司だからってSP付きは中々いねえだろ。てかどんだけ御曹司強調するんだよ。
「お兄さん達いて凄い安心するんだけどさ、すこ~し狭い気もするんだよね。」
俺がこう言った途端、ルイは黙って椅子から立ち上がった。机の上にはノートパソコンがあり、株価の推移だろうか、グラフがたくさん映っていた。ルイは俺の前に立ち、顔を近づけた。以外と身長が低く、あまり威圧感は感じ無かったものの、彼は真剣な面持ちで囁いた。
「一般peopleの君には分からないだろう。僕のレベルになると常に命を狙われる可能性があるんだよ。僕だってこんな窮屈な部屋には住みたくないさ。でも学校の決まりは守らなきゃだからね。この状況で、君は命よりも一時の快適さを選ぶというのかい?」
コイツめんどくせえ。ただただ、そう思った。俺が何も言い返せずにいるとルイは続けた。
「もし君が嫌なら出ていけばいいさ。でも、そこに待ち受けるのは…『死』だよ。」
「わ、分かったよ、そんなに怒らないでよ…」
こうして俺とルイ、3人のSPとの寮生活が始まった。因みに3人の黒人SPの名前は、ジョンソン、ボブ、フランクリンらしい。ただ、全員同じ服で同じ体格、ましてやサングラスをしており表情が読めず、何一つ特徴が無いため、見分ける事が非常に困難であった。
部屋には2段ベットがあり、下側には既にルイの荷物が置いてあったので、俺は上の方に登って仮眠をとることにした。そこでふと疑問に思ってルイに聞いた。
「ルイ、この人達はどこで寝るの?」
「さあ?寝ないんじゃないかな。24時間体制で警戒するからね。」
交代で寝るのだろう。もうどうでも良くなり、俺は目を閉じた。だが、どうも寝付けない。屈強なSP達に常に監視されているこの静かな状況は、不気味なものだ。俺は一応警戒対象なのだろうか。ストレスしか感じ無かったが、なんとか眠りにつく事ができた。
ようやく寝れたと思ったら、いきなり黒人に叩き起こされた。
「ボブ、もう起きてるから叩くのやめてくれ。」
俺が叫ぶとルイがこう言った。
「フランクリンだよそいつ。」
「どっちでもいいから止めてくれっ。言葉通じないのかよ!」
するとSPは叩くのをやめてこう言った。
「俺ジョンソンだわアホ。」
やかましい。
ところで、起こしたのは何事かとルイに聞くと、一緒に夕飯を食べに行こう、という訳らしい。案外可愛い所もあるものだと思った。
一階に降りると食堂があった。もう8時近くだったので、人は少なかった。食堂のおばちゃんに各々注文を済ませて、出来上がった夕飯を受け取った。俺はざるそば、ルイはチーズフォンデュ(学生寮の食堂にあるのかよ)、SP3人は全員カレーライスを頂いた。
俺を叩いた憎きジョンソンは福神漬けが嫌いらしく、隣のボブもしくはフランクリンの皿に移していた。
そうこうしていると、少し離れた席から、1人の男が近づいてきた。
「やあ。君が八森ルイ君だね?それと君は…」
「山ジョ本ンソ亮ンでですす」
野郎が被せてきやがった。そいつは不敵な笑みを浮かべていた。俺は大きく咳払いし、もう一度名前を男に教えた。
男は頷き、話し始めた。
「おいどんはイッペイ。侍の生き残りさ。」
こいつもなかなか正気じゃない。でも、慣れてきたせいか、今の俺ならこうした度が過ぎた多様性を受け入れられる気がした。
イッペイは確かにいかにも侍という格好をしていた。髭はボーボーで、髪もボサボサ。帯刀もしている。新入生の内、武装していた者共は入学式後に一応武器を回収されたはずだが、この男は切り抜けたらしい。物理的に。
そう、斬って抜けてきたのだ。
しっかり犯罪じゃねえか。
因みに俺とルイ、イッペイは同じ1年2組であり、イッペイの部屋は俺達の隣の220であると分かった。これから3年間よろしく、と一通り挨拶を終えると、その夜は、イッペイとSPも交えて6人で深夜まで食堂でトランプをやった。
入学式が5分で終わり、残された日程は入寮だけとなった。豊開学園の寮は学年別、更にそれぞれ男女別、特別隔離寮と分類される。特別隔離寮など、それこそ怪物どもが行く所だろうから、まあ、俺は1年男子寮に配属された。寮はそれなりに新しくて、風呂や便所も綺麗に維持・管理されており、快適そうだった。
ロビーで鍵を受け取ると、俺は急いで部屋に向かった。今日一日の出来事で疲れており、一刻も早く寝て休みたかった。
221、俺の部屋番号だ。なんて事ない、普通の部屋のようだ。ドアを開錠して入ると、スーツ姿の黒人が3人ほど所狭しと立っていた。意味が分からなかった。ドアを開けた俺に視線が集まり、部屋は一瞬静寂に包まれた。
鍵の番号を見て、部屋を間違えていない事を確認した上で、部屋の奥を見た。すると見覚えのある金髪の少年の後ろ姿が見えた。八森ルイだ。ヘリで登校してきた、財団の御曹司である。よりにもよってなんでこんな奴とルームメイトになってしまったのだろう。だが、豊開に来るからには、ある程度の事は覚悟していたし、他の、学校を破壊するような奴らと一緒じゃなかった事が寧ろラッキーなんだと思った。
この意味の分からない状況のままだとらちが開かないので、俺は意を決して話しかけた。
「俺、山本 亮って言うんだ。君もこの部屋なんだね。」
ルイは振り向いて応えた。
「ああ、宜しく。俺、八森ルイ。八森財団の御曹司さ。」
何故こいつはやたらと御曹司をアピールしてくるのだろうか。まあいい。
「この屈強なお兄さん達はルイ君の知り合いかな?」
「ああ、こいつら?SPだよ。気にしなくていいよ。」
いや、こんな狭い2人部屋にコイツらがいたら暑苦しすぎて気にせざるを得ないわ。
「そ、そうか。すごいねえルイ君は。」
「まあ、御曹司だからね。」
御曹司だからってSP付きは中々いねえだろ。てかどんだけ御曹司強調するんだよ。
「お兄さん達いて凄い安心するんだけどさ、すこ~し狭い気もするんだよね。」
俺がこう言った途端、ルイは黙って椅子から立ち上がった。机の上にはノートパソコンがあり、株価の推移だろうか、グラフがたくさん映っていた。ルイは俺の前に立ち、顔を近づけた。以外と身長が低く、あまり威圧感は感じ無かったものの、彼は真剣な面持ちで囁いた。
「一般peopleの君には分からないだろう。僕のレベルになると常に命を狙われる可能性があるんだよ。僕だってこんな窮屈な部屋には住みたくないさ。でも学校の決まりは守らなきゃだからね。この状況で、君は命よりも一時の快適さを選ぶというのかい?」
コイツめんどくせえ。ただただ、そう思った。俺が何も言い返せずにいるとルイは続けた。
「もし君が嫌なら出ていけばいいさ。でも、そこに待ち受けるのは…『死』だよ。」
「わ、分かったよ、そんなに怒らないでよ…」
こうして俺とルイ、3人のSPとの寮生活が始まった。因みに3人の黒人SPの名前は、ジョンソン、ボブ、フランクリンらしい。ただ、全員同じ服で同じ体格、ましてやサングラスをしており表情が読めず、何一つ特徴が無いため、見分ける事が非常に困難であった。
部屋には2段ベットがあり、下側には既にルイの荷物が置いてあったので、俺は上の方に登って仮眠をとることにした。そこでふと疑問に思ってルイに聞いた。
「ルイ、この人達はどこで寝るの?」
「さあ?寝ないんじゃないかな。24時間体制で警戒するからね。」
交代で寝るのだろう。もうどうでも良くなり、俺は目を閉じた。だが、どうも寝付けない。屈強なSP達に常に監視されているこの静かな状況は、不気味なものだ。俺は一応警戒対象なのだろうか。ストレスしか感じ無かったが、なんとか眠りにつく事ができた。
ようやく寝れたと思ったら、いきなり黒人に叩き起こされた。
「ボブ、もう起きてるから叩くのやめてくれ。」
俺が叫ぶとルイがこう言った。
「フランクリンだよそいつ。」
「どっちでもいいから止めてくれっ。言葉通じないのかよ!」
するとSPは叩くのをやめてこう言った。
「俺ジョンソンだわアホ。」
やかましい。
ところで、起こしたのは何事かとルイに聞くと、一緒に夕飯を食べに行こう、という訳らしい。案外可愛い所もあるものだと思った。
一階に降りると食堂があった。もう8時近くだったので、人は少なかった。食堂のおばちゃんに各々注文を済ませて、出来上がった夕飯を受け取った。俺はざるそば、ルイはチーズフォンデュ(学生寮の食堂にあるのかよ)、SP3人は全員カレーライスを頂いた。
俺を叩いた憎きジョンソンは福神漬けが嫌いらしく、隣のボブもしくはフランクリンの皿に移していた。
そうこうしていると、少し離れた席から、1人の男が近づいてきた。
「やあ。君が八森ルイ君だね?それと君は…」
「山ジョ本ンソ亮ンでですす」
野郎が被せてきやがった。そいつは不敵な笑みを浮かべていた。俺は大きく咳払いし、もう一度名前を男に教えた。
男は頷き、話し始めた。
「おいどんはイッペイ。侍の生き残りさ。」
こいつもなかなか正気じゃない。でも、慣れてきたせいか、今の俺ならこうした度が過ぎた多様性を受け入れられる気がした。
イッペイは確かにいかにも侍という格好をしていた。髭はボーボーで、髪もボサボサ。帯刀もしている。新入生の内、武装していた者共は入学式後に一応武器を回収されたはずだが、この男は切り抜けたらしい。物理的に。
そう、斬って抜けてきたのだ。
しっかり犯罪じゃねえか。
因みに俺とルイ、イッペイは同じ1年2組であり、イッペイの部屋は俺達の隣の220であると分かった。これから3年間よろしく、と一通り挨拶を終えると、その夜は、イッペイとSPも交えて6人で深夜まで食堂でトランプをやった。
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