78 / 88
サルドエッジ伯爵からのお手紙
しおりを挟む
[オーディン]への訪問から三日が過ぎた頃、ある手紙が私の元に届いた。
封蝋はサルドエッジ伯爵家のもの。
息子の報復……なわけないわよね?
どういったご用件かしら?
私はペーパーナイフで封筒を切り、中身を取り出した。
ライラック殿。
本来ならば直接お会いして言わねばならんことだが、貴殿はそれを望まないだろう。
なので手紙で伝えさせてもらう。
本当にありがとう。
何の仕事をしても腑抜けだった息子が、ついにやる気を見せていると聞いた。
これはオーディンの護衛として紛れ込ませている部下からの言葉だが、女性へ優しく接することを心掛け、仕事仲間には今までの無礼を謝ったという。
それもこれもライラック殿に叱られてからだ。
しっかりと教育してきたつもりだったが、あんな風に育ってしまった息子でも親としては可愛いものだ。
そんな息子が真っ当に生きようと立ち直ってくれたことには感謝しかない。
今度また、オーディンに向かうことがあれば会ってやってほしい。
貴殿を尊敬するようになったらしいのでな。
難しい立場であることは知っているが、私は貴殿という存在は必要不可欠だと思っている。
居心地の悪い社交界ではあると思うが、今度パーティーに出席した際には改めてお礼をさせてほしい。
ライラック殿、万感の感謝を込めて。
ありがとう。
シュナイゼル・サルドエッジ
「本当に生真面目な方ね。こんなに丁寧な手紙をいただくほどのことをしたわけじゃないのに」
私はその大げさな礼状に少々困ってしまった。
でも、人から認めて褒めてもらうということは嬉しいものね。
レミゼラルムーン家の立場上、社交界ではあまり良い目で見られていない。
なので、こうして理解者が増えてくれると心から嬉しいく思える。
それに……
「結構渋めでいい男性なのよね……」
別におじさん趣味というわけではないけど、落ち着きがあり包容力のある方なのよ。
そう考えてみれば、殿下やサクリッド様、シェルドも少し子どものように思えてしまう。
でも彼らが歳を取ると、素晴らしい男性になることは間違いないでしょうね。
選べるような立場ではないと思うのだけど……贅沢な悩みだわ。
まあそれは一旦置いといて、伯爵にお返事を書くことにしましょう。
そして書いた後には、オーディンへ行ってみようかしら。
そうして職務を済ませた後、午後七時。
私とハオルはオーディンの店舗前へとやってきた。
「またこの店ですか……」
「シュナイゼル伯爵から息子を見てやってくれというお手紙頂いたんだから仕方ないでしょう?」
「そんなこと言って、お酒が飲みたいだけじゃ……?」
「ハオルも好きでしょう?」
「別に好きじゃありませんよ。姉様が飲むから付き合っているだけです」
私はハオルの態度にカチンと来た。
「じゃあ飲まなくていいわよ」
「ああ、姉様!好きです!ボクも一緒に飲ませてください!」
「そう?そこまで言うならいいけど?」
せっかく高いお酒を飲むなら楽しんで飲んでもらいたいものだわ。
「さて、お店に入るとしましょうか」
「はい」
ハオルがお店の扉を開く。
あれからたったの三日。
それでも息子は変わったという。
男子三日会わざれば刮目して見よという言葉があるけれど、どう変わったのかしらね。
見させてもらいましょうか。
夜の闇に室内の照明がこぼれ、私たちを照らしていった。
封蝋はサルドエッジ伯爵家のもの。
息子の報復……なわけないわよね?
どういったご用件かしら?
私はペーパーナイフで封筒を切り、中身を取り出した。
ライラック殿。
本来ならば直接お会いして言わねばならんことだが、貴殿はそれを望まないだろう。
なので手紙で伝えさせてもらう。
本当にありがとう。
何の仕事をしても腑抜けだった息子が、ついにやる気を見せていると聞いた。
これはオーディンの護衛として紛れ込ませている部下からの言葉だが、女性へ優しく接することを心掛け、仕事仲間には今までの無礼を謝ったという。
それもこれもライラック殿に叱られてからだ。
しっかりと教育してきたつもりだったが、あんな風に育ってしまった息子でも親としては可愛いものだ。
そんな息子が真っ当に生きようと立ち直ってくれたことには感謝しかない。
今度また、オーディンに向かうことがあれば会ってやってほしい。
貴殿を尊敬するようになったらしいのでな。
難しい立場であることは知っているが、私は貴殿という存在は必要不可欠だと思っている。
居心地の悪い社交界ではあると思うが、今度パーティーに出席した際には改めてお礼をさせてほしい。
ライラック殿、万感の感謝を込めて。
ありがとう。
シュナイゼル・サルドエッジ
「本当に生真面目な方ね。こんなに丁寧な手紙をいただくほどのことをしたわけじゃないのに」
私はその大げさな礼状に少々困ってしまった。
でも、人から認めて褒めてもらうということは嬉しいものね。
レミゼラルムーン家の立場上、社交界ではあまり良い目で見られていない。
なので、こうして理解者が増えてくれると心から嬉しいく思える。
それに……
「結構渋めでいい男性なのよね……」
別におじさん趣味というわけではないけど、落ち着きがあり包容力のある方なのよ。
そう考えてみれば、殿下やサクリッド様、シェルドも少し子どものように思えてしまう。
でも彼らが歳を取ると、素晴らしい男性になることは間違いないでしょうね。
選べるような立場ではないと思うのだけど……贅沢な悩みだわ。
まあそれは一旦置いといて、伯爵にお返事を書くことにしましょう。
そして書いた後には、オーディンへ行ってみようかしら。
そうして職務を済ませた後、午後七時。
私とハオルはオーディンの店舗前へとやってきた。
「またこの店ですか……」
「シュナイゼル伯爵から息子を見てやってくれというお手紙頂いたんだから仕方ないでしょう?」
「そんなこと言って、お酒が飲みたいだけじゃ……?」
「ハオルも好きでしょう?」
「別に好きじゃありませんよ。姉様が飲むから付き合っているだけです」
私はハオルの態度にカチンと来た。
「じゃあ飲まなくていいわよ」
「ああ、姉様!好きです!ボクも一緒に飲ませてください!」
「そう?そこまで言うならいいけど?」
せっかく高いお酒を飲むなら楽しんで飲んでもらいたいものだわ。
「さて、お店に入るとしましょうか」
「はい」
ハオルがお店の扉を開く。
あれからたったの三日。
それでも息子は変わったという。
男子三日会わざれば刮目して見よという言葉があるけれど、どう変わったのかしらね。
見させてもらいましょうか。
夜の闇に室内の照明がこぼれ、私たちを照らしていった。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる