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変わり始めた風
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「セイクリッドよ」
「なんでしょうか?父上?」
「そろそろ婚約をしてもらわんと、適齢期にあるご令嬢に申し訳がたたん。お前が決めかねているせいでご令嬢たちも決められんのだ。もしかしたら自分が王子の配偶者になれるかもと思ってな」
王の執務室に呼ばれたセイクリッドはため息をついた。
予想通りの小言だ。
だが、自分のせいで迷惑をかけていることも重々承知をしている。
だが、自分は心に決めた人がいる。
その人の答えを聞かなくては、他の女性に浮気をすることなどできない。
「もう少しお待ちいただけませんか?」
「そう言ってずいぶんとなる。こちらも重臣たちにせっつかれて困っておるのだ」
王も頭を抱えて、ため息をついた。
そろそろ答えを先延ばしにするのも限界のようだ。
そう思ったセイクリッドは考える。
ライラックに今すぐに返事を求めることは可能だろうか?
彼女を焦らせたくないことはわかっているが、このままでは他の女性と婚約させられそうだ。
「最近レミゼラルムーン家、というよりもライラ自身の評判が良くてな?誘拐事件の解決、歌姫の暗殺の阻止、サルドエッジ伯爵家の子息の再教育といったことでずいぶんと風向きが変わっておるのだ。この流れならばライラをお前の婚約者として紹介することは可能かもしれん」
「本当ですか!?」
父の意外な言葉にセイクリッドは驚きを隠せないでいた。
「ああ、レミゼラルムーン家の令嬢という存在ではなく、ライラ自身が国民の誰もが知る人物となり、名声は大きく広まった。おかげでもはや忌み嫌われる夜の令嬢ではない。まあ、貴族の間では一悶着あるやも知れんがあとはお前とライラの気持ち次第だ」
「私の気持ちは決まっております!」
幼い頃よりずっと彼女だけを見てきた。
無理だとも思っていた想いが叶う寸前にまで来ている。
ならば……
「ならば答えを聞いてこい。今度はもう待たんぞ」
じっと見つめてくる父の顔には、微笑みが浮かんでいた。
「はい!」
今回は絶対に答えをもらう。
これが最後の恋願いであることを、自分でもわかっているからだ。
ドクンドクンと心臓の鼓動が高鳴る。
全てはここからだ……
「それで?ライラにはいつ会いに行くのだ?」
「そうですね。この高鳴る鼓動が収まる頃に」
「そうかそうか。その鼓動はどれくらいで収まりそうだ?」
「ははは、そんなにはかかりますまい」
「では明日か?」
「いやいやご冗談を。十年あまりの気持ちを落ち着かせるにはそれなりには必要です」
「ふむ。では明後日か?」
「いえ、一年は必要かと思います」
セイクリッドは自信満々にそう言い放った。
「このたわけが!猶予は一週間!それ以上は待たんぞ!」
「そんなご無体な!」
「これでも多めに見積もってやったのだ!わかったらさっさと出ていけ!」
「わかりましたぁぁぁ!」
ビュンビュンと万年筆や辞書や本が飛んでくることに恐怖を抱いたセイクリッドは、そそくさと執務室から出ていった。
「ふぅ……」
……もはや先延ばしはできないな。
そう思ったセイクリッドは決意をする。
私の隣にライラックが立ってくれることを願い、彼は絨毯の上を歩き始めた。
その表情には一点の迷いもなかっ……
「ああ!一週間じゃ落ち着かせられないって!それに断られたらどうしよう!?うぅ!胸が!胸が苦しい!」
迷いだらけのセイクリッドであった。
「なんでしょうか?父上?」
「そろそろ婚約をしてもらわんと、適齢期にあるご令嬢に申し訳がたたん。お前が決めかねているせいでご令嬢たちも決められんのだ。もしかしたら自分が王子の配偶者になれるかもと思ってな」
王の執務室に呼ばれたセイクリッドはため息をついた。
予想通りの小言だ。
だが、自分のせいで迷惑をかけていることも重々承知をしている。
だが、自分は心に決めた人がいる。
その人の答えを聞かなくては、他の女性に浮気をすることなどできない。
「もう少しお待ちいただけませんか?」
「そう言ってずいぶんとなる。こちらも重臣たちにせっつかれて困っておるのだ」
王も頭を抱えて、ため息をついた。
そろそろ答えを先延ばしにするのも限界のようだ。
そう思ったセイクリッドは考える。
ライラックに今すぐに返事を求めることは可能だろうか?
彼女を焦らせたくないことはわかっているが、このままでは他の女性と婚約させられそうだ。
「最近レミゼラルムーン家、というよりもライラ自身の評判が良くてな?誘拐事件の解決、歌姫の暗殺の阻止、サルドエッジ伯爵家の子息の再教育といったことでずいぶんと風向きが変わっておるのだ。この流れならばライラをお前の婚約者として紹介することは可能かもしれん」
「本当ですか!?」
父の意外な言葉にセイクリッドは驚きを隠せないでいた。
「ああ、レミゼラルムーン家の令嬢という存在ではなく、ライラ自身が国民の誰もが知る人物となり、名声は大きく広まった。おかげでもはや忌み嫌われる夜の令嬢ではない。まあ、貴族の間では一悶着あるやも知れんがあとはお前とライラの気持ち次第だ」
「私の気持ちは決まっております!」
幼い頃よりずっと彼女だけを見てきた。
無理だとも思っていた想いが叶う寸前にまで来ている。
ならば……
「ならば答えを聞いてこい。今度はもう待たんぞ」
じっと見つめてくる父の顔には、微笑みが浮かんでいた。
「はい!」
今回は絶対に答えをもらう。
これが最後の恋願いであることを、自分でもわかっているからだ。
ドクンドクンと心臓の鼓動が高鳴る。
全てはここからだ……
「それで?ライラにはいつ会いに行くのだ?」
「そうですね。この高鳴る鼓動が収まる頃に」
「そうかそうか。その鼓動はどれくらいで収まりそうだ?」
「ははは、そんなにはかかりますまい」
「では明日か?」
「いやいやご冗談を。十年あまりの気持ちを落ち着かせるにはそれなりには必要です」
「ふむ。では明後日か?」
「いえ、一年は必要かと思います」
セイクリッドは自信満々にそう言い放った。
「このたわけが!猶予は一週間!それ以上は待たんぞ!」
「そんなご無体な!」
「これでも多めに見積もってやったのだ!わかったらさっさと出ていけ!」
「わかりましたぁぁぁ!」
ビュンビュンと万年筆や辞書や本が飛んでくることに恐怖を抱いたセイクリッドは、そそくさと執務室から出ていった。
「ふぅ……」
……もはや先延ばしはできないな。
そう思ったセイクリッドは決意をする。
私の隣にライラックが立ってくれることを願い、彼は絨毯の上を歩き始めた。
その表情には一点の迷いもなかっ……
「ああ!一週間じゃ落ち着かせられないって!それに断られたらどうしよう!?うぅ!胸が!胸が苦しい!」
迷いだらけのセイクリッドであった。
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