忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています

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黒薔薇に迂闊に触るは誰かしら?

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「お嬢様!起きてください!」

寝室の扉の外からの大きな声で私は起こされた。

うぅん……いったいなによ……?

壁にかけてある時計が指し示す時間は六時を過ぎたところ。
もちろん夕方ではなく、朝。
ふかふかのベッドに入ってから三時間ほどしか経っていない。
私は白のパジャマのまま、扉を開けた。

「どうしたのゼオン……?」

「孤児院に賊が入り……子どもたち数人が拐われたと報告が入りました!」

「……なんですって?」

私の眠気は即座に吹き飛んでいった。
そうして私はあらゆる準備を済ませると、執務室で報告を聞くことにする。
ただ着替える手間も惜しいのでパジャマのままだけど。

「院長先生が朝の点呼をしていたとき、一部屋の子どもたち五人がいないということに気づき、部屋へ様子を見に行ったところ、そこはもぬけの殻だったようです。そして窓ガラスが外側から割られていたという状況を見て、拐われてしまったと思い、慌てて使いを出されたとのことです」

私とハオルがゼオンからの報告を聞き、互いに神妙な面持ちとなる。

「拐われた子たちは誰なの?」

「サリーナ様の息子リアット君。それにアルト君にカミーシャさんとレイト君とミミさんです」

誰もが良く見知った子たちだ。
特にリアット君とは仲良くしていた。

「……それで?容疑者は?」

「それが目撃情報もなく、まったく判明しておらずでして……ですが想像するに……」

ゼオンは確信めいた瞳で私を見てくる。
そして私も頷いた。

「異国連合の仕業ね」

「姉様、やはりギゼルという輩でしょうか?」

「あら。サクリッド様を疑わないの?」

「失礼ながらボクにだって多少は人を見る目はありますよ」

「そうね。ごめんなさい」

「いいえ。ですがどうしますか?このままでは腐った貴族たちに売られてしまう可能性が高いと思いますが?」

「ハオル……?女にとって許し難いことって何か分かる?」

「ね、姉様……?」

私の問いにハオルとゼオンの表情が怯えたように見える。

「それはね?子どもを奪われることよ。孤児院の子たちは私にとって子どものような存在。ゼオン、すぐに諜報員をかき集めなさい?そして子どもたちの居場所をすぐに突き止めるの。できるでしょう?」

「か、必ずや!」

「姉様、ボクたちはどうしましょう?」

「決まっているでしょう?異国連合の本部に行ってサクリッド様に尋ねるの。あなたの塵に等しい弟はどこにいますかってね?うふふ……」

「……姉様、冷静にことを進めないと……」

「あら?私は凍りつくほどに冷静よ?」

「……かしこまりました。すぐに準備しましょう」

「戦闘になる可能性があるわ。ハオルもそのつもりで」

「承知しました」

「それじゃ、一旦解散。急ぎなさい」

「「はっ!!」」

ハオルとゼオンが執務室を出ていった後、アイリスが入れ替わるように入ってきた。

「お嬢様、お着替えなされるのですよね?」

彼女もいつもの天真爛漫とした様子はなく、悲しげにしている。

「ええ、戦闘用のドレスを」

「かしこまりました」

私はアイリスを後ろに、自室にあるドレスルームへと向かった。
そこには黒一色でありながらもきらびやかなドレスたちが並ぶ中、その一番奥に扉がある。
私がその扉を開けると、室内には一着のドレスがあった。
黒鋼製であるそのドレスは胸元に黒薔薇の彫刻があり、魔導銃の弾を弾き、剣での斬撃をも防いでくれる。
それなのに軽く、美しい。
私にとって一番のお気に入りのドレスである。

ガチャ、ガチャ……

アイリスが胸当てや手甲などを丁寧にはめてくれていく。
そしてしっかりと上半身と下半身を固めた後に、黒革のスカートを巻く。

「お似合いですよ。お嬢様」

「ありがとう、アイリス」

「お気をつけて……」

髪を後ろで結んでくれた彼女の言葉を聞いた後、自然と身体に熱が帯びてきた。
自分では氷のように冷静だと思っていたけど、私は今燃えているみたい。

「行ってくるわ。奪われた大事なものを取り返すために」

こうして私は、執務室へと戻る。
今にも飛び出してしまいそうに逸る気持ちを抑えながら。
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