忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています

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侵入開始

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───旧異国連合、一階ロビー────

「サクリッド様、ギゼルがいるとしたらどこかしら?」

「おそらく本部長室であった三階の一番奥の部屋だと思われます」

「わかりました。ハオルは子どもたちを見つけたらすぐに馬車で帰りなさい」

「姉様を置いて行けと言うのですか?」


「それが最善だとわかっているでしょう?もし外れだった場合は、ここで落ち合いましょうね?」

「……かしこまりました」

ハオルが渋々と頷いたと同時に、

「侵入者だ!やってしまえ!」

よろよろの白シャツにシワだらけの黒ズボン。
サクリッド様の部下と同じ制服だというのに、品の欠片もない輩が数人こちらに向かってくる。

「行きなさいハオル!巻き込まれて知らないわよ!」

「ええいもお!行くよサクリッド殿!」

「ああ!地下室はこっちだ!」

ハオルとサクリッド様は私の背後を走り抜けていき、横道に入っていった。
もはや彼らの背中は見えない。

「てめぇはライラック・レミゼラルムーン!いったい何しに来やがった!?」

虎の亜人が私に向かって言い放つ。

「奪われたものを取り返しに来ただけよ」

「ちっ!ガキどものことか!どうやってここだと調べやがった!?」

「あら、ここで当たりのようね」

「まさか、当てずっぽうで来たのか!?」

「推理と言いなさい。それでギゼルはどこにいるのかしら?」

「誰が教えるか!このアマを捕らえて地下室に向かったヤツらを追うぞ!」

「居場所を言わないのであれば、あなたたちに用はないわ。すぐに眠らせてあげる」

先頭の虎男が私に向かってナイフを投げてきた。
そんなものが私の黒鉄のドレスを貫けるはずがない。
私は手甲で飛んできたナイフを打ち払う。

キィン!

鉄と鉄のぶつかる甲高い音が一帯に響く。

「撃て!」

続いては魔導銃の狙撃。
三人が銃を構えて私に狙いをつけている。

カチッ。

引鉄が引かれた音が聞こえた。
その瞬間、激しい稲妻が私に迫ってくる。
カートリッジは電撃か。
まあ室内では火は使えないし、当然ね。
それにしても違法品が堂々と使われていることに、セキュリティの甘さを思い知らされてしまう。
網の隙間を良く掻い潜れるものね。

「どれだけ重装備の鎧でも電撃は防げまい!」

勝ち誇ったような虎男の声。
だけど勝負がつくまでは油断大敵よ。
残念だけどこの鎧、耐魔仕様なのよね。

私は襲いかかってくる三条の電撃を片手で受け止めると、電撃は魔力の残滓となって消えていく。

「なっ!?」

「さあどうするの?ギゼルの居場所を教えるなら、この場は見逃してあげてもいいけど?」

「ふざけるな!この化け物が!」

「レディにそのような言葉を放つ輩に、かける情はないわね」

リーダーらしき虎男は両手にナイフを持って襲いかかってくるけど、私は渾身の右ストレートを放った。

「ガフッ……」

その手甲で覆われた拳は彼の顔面を捉え、ガックリと崩れ落ちるように倒れ込んだ。

「さあ、次はどなたかしら?」

「お前が行けよ!」

「何言ってんだ!お前こそ行けよ!」

統率者を失った彼らはもはや右往左往することしかできないでいる。

「こういう時に上に立つ人間の姿が見えてくるわね……」

誰もが積極的に動いて主を守ろうとしない。
人望の無さが浮き出ていてよ。

「そんな主を選んだ自分自身を悔いなさい」

「うぎゃっ!」

「はがっ!」

「ふげぇ!」

私は及び腰になっている有象無象の顔、腹、腰に拳や蹴りを叩き込んでいく。

「うふふ……汚い苦鳴だこと」

「お、おい俺!ギゼル様に伝えてくるから!」

「お、俺も!」

後続の輩が続々と逃げていく。
ギゼルがここにいることが確定したわね。
ならば、サクリッド様の言う通り、最上階の一番奥にいるのでしょう。

「ギゼル、震えて待っていなさい」

私は今だに放たれる魔導銃の雷撃を打ち払いながら、道を歩いていった。







───旧異国連合本部三階、本部長室────

ドンドン!

「ギゼル様!起きてください!」

「……ちっ。やかましいな」

半裸でベッドで眠っていたギゼルは舌打ちをして、扉の方へと向かった。

ガチャ!

「なんだ!やかましいぞ!」

苛立たしい気持ちを抑えきれずに開けた扉の先には、ハァハァと息が切れている複数人の部下がいた。

「て、敵襲です!」

「なんだと!サクリッドのヤツらか!?数は!?」

「ひ、一人です!」

「はぁ?一人ぐらいさっさと片付けろ!」

「それが化け物みたいに強いヤツでして……」

「いったい誰だっつぅんだよ!?」

「ライラック……!ライラック・レミゼラルムーンです!」

「はぁ?なんでライラックが動いた……ってまさかガキどもを拐ったときに証拠を残しやがったのか!?バカ野郎どもめ!」

「ど、どうしましょう!?」

「ビビってないで数で押すんだよ!銃に剣!武器は好きなだけ使え!」

「わ、わかりました!」

そうしてバタバタと出ていく部下にギゼルは、

「まったく使えねぇ野郎ばかりだ!」

まあ、いくらなんでもここまでは来れねぇだろう。
百人はいるからな。

「……一応準備だけはしておくか」

ギゼルはそう呟きながら、執務机の引き出しから魔導銃を取り出した。

カチャカチャ……ガチャリ……

「へへっ……来るなら来いってな……」

ベッドの上に座り、魔導銃を構えたギゼルは照準を扉にへと合わせたのだった。



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