忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています

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リハーサルを観させてもらうわ

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リハーサルの初日。
午前中の時間に私とローリィを乗せた馬車が、ナディアスの街を走っている。

「ライラック様、眠そうですね」

「……そうね。少し早起きだったから」

いつもよりもずいぶんと早くに起きることになったので、私は寝不足気味。
太陽の光を浴びるのも久しぶりな気がする。
夜型人間の弊害ね。

「だけどリハーサルを観たいと言ったのは私だから。舞台の裏側なんてそう観られるものじゃないからね。初日のあまり邪魔にならない内に観させてもらわないと」

「あはは、ご配慮ありがとうございます。精一杯頑張りますので楽しんでくださると嬉しいです」

「ええ、楽しませてもらうわ」

馬車内での会話が弾んでいると、馬車がゆっくりと停車する。

「お姉様、ローリィさん。劇場に到着しました」

「あら、もう着いたのね。話しているとあっという間だったわ」

「そうですね」

ハオルがノックとともに扉を開くと、私たちは馬車から降りる。
日中に見る劇場は普段夜に見るものとは違い、なぜか眠そうに見える。
色鮮やかな光魔灯の明かりがないからだろうか?

ハオルを先頭に私とローリィが並んで歩いていると、私の配下の警士たちが劇場の周囲を警備している様子が目に入った。

「お疲れ様。不審者はいない?」

「もちろんですお嬢!しっかりとこの目で見張ってますから!なあお前ら!」

「「「おおっす!!!」」」

スキンヘッドが似合うたくましい警士の声に周囲にいる警士たちも大きな声をあげた。

「みなさんとても強そうで安心です」

「ガハハハ!ローリィちゃんにそう言ってもらえると嬉しいなぁ!しっかりと警備しますんでリバーサイド頑張ってください!」

「リハーサルね」

「ありゃ?そうでしたかね?まあどっちでも一緒でしょう!」

私の指摘を豪快に笑い飛ばしてくれた。
そんな警士たちを後にし、劇場内に入ると支配人のキルグスが挨拶にやってくる。

「お嬢様にハオル様、ローリィもようこそおいでなさいました」

「ええ、あなたもご苦労さま」

「キルグスさん、よろしくお願いします」

「はい。それではご案内いたしますのでこちらへどうぞ」

静かな劇場内は特別感がある。
そんな感覚を味わいながら私たちは赤い絨毯の上を歩いていく。
そうして関係者通路を使い、ステージ上へとやってくると、そこには多くの関係者たちがあちらこちらで準備をしている姿があった。
ここからはローリィが主役ね。

「みなさん!本日はよろしくお願いします!」

ローリィの大きな声に一斉にこちらを見ると、盛大な歓声で出迎えてくれる。
何度も公演を共にしてきたメンバーなのだろう。
すぐさま駆け寄ってきた。

「それじゃ、頑張ってね。私は客席で観させてもらうけど、ハオルは舞台袖で待機させておくから」

「はい!頑張ります!」

「ハオルも気を抜かずにね?」

「もちろんです。姉様」

そうしてリハーサルは始まった。

薄暗いステージでピアノ、バイオリン、フルートといった楽団が演奏を開始すると、ローリィは静かに踊りだす。
すると白い光魔灯の光がステージの天井から彼女を照らしていき、ローリィはマイクを持つ手を口元に近づけた。

空に大きな月が浮かぶ空の下。
私はあなたのことを想うの。
あなたがいつも見せてくれる笑顔。
それが私に元気をくれる。
だからお仕事だって頑張ります!
あっちこっちから届くオーダー。
ウエイトレスな私は大忙し。
今日は来てくれるかな?
愛しい私の王子様。

ポップな音楽と、愛らしい歌声がマッチしていてステージ上で踊るローリィがとても輝いて見える。

うーん……役得役得。
ドレス姿ではなく、普通の白いワンピースで踊っている姿がなんとも言えずに感慨深いものね。

そんな明るい曲を歌い終えると、ローリィは楽団に向かって大きく頭を下げた。
良い感じで歌えたことに感謝をしたのだと思う。
そして、振り返ると私の方にも頭を下げてくれた。
それに私は手を振って応える。

音楽って素敵なものね。
こんなにも私の心を潤してくれるのだから。

私はステージ上で楽しそうにしているローリィの姿に、笑みを浮かべて見守ったのだった。





───カーテンを閉め切った暗い一室───

レコードから流れてくるのは、ローリィの歌声。

「ローリィ……ローリィ……」

金色の瞳が闇に浮かんでいた。
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