忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています

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賑やかな病室

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「そう。丸一日寝てしまっていたのね」

公演開始すぐに襲撃を受け、ローリィを庇って負傷をした。
そこまではしっかりと記憶に残っているけど、その後のことはハオルから教わった。
犯人はカーズ・ドライクであり、犯行理由は手紙にあった通りローリィを殺害し、自分も死ぬことを目的としたものだったらしい。
今は留置所に入れられ裁判を待つ身となっているという。

「武術には素人のようでしたが、底しれぬ力があり拘束するのに苦労しました。ただ……」

「ただ?」

「どうも、違和感があるんですよ。カーズ氏はオッドアイだったでしょう?」

「そうね、金と茶の瞳が特徴の方だわ」

「それが犯行時、両目ともに金色に輝いていたんです」

「見間違いではなくて?」

「はい。薄暗い場所で猫のように輝いていましたから」

「ふぅ……謎が残る事件だわね。直に会った私が言うのだけれど、こんなことを起こすような人物とは思えなかったわ」

「はい。事後報告はここまでです。これから姉様にはたっぷりとやらなければいけないことがございますので」

ハオルがにっこりと笑う。

「そうね。しっかりと休養を取らなくちゃね」

「ははは、何を言っているのですか?記者会見に書類作業、陛下へのご報告もあります。何せ末席とは言え伯爵家が銃で襲われたのですからね。陛下としても今後の対応は難しいでしょう」

「流通最大手の社長の息子が容疑者だものね。そう簡単に取り潰すわけにもいかないし、かといって緩い罰則では貴族が騒ぐでしょうね。なんだかんだ貴族の一員として渋々ながらでも認めてくれているみたいだし」

「自分にその銃口が向くのが嫌なだけだと思いますよ」

「まあ恨みを買っていそうな人もいるからね。これを機会に少しは改めておかないと、家系ごと摘んじゃうぞ?」

「姉様、言い方は可愛らしいですが、言っていることは恐ろしいものですよ」

「まあそれがレミゼラルムーン家のお仕事だから」

私はクスッと笑った後、ベッドで横たわっている自分の姿に目を落とす。

「それにしても薄ピンクの病院着というのは落ち着かないわね……」

「さすがに黒は治癒院ではお断りされましてね。なので女性用のものにしたのですが、気に入りませんでしたか?」

「ちょっと私には可愛らしく過ぎない?」

「……そうは思いませんが?」

そう言われたハオルはそっぽを向きつつ、答えた。

「こっちを見なさい」

「……」

私の言葉でこちらを向いたハオルの口元は緩んでいるのを、引き締めようと必死だ。

「ニヤけてるのがバレバレよ!このバカ弟!」

「ああ姉様!枕で叩かないでください!」

私たちがそんなことをしていると、コンコンと病室のノックが鳴った。

「出てきます」

ハオルが病室から出ると、すぐに入り直してきた。
彼の後ろにはフルーツの盛り合わせの籠を持ったローリィの姿がある。

「ライラック様……」

会った途端に涙をこぼすローリィ。

「無事で良かったです……ひっくひっく……」

「ほら、泣かないの。事件はもう終わったんだから」

「私が生きているのは、ライラック様が助けてくれたおかげです……私、どうお礼をすればいいのか……」

「そうねぇ……今度はゆっくりあなたの公演が聴きたいわ。だから、歌手を辞めるなんて言わないこと」

ローリィの性格からしてこれほどの大事になってしまった以上、歌うことをやめることも考えていたかもしれない。
だけど、そんなことはさせたくない。
ローリィは歌が好きで、私もまた彼女の歌が好きなのだから。

「私……また歌ってもいいんですか……?」

「もちろん。あなたに責められる要因なんてないのだから。もしとやかく言う輩がいたらお仕置きしてあげる」

「あはは……とっても怖そうなお仕置きですね」

「あら、そんなことないわよ。いつでもあなたのことを見てるわよ?って言うだけよ」

「ライラック様にそう言われると、ごめんなさいとしか言えませんね」

「褒めてもらって光栄だわ」

「姉様?褒められているかは疑問が残ると思いますが?」

「褒められたと感じたら喜んでおけばいいのよ」

あはははと病室が賑やかになった頃に、またノックの音が聞こえてきた。再びハオルが対応すると、

「ライラ!目が覚めたんだって!?良かったわ!」

ベレッカがやってきた。

「これ、お店のパンなんだけどよかったら食べてね!」

「ありがとうベレッカ」

ベレッカは親しい口調で話してくれて、私はなんとも嬉しく思う。
だけど、それを快く思わないものがいた。

「ライラック様……なんですか?この人は?」

「ああ、彼女はベレッカ。お友達のデレリアット侯爵令嬢よ」

「あはは、もう没落寸前だけどねぇ」

カラカラと笑うベレッカにローリィの視線は鋭い。

「ずいぶんと仲がよろしいご様子で」

「ええ、最近友達になったのよ」

「友達……ライラック様と友達……」

ローリィはブツブツと呟き、爪を噛む。

「姉様……少し危険な香りがします……」

「ハオルもそう思う……?」

ここは軽くローリィに声をかけておきましょう。

「ローリィも私の友達でしょう?」

「わ、私がですか!?」

「ええ、嫌だった?」

「嫌とかそんなこと滅相もありません!ですが本当によろしいのでしょうか!?」

「もちろんよ。ローリィが友達になってくれると嬉しいわ」

ローリィは私の言葉に頬を赤く染める。
そして、

「わ、私!少し気分転換して参ります!」

慌てて病室を飛び出してしまった。

「もぉ、ライラってば人たらしなんだから」

「別に意図してたらしこんでるわけじゃないわよ」

「自然にやっている方が問題よ」

「むむむ……」

ベレッカとハオルが笑う中、私は反論することができないのだった。
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