70 / 88
おねだり上手な姉、素直な妹
しおりを挟む
「えぇ?それじゃシャーリーちゃんは初めてこうやって接客するの?」
「はい、今までは研修中でしたのでお姉さんの傍で飲み物を作っていたりしていただけでして。ライラック様が初めてのお客様です」
「うふふ……なんだか嬉しいわね……なんでも頼んじゃっていいからね!」
「ありがとうございます♪それじゃ黒服さん、ロミアコンテルンをお願いします♪」
……この娘、遠慮なくいったわね。
ロミアコンテルン。
金貨二十枚のお値段であり、この店で最高額のワイン。
「シャーリーちゃん……本当に初めて?」
「本当ですよ?何ならオーナーに聞いてみますか?」
この自信満々な笑顔、確実に本当のことなのだろう。
「うふふ、大丈夫よ。シャーリーちゃんが言うのだもの」
「嬉しいです♪ライラック様大好き♪」
ギュッと私の腕に抱きついてくるシャーリーちゃん。
お、恐ろしい娘……
こんなにも簡単に接触を許すなんて……
「こんなことするの、ライラック様だけですからね?」
むふぅ……良い娘じゃないの……
私は単純だった。
盛り上がる私たちの席と比べて、ハオルとシャロンちゃんの方は、
「「……」」
一切盛り上がっていなかった。
シャロンちゃんはなんとか会話を探そうと考えているようだけど、ハオルはまったく無表情のまま座っている。
「ハオル、少しは会話をしなさい。女の子を困らせるなんて姉として恥ずかしいわよ?」
「そうは言いますが……こういった場所は苦手なんですよ」
「パーティーでもそう言ってご令嬢との会話を拒んでいるでしょう?そんなことはもう許されない歳になっているの。いつまでも子どもじゃいられないわよ?」
「うっ……わかりましたよ……」
私の言葉にハオルは渋々といった様子でシャロンちゃんの方を向く。
「ボクはハオルシア。君の名前は?」
そこから?
「シャロンです……」
「本名?」
すぱーん。
私はハオルの頭を叩いた。
「何するんですか?」
「何質問してるのよ?こういった場所でそんな野暮なこと聞くんじゃないの」
いきなりNGな質問をするとは思わなかった。
「あっ、本名です……サリーナさんも本名でやっていると聞いて、私たちもって……」
そんな質問に丁寧に答えてくれるシャロンちゃん。
なんて良い娘なのかしら。
「二人ともサリーナさんに憧れてるんだ?」
「憧れてますよ♪……倒すべき相手として」
「はい……憧れの人です……」
シャーリーちゃんはにっこりと、シャロンちゃんは恥ずかしそうに微笑んだ。
なんとも正反対な双子だこと。
「それじゃあ次の質問だけど、歳は?」
すぱーん。
私は再び弟の頭を叩いた。
「姉様、そう気安く叩かれては困ります」
「困るなら変な質問ばかりするんじゃないわよ」
「歳を聞くことは会話のつかみでしょう?」
「女性には聞かないことは紳士のマナーでしょうが」
「年齢は恥ずべきことではありません」
「気持ちの問題よ」
「え、えっと……十六歳です……」
シャロンちゃんは戸惑いながらもそう答えてくれる。
「あら、ハオルと同じ歳ね。ならもっと仲良くしなさいよ」
「任せてください。なんでこの仕事を始めたの?」
すぱーん!
私は先ほどよりも力強く頭を叩いた。
「姉様……痛いです……」
「なんでそんなに正確に相応しくない質問ばかりするのかしら?このおバカ。ごめんなさいね?シャロンちゃん」
「……ふふっ」
私が頭を下げると、シャロンちゃんは笑った。
「あっ、ごめんなさい……ハオルシア様はとても真っ直ぐな人だなって思って……私たち、王都でレストランをやりたくて来たんです。お金もそれなりに持ってきたんですが、王都って信じられないくらいに物件がお高いんですね……予算オーバーでして、なのでお金を貯めるためにこの仕事をさせてもらっています」
「シャロンったら全部本当のこと話しちゃって」
「あっ……お姉ちゃん、ごめんなさい……」
「いいわよ。そこがシャロンの良いところだもんね」
うーん……美しい姉妹愛ね……
「すいません。ロミアコンテルンを一本ください」
「かしこまりました」
ハオルが近くにいた黒服に注文をする。
「ハオルシア様!?」
「先日、カジノで儲けた不労所得がある。どうしようかと思っていたけど、ここで使ってしまおうと思っただけだ」
あらあら、照れちゃって。
こう見えてハオルってば人が頑張る姿に弱いのよね。
田舎からやってきて困難にぶつかっても夢のために頑張る姉妹に心打たれたんでしょうね。
「あ、ありがとうございます……」
「お礼はいい。夢、叶えるように頑張りなよ」
「はい……!」
ふふっ、意外と好相性な二人なのかもしれないわね。
「ライラック様~♪もう無くなっちゃいました~♪おかわりいいですか~?」
「いいわよん♪」
「きゃぁ♪ありがとうございますぅ♪」
ああん♪シャーリーちゃんってばなんて可愛いのかしら♪
「姉様、顔がゆるゆるですよ?」
「ストレス発散中だからいいの」
「ふふふ、楽しそうですね」
私の気分が最高潮に盛り上がったとき、私たちのテーブルにやってきたのはサリーナさんだった。
「はい、今までは研修中でしたのでお姉さんの傍で飲み物を作っていたりしていただけでして。ライラック様が初めてのお客様です」
「うふふ……なんだか嬉しいわね……なんでも頼んじゃっていいからね!」
「ありがとうございます♪それじゃ黒服さん、ロミアコンテルンをお願いします♪」
……この娘、遠慮なくいったわね。
ロミアコンテルン。
金貨二十枚のお値段であり、この店で最高額のワイン。
「シャーリーちゃん……本当に初めて?」
「本当ですよ?何ならオーナーに聞いてみますか?」
この自信満々な笑顔、確実に本当のことなのだろう。
「うふふ、大丈夫よ。シャーリーちゃんが言うのだもの」
「嬉しいです♪ライラック様大好き♪」
ギュッと私の腕に抱きついてくるシャーリーちゃん。
お、恐ろしい娘……
こんなにも簡単に接触を許すなんて……
「こんなことするの、ライラック様だけですからね?」
むふぅ……良い娘じゃないの……
私は単純だった。
盛り上がる私たちの席と比べて、ハオルとシャロンちゃんの方は、
「「……」」
一切盛り上がっていなかった。
シャロンちゃんはなんとか会話を探そうと考えているようだけど、ハオルはまったく無表情のまま座っている。
「ハオル、少しは会話をしなさい。女の子を困らせるなんて姉として恥ずかしいわよ?」
「そうは言いますが……こういった場所は苦手なんですよ」
「パーティーでもそう言ってご令嬢との会話を拒んでいるでしょう?そんなことはもう許されない歳になっているの。いつまでも子どもじゃいられないわよ?」
「うっ……わかりましたよ……」
私の言葉にハオルは渋々といった様子でシャロンちゃんの方を向く。
「ボクはハオルシア。君の名前は?」
そこから?
「シャロンです……」
「本名?」
すぱーん。
私はハオルの頭を叩いた。
「何するんですか?」
「何質問してるのよ?こういった場所でそんな野暮なこと聞くんじゃないの」
いきなりNGな質問をするとは思わなかった。
「あっ、本名です……サリーナさんも本名でやっていると聞いて、私たちもって……」
そんな質問に丁寧に答えてくれるシャロンちゃん。
なんて良い娘なのかしら。
「二人ともサリーナさんに憧れてるんだ?」
「憧れてますよ♪……倒すべき相手として」
「はい……憧れの人です……」
シャーリーちゃんはにっこりと、シャロンちゃんは恥ずかしそうに微笑んだ。
なんとも正反対な双子だこと。
「それじゃあ次の質問だけど、歳は?」
すぱーん。
私は再び弟の頭を叩いた。
「姉様、そう気安く叩かれては困ります」
「困るなら変な質問ばかりするんじゃないわよ」
「歳を聞くことは会話のつかみでしょう?」
「女性には聞かないことは紳士のマナーでしょうが」
「年齢は恥ずべきことではありません」
「気持ちの問題よ」
「え、えっと……十六歳です……」
シャロンちゃんは戸惑いながらもそう答えてくれる。
「あら、ハオルと同じ歳ね。ならもっと仲良くしなさいよ」
「任せてください。なんでこの仕事を始めたの?」
すぱーん!
私は先ほどよりも力強く頭を叩いた。
「姉様……痛いです……」
「なんでそんなに正確に相応しくない質問ばかりするのかしら?このおバカ。ごめんなさいね?シャロンちゃん」
「……ふふっ」
私が頭を下げると、シャロンちゃんは笑った。
「あっ、ごめんなさい……ハオルシア様はとても真っ直ぐな人だなって思って……私たち、王都でレストランをやりたくて来たんです。お金もそれなりに持ってきたんですが、王都って信じられないくらいに物件がお高いんですね……予算オーバーでして、なのでお金を貯めるためにこの仕事をさせてもらっています」
「シャロンったら全部本当のこと話しちゃって」
「あっ……お姉ちゃん、ごめんなさい……」
「いいわよ。そこがシャロンの良いところだもんね」
うーん……美しい姉妹愛ね……
「すいません。ロミアコンテルンを一本ください」
「かしこまりました」
ハオルが近くにいた黒服に注文をする。
「ハオルシア様!?」
「先日、カジノで儲けた不労所得がある。どうしようかと思っていたけど、ここで使ってしまおうと思っただけだ」
あらあら、照れちゃって。
こう見えてハオルってば人が頑張る姿に弱いのよね。
田舎からやってきて困難にぶつかっても夢のために頑張る姉妹に心打たれたんでしょうね。
「あ、ありがとうございます……」
「お礼はいい。夢、叶えるように頑張りなよ」
「はい……!」
ふふっ、意外と好相性な二人なのかもしれないわね。
「ライラック様~♪もう無くなっちゃいました~♪おかわりいいですか~?」
「いいわよん♪」
「きゃぁ♪ありがとうございますぅ♪」
ああん♪シャーリーちゃんってばなんて可愛いのかしら♪
「姉様、顔がゆるゆるですよ?」
「ストレス発散中だからいいの」
「ふふふ、楽しそうですね」
私の気分が最高潮に盛り上がったとき、私たちのテーブルにやってきたのはサリーナさんだった。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる