召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

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一年生

いざ女子寮です!

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「いよいよ男子禁制の扉を開く時が来た……覚悟はできてるか?ルース」

「う、うん……」

ルースは少し頬を赤くしていて、随分と緊張しているようだ。
それは周囲の男子たちも同じようで、挙動不審な動きをしているやつもいる。
まあ気持ちはわかる。
俺たちがいるのはロビーの分岐点だが、今日に限っては別の道を通ることができるからだ。
その道は、女子寮という桃源郷へと通じる道。
健全な男子としてワクワクせずにはいられないだろう。

「いい?男子諸君。あくまでも通路の掃除だからね?トイレ、浴場などに入ろうとした瞬間、お仕置きだからね」

「ち、ちなみにお仕置きとは、どんなことなのでしょうか?」

俺はベアおばさんに質問する。
罰の内容によっては受ける覚悟で成すべきことがあるからだ。

言っていることには大きな意味がありそうですが、その目的が最低だと知っているとまったく心に響きませんね。

我らには女子の暮らしを知る権利がある!
なぜそれが分からんのか!

ただのプライバシーの侵害ですね。

ファーナの正論パンチが痛い。

「ふふふ……やってみたら分かるわよ?」

うん、絶対にやめておこう。
そう思わずにはいられないベアおばさんの冷酷な微笑みだった。

「節度を守って、青春することね。それじゃあ出発するわよ!」

「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

俺たちはベアおばさんの言葉に、ロビー中を響き渡るほどの野太い歓声を上げて拳を突き上げる。

「……ついていけん」

「……私もです」

「おぉぉぉ。みんなたのしそう」

そんな男子たちの真似をするサリアと額を押さえるフレアとリーナだった。

ギ、ギギギィィィ……

「こ、これは……」

禁断の扉が開かれた瞬間、ふわりと香る甘い香りが鼻をくすぐる。
それに加え、ここが男子寮と同じ建物内だとは到底思えないほどの輝きを放っているではないか。

いや、私の目から見たら一緒ですが?

ファーナ、同じような鉄の剣が二本あるとしよう。

突然ですね。
まあ分かりました。

片方は自分が買った剣。
もう片方はファーナのお父さんがプレゼントしてくれた剣。
どちらが大事だ?

それはもちろんお父様から贈られた剣の方が大事です。

そういうことだ。

いや、納得しませんよ?

分からん奴だ。

「男子諸君はほうきとちりとりでお掃除をお願いね。フレアちゃんたちは私と一緒にお風呂場を掃除しましょう」

「「「かしこまりました!」」」

「分かりました」
「はい!」
「りょうかい」

ベアおばさんと三人が浴場へと向かい、

「さてやりますか」

「そうだね」

俺たちは掃除道具入れからほうきを取り出すと、木の床の掃き掃除をしていく。

「いい香りするよなぁ……」

「う、うん……なんでだろうね……」

そうして甘い香りを感じる廊下を掃除していたのだが、その香りがドンドンと失われていくことに気づいた。

すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……

一部の男子たちが掃除をせずに深呼吸ばかりしているからだ。

「お前ら何してんだ!?」

「うるせぇ!こんな機会ほとんどねぇんだ!いま味わわずにどうする!」
「そうだそうだ!」
「ていうか息すんじゃねぇ!女の子の香りが減るだろうが!」

こ、こいつら……究極の変態だ!

五十歩百歩だと思いますよ。

「こんな狼藉を見逃すわけにはいかねぇ!成敗してくれるわ!ルース!」

「うん!加勢するよ!」

俺とルースはほうきを剣のように構える。

「へっ!召喚獣のいないカイに負けるかよ!てめえら!行くぞ!」
「合点!」
「ひゃっはぁぁぁ!ルースきゅぅぅぅん!」

キィィィン!

「くっ!やるな!」

「へへっ!ここで死んでもらうぜ!」

俺のほうきと変態のほうきがぶつかり合う。
なんてことをしているが、本気でやっている訳ではなくただ遊んでいるだけ。

はぁ……子どもですか……

男の子だから仕方ないのだ!

そうして遊んでいると、

「おや、みなさん随分と楽しそうですね?」

聞き覚えのある冷たい声で俺たちは固まった。

……こ、この声は!?

「「「ル、ルナ先生!?」」」

いつものきっちりとしたスーツ姿ではなく、ジャージというラフな姿が新鮮に思える。

「な、なんでここに……?」

「私も掃除です。窓を拭いたりトイレを掃除したりしていたのですが?あなた達はなにをしていらっしゃるのでしょうか?」

氷のように冷たい瞳が俺たちに突き刺さり、痛みを感じずにはいられない。

「は、掃き掃除を少々……?」

「私の目にはそうは見えませんでしたが?」

「「「申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!!」」」

言い逃れのしようがない俺たちは即座に土下座した。

「元気が有り余っているようですので、掃除が終わり次第グラウンドを三十周しましょうね」

「そ、そんな!?せめて二十周にまかりませんか!?」

そうですよ!お願いします!と応援の言葉が続くが、

「五十周がいいですか?」

「「「三十周かしこまりぃぃぃ!」」」

あえなくその交渉は失敗したのだった。

「はい、一部の不真面目な人以外はちゃんとお掃除してくれたようね」

ギクッ!?

ルナ先生にお説教された後は心を入れ替え、掃除を終えた。
しかし、罰はまだ終わらないようだ。

「何かあったのですか?」

「ほうきを剣にして遊んでいた子がいたようなのよぉ」

フレアの問いに答えるベアおばさんは、困ったような表情を浮かべ頬に手を当てる。

「あははは……弟たちもそうやって遊んでましたね」

「誰がしてたの?」

そんな話をしているリーナたちと、居心地の悪そうにしている俺とルースの目が合ってしまった。

「ま、まさかと思いますが……」

「カイとルース?」

「「……はい、そうです」」

「呆れた奴らだな……」

「カイさんは分かりますが、ルース君もですか……お掃除はちゃんとしないといけませんよ?」

「めっ」

「「返す言葉もありません……」」

ルナ先生に続き、クラスメイトの女の子たちにも怒られ、俺とルースの身体はドンドンと小さくなっていく。

「「「あははは!」」」

その結果、ロビーは笑い声で埋め尽くされていった。


その後は昼食を取ってから、真面目に洗濯物を干し、真面目に男子寮の掃除を行い、真面目に食器を洗っていく。

そう何度も強調しないでください。
それが当たり前なのですから。

はい、すいません……

無事に掃除が終わり、陽が赤くなっていく中、

「はぁはぁ……きついな……」

「そう、だね……」

「「「つ、つらぁ……」」」

俺とルース、他の男子三名はグラウンドを走っていた。

「しかし、ルースが止めなかったのも珍しいな……」

「なんだか、すごい舞い上がってたみたいで……」

「そ、そうか……」

それだけ女子寮が特異な場所だということなのだろう。

「ほら!もっと速く走れ!」

「まだあと二十周ありますよ!頑張ってください!」

「ふれーふれー」

ギンッ!

フレアたち三人の声援により、疲れ切った身体に力が宿る。

「「「お先ぃ!」」」

「おい!待て!なに先に行こうとしてるんだよ!」

「ぼ、僕も行くね!」

三人衆に加え、ルースまで先を急ぐように走り始めた。

ま、負けられねぇぇぇ!

周回をこなすだけなのに、なぜ速さを競うのですか?

女の子の前だからだ!

ふふっ……本当に単純ですね。
マスター、頑張ってください。

どりゃぁぁぁぁぁ!

ファーナの応援も加わり、

「い、いちばん……ぐへぇ……」

俺は全力を出し尽くし、最初に周回を終えたが、

次からは真面目に掃除をしよう……

そう心から思うのだった。
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