召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

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一年生

紅と白の戦乙女が降り立つ街、レリアント

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狼の襲撃があった後の旅路は平和そのもので、すっかりと仲良くなった乗客の人たちと会話を楽しんでいた。

「もうそろそろレリアントに着くな」

「あれ、もうそんな時間か?」

車内販売のサンドイッチをおやつとしていただいていると、フレアがそう言いだす。
心なしか少し嬉しそうだ。

「ああ、あそこに見える丘がオーレリア様の碑がある場所だ。そこを過ぎるとすぐに街が見えてくる」

「あそこにファーナのお墓があるのか……」

そう言えば見覚えのある場所です。
久しぶりに帰ってきたぞ!って感じがしますね。

感慨にふける俺に対して、当の本人はあっけらかんとしている。

軽いなぁ……

人生の後半においてはまったくの後悔がありませんからね。
あの街で楽しく過ごさせてもらった私の心の中には、懐かしさがあるだけです。
ですが、嬉しく思っていますよ?
私にとって第二の故郷とも言うべき場所に帰ってこれたのですから。

そうか。
早く見てみたいもんだな。
ファーナが楽しく過ごしたっていう街を。

ドガァァァン!

街の到着まであとわずかだと思っていた俺たち全員に、異変を知らせる爆音が耳に入る。

「なんだ!?」

炎系の攻性魔法のようで前方の着弾地点には煙が立ち上がっている。
緊急停止をした馬車の中はざわざわと騒がしくなってしまう。
先ほどのような狼の襲撃ではなく、人による襲撃かもしれないからだ。

「カイ、度々で悪いが緊急事態だ。様子を見てきてくれんか?」

「わかりました。ルース!」

「うん!状況を見てくるから!」

「私も!」

フレアが慌ててついて行こうとするが、

「落ち着け。ルースの方が飛行速度は速い。街が心配なのは分かるが、俺たちはまず馬車の四方を警戒しないといけない。そうだろう?」

「……すまない」

なんとか思い留ませる。

「すぐに戻ってくるから!」

「頼む……」

「うん!リフィル!行くよ!」

召喚されたグリフィンはルースを背に乗せると、空へと羽ばたいていく。

「よし、俺たちも外で警戒に入るぞ」

「分かった!」
「はい!」
「りょうかい」

しっかりと気持ちを切り替えたフレアとともに、俺たちは外へと飛び出した。

その後も何度か攻性魔法が飛んでくるが、着弾地点は相変わらず遠く離れており、馬車が狙われているようではないようだ。

「みんな!」

それから少しして、状況を見に行ったルースが戻ってくる。

「状況はどうなっているんだ?」

「三体の魔獣化した熊が暴れていて、それを騎士団が鎮圧しようとしているみたい」

魔獣化。
それは何らかの原因で魔素を多く取り込んでしまったことによる獣の凶暴化現象。
頻繁に起こることではないが、年に数回ほどの被害が出ている。

「父上……」

騎士であるフレアのお父さんも魔獣を迎撃していることは予想できる。
魔獣は召喚獣と同等の戦力だとも言われているし、心配になるのも当然だ。

「とりあえずアダルさんに報告だ。そして救援を申し出よう」

「カイ……」

「俺たちにできることをしていくぞ」

「ああ!」

俺たちは集めた情報をアダルさんに報告をする。

「そうか。魔獣が……」

「ええ、それで俺たちに救援に向かわせていただけませんか?」

乗客の人たちは中で待機してもらい、外での話し合いだ。
代表として俺とフレアの二人でアダルさんと話している。

「……難しい判断だ。行き先の安全を守ってもらいたくもある。だが、こちらにも見えない危機があるかもしれん。街の救援と馬車の防衛の二つをこなすとなると、戦力を分散するしかなくなってしまうからな。騎士団単独での撃退は難しいのか?」

「父が率いる騎士団は魔獣の一体であれば特に問題ないでしょう。ただ、三体ともなると……犠牲が出る可能性は否定できません」

フレアは沈痛な表情で、アダルさんの問いに答える。

「むぅ……」

アダルさんは目を瞑って考え込む。
俺としては救援、防衛、どちらの選択にも道理があると思う。

馬車を預かる身として乗客を最優先する。
騎士団と協力し、人命を優先する。

どちらを選んでも俺たちに文句は言えない。

「……二人までだ」

「えっ?」

「騎士団で魔獣一匹、あとの二人で魔獣二匹相手すればいけるか?」

アダルさんにとって最大限の譲歩だ。

「はい!十分にいけます!」

フレアが嬉しそうに答えた。

「俺の判断を間違いにはしてくれるなよ?街の救援!よろしく頼んだ!」

「「はい!」」

それじゃあ救援班を選ばないと……

救援には私が行きます。

いや、速度的に難しいだろう?
フレアは騎士団の人とのやり取りで必要だから、他の三人の誰かに乗せて行ってもらおうと思うんだが?

護りたいのです。
それが今の私の存在意義ですから……

その想いが胸の中で温もりとなって広がっていく。

また新しいスキルを得たのか?
俺はファーナを召喚し、リーディングでスキルを読み取っていく。

光の翼。

そこには新しいスキルがあった。
恐らく飛行できるようになるものだろう。
これならばいけるかもしれない。

「フレア、救援は俺と行こう」

「しかし……」

フレアも俺と同じように難色を示す。

「俺の騎士は戦乙女になったみたいなんだ」

バサッ……

ファーナの背中から光の翼が現れ、輝く羽が舞い散る。

「これは……」

あなたにもできるでしょう。
イメージしてください。
速く、空を駆ける姿を。

「イメージ……」

どうやら以前のように会話が出来ているようだ。

ぼそりとフレアが呟いた瞬間。

キィィィィィィ!

フェニックスが現れ、フレアの身体を羽で包みこんでいく。
そしてフェニックスは紅い鎧へと変化した。

「戦乙女オーレリア……私が憧れた人が、目の前にいる!」

バサッ!

紅い炎のような翼が大きく広がった。
その姿はまさに紅の戦乙女。

行きましょう。
私たちの護るもののために。

「はい!」

まったく……二人ともかっこいい女の子だな。
それじゃあ俺も護ってもらいましょうか。

お任せください、マスター。

俺はリンクメイルでファーナの中へと入っていく。

「ルース!俺とフレアで救援に向かう!ここは任せたぞ!」

「分かった!任せておいて!」

それじゃあ初飛行といきますか。
……少し怖いけど。

しっかりと口を閉じていてくださいね!

「父上!今行きます!」

その瞬間、二人の戦乙女が飛び立った。



「ちっ!この魔獣が!愛娘が帰ってくる日に襲ってくるでないわぁ!」

片手で大剣を振るう騎士が一体の魔獣を打ち払う。

ぐがぁぁぁ!

少しひるんだものの、鋭い爪の反撃を繰り出す。

ギィィィン!

その一撃を盾が防ぐ。
一進一退の攻防の中、

「団長!」

後方の魔導士が声を上げる。

「なんだ!?この忙しいときに!」

「そ、空に戦乙女が!」

「闘いの最中に寝ぼけておるのか!」

「私も見えます!紅と白の戦乙女が近づいてきます!」

「…何?」

騎士団長が一旦距離を取り、空を見上げると、

「まさか……」

そこには確かに紅と白の戦乙女の姿があった。
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