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第四章 王立学園魔法対決?
ナディアとグレゴリーの問題
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昼休み、セリーナはナディアと一緒に廊下の窓から中庭を見下ろしていた。
「どういうおつもりかしら?」
尖った声音でそう言うセリーナの視線の先には、王太子グレゴリーがいる。
中庭の東屋で、グレゴリーとキャシーが話しているのだ。
バーナードとエグバートも同席しているが、会話には加わっていない。
ふたりが昼休みに会っているのを見るのは今日で三回目だ。
中庭は校舎からよく見えるため、目立っていた。
「メリー・メリッサの小説のせいもあるわよね」
メリー・メリッサは若い女性に人気の作家だ。彼女の小説は、下位貴族や平民出身の冴えない少女が魔法を使えるようになり、魔法で活躍して、上位貴族や王族や大富豪などと恋愛結婚して幸せを掴む……といったストーリーが大半だった。主人公が魔法使いばかりなので、メリーも魔法使いだという説があるが、真実は公表されていなかった。
歓迎会のキャシーの言動もメリーの小説の一つに似ていたため、魔法使いと王族の恋愛物語が現実で見れるのではないか、と外野が変な期待をしているのだった。
中にはナディアに憐憫の視線を向ける者もいて、セリーナは憤慨している。
「ごめんなさい。私が歓迎会でメリー・メリッサの名前を出してしまったから……」
セリーナはナディアに謝る。
「いいえ。あなたは悪くないわ。……殿下があれ以上キャシー様と関わらなければ終わった話だったもの」
ナディアはため息をついて、窓から視線を外す。
「殿下はお忙しいみたいで最近は生徒会室にいらっしゃらないけれど、ナディアはお話する機会はあるの?」
「ないわね……。私が学園に入学したから、王太子妃教育の時間が減ったのよ。だから、私が王宮に行く機会も減ったし、行ったら行ったで時間が詰まっているし……」
「そうなのね……」
ナディアに「もう行きましょう」と促されて、セリーナも窓から離れて歩き出す。
「殿下がお忙しいのは、バレー男爵家を調べているからかもしれないわ」
すでにナディアにも話したことなので、彼女もうなずいた。
セリーナは、魔塔で主席魔法使いのフランク・クレイに会ったときのことに思いをはせた。
――イヴォン・バレー、もしくは彼女の実家がキャシーを養子にした。
グレタがフランクにそう話したあと、セリーナはグレタに尋ねた。
「イヴォン・バレーとはどなたですか? バレーというからにはバレー男爵家の方なのですよね?」
「イヴォンは魔塔の魔法使いよ。魔塔では末席だけれど、あなたよりも魔力は多いわよ」
そこでセリーナは母の言葉を思い出す。
「その方はもしかしてバレー男爵の妹さんでしょうか? ええと、私の母と同年代の方ですか?」
「ええ、そうよ。魔塔で生粋の貴族ってイヴォンだけなのよ」
そこでグレタはため息をつく。
「イヴォンは、魔塔の魔法使いは貴族扱いなんだからもっと社交界に出ていくべき、とか言うのよね」
「魔法使いは社交界に出たらいけないのですか?」
「いいえ。別に禁止されていないわ。招待もされないけど。……イヴォンがパーティーに出たいなら出ればいいのよ。でも、私たちにも参加しろって言うのよ? 嫌よ、面倒くさい」
グレタはソファに寄りかかった。そんなグレタにフランクが、
「普通にパーティーに出ても目立たないからだろ」
「どういうこと?」
「貴族の枠では男爵家。魔塔の枠では末席。彼女は社交界では魔法使いだと隠していたみたいだしな。俺たちを引き連れて魔塔御一行様って登場しないと格好がつかないんだろ」
「末席だって魔法使いは魔法使いでしょ? それに、男爵家だと何が悪いのよ?」
首をかしげるグレタからセリーナに目を移して、フランクは肩をすくめた。
「貴族の君ならわかるだろ?」
「ええ。まあ、理解はできますわね」
男爵家は下位貴族だ。事業で成功しているとか、政府の要職に就いたとか、令嬢なら容姿が優れている、芸術の才があるなど、爵位を超えるような何かがなければ注目されるのは難しい。――そういうものはたいてい家の力ではなくて、個人の力で得るものだ。
魔法使いは希少だからセリーナ程度でも目立つだろうけれど、よほどじゃなければ余興にされておしまいになる気がする。
あとは「魔塔の末席」を本人がどう捉えているかによるけれど、フランクの口ぶりからすると「百人の魔法使いから選ばれた二十番目」ではなく「二十人のうちの最下位」と考えていそうだ。
そういったことをセリーナが説明すると、グレタは「わかったようなわからないような……」とさらに首をかしげた。
(きっとお師匠様には無縁の世界よね)
上から数えたほうが早い高位のラグーン侯爵家で、平気でふんぞり返っていたグレタは、魔塔の次席じゃなくったって堂々と社交界に乗り込めそうだ。
セリーナもセリーナで、黙っていても注目を浴びる立場にいる。学園の歓迎会の挨拶三昧を思い出すと、グレタの「面倒だから嫌」に共感してしまう。
「グレタは特に、美容の魔法使いって一部の貴族女性から有名なんだ。パーティーなんかに連れていくと間違いなく目立てる」
フランクがそう教えてくれた。
(お師匠様、見た目は三十代半ばなんだけれど、実際はもっと年上なのよね? 何歳なのか教えてくださらないけれど、五十歳くらいのクレイ様にこの態度ってことは……?)
セリーナがグレタとフランクを見比べたせいか、グレタは「フランクよりはずっと若いわよ」とセリーナを睨んだ。
「ええと、それで、イヴォン様は上昇志向の強い方ということでしたわよね?」
セリーナは無理やり話を戻す。
「上昇志向じゃなくて承認欲求だな」
「ええ、そんな感じね」
フランクの訂正にグレタもうなずく。
「イヴォン様は養子にしたキャシー様を使って目立とうとなさっているのでしょうか?」
セリーナは可能性を口にする。
「キャシー様は学園で魔法を披露して、他の生徒から喝采を浴びていましたわ」
今のところ完全に余興扱いだけれど、注目されているのは確かだった。
「確かに、キャシーのほうがイヴォンより魔力が強かったわね」
グレタがそう言ったため、セリーナは聞いた。
「お師匠様はキャシー様と面識があるのですか?」
「面識っていうほどじゃないわ。修行を塔から見てただけだから、話したことはないわよ」
自分の修行のときを思い出して、セリーナは納得する。
(自分の師匠としか関わらないって伝統なのかしら? 私が言うのもなんだけれど、魔法使いってよくわからないわね……)
そんなセリーナの内心を知らないグレタは、
「キャシーは、セリーナの三年前に見つかった魔法使いで、イヴォンが師匠になったのよ」
セリーナはふと疑問に思った。
「キャシー様の魔力のほうがイヴォン様より強いってことは、学園を卒業してキャシー様が魔塔に入ったらイヴォン様は魔塔を抜けるのですか?」
「それはないわね。イヴォンが辞めたいっていうなら辞められるけれど、魔塔のほうから辞めてくれって言うことはないわよ」
グレタはそう言って笑った。
「とにかく、養子の件は上に報告しておく。教えてくれて助かった」
フランクがそうまとめたけれど、セリーナは「上ってどちらです?」と質問した。
「魔塔のトップはクレイ様ですよね?」
「ああ。そして俺の上は国だ」
「国? 政府に魔法使いの部署があるのですか?」
「いや、代々王族が担当している。昨年からは王太子殿下だ」
――魔塔や魔法使いに関わる事項をグレゴリーが担当している。
ナディアに話してもいいとフランクから許可をもらったセリーナは、イヴォンのことも含め、ナディアに共有済みだ。
フランクからキャシーの養子の話を聞いたグレゴリーが、キャシーに直接聞き取り調査をしているのだろう。
セリーナもナディアもそう考えているけれど……。
(それならそれで、ナディアに一言あってもいいと思うのよね!)
王太子妃に興味がなかったセリーナは、お茶会などで表面的な付き合いしかしていないため、グレゴリーの性格をよく知らない。
(殿下ってナディアのことをどう思っているのかしら)
政略にしても、噂になっているのだから説明すべきだと思う。
手始めにセリーナとナディアは、グレゴリーたちと同席していたバーナードを捕まえて話を聞くことにした。
今まで何度か、グレゴリーたちがどんな話をしているか聞いてみたのだけれど、「殿下の仕事に関することだから僕からは話せない」と断られてしまっていた。
しかし、今日という今日はきっちり確認したい。
放課後、生徒会室に行くと、バーナードは先に到着していた。
それどころか、久しぶりにグレゴリーもいる。
セリーナは思わず、「殿下! どういうことですか!?」とナディアより先に詰め寄ってしまった。
「セリーナ。私が聞くから」
「あ、ごめんなさい」
セリーナが一歩下がると、ナディアはグレゴリーの前に立った。彼は椅子に座ったまま、ナディアを不思議そうに見上げる。
「殿下はキャシー様とご婚約なさるのですか?」
いろいろ通り越したその質問に、バーナードがぎょっとした。セリーナも驚いた。
グレゴリーはぽかんとした顔で、
「なぜ、バレー男爵令嬢が出てくるんだ? 私の婚約者はナディアだよ」
「なぜって、噂になっているのをご存知でしょう?」
「噂? 私とバレー男爵令嬢が?」
グレゴリーはバーナードを見た。彼はぶんぶんとうなずく。同様にエグバートと、居合わせた生徒会長のユージーンもうなずいている。
三人を見たグレゴリーは、「ええっ!!」っと大きな声で驚いた。
「まさかご存知なかったのですか?」
ナディアが呆れたように聞くと、グレゴリーは「知らなかった」と頭を抱えた。
「あー、やっぱり殿下は噂に気づいてらっしゃらなかったのですね……」
「俺もなんとなくそんな気がしてました……」
バーナードとエグバートがそう言うと、グレゴリーは、「そう思っていたなら教えてくれ」とふたりを見やった。
「では、キャシー様とは何のお話をなさっていたのですか?」
ナディアは追求を続ける。
「お仕事だとは思っておりますが、私にも教えていただきたいです。そもそも私が同席していれば、あんな噂は避けられましたのよ? 同席不可でも、仕事の件でキャシー様と話をすると事前に連絡してくだされば、私のほうで噂の対処もできたと思います」
「それは、すまない」
グレゴリーが謝ると、バーナードが、
「殿下はご自分の仕事に責任を持って取り組んでらっしゃるのですよ」
「まあ! バーナード様はナディアが嫉妬やわがままだけで言っているとおっしゃるのですか?」
そこでセリーナも参戦した。
「殿下のお仕事が魔塔の管理なら、ナディアのお仕事は社交ですわ。今回の殿下はナディアの仕事を邪魔したことになります。殿下とナディアはパートナーでしょう? 協力しないでどうします?」
バーナードは驚いて絶句していて、ナディアは苦笑している。
(王妃様のお茶会のときは、私も大人しくしていたものね……)
グレゴリーも驚いていたけれど、すぐに復活して、
「セリーナ嬢の言う通りだ。ナディア、改めて申し訳なかった」
「いえ、次から気をつけてくだされば……」
ナディアが許すと、グレゴリーは目に見えてほっとした。
「君には王太子妃教育に生徒会の仕事まで押し付けてしまって、学園生活を楽しむこともできないだろう? 私の仕事にまで巻き込んで、これ以上君をわずらわせたくなかったんだ」
「わずらわしいなんて思いませんわ」
ナディアが首を振ると、グレゴリーは少し目を伏せて笑った。
(うーん。何かしら? 殿下って性格もお義父様に似てらっしゃるの?)
なんとなく、婚約したばかりのころの、アリスターと距離を置いていたハワードの表情を思い出す。
セリーナは思い切って聞いてみることにした。
「殿下はナディアに後ろめたいことでもあるんですか? 押し付けるとか巻き込むとか……。そもそも殿下はナディアとの婚約をどう思ってらっしゃるのですか?」
「ちょっ、セリーナ!」
ナディアが慌ててセリーナの腕を引くけれど、セリーナは「ナディアだって知りたいでしょ?」と言い返す。
そんなふたりにグレゴリーは怒ることもなく、
「私はナディアと婚約できてうれしかった」
「え?」
「まあ!」
グレゴリーは続ける。
「王太子妃の選定は、王や王妃、大臣など、たくさんの人が関わったけれど、最終的にナディアに決めたのは私だよ」
「……それは……なぜでしょうか?」
恐る恐る聞くナディアに、グレゴリーは困ったように笑う。
「ナディアを好きになったから」
「えっ!? 今までそんな感じはなかったではありませんか」
「能力や適性ではなく、私の個人的な感情が理由で決まったと知ったら、君は気を悪くするんじゃないかと思ったんだ……。だから言えなかった」
ナディアは両手で口元を押さえて、グレゴリーを見つめている。
「後ろめたいというのは、その通りだね。もし君が嫌なら婚約者を降りても構わないよ」
「いいえ。このまま続けさせてください」
ナディアは綺麗な笑顔でそう言った。
「消去法ではなく、殿下のお気持ちで選んでいただいたこと、光栄に思います」
「それじゃあ、君も私のことを……」
「いえ、特に恋愛感情はありません」
きっぱり否定するナディアに、グレゴリーはがっくりと肩を落とす。
「殿下、婚約してしまえばこっちのものですわ! 時間はたっぷりあるのです。殿下が想いを伝えていけば、ナディアだって殿下に恋するときがきますわよ!」
セリーナはぐっと拳を握って、グレゴリーを応援した。
「セリーナが言うと説得力があるわね……」
ナディアはため息混じりに笑った。
グレゴリーの真意がわかって、ナディアがほっとしているのがわかる。
セリーナも胸を撫でおろしたのだった。
ナディアとグレゴリーの話が落ち着いたあと、グレゴリーから聞かされたのは、魔法使いがひとり所在不明になっている問題だった。
「その魔法使いは降霊術師をしていたらしい」
「降霊術師、ですか?」
鸚鵡返ししたのはバーナードだった。彼もグレゴリーが何を調べていたのか具体的なことは知らなかったようだ。
「死者――身近な者だったり偉人だったり――の霊を呼び出して話をする術が使える者、かな」
「本気で信じている方から、風変わりな娯楽程度に思っている方までいろいろですけれど、降霊会は流行っていますわね」
ナディアも説明してくれる。
「降霊の魔法なんてありませんけれど……。魔法も使えて、降霊術も使えるってことでしょうか?」
セリーナが疑問を呈すると、ナディアが、
「降霊術の真偽はわからないわよ」
「ああ、そうね。魔法を演出に使っている可能性もあるのね」
「そういうこと」
そこでグレゴリーが、
「登録された魔法使いは定期的に所在確認をしているんだが、不明者がいるとわかったのと、バレー男爵家のことが持ち上がったのがほぼ同時だった。だから、念のため、バレー男爵令嬢から魔塔での修行の様子や、養子になった経緯、男爵家やイヴォンとのやりとりなどを聞き出していたんだ」
「そうなんですか!? 僕はてっきり世間話をしているものだと……あ、いえ」
バーナードは失言だと思ったのか口を閉じる。
「どうやら、私はこういったことには向いていないようだね」
そう言って苦笑したグレゴリーの出した結論は、
「まあ、でも話を聞いた限り、所在不明の魔法使いとバレー男爵家は無関係だろうと思う」
「どういうおつもりかしら?」
尖った声音でそう言うセリーナの視線の先には、王太子グレゴリーがいる。
中庭の東屋で、グレゴリーとキャシーが話しているのだ。
バーナードとエグバートも同席しているが、会話には加わっていない。
ふたりが昼休みに会っているのを見るのは今日で三回目だ。
中庭は校舎からよく見えるため、目立っていた。
「メリー・メリッサの小説のせいもあるわよね」
メリー・メリッサは若い女性に人気の作家だ。彼女の小説は、下位貴族や平民出身の冴えない少女が魔法を使えるようになり、魔法で活躍して、上位貴族や王族や大富豪などと恋愛結婚して幸せを掴む……といったストーリーが大半だった。主人公が魔法使いばかりなので、メリーも魔法使いだという説があるが、真実は公表されていなかった。
歓迎会のキャシーの言動もメリーの小説の一つに似ていたため、魔法使いと王族の恋愛物語が現実で見れるのではないか、と外野が変な期待をしているのだった。
中にはナディアに憐憫の視線を向ける者もいて、セリーナは憤慨している。
「ごめんなさい。私が歓迎会でメリー・メリッサの名前を出してしまったから……」
セリーナはナディアに謝る。
「いいえ。あなたは悪くないわ。……殿下があれ以上キャシー様と関わらなければ終わった話だったもの」
ナディアはため息をついて、窓から視線を外す。
「殿下はお忙しいみたいで最近は生徒会室にいらっしゃらないけれど、ナディアはお話する機会はあるの?」
「ないわね……。私が学園に入学したから、王太子妃教育の時間が減ったのよ。だから、私が王宮に行く機会も減ったし、行ったら行ったで時間が詰まっているし……」
「そうなのね……」
ナディアに「もう行きましょう」と促されて、セリーナも窓から離れて歩き出す。
「殿下がお忙しいのは、バレー男爵家を調べているからかもしれないわ」
すでにナディアにも話したことなので、彼女もうなずいた。
セリーナは、魔塔で主席魔法使いのフランク・クレイに会ったときのことに思いをはせた。
――イヴォン・バレー、もしくは彼女の実家がキャシーを養子にした。
グレタがフランクにそう話したあと、セリーナはグレタに尋ねた。
「イヴォン・バレーとはどなたですか? バレーというからにはバレー男爵家の方なのですよね?」
「イヴォンは魔塔の魔法使いよ。魔塔では末席だけれど、あなたよりも魔力は多いわよ」
そこでセリーナは母の言葉を思い出す。
「その方はもしかしてバレー男爵の妹さんでしょうか? ええと、私の母と同年代の方ですか?」
「ええ、そうよ。魔塔で生粋の貴族ってイヴォンだけなのよ」
そこでグレタはため息をつく。
「イヴォンは、魔塔の魔法使いは貴族扱いなんだからもっと社交界に出ていくべき、とか言うのよね」
「魔法使いは社交界に出たらいけないのですか?」
「いいえ。別に禁止されていないわ。招待もされないけど。……イヴォンがパーティーに出たいなら出ればいいのよ。でも、私たちにも参加しろって言うのよ? 嫌よ、面倒くさい」
グレタはソファに寄りかかった。そんなグレタにフランクが、
「普通にパーティーに出ても目立たないからだろ」
「どういうこと?」
「貴族の枠では男爵家。魔塔の枠では末席。彼女は社交界では魔法使いだと隠していたみたいだしな。俺たちを引き連れて魔塔御一行様って登場しないと格好がつかないんだろ」
「末席だって魔法使いは魔法使いでしょ? それに、男爵家だと何が悪いのよ?」
首をかしげるグレタからセリーナに目を移して、フランクは肩をすくめた。
「貴族の君ならわかるだろ?」
「ええ。まあ、理解はできますわね」
男爵家は下位貴族だ。事業で成功しているとか、政府の要職に就いたとか、令嬢なら容姿が優れている、芸術の才があるなど、爵位を超えるような何かがなければ注目されるのは難しい。――そういうものはたいてい家の力ではなくて、個人の力で得るものだ。
魔法使いは希少だからセリーナ程度でも目立つだろうけれど、よほどじゃなければ余興にされておしまいになる気がする。
あとは「魔塔の末席」を本人がどう捉えているかによるけれど、フランクの口ぶりからすると「百人の魔法使いから選ばれた二十番目」ではなく「二十人のうちの最下位」と考えていそうだ。
そういったことをセリーナが説明すると、グレタは「わかったようなわからないような……」とさらに首をかしげた。
(きっとお師匠様には無縁の世界よね)
上から数えたほうが早い高位のラグーン侯爵家で、平気でふんぞり返っていたグレタは、魔塔の次席じゃなくったって堂々と社交界に乗り込めそうだ。
セリーナもセリーナで、黙っていても注目を浴びる立場にいる。学園の歓迎会の挨拶三昧を思い出すと、グレタの「面倒だから嫌」に共感してしまう。
「グレタは特に、美容の魔法使いって一部の貴族女性から有名なんだ。パーティーなんかに連れていくと間違いなく目立てる」
フランクがそう教えてくれた。
(お師匠様、見た目は三十代半ばなんだけれど、実際はもっと年上なのよね? 何歳なのか教えてくださらないけれど、五十歳くらいのクレイ様にこの態度ってことは……?)
セリーナがグレタとフランクを見比べたせいか、グレタは「フランクよりはずっと若いわよ」とセリーナを睨んだ。
「ええと、それで、イヴォン様は上昇志向の強い方ということでしたわよね?」
セリーナは無理やり話を戻す。
「上昇志向じゃなくて承認欲求だな」
「ええ、そんな感じね」
フランクの訂正にグレタもうなずく。
「イヴォン様は養子にしたキャシー様を使って目立とうとなさっているのでしょうか?」
セリーナは可能性を口にする。
「キャシー様は学園で魔法を披露して、他の生徒から喝采を浴びていましたわ」
今のところ完全に余興扱いだけれど、注目されているのは確かだった。
「確かに、キャシーのほうがイヴォンより魔力が強かったわね」
グレタがそう言ったため、セリーナは聞いた。
「お師匠様はキャシー様と面識があるのですか?」
「面識っていうほどじゃないわ。修行を塔から見てただけだから、話したことはないわよ」
自分の修行のときを思い出して、セリーナは納得する。
(自分の師匠としか関わらないって伝統なのかしら? 私が言うのもなんだけれど、魔法使いってよくわからないわね……)
そんなセリーナの内心を知らないグレタは、
「キャシーは、セリーナの三年前に見つかった魔法使いで、イヴォンが師匠になったのよ」
セリーナはふと疑問に思った。
「キャシー様の魔力のほうがイヴォン様より強いってことは、学園を卒業してキャシー様が魔塔に入ったらイヴォン様は魔塔を抜けるのですか?」
「それはないわね。イヴォンが辞めたいっていうなら辞められるけれど、魔塔のほうから辞めてくれって言うことはないわよ」
グレタはそう言って笑った。
「とにかく、養子の件は上に報告しておく。教えてくれて助かった」
フランクがそうまとめたけれど、セリーナは「上ってどちらです?」と質問した。
「魔塔のトップはクレイ様ですよね?」
「ああ。そして俺の上は国だ」
「国? 政府に魔法使いの部署があるのですか?」
「いや、代々王族が担当している。昨年からは王太子殿下だ」
――魔塔や魔法使いに関わる事項をグレゴリーが担当している。
ナディアに話してもいいとフランクから許可をもらったセリーナは、イヴォンのことも含め、ナディアに共有済みだ。
フランクからキャシーの養子の話を聞いたグレゴリーが、キャシーに直接聞き取り調査をしているのだろう。
セリーナもナディアもそう考えているけれど……。
(それならそれで、ナディアに一言あってもいいと思うのよね!)
王太子妃に興味がなかったセリーナは、お茶会などで表面的な付き合いしかしていないため、グレゴリーの性格をよく知らない。
(殿下ってナディアのことをどう思っているのかしら)
政略にしても、噂になっているのだから説明すべきだと思う。
手始めにセリーナとナディアは、グレゴリーたちと同席していたバーナードを捕まえて話を聞くことにした。
今まで何度か、グレゴリーたちがどんな話をしているか聞いてみたのだけれど、「殿下の仕事に関することだから僕からは話せない」と断られてしまっていた。
しかし、今日という今日はきっちり確認したい。
放課後、生徒会室に行くと、バーナードは先に到着していた。
それどころか、久しぶりにグレゴリーもいる。
セリーナは思わず、「殿下! どういうことですか!?」とナディアより先に詰め寄ってしまった。
「セリーナ。私が聞くから」
「あ、ごめんなさい」
セリーナが一歩下がると、ナディアはグレゴリーの前に立った。彼は椅子に座ったまま、ナディアを不思議そうに見上げる。
「殿下はキャシー様とご婚約なさるのですか?」
いろいろ通り越したその質問に、バーナードがぎょっとした。セリーナも驚いた。
グレゴリーはぽかんとした顔で、
「なぜ、バレー男爵令嬢が出てくるんだ? 私の婚約者はナディアだよ」
「なぜって、噂になっているのをご存知でしょう?」
「噂? 私とバレー男爵令嬢が?」
グレゴリーはバーナードを見た。彼はぶんぶんとうなずく。同様にエグバートと、居合わせた生徒会長のユージーンもうなずいている。
三人を見たグレゴリーは、「ええっ!!」っと大きな声で驚いた。
「まさかご存知なかったのですか?」
ナディアが呆れたように聞くと、グレゴリーは「知らなかった」と頭を抱えた。
「あー、やっぱり殿下は噂に気づいてらっしゃらなかったのですね……」
「俺もなんとなくそんな気がしてました……」
バーナードとエグバートがそう言うと、グレゴリーは、「そう思っていたなら教えてくれ」とふたりを見やった。
「では、キャシー様とは何のお話をなさっていたのですか?」
ナディアは追求を続ける。
「お仕事だとは思っておりますが、私にも教えていただきたいです。そもそも私が同席していれば、あんな噂は避けられましたのよ? 同席不可でも、仕事の件でキャシー様と話をすると事前に連絡してくだされば、私のほうで噂の対処もできたと思います」
「それは、すまない」
グレゴリーが謝ると、バーナードが、
「殿下はご自分の仕事に責任を持って取り組んでらっしゃるのですよ」
「まあ! バーナード様はナディアが嫉妬やわがままだけで言っているとおっしゃるのですか?」
そこでセリーナも参戦した。
「殿下のお仕事が魔塔の管理なら、ナディアのお仕事は社交ですわ。今回の殿下はナディアの仕事を邪魔したことになります。殿下とナディアはパートナーでしょう? 協力しないでどうします?」
バーナードは驚いて絶句していて、ナディアは苦笑している。
(王妃様のお茶会のときは、私も大人しくしていたものね……)
グレゴリーも驚いていたけれど、すぐに復活して、
「セリーナ嬢の言う通りだ。ナディア、改めて申し訳なかった」
「いえ、次から気をつけてくだされば……」
ナディアが許すと、グレゴリーは目に見えてほっとした。
「君には王太子妃教育に生徒会の仕事まで押し付けてしまって、学園生活を楽しむこともできないだろう? 私の仕事にまで巻き込んで、これ以上君をわずらわせたくなかったんだ」
「わずらわしいなんて思いませんわ」
ナディアが首を振ると、グレゴリーは少し目を伏せて笑った。
(うーん。何かしら? 殿下って性格もお義父様に似てらっしゃるの?)
なんとなく、婚約したばかりのころの、アリスターと距離を置いていたハワードの表情を思い出す。
セリーナは思い切って聞いてみることにした。
「殿下はナディアに後ろめたいことでもあるんですか? 押し付けるとか巻き込むとか……。そもそも殿下はナディアとの婚約をどう思ってらっしゃるのですか?」
「ちょっ、セリーナ!」
ナディアが慌ててセリーナの腕を引くけれど、セリーナは「ナディアだって知りたいでしょ?」と言い返す。
そんなふたりにグレゴリーは怒ることもなく、
「私はナディアと婚約できてうれしかった」
「え?」
「まあ!」
グレゴリーは続ける。
「王太子妃の選定は、王や王妃、大臣など、たくさんの人が関わったけれど、最終的にナディアに決めたのは私だよ」
「……それは……なぜでしょうか?」
恐る恐る聞くナディアに、グレゴリーは困ったように笑う。
「ナディアを好きになったから」
「えっ!? 今までそんな感じはなかったではありませんか」
「能力や適性ではなく、私の個人的な感情が理由で決まったと知ったら、君は気を悪くするんじゃないかと思ったんだ……。だから言えなかった」
ナディアは両手で口元を押さえて、グレゴリーを見つめている。
「後ろめたいというのは、その通りだね。もし君が嫌なら婚約者を降りても構わないよ」
「いいえ。このまま続けさせてください」
ナディアは綺麗な笑顔でそう言った。
「消去法ではなく、殿下のお気持ちで選んでいただいたこと、光栄に思います」
「それじゃあ、君も私のことを……」
「いえ、特に恋愛感情はありません」
きっぱり否定するナディアに、グレゴリーはがっくりと肩を落とす。
「殿下、婚約してしまえばこっちのものですわ! 時間はたっぷりあるのです。殿下が想いを伝えていけば、ナディアだって殿下に恋するときがきますわよ!」
セリーナはぐっと拳を握って、グレゴリーを応援した。
「セリーナが言うと説得力があるわね……」
ナディアはため息混じりに笑った。
グレゴリーの真意がわかって、ナディアがほっとしているのがわかる。
セリーナも胸を撫でおろしたのだった。
ナディアとグレゴリーの話が落ち着いたあと、グレゴリーから聞かされたのは、魔法使いがひとり所在不明になっている問題だった。
「その魔法使いは降霊術師をしていたらしい」
「降霊術師、ですか?」
鸚鵡返ししたのはバーナードだった。彼もグレゴリーが何を調べていたのか具体的なことは知らなかったようだ。
「死者――身近な者だったり偉人だったり――の霊を呼び出して話をする術が使える者、かな」
「本気で信じている方から、風変わりな娯楽程度に思っている方までいろいろですけれど、降霊会は流行っていますわね」
ナディアも説明してくれる。
「降霊の魔法なんてありませんけれど……。魔法も使えて、降霊術も使えるってことでしょうか?」
セリーナが疑問を呈すると、ナディアが、
「降霊術の真偽はわからないわよ」
「ああ、そうね。魔法を演出に使っている可能性もあるのね」
「そういうこと」
そこでグレゴリーが、
「登録された魔法使いは定期的に所在確認をしているんだが、不明者がいるとわかったのと、バレー男爵家のことが持ち上がったのがほぼ同時だった。だから、念のため、バレー男爵令嬢から魔塔での修行の様子や、養子になった経緯、男爵家やイヴォンとのやりとりなどを聞き出していたんだ」
「そうなんですか!? 僕はてっきり世間話をしているものだと……あ、いえ」
バーナードは失言だと思ったのか口を閉じる。
「どうやら、私はこういったことには向いていないようだね」
そう言って苦笑したグレゴリーの出した結論は、
「まあ、でも話を聞いた限り、所在不明の魔法使いとバレー男爵家は無関係だろうと思う」
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全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
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やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
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