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フィーナの活躍
愛していると言われた夜から、ブラッドの態度が変わった。
優しく見守ってくれるような視線の中に、甘さが混ざった。ときおり、訴えかけるような渇望も感じる。そんな目を向けられると、フィーナも平常心ではいられなかった。
ずっと憧れていたブラッド。もちろん、男性としても好意を寄せている。
求婚の際、夫婦の行為は求めないと言われ残念に思った。そんなフィーナだから、ブラッドから求められてうれしくないわけがない。
書類上は結婚しているのだから、何の問題もない。
それでもフィーナは自分の気持ちを伝えることができないでいた。
自信がない。
何も持っていない。
そんな自分はブラッドの愛を受け取るのにふさわしいのだろうか。
数日後のある日、仕事中のブラッドから通信魔道具で連絡が来た。
遺跡の調査が長引き、王城に泊まりになる。着替えや軽食を持ってきてほしいという内容だった。
伯爵夫人だからではなく年齢順で使いに選ばれたフィーナは、ジェシカと一緒に王城の庭園を歩いていた。
門で名乗るとジェシカが迎えに来てくれたのだ。
「思ったよりも大きい遺跡だったのよ。こちらは日を改めようって言っているのに、騎士団が引かなくて。嫌になるわ」
「食事は多めに持ってきたの。よかったら皆さんでどうぞ」
「わあ、ありがとう。うれしい」
そんな話をしていたときだ。
何かが崩れるような大きな音がして、地面が揺れた。
前方で人の叫び声が聞こえる。
「何があったの?」
走り出したジェシカを追いかけた先で、フィーナは惨状を目にした。
工事中の庭園には、あちこちに盛り土があった。植え替える予定なのか、根っこを保護した木が一か所にまとめられている。それはいいのだが、中央の一帯、石畳や芝生が不自然に陥没していた。こちらは明らかに人の手によるものではない。土に埋まるように、崩れた石柱がはみ出している。調査対象の遺跡だろう。
日は傾きかけている。松明がたかれたあたりに人が集まっていた。
「皆、転移魔道具を持っているから大丈夫よ」
ジェシカはフィーナを振り返って言った。フィーナだけでなく、自分も安心させるかようだった。
「騎士団、点呼!」
「大丈夫か」
「誰かいないものは?」
「怪我人はこちらへ!」
「騎士団は全員無事です!」
たくさんの人が集まっているが、服装で騎士か魔術師か判別がつく。
フィーナは魔術師の集団の中にブラッドの姿を探した。しかし、見つからない。
「ブラッド様は?」
「え? 課長?」
フィーナに指摘されて気づいたジェシカの声に、魔術師たちも辺りを見回す。
「だめです。範囲が広すぎて、魔力が拾えません」
「気を失っているんじゃないでしょうか」
「ランプは持っていたよな」
「光系統は誰じゃったかな?」
「ジェシカ! エイプリル課長のランプを起動させてみてくれ。いけるか?」
「ええ、わかったわ」
彼らのやりとりをフィーナは見守ることしかできない。
「ミック、黙らせて!」
ジェシカは陥没したところに近寄る。
彼女に声をかけられた魔術師が、騎士団の方に向き直った。
「静まれ!」
その一言で、騒がしかった騎士たちが静かになった。
フィーナは祈るように両手を組んだ。持ってきた荷物はどこかに落としてしまったけれど、フィーナは気づいていない。
「夕暮れの森、石塚の下。花を捧げよう。地下の洞、眠れる種子。光を届けよう。我求めるものを、示せ、現せ。手を伸ばせ。光を届けよう」
ジェシカの高い声が響いた。薄い膜が広がるような、ピンと張り詰めた空気。
それはある一点に収束した。
陥没した穴の一か所で光が発せられた。
「点いたぞ! あそこだ!」
ジェシカは、本来は呪文で起動させるものではない魔道具を呪文で起動させたのだ。それも、どこにあるかわからない魔道具の遠隔操作だ。
魔術師が光に向かう中、ミックがジェシカに駆け寄って彼女を支えた。
「ジェシカさん! 大丈夫っすか?」
「問題ないわ。どう?」
「ばっちり、ランプ点きました」
ミックに支えられながらジェシカも光に近づいた。
フィーナもつられるように後に続く。
光源は幸い陥没部分の端で、ぎりぎりまで近づくことができた。二階建ての建物が埋まってしまいそうなくらい穴は深い。土と石柱の隙間から光が漏れている。
「課長も転移魔道具は持っているのよ」
「起動できる者はおらんのか」
「ランプは支給品でしたが、転移魔道具はエイプリル課長の自作品ではなかったでしょうか。呪文で起動するにはしますが……」
「圧縮魔術陣か! こんなときに面倒な」
「ブラッド様の魔術陣なら……」
フィーナがつぶやくと、ジェシカが振り返った。
フィーナの腕をぎゅっと掴む。
「フィーナ! あなたならできるでしょ?」
隣にいたミックがぎょっとしてジェシカとフィーナを見比べる。
「えっと、この方、伯爵夫人ですよね?」
「ミック、あなた、フィーナ・マーチを知らないの?」
「え! あの『新しい魔術文字の可能性について』の? 知ってますよ、もちろん知ってます! 課長の奥様だったんすか? でも論文と圧縮魔術陣は別の話でしょ」
「あのね、フィーナは当代エイプリル伯爵の一番弟子なのよ!」
「ええっ!」
周りの魔術師がジェシカの言葉に驚く。
しかし、一番驚いたのはフィーナ自身だった。
「フィーナがどうして驚いているの? あなた、あの書斎の魔道具、全部起動できるんでしょ? あれを任されているなんて、課長の弟子に決まっているじゃない!」
「え、でも……弟子……?」
戸惑うフィーナを、ジェシカはまっすぐに見上げた。
「課長の転移魔道具よ。わかるわね?」
それに応えてフィーナも大きくうなずく。
「ええ、もちろん」
「起動したことは?」
「あるわ」
「じゃあ、できるわ。いつものようにやればいいのよ」
そんな無茶苦茶な、とミックの呆れた声はフィーナには聞こえなかった。
光が漏れる穴に向かって立つ。
両足に力を入れて、背筋を伸ばす。
呪文を響かせるのに向いているとブラッドがほめてくれたフィーナの体形だ。
きっと地面の下まで届く。
「ここより別の望む場所へ」
圧縮魔術陣は、起動する魔術が一つなら呪文は短い。
一気に広がるように、力を込めた。
手ごたえはあった。
背後で音がして、直後、わあっと歓声が上がった。
振り返ると、ブラッドが地面に寝ている。
救護班を呼ぶ声を聞きながら、フィーナはブラッドに駆け寄った。
「頭を打っているかもしれんから、揺らしてはいかんぞ!」
誰かに制されて、フィーナはブラッドに触れないように注意して彼の顔を覗き込んだ。
うめき声の後、ブラッドはうっすらと目を開けた。
「フィーナ……?」
「はい、ブラッド様……」
よかった。
大事な人を失わずにすんで。
自分が助けることができて。
本当によかった。
フィーナは地面に伏して、涙を流した。
そんな彼女の頭にブラッドの手が乗せられた。撫でるというよりぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜるようにされて、フィーナの泣き声はさらに増したのだった。
優しく見守ってくれるような視線の中に、甘さが混ざった。ときおり、訴えかけるような渇望も感じる。そんな目を向けられると、フィーナも平常心ではいられなかった。
ずっと憧れていたブラッド。もちろん、男性としても好意を寄せている。
求婚の際、夫婦の行為は求めないと言われ残念に思った。そんなフィーナだから、ブラッドから求められてうれしくないわけがない。
書類上は結婚しているのだから、何の問題もない。
それでもフィーナは自分の気持ちを伝えることができないでいた。
自信がない。
何も持っていない。
そんな自分はブラッドの愛を受け取るのにふさわしいのだろうか。
数日後のある日、仕事中のブラッドから通信魔道具で連絡が来た。
遺跡の調査が長引き、王城に泊まりになる。着替えや軽食を持ってきてほしいという内容だった。
伯爵夫人だからではなく年齢順で使いに選ばれたフィーナは、ジェシカと一緒に王城の庭園を歩いていた。
門で名乗るとジェシカが迎えに来てくれたのだ。
「思ったよりも大きい遺跡だったのよ。こちらは日を改めようって言っているのに、騎士団が引かなくて。嫌になるわ」
「食事は多めに持ってきたの。よかったら皆さんでどうぞ」
「わあ、ありがとう。うれしい」
そんな話をしていたときだ。
何かが崩れるような大きな音がして、地面が揺れた。
前方で人の叫び声が聞こえる。
「何があったの?」
走り出したジェシカを追いかけた先で、フィーナは惨状を目にした。
工事中の庭園には、あちこちに盛り土があった。植え替える予定なのか、根っこを保護した木が一か所にまとめられている。それはいいのだが、中央の一帯、石畳や芝生が不自然に陥没していた。こちらは明らかに人の手によるものではない。土に埋まるように、崩れた石柱がはみ出している。調査対象の遺跡だろう。
日は傾きかけている。松明がたかれたあたりに人が集まっていた。
「皆、転移魔道具を持っているから大丈夫よ」
ジェシカはフィーナを振り返って言った。フィーナだけでなく、自分も安心させるかようだった。
「騎士団、点呼!」
「大丈夫か」
「誰かいないものは?」
「怪我人はこちらへ!」
「騎士団は全員無事です!」
たくさんの人が集まっているが、服装で騎士か魔術師か判別がつく。
フィーナは魔術師の集団の中にブラッドの姿を探した。しかし、見つからない。
「ブラッド様は?」
「え? 課長?」
フィーナに指摘されて気づいたジェシカの声に、魔術師たちも辺りを見回す。
「だめです。範囲が広すぎて、魔力が拾えません」
「気を失っているんじゃないでしょうか」
「ランプは持っていたよな」
「光系統は誰じゃったかな?」
「ジェシカ! エイプリル課長のランプを起動させてみてくれ。いけるか?」
「ええ、わかったわ」
彼らのやりとりをフィーナは見守ることしかできない。
「ミック、黙らせて!」
ジェシカは陥没したところに近寄る。
彼女に声をかけられた魔術師が、騎士団の方に向き直った。
「静まれ!」
その一言で、騒がしかった騎士たちが静かになった。
フィーナは祈るように両手を組んだ。持ってきた荷物はどこかに落としてしまったけれど、フィーナは気づいていない。
「夕暮れの森、石塚の下。花を捧げよう。地下の洞、眠れる種子。光を届けよう。我求めるものを、示せ、現せ。手を伸ばせ。光を届けよう」
ジェシカの高い声が響いた。薄い膜が広がるような、ピンと張り詰めた空気。
それはある一点に収束した。
陥没した穴の一か所で光が発せられた。
「点いたぞ! あそこだ!」
ジェシカは、本来は呪文で起動させるものではない魔道具を呪文で起動させたのだ。それも、どこにあるかわからない魔道具の遠隔操作だ。
魔術師が光に向かう中、ミックがジェシカに駆け寄って彼女を支えた。
「ジェシカさん! 大丈夫っすか?」
「問題ないわ。どう?」
「ばっちり、ランプ点きました」
ミックに支えられながらジェシカも光に近づいた。
フィーナもつられるように後に続く。
光源は幸い陥没部分の端で、ぎりぎりまで近づくことができた。二階建ての建物が埋まってしまいそうなくらい穴は深い。土と石柱の隙間から光が漏れている。
「課長も転移魔道具は持っているのよ」
「起動できる者はおらんのか」
「ランプは支給品でしたが、転移魔道具はエイプリル課長の自作品ではなかったでしょうか。呪文で起動するにはしますが……」
「圧縮魔術陣か! こんなときに面倒な」
「ブラッド様の魔術陣なら……」
フィーナがつぶやくと、ジェシカが振り返った。
フィーナの腕をぎゅっと掴む。
「フィーナ! あなたならできるでしょ?」
隣にいたミックがぎょっとしてジェシカとフィーナを見比べる。
「えっと、この方、伯爵夫人ですよね?」
「ミック、あなた、フィーナ・マーチを知らないの?」
「え! あの『新しい魔術文字の可能性について』の? 知ってますよ、もちろん知ってます! 課長の奥様だったんすか? でも論文と圧縮魔術陣は別の話でしょ」
「あのね、フィーナは当代エイプリル伯爵の一番弟子なのよ!」
「ええっ!」
周りの魔術師がジェシカの言葉に驚く。
しかし、一番驚いたのはフィーナ自身だった。
「フィーナがどうして驚いているの? あなた、あの書斎の魔道具、全部起動できるんでしょ? あれを任されているなんて、課長の弟子に決まっているじゃない!」
「え、でも……弟子……?」
戸惑うフィーナを、ジェシカはまっすぐに見上げた。
「課長の転移魔道具よ。わかるわね?」
それに応えてフィーナも大きくうなずく。
「ええ、もちろん」
「起動したことは?」
「あるわ」
「じゃあ、できるわ。いつものようにやればいいのよ」
そんな無茶苦茶な、とミックの呆れた声はフィーナには聞こえなかった。
光が漏れる穴に向かって立つ。
両足に力を入れて、背筋を伸ばす。
呪文を響かせるのに向いているとブラッドがほめてくれたフィーナの体形だ。
きっと地面の下まで届く。
「ここより別の望む場所へ」
圧縮魔術陣は、起動する魔術が一つなら呪文は短い。
一気に広がるように、力を込めた。
手ごたえはあった。
背後で音がして、直後、わあっと歓声が上がった。
振り返ると、ブラッドが地面に寝ている。
救護班を呼ぶ声を聞きながら、フィーナはブラッドに駆け寄った。
「頭を打っているかもしれんから、揺らしてはいかんぞ!」
誰かに制されて、フィーナはブラッドに触れないように注意して彼の顔を覗き込んだ。
うめき声の後、ブラッドはうっすらと目を開けた。
「フィーナ……?」
「はい、ブラッド様……」
よかった。
大事な人を失わずにすんで。
自分が助けることができて。
本当によかった。
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