天才魔道士と努力家剣士!!

三毛猫2025

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兄弟が死ぬ前2-2

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いつものように………


しゅうと)「おーい、おーい、おぉーーーい!!!!」

弾かれたように、僕は真横にいるお兄ちゃんを見た。
何回も呼びかけてられていたのに、僕は気づかなかったからしい。

しゅうと)「お前、またボーッとしてんじゃんw。 ボケたか?w」
しゅん)「お兄ちゃん…」

安心する声だ。
僕は毎日、この声を聞くと、何かから開放されたように楽になる。

しゅうと)「なあ、お前…」

いつもより真剣な声だ。何かあったのだろうか。
いや、大変な話をするふりをして「夕飯何食べたい?」と聞いてくるのだろうか。

しゅうと)「いじめられているだろ。」

しゅん)「えっ…?」

いつもは何気なく返事を返せるのに、口が全く動こうとしない。
安心する声が、僕の頭を真っ白に染めた。

しゅん)「そんなこと…ないよ?だってさ、僕の体怪我一つしてないじゃん」

ありきたりな言葉を並べる。

しゅうと)「なぁ、なんでそんな嘘つくんだよ。兄だぞ?もっと頼れよ!」
しゅん)「だから!いじめれていないってば!!!」

ついつい強い口調で言ってしまった。逆に怪しまれる。

しゅうと)「それじゃあ、なんで帰るとき上靴履いていないんだよ。なんで朝、腹おさえてんだよ。なんでお前のものがなくなっていってんだよ。」
しゅん)「…。」
しゅうと)「兄ちゃん、頼りなかったか?信用できなかったか?………まあ、言いにくいのはしようがない、それに、俺がもっと早く気づければな。」
しゅん)「そんなこと…」
しゅうと)「お前はさ、そこらへんの一年とは比べ物にならないぐらい、すっげー頭いいんだよ。その分、考えすぎて自分のことを忘れてる。」
しゅうと)「お前、もっと自分を大切にしろよ。」
しゅん)「……………」

僕の目から溢れた涙が、頬をつたって地面に落ちる

その瞬間、これまでためてきた辛いことや、苦しかったことを我慢していた自分がスッとなくなり、ボロボロと涙が止まらなくなりました。こんなに泣いたことは、多分小さい頃以来、初めてぐらいだと思います。そのせいで、目が真っ赤に腫れてしまいそうでした。

その間、お兄ちゃんはずっと僕の頭を撫で続けてくれました。

夏の道を、ただひたすらまっすぐ進んでいきました。


小さな交差点についたとき、やっと気持ちが落ち着いて、しゃっくりだけ残るぐらいになりました。

お兄ちゃんは僕の方を見て、笑顔になりました。僕もお兄ちゃんを見て、微笑を浮かべました。

そして、手を繋いで






赤信号を二人で渡りました。





大型トラックが猛スピードで突っ込んできます。スマホを操作しながら運転しているので、ドライブレコーダーがない限り、あっち側の責任になるでしょう。

鈍い音が、小さな交差点をつつみました。
遠くの方では悲鳴が聞こえます。
お兄ちゃんは、お兄ちゃんではないような姿に変わってしまいました。
でも、僕の頭部を手で守っているので、間違いなくお兄ちゃんです。
きっと、この世にはもういないでしょう。


ちょっとまっててね、少し苦しんでから、そっちに行くよ…。


お母さん、ごめんね。
一人にするなんて、ひどいよね。でもね、まだこっちには来ないでね。

知らないお父さん。
お母さん一人になっちゃうから、今からでも一緒にいてあげてね。

いじめてきた人たち。
もう誰の心も殺さないでね。

お兄ちゃん。
いつまでも、一緒だよ…。
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