復讐のためオークに転生した元いじめられっ子、魔王を牝犬にして飼う。【R18】

いけお

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クレアの要求

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 銀鷲亭(ぎんわしてい)、ブレサという街で最も由緒のある宿屋である。
 一泊あたりの料金も一般人には手が出せない額となっており、ここに宿泊出来る者はよほどの金持ちか、有力貴族に連なる者と言われていた。

 しかしこの宿屋は現在、あるグループによって貸し切られている。
 おまけに宿泊代も全てタダという、常識では考えられない待遇だ。

 その異常な待遇をこの世界では当たり前と思い込んでいる者達が居た、佐伯 一平を自殺に追い込んだクラスの連中である。
 金を持たずに街を歩き店の売り物を盗んでも誰も文句を言わないし、誰1人として捕らえようともしない。

 この異常な現象を引き起こしている者は、街の住人から今は勇者と呼ばれている。
 勇者一行を当初引率していた担任の手平 還(てひら たまき)と、生徒達の前で挨拶をしている最中に召喚に巻き込まれた、校長の闇峰 武留(やみね たける)の2人はお互いの責任をなすりつけあっていた。

「7人もの生徒の行方が分からなくなるとは、由々しき事態だ。 君、無事元の世界に戻った際は、その責任を取っていただくからそのつもりでいるように」

「お待ちください。 今回の責任は校長である、あなたが負うべきです。 私はこのクラスの担任にすぎませんが、校長は全ての生徒を守る責任と義務がある筈です」

 元の世界に帰れる保障すら無いのにどちらが責任を取るかで争う2人、それを遠くから見ていた櫻木 誠(さくらぎ まこと)は、ディザイアに贈る極上のエサとして彼らを選んだ。



「手平先生、闇峰校長、2人で一体どうされたのですか? 何やら言い争う声がしたものですから、気になって見に来てしまいました」

 柔和な笑顔で話しかける櫻木、佐伯 一平に対するイジメの首謀者だと彼の遺書に書かれていたらしいが、とても信じられそうにない。
 すると櫻木は目上の者に対する態度とは思えない口調で、2人に命令し始める。

「2人とも、何も言わず黙って俺の話を聞け」

 ヘビに睨まれたカエルのように、2人はその場で固まった。

「お前らはこれからディザイアというオークが住む拠点に向かう、そのディザイアというオークは佐伯 一平の生まれ変わった姿だ。 行方不明になった7人はもちろん他の生徒達も全て、彼に捕らえられている。 復讐なんて馬鹿な真似を止めれるのはお前ら2人しかいない、もう1度言うクラスの生徒達は全員ディザイアに囚われの身となっている。 俺から言われたことは全て忘れ、すぐに救出に行くんだ」

 2人は数回瞬きすると、急に何か思い立ったように街の外を目指し走り出す。

「手平君、急ごう。 佐伯君がクラスメート達に危害を加える前に、その愚かな行為を止めさせないと!」

「ええ、校長急ぎましょう! 私達2人で説得すれば、きっと彼も心を開いてくれるでしょう」

 櫻木は街から離れていく担任と校長を、蔑むように見ながら呟いた。

「手平先生、校長、今まで本当にありがとうございました。 僕の望む世界には残念ながら、あなた達の席はありません。 ここらで退場してください」

 彼は指をパチンと鳴らすと、大きな声で叫ぶ。

「この街に居る全ての者よ、僕を讃えよ!」

 すると、街中が勇者櫻木を讃える声で溢れかえった。

『勇者サクラギばんざい!』

『勇者サクラギに栄光あれ!』

『勇者サクラギ……!』

『勇者サクラギ……!』

 街全体を揺らす歓声を聞きながら、己に復讐する為にやってくる哀れなオークへと彼は宣戦布告を行う。

「来いよ、佐伯。 こんな面白い世界はお前には豚に真珠だ、俺がこの世界の全てを手に入れてやるから、それをもう1度あの世から拝ませてやる!」

 こうして最初の供物が、ディザイアの許へと贈り届けられたのである……。



「父上、例の者達の始末が完了しました」

「そうか。 身重の玲奈を人質にしようとした奴らだ、見せしめとするのは当然。 生まれた者達の教育係を、今後はよく選ばないといけないな。 多少学んでいるのを選ぶと、ろくなことを考えない」

 居住区画の一角、あまり目立たない場所に8つの首が晒されている。
 生まれたオークに言葉などを教える教育係を命じられた女と、その女が産んだ子。 そしてこの女の手で教育された、若いオーク6人のものである。

 自ら産んだ子をこの拠点の新たなリーダーにしようと考えた女は、預けられた子らに息子の命令を断れないよう教育。
 そしてコージの子を宿したことが分かった紅葉院 玲奈を人質にして、クーデターを起こそうとしたのだ!

 幸いにも普段と違う動きを見せる7人のオークを不審に思った安藤 沙織が、警護の者に命じて後を追わせたので大事には至らなかったが、1歩間違えば玲奈のお腹の子だけでなく、玲奈自身の命も奪われていただろう。

 全員を処刑することで一応は解決したが、今後も同じ事が起きないとも限らない。
 新しい教育係を誰にするかで息子のコージと頭を悩ませていると、クレアが会話に割って入ってきた。

「2人とも、1番の教育係を忘れていませんか?」

「教育係を引き受けてくれそうな奴が、まだ残っていたか? コージ」

「いえ、思い当たりませんが……」

「わたしを忘れないでください! わたしが生まれた子達を、オークの名に相応しい教養を身に付けさせてあげます」

 自信満々に語るクレアだが、ディザイアは一抹の不安を覚える。

(オークの名に相応しい教養って一体……)

「けど引き受けるのには、条件が1つだけあります」

 珍しく、彼女がディザイアに要求してきた。
 あまり無茶なものは言わないと考えたが、彼女が求めたものは……

「ディザイア、わたしにあなたの子をもう1人産ませてください」

 なんと息子を前に、子作りを要求してきたのである……。
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