復讐のためオークに転生した元いじめられっ子、魔王を牝犬にして飼う。【R18】

いけお

文字の大きさ
55 / 86

消えた子の行方

しおりを挟む
「おい、イセヤ。 なんだそれは?」

「……出来れば聞かないでいただけますか、不死王サクラギ」

 精気の受け渡しを終えた頃を見計らって戻ってきたサクラギが見たものは、イセヤの股間に生えた異様な大きさを誇る馬のイチモツだった。
 経緯を聞いたサクラギは、顎に手を当てて何やら考え始める。

「キョーコすまない、精気を至急集めてイセヤに渡してやってくれ」

「何を創造させるおつもりですか? 不死王サクラギ」

 キョーコからの問いかけに、サクラギは頭を掻きながら答えた。

「いや……、僕も生身の部分が欲しくなってきた」

 眷属2人の思考が、ほんのわずかの間だが停止する。
 何か大きくルートを外れてしまう、そんな予感がしたのだ。
 某有名泥棒アニメが放送初期のハードボイルド路線から、コミカルに路線変更した第2シリーズの第1話で感じたような微かな違和感。

 もしかすると3人で

「まて~ディザイア~!」

 とか言いながら、毎回負けつづけるようになるかもしれない。
 予感が現実とならないよう、イセヤは慎重に言葉を選んで問いで返す。

「何故生身の部分が欲しいのですか? 不死王サクラギ」

「骸骨のままで街の中に入るのは、かなり厳しくなるだろう。 だからこちらの世界の住人の、顔や身体を手に入れれば行動がしやすくなると思ったのだ」

「なるほど」

 イセヤは少しだけ安心した、6人も変死者が出ればディザイアも街中の警戒を強化しているはずだ。
 そこへ骸骨姿でのこのこと出ていけば、すぐに見つかってしまう。
 今後のことも考えると主に生身を与えておいた方が、自由に出来る時間も増やせるからこちらにとっても都合が良い。

「それに……」

 だがサクラギの次の言葉で、キョーコとイセヤは彼の異常な性癖を初めて知る。

「死にたての女を抱くには、生きているのを犯している最中に殺すのが一番手っ取り早いからな。 死後硬直で硬くなっていく膣内の感触も楽しめるし、生身を手にする日が待ち遠しいものだ」

(ネ、ネクロフィリア!?)

 特にキョーコは全身の震えが止まらない。
 もしかするとあの日ディザイアがブレサを襲撃していなければ、彼女は行為の後で彼に殺されていたかもしれないのだ。

(佐伯君が、ブレサを1日早く攻めてくれたのなら……)

 さらに1日早く攻めていれば、キョーコは自殺せずに済んだかもしれない。
 だがそれも、あくまでも仮定の話。
 オークに犯されて生きる望みを失い、命を絶っていた可能性だってある。

 この時になってキョーコは、お腹の子が気がかりになってきた。



「……あの、不死王サクラギ。 お腹の子を眷属にすることは可能ですか?」

「お腹の子?」

「はい。 実はあなたに犯された時に、どうも受精していたらしく……」

 うつむきながら話すキョーコ、するとサクラギが彼女の肩を掴む。

「どうしてそれを先に言わなかった! イセヤに命じて、成長した身体を与えることだって出来るはずだ。 このことを誰に聞かされた!?」

「佐伯君……ディザイアからです」

 サクラギは瞑目すると、ボソッと呟いた。

「お前を支配などせずにきちんと口説いていれば、2人の子を生きて遺すことだって出来たかもしれないんだな」

「えっ、今なんて!?」

「いや、たんなる世迷い言だ。 今さら後悔しても遅すぎる、とりあえず眷属化してこれ以上腐敗が進むのを止めなければ」

 そう言うとサクラギは、キョーコの下腹部の上で手をかざす。
 本当に我が子が残されているのなら、彼女の子宮内で既に死んでいるはずだから。
 だがキョーコの胎内からは、死んでいる者の気配が感じ取れない。
 サクラギはキョーコを問い詰める。

「おい! お前の胎内からは、死人の気配を感じ取れないぞ。 本当にお前は、俺の子を孕んでいたのか!?」

「ひどい! あなたにレイプされた上に孕まされたショックで、わたしは死を選んだのにどうして死んだあとも、あなたから詰られないといけないの!?」

 正気に戻ったサクラギは、キョーコに謝罪した。

「すまない、思いがけないことが続いて我を忘れてしまった。 しかしお前の胎内に子の死体が無いとなると、一体誰が葬っているんだ?」

 サクラギとキョーコは、別の可能性が残されていることにまだ気付いていない。
 しかしイセヤの一言で、その可能性に気付いた。

「おい、2人とも。 もう1つ可能性が残っているが、それに気付かないか?」

「もう1つの可能性?」

 2人は彼が言う前にその可能性に気付くと、お互いの顔を見る。

「手段は分からないが、お腹の受精卵を取り出してあいつが保管している可能性。 代わりの母親を、あいつは見つけようとしているのかもしれない」

(僕達が望んでいなかったとしても、2人の血をどうにかして遺そうと奴は考えたのかもしれないな)

 そう考えると、受精卵はどこかに保存されている可能性が高い。

「イセヤ、計画変更だ。 誰にも気付かれないドローンを1機創造して、ディザイアの周辺を偵察してくれ。 来年、いや再来年辺りに奴に近い女で俺達そっくりの子が産まれれば、保管された子どもである可能性が高い」

「その産まれた子を攫うのですか? 不死王サクラギ」

「いいや、大人になるのを待つ」

 サクラギは、イセヤの問いを即座に否定する。

「子どもが成人したら直接会って話をする、その上で俺達と共に歩みたいのなら眷属にしよう。 だが拒絶された場合は、もう2度と会うことはしない」

 子の行く末をこのままずっと大人しく見守るだろう、キョーコとイセヤは考えた。

 だがサクラギは、大人しく見守るような器ではない。
 子が成人するまでの暇つぶしの準備を、2人に命じた。

「そういえば佐伯が拠点にしていた場所だが、今は放棄されているはずだ。 そこを今度は僕達の根城にしよう、お前達には執事とメイド兼玩具の買い出しと自炊の準備を命じる」

「玩具の買い出しと自炊の準備?」

 イセヤにも何となく想像は出来たが、あえて主に聞いてみる。

「玩具はもちろん、僕が犯して殺す女のことだ。 キョーコには道に迷った行商人や旅人あたりを、自分で捕まえてきてもらう」

 おそらく近い内に、元オークの拠点周辺で行方不明となる者が頻発するだろう。
 ディザイアの調査が来る前に、別の場所に移動出来ればよし。
 だがもしも見つかってしまった場合、奴は総力をあげて再び殺しに来る。

 その日が訪れないことを、今は祈るしかなかった……。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...