復讐のためオークに転生した元いじめられっ子、魔王を牝犬にして飼う。【R18】

いけお

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パレードの開始

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「……あなた。 妻が到着したのに出迎えにも来ないで、言い訳の1つや2つ考えてあるのですよね?」

「まったく考えておりません」

 王城アトモスに牝犬達が続々と到着し、割り振られた部屋に荷物を運んでいる。
 それより一足早く到着したクレアの前で、ディザイアはまた正座させられていた。

 ジャンヌ率いる魔王軍の精鋭に護衛されて無事入城を果たしたクレアは、文字通り一国を支配した夫にねぎらいの言葉をかけようと大広間に足を運ぶ。
 だがそこで見たものは牝犬となった魔王と、見覚えのない新たな牝犬2匹。
 そしてその3匹の牝犬に、精を浴びせている夫の姿だった……。

 妻の入城を聞き流していたディザイアは、クレアの顔を見た瞬間背筋が凍り付く。
 即座に土下座して謝ったが、乱交していた最中だったので言い訳出来る筈もない。
 さらに怒らせてしまったのは牝犬お披露目パレードの計画を、事前に彼女に伝えるのを忘れていたことだった。

「あなたが街でお散歩している間、私はここでボーッとしていれば良いのですか?」

「いや、そうじゃなくてだな」

「まさか、私にもその破廉恥なお散歩に付き合えと言うのですか?」

 怒気を含んだ口調にディザイアは一言も返せない。
 こうなったクレアの機嫌を直すのは至難の業だと、これまでの経験で知っている。
 しかしこの日の彼女は少し様子が違っていた、軽くため息を吐きながらパレードの内容を変更するように夫を諭す。

「あなた。 このパレードが誰の発案か分かりませんが、自分のモノにした女を大勢の人の前で晒すのは、国を統べる者としてふさわしくありません。 どうしても披露されたいのであれば、夜中にこっそりとすべきです」

「夜中にこっそり?」

「そう、こっそり」

 クレアの提案を聞き入れたディザイアは、ミザリーとマリアにパレードを一部変更する旨を説明した。
 それは国の内外に向けて表向き盛大に披露する昼の部と、夜中にこっそりと誰にも気づかれないように行う夜の部と2回行うというものである。



「……つまり深夜0時になると同時に、カリウスの大通りにレッドカーペットを敷き途中に砂場も数カ所設置すると?」

「うむ」

「そうすると、夜は花火を打ち上げなくても大丈夫なのですね」

 パレードの準備を担当していたミザリーの部下の1人の質問に対する、魔王の答えは斜め上のものだった。

「もちろん昼以上に盛大な花火を打ち上げるぞ、大勢の楽士による演奏も行う。 夜の部こそが、真のパレードなのだ」

 部下はこめかみを押さえながら、パレードの内容を確認する。

「夜中にこっそりとパレードするのに、何故花火や楽器の演奏が必要なのですか? そんなことをしたら、すぐにバレてしまいます」

 部下が疑問に思うのも当然だ、夜中にこっそりとするのに花火を打ち上げたり楽器の演奏なんてことをしたら、住人達は何事かと外に出てきてしまう。
 そうなれば気づかれずにやろうとする意味が無い、しかしその疑問の答えもさらに斜め上をいっていた。

「当日はすべての建物に術士を配置し、遮音で花火や楽器の音を消したり幻惑の術で窓から見える景色を闇夜に変えるのだ」

 建物の中にいる者を起こさないように、音を遮り光も建物の中に入らなくする。
 周辺を警護する者も含め、昼の部の倍以上の人員が必要だ。 

(都に住む者を全員眠らせれば、幾らでも花火も打ち上げられるし楽器を鳴らしても問題はない。 何故それをしない?)

 花火や楽器の演奏の中止を考えない魔王に、部下は苛立ちを隠せない。
 それに気づいたのかミザリーは、悪戯っぽい笑みを浮かべながら答えた。

「だってバレるかバレないかハラハラしながら、御主人様と街の中を散歩するのよ。 当日何が起きるか誰にも分からない、考えるだけで興奮しちゃうわ」

 何故魔王が花火や楽器の演奏を中止しないのか、ようやく部下も理解する。
 とどのつまり魔王は、人目に晒される可能性で興奮する変態さんだったのだ。
 ならば派手な花火や楽器の演奏は、彼女にとって羞恥心を高めるスパイスの1つでしかない。

 部下は魔王の望みを叶えるべく、より羞恥心を刺激しそうな花火や演奏時の楽器を選び始めたのだった。



 それから半月ほど経った雲1つ無い晴天の日、ついにパレードの当日をむかえる。
 しかし魔王ミザリーをはじめとする牝犬一同は、朝から打ち上げられている花火の音に戦々恐々としていた。

「ね、ねえ、夜にもあの花火を使うの?」

「音や光は何とかするって言ってたけど、今からでも変更は可能なの?」

 夜の部のパレードを心配する声が次々とあがる。
 その理由は花火が打ち上がる度に、音の振動で全身を大きく揺さぶられるからだ。

「それに花火だけじゃないわよ、演奏している楽団が使用しているのもドラムなどの打楽器が中心。 振動で窓ガラスも共鳴しているわ」

 よく見れば演奏する曲に合わせるように、周囲の窓ガラスも音を立てている。
 どうやら都で使われている窓ガラスと共鳴しやすいように、使用する楽器も吟味をされているようだ。

 しかしここまできて、もう引き下がることはできない。
 牝犬達の不安をよそに、昼の部のパレードが始まった。

「こうなったら、もう運を天に任せてやるしかない。 まずはこの昼の部のパレードを成功させてからだ」

 ディザイアは楽団の演奏をバックに、手を振りながら歩き始める。
 その横で共に歩くのは、新王妃となったクレア。
 新たな国王夫妻を祝福する花火が一斉に打ち上げられる、身体を揺らすその振動に内心でおびえながらディザイアは切に願った。

(どうか今日1日、夜のパレードまで無事に終わりますように……)
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