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断罪塔の裁きの章
全神教の終幕
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「早く地上へお逃げください、そして自らが信じる神の教えを伝えるのです」
「あなた達が居るべき場所はここではありません、行きなさい!」
リリアとリィナが女性信者やシスターを誘導している、一方のセラは
腐敗の塊である聖職者を殉教の先へと誘う。
「ま、待て! これには理由が!?」
ドルルルル……!
「無理やり手篭めにする理由なんて、聞く訳無いでしょ」
裁きが与えられたのは男性だけとは限らない、己の地位欲の為に無垢な少女達を
騙して差し出していた女性も含まれていた。
「ありがとう、この教会内は醜い者達が巣食っておりました。 これからは正しい者の手で導かれていく事でしょう、私はシスター達を外に案内してきますので失礼させて頂きますね」
「あなたはここに残ってください、イメリア主教。 あなたが新人のシスター達を騙して、総大主教の部屋まで案内していた事は調べがついています。 一体何人の女の子を犠牲にすれば、たった数年で修道女から主教まで昇進出来るのかしら?」
「少しだけ私の話を聞いてくれない? そうすれば、きっと分かってもらえるわ」
ドルルルル……!
セラはイメリアの話を聞く前に、ガトリンクガンで返答した。
「女の姿をした汚物の言葉を聞く価値なんて無いわ、騙された娘達の中には命を絶った娘も居たそうよ。 地獄で好きなだけ言い訳していなさい」
こうして総本部内で救う者と裁く者が、それぞれの役目を果たしていた。
「ヴィクトル様、一大事です! この総本部が何者かの手によって、襲撃を受けております。 既にイメリア主教以下数名の幹部が、殺害されました」
「……落ち着きなさい、そう慌てなくても魔装兵団がここに殺到します。 それまで持ちこたえれば済む話です」
慌てる側近を尻目に、総大主教のヴィクトルは落ち着いた様子で受け答えする。
だが心の内側では出来の悪い弟に、怒りを露にしていた。
(まったく何をしておるのだヴェントルの奴は、こんな所にまでガキ共の侵入を許しおって……。 まあ良い、これほどの騒ぎを起こしているのだ。 すぐに兵団の連中も気付き、応援に駆けつけるであろう)
とりあえず時間稼ぎをする為に、報告に来た側近に状況の再確認を命じた。
「相手の人数がまだ不明です、あなたは部下数名を連れて情報を集めてきなさい。 くれぐれも近づこうとはしないように、危険を感じたらすぐに戻るのですよ」
「はい、お心遣い感謝いたします」
深くお辞儀をして部屋を退出する側近。
だが総大主教が近づかないように命じたのには、理由がある。
自分の居る館まで敵がたどり着いた場合、肉の壁の1つとして利用する為に他ならなかった。
ヴィクトルは次いで隣に控えていた者たちに、柔和な笑みを浮かべながら命令を与える。
「さて私の可愛い天使達よ、お前達にも役に立ってもらうとしよう。 着ている物を全て脱ぐのだ」
ドルルルル……!
部屋の前の通路で死神の鎌の音が聞こえる、しばらくして部屋の扉がノックされた。
「……入りたまえ、鍵は掛かっていない」
静かに扉が開かれる、中に入ってきたのは報告にあった3人の少女達であった。
「ヴィクトル総大主教ですね?」
「そうだ、しかし良くここまで辿り着けたものだな。 だがもうじき魔装兵団が到着する。 お前達は、どう命乞いをするつもりなのだ?」
事実をまったく知らない男に、セラはありのままを話した。
「魔装兵団ならとっくの昔に壊滅させたわよ、全員があなたが来るのを待っている筈よ」
「なっ、そんな馬鹿な!?」
何らかの方法で結界を抜け、ここまでやってきた。
そうヴィクトルは思い込んでいた。
確かに結界は抜けたが、その直後に魔装兵団を壊滅に追い込んでいる。
「総大主教、ヴィクトル。 多くの無垢な少女をその毒牙にかけ、食い物にしてきた罪。 このわたしの手で裁きを与えます」
ガトリンクガンを向けると、ヴィクトルは隠れさせていた者たちに声をかけた。
「お前達、出番だ。 その身の全てで私を守りなさい」
声と同時にクローゼットの中やカーテンの陰から、隠れていた少女達が一斉に飛び出しヴィクトルを守る壁となった。
少女達は何も身に着けておらず、瞳もどこか空ろだ。
「それを撃てば、この天使達も巻き込むことになるぞ。 お前にはそんな真似をする度胸もあるまい」
「本当に見下げ果てた男ね、そこまでして命が惜しい?」
「無論だ、私さえ生きていれば全神教は幾らでも再生出来る。 天使達をこのような格好で連れ歩くのは忍びないが、これで失礼させてもらうよ」
ヴィクトルは薬で自我を失わせた少女達を盾にして、館を後にする。
しかし地上に出る隠し通路へ向かう途中、にじみ出る汗をぬぐいながら異変に気付いた。
(おかしい、なぜ敷地内が暑いのだ? ここは湖の底で、逆に涼しくなくてはいけないのに)
一方、壁となっている少女達が汗を出している様子は無い。
「ふふふ、暑いでしょ? 上を見れば、その理由が分かるわよ」
追いついたセラの言葉を聞いたヴィクトルが上を向くと、信じられない光景が広がっていた。
「な、なんだこれは!?」
総本部の天井全体が光り輝いていた、それは水の進入を防ぐ結界の外からのものだ。
「リィナに結界全体に弱いフラッシュレイを使ってもらっているの、結界は破れないけどビニールハウスの要領で内部の気温は上昇していくわ。 彼女達は既にリリアの結界で守らせてある、暑いと感じるのはあなただけよ」
ヴィクトルは背筋が凍りついた、目の前に居る少女は自分を蒸し焼きにするつもりなのだ!
結界を張って逃れようとするが、その度にリリアに破壊され意味を成さない。
徐々に力が抜けてゆき、その場に座り込んでしまった。
「それじゃあ、彼女達はわたしが責任をもって親御さんのもとに帰してあげるわね。 あなたの苦しむところなんて見せる価値も無いから、秘密基地の中に連れて行くけど」
朦朧とする意識の中見つめるヴィクトルの前で、セラは盾となっていた少女達にキスをしては秘密基地の中へ連れて行った……。
「さてと、これで残るはあなた1人となったわ。 何か言い残しておきたい言葉はある?」
「……何も無い、早く殺せ」
一切の謝罪や命乞いもしない姿は堂々としていた。
道を踏み外さなければ、きっと優れた指導者となっていたに違いない。
だが犯した罪にふさわしいだけの、死の恐怖を味わわせなければ罰にはならない。
セラはヴィクトルに罰を与えた。
「リィナ、もうフラッシュレイを止めていいわ。 彼への罰は、これでお終いだから」
セラは隠し通路の入り口へ向けてガトリンクガンを放つ、粉々になった瓦礫で穴は塞がり外に出る唯一の道は閉じられた。
「自決するなり、最後まで足掻いてみるなり好きにすれば良い。 でも足掻くつもりがあるなら、すぐにでも始めないと間に合わないわよ」
そう言い残すとセラは秘密基地の中に姿を消し、用件の済んだ総本部から立ち去った。
残されたヴィクトルは、身体を大の字にして休養を取る。
少しでも体力を回復しないと、瓦礫を取り除くことが難しかったからだ。
「……今にみていろ、必ず力を蓄え命乞いさせてやる!」
喉の渇きに耐えながら脱出する方法を考えていると、右手の先に冷たい感触がした。
横を向いてみると、右手が水で濡れていた。
すぐに口元に運ぶと、手についたわずかな水を飲み渇きを癒す。
それを何度か繰り返すと、ようやく意識がはっきりしてきた。
(これこそ命の水だな、だが何故都合良く水があるのだろうか?)
不思議に思ったヴィクトルが身を起こすと、その理由がよく分かった。
セラが下した罰の内容まで……。
隠し通路のすぐ手前まで、大きな水たまりが出来ていた。
セラはヴィクトルの館に入る前から、結界の一部に穴を開け水を流し込んでいたのだ。
このまま溺死させるつもりだと分かったヴィクトルは、慌てて瓦礫をどかし始める。
だが水はあっという間に膝の上まできてしまい、瓦礫をどかすのが困難となった。
(そうだ、結界を破壊しよう。 そうすれば、水面まで泳げれば何とかなる)
持てる力を集めて、結界に向け魔力を放射した。
何年、何十年、何百年とかけて作られた総本部の結界を破壊するのは惜しかったが、自分の命には代えられない。
そのヴィクトルの最後の足掻きは、リリアの結界によって阻まれた。
「う、うわぁあああああ!!」
慌てて近くの屋敷に逃げ込むヴィクトル、屋敷全体に結界を張り水の進入を防ぐが
屋敷の中にある水と食料には限りがあった。
(死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない!)
この日、全神教の総本部は湖の底に沈み長い歴史に幕を下ろした。
総大主教ヴィクトルの最期が、どのようなものであったか知る者は誰も居ない……。
「あなた達が居るべき場所はここではありません、行きなさい!」
リリアとリィナが女性信者やシスターを誘導している、一方のセラは
腐敗の塊である聖職者を殉教の先へと誘う。
「ま、待て! これには理由が!?」
ドルルルル……!
「無理やり手篭めにする理由なんて、聞く訳無いでしょ」
裁きが与えられたのは男性だけとは限らない、己の地位欲の為に無垢な少女達を
騙して差し出していた女性も含まれていた。
「ありがとう、この教会内は醜い者達が巣食っておりました。 これからは正しい者の手で導かれていく事でしょう、私はシスター達を外に案内してきますので失礼させて頂きますね」
「あなたはここに残ってください、イメリア主教。 あなたが新人のシスター達を騙して、総大主教の部屋まで案内していた事は調べがついています。 一体何人の女の子を犠牲にすれば、たった数年で修道女から主教まで昇進出来るのかしら?」
「少しだけ私の話を聞いてくれない? そうすれば、きっと分かってもらえるわ」
ドルルルル……!
セラはイメリアの話を聞く前に、ガトリンクガンで返答した。
「女の姿をした汚物の言葉を聞く価値なんて無いわ、騙された娘達の中には命を絶った娘も居たそうよ。 地獄で好きなだけ言い訳していなさい」
こうして総本部内で救う者と裁く者が、それぞれの役目を果たしていた。
「ヴィクトル様、一大事です! この総本部が何者かの手によって、襲撃を受けております。 既にイメリア主教以下数名の幹部が、殺害されました」
「……落ち着きなさい、そう慌てなくても魔装兵団がここに殺到します。 それまで持ちこたえれば済む話です」
慌てる側近を尻目に、総大主教のヴィクトルは落ち着いた様子で受け答えする。
だが心の内側では出来の悪い弟に、怒りを露にしていた。
(まったく何をしておるのだヴェントルの奴は、こんな所にまでガキ共の侵入を許しおって……。 まあ良い、これほどの騒ぎを起こしているのだ。 すぐに兵団の連中も気付き、応援に駆けつけるであろう)
とりあえず時間稼ぎをする為に、報告に来た側近に状況の再確認を命じた。
「相手の人数がまだ不明です、あなたは部下数名を連れて情報を集めてきなさい。 くれぐれも近づこうとはしないように、危険を感じたらすぐに戻るのですよ」
「はい、お心遣い感謝いたします」
深くお辞儀をして部屋を退出する側近。
だが総大主教が近づかないように命じたのには、理由がある。
自分の居る館まで敵がたどり着いた場合、肉の壁の1つとして利用する為に他ならなかった。
ヴィクトルは次いで隣に控えていた者たちに、柔和な笑みを浮かべながら命令を与える。
「さて私の可愛い天使達よ、お前達にも役に立ってもらうとしよう。 着ている物を全て脱ぐのだ」
ドルルルル……!
部屋の前の通路で死神の鎌の音が聞こえる、しばらくして部屋の扉がノックされた。
「……入りたまえ、鍵は掛かっていない」
静かに扉が開かれる、中に入ってきたのは報告にあった3人の少女達であった。
「ヴィクトル総大主教ですね?」
「そうだ、しかし良くここまで辿り着けたものだな。 だがもうじき魔装兵団が到着する。 お前達は、どう命乞いをするつもりなのだ?」
事実をまったく知らない男に、セラはありのままを話した。
「魔装兵団ならとっくの昔に壊滅させたわよ、全員があなたが来るのを待っている筈よ」
「なっ、そんな馬鹿な!?」
何らかの方法で結界を抜け、ここまでやってきた。
そうヴィクトルは思い込んでいた。
確かに結界は抜けたが、その直後に魔装兵団を壊滅に追い込んでいる。
「総大主教、ヴィクトル。 多くの無垢な少女をその毒牙にかけ、食い物にしてきた罪。 このわたしの手で裁きを与えます」
ガトリンクガンを向けると、ヴィクトルは隠れさせていた者たちに声をかけた。
「お前達、出番だ。 その身の全てで私を守りなさい」
声と同時にクローゼットの中やカーテンの陰から、隠れていた少女達が一斉に飛び出しヴィクトルを守る壁となった。
少女達は何も身に着けておらず、瞳もどこか空ろだ。
「それを撃てば、この天使達も巻き込むことになるぞ。 お前にはそんな真似をする度胸もあるまい」
「本当に見下げ果てた男ね、そこまでして命が惜しい?」
「無論だ、私さえ生きていれば全神教は幾らでも再生出来る。 天使達をこのような格好で連れ歩くのは忍びないが、これで失礼させてもらうよ」
ヴィクトルは薬で自我を失わせた少女達を盾にして、館を後にする。
しかし地上に出る隠し通路へ向かう途中、にじみ出る汗をぬぐいながら異変に気付いた。
(おかしい、なぜ敷地内が暑いのだ? ここは湖の底で、逆に涼しくなくてはいけないのに)
一方、壁となっている少女達が汗を出している様子は無い。
「ふふふ、暑いでしょ? 上を見れば、その理由が分かるわよ」
追いついたセラの言葉を聞いたヴィクトルが上を向くと、信じられない光景が広がっていた。
「な、なんだこれは!?」
総本部の天井全体が光り輝いていた、それは水の進入を防ぐ結界の外からのものだ。
「リィナに結界全体に弱いフラッシュレイを使ってもらっているの、結界は破れないけどビニールハウスの要領で内部の気温は上昇していくわ。 彼女達は既にリリアの結界で守らせてある、暑いと感じるのはあなただけよ」
ヴィクトルは背筋が凍りついた、目の前に居る少女は自分を蒸し焼きにするつもりなのだ!
結界を張って逃れようとするが、その度にリリアに破壊され意味を成さない。
徐々に力が抜けてゆき、その場に座り込んでしまった。
「それじゃあ、彼女達はわたしが責任をもって親御さんのもとに帰してあげるわね。 あなたの苦しむところなんて見せる価値も無いから、秘密基地の中に連れて行くけど」
朦朧とする意識の中見つめるヴィクトルの前で、セラは盾となっていた少女達にキスをしては秘密基地の中へ連れて行った……。
「さてと、これで残るはあなた1人となったわ。 何か言い残しておきたい言葉はある?」
「……何も無い、早く殺せ」
一切の謝罪や命乞いもしない姿は堂々としていた。
道を踏み外さなければ、きっと優れた指導者となっていたに違いない。
だが犯した罪にふさわしいだけの、死の恐怖を味わわせなければ罰にはならない。
セラはヴィクトルに罰を与えた。
「リィナ、もうフラッシュレイを止めていいわ。 彼への罰は、これでお終いだから」
セラは隠し通路の入り口へ向けてガトリンクガンを放つ、粉々になった瓦礫で穴は塞がり外に出る唯一の道は閉じられた。
「自決するなり、最後まで足掻いてみるなり好きにすれば良い。 でも足掻くつもりがあるなら、すぐにでも始めないと間に合わないわよ」
そう言い残すとセラは秘密基地の中に姿を消し、用件の済んだ総本部から立ち去った。
残されたヴィクトルは、身体を大の字にして休養を取る。
少しでも体力を回復しないと、瓦礫を取り除くことが難しかったからだ。
「……今にみていろ、必ず力を蓄え命乞いさせてやる!」
喉の渇きに耐えながら脱出する方法を考えていると、右手の先に冷たい感触がした。
横を向いてみると、右手が水で濡れていた。
すぐに口元に運ぶと、手についたわずかな水を飲み渇きを癒す。
それを何度か繰り返すと、ようやく意識がはっきりしてきた。
(これこそ命の水だな、だが何故都合良く水があるのだろうか?)
不思議に思ったヴィクトルが身を起こすと、その理由がよく分かった。
セラが下した罰の内容まで……。
隠し通路のすぐ手前まで、大きな水たまりが出来ていた。
セラはヴィクトルの館に入る前から、結界の一部に穴を開け水を流し込んでいたのだ。
このまま溺死させるつもりだと分かったヴィクトルは、慌てて瓦礫をどかし始める。
だが水はあっという間に膝の上まできてしまい、瓦礫をどかすのが困難となった。
(そうだ、結界を破壊しよう。 そうすれば、水面まで泳げれば何とかなる)
持てる力を集めて、結界に向け魔力を放射した。
何年、何十年、何百年とかけて作られた総本部の結界を破壊するのは惜しかったが、自分の命には代えられない。
そのヴィクトルの最後の足掻きは、リリアの結界によって阻まれた。
「う、うわぁあああああ!!」
慌てて近くの屋敷に逃げ込むヴィクトル、屋敷全体に結界を張り水の進入を防ぐが
屋敷の中にある水と食料には限りがあった。
(死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない!)
この日、全神教の総本部は湖の底に沈み長い歴史に幕を下ろした。
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