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新たなライバルが既に待機中
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カイが侯爵と話をしていた時、他の場所でも様々な動きが生じていた。
「例の者達はいつ頃到着するのだ? 大臣」
「明日出立の予定ですが、恐らく陸路を選ぶと思われます陛下」
大臣の報告を聞いて、陛下と呼ばれた国王が到着時期を予想する。
「そうか……では、王都に到着するのはおよそ1ヵ月半後か」
「念の為、王都周辺に出没する野盗達は近衛兵に討伐させておりますが……」
「その心遣いだけで十分だ、もう下がってよい」
頭を下げ部屋を退出しようとする大臣に、王がふと思い出したように声をかけた。
「すまぬが、ウミナをここへ呼んではもらえぬか? 大事な話を思い出した」
コンコン……。
ドアが数回ノックされる。
「どうぞ」
「し、失礼します」
静かにドアが開くと、桃色の髪を持つ少女が中に入ってきた。
「お義父様、お待たせしました」
「よい、呼び出したのは私だ。 こんな時間にすまない」
「い、いいえ。 ところで、どんなご用件ですか?」
少し俯きながら少女が訊ねると、王は用件を話し出す。
「彼の者達は明日出立の予定だ、恐らく王都の到着は1ヵ月半後だろう」
「お義父様には、無理なお願いをして本当に申し訳ありません」
デモンの襲撃と撃退の報が齎(もたら)された時、偶然王の隣にこの少女が居た事が今回リア達が王都に招請された大きな理由である。
「この報告書にある『カイ』という男が、そなたの探している者なのか?」
「おそらく間違いない筈です」
「……そうか」
王は立ち上がると、ウミナをそっと抱きしめた。
「そなたには長い間苦労を掛けてしまったな、許しておくれ」
「いいえ! 失踪中の王女が無事発見された事にして、召喚された私を匿ってくれた恩を返せると思えば、これくらいの事は苦労ではありません」
今から数年前、魔王が再び現れる事を予期した王は勇者の召喚を決意する。
そして一部の側近のみ知る中で召喚されたのが、現在ウミナと呼ばれている異世界より来た少女だった。
しかし誤算だったのは、この少女が勇者としての力を封印されていた事である!
「本来そなたではなく、そのカイという者が召喚される予定だったとは……。 私も最初に聞いた時は、流石に驚いたぞ」
王は行方不明となっていた第二王女の身代わりとする事を咄嗟に思いつき、少女にこの話を持ちかけたのだ。
病気で静養中の第ニ王女のウミナの屋敷が何者かに襲われ、馬車で逃走を図ったが1番近い集落の手前で崖から転落した。
襲撃した犯人達は近衛騎士が到着した際には既に全員自害しており、第三者からの依頼を受けて襲撃を行ったのは明らかだ。
しかしウミナ王女の遺体は発見されず、また遺留品も発見されなかったので安否の確認が取れないまま行方不明の扱いが続いていた。
ウミナがこれまで病気療養中を理由に、公の場でお披露目してこなかった事も幸いし、秘かに救出され匿っていたという王の言葉を疑う者は居なかったのである。
一部の人間を除いては……。
ベルモンド・グレイウッド公爵。
王の甥に当たるこの男がウミナとの婚姻を申し込んできたのは、ウミナが生まれた直後からだった。
地位欲の塊であるこの甥の申し出を、王は頑なに拒絶する。
玉座に座る為にウミナを妻にしようという魂胆を、隠そうともしないからだ。
「叔父上。 後継者となる王子が居ない以上、高貴な血を残すにはウミナと私が婚姻する事こそが、最良の案だとは思いませんか?」
「その話は何度もしている。 ウミナの夫となる者は、私とウミナの双方が認めた相手で無ければならぬ。 この国の未来を託すに相応しい、素晴らしき人間をな」
「……その口ぶりからすると、私にはその資質が無いと仰りたいのですか?」
怒りで身を震わせるベルモンド、相手が王で無ければ腰の剣を抜いていただろう。
「第一王女が帝国の后となって嫁いだ結果、次の王位継承者はウミナ王女を妻に娶った者となります。 だがその王女が居なくなった場合、王位を継承出来るのは一体誰か、よくお考えになる事ですな」
捨て台詞を吐いてその場を跡にするベルモンドを、王は呆れながら見ていた。
(愚かな……その場合真っ先に帝国が名乗りを上げると、想像する事も出来ないのか!? 帝国が娘を后に選んだ理由、それは近い将来この国を支配下に置く大義名分を得る為だ。 まあ、もっともその目論見はすぐに破綻するだろうが……)
このやり取りのすぐ後で、ウミナ王女が襲撃されていたのである。
ベルモンドへと繋がる証拠が見つからなかったので、それ以上の追求はされなかったがこの男が関与しているのは間違いない。
そして匿う為とはいえ娘の名を呼んでいる内に、王はこの少女に肉親と変わらない愛情を注ぐようになっていった。
それは王妃も同様で、ウミナは異世界で孤立せずに過ごす事が出来たのである。
「お義父様、ウミナ様はきっと生きております。 もしかしたら、私と同じように異世界で召喚されているかもしれません。 再び会える日を信じましょう」
「そうだな、そなたの願いも叶うのだ。 私も娘が無事戻ってくる日を、楽しみに待つ事にしよう」
部屋を退出したウミナは自室へ戻りながら、1度も会った事も無い本物の王女に思いを馳せる。
(本物のウミナ王女は今頃、どこで何をなされているのかしら?)
自身を助けてくれた義父の望みが叶う事を、心から願わずにはいられなかった。
プルルル……♪
自室に戻ったウミナの胸元から、突然何やら電子音が鳴り始める。
懐から取り出した物、それは1台のスマホだった!
「もしもし?」
『海(うみ)、久しぶりだな。 そちらの世界でも、相変わらず元気か?』
「パパ! うん、お義父様やお義母様のお陰で無事に過ごせているわ」
『そうか、良かった。 こうして1ヶ月ぶりにお前の無事を確認出来て、ホッとしたよ』
理屈はよく分からないが、何故か1ヶ月に1度だけ日本と電波が通じる時が有る。
1時間ほどだが、テレビ通話も可能だ。
そして不思議な事に、携帯電話のバッテリーも減らなくなっていた。
『界(かい)の奴がいつ頃到着するか、分かったか海?』
「明日出発らしいけど海路ではなく陸路を使うみたいだから、義兄さんが王都に着くのは1ヵ月半後みたい」
『分かった、来月電話する時はまた王と話をさせてくれないか? 今までの礼をぜひ伝えておきたい』
「うん、分かった。 それじゃあ、また来月。 ママにもよろしく言っておいてね」
プツッ、ツーツーツー。
通話を終えたウミナは、ベッドへとダイブする。
「はぁ、あと1ヵ月半か……」
スマホを手に持つと、画面を操作して1枚の写真を表示した。
そこに映し出されていたのは、在りし日の海と界が並んで撮った写真だ。
「元の世界に帰る前にお義兄ちゃんへ……この想いを伝えないと」
王都で新たなライバルが待ち構えている事など、リアとアニスには知る由も無い。
義理の妹というオプションまで装備した強敵が……。
一方その頃人々を苦しめ世界の滅亡を企む諸悪の根源たる妖魔(デモン)の巣窟においても、1つの大きな波が起きようとしている。
『我が名はリアベル、破壊と殺戮を司る魔王リアベルじゃ』
目の前の娘がそう言って指を鳴らすと、黒い炎に包まれて映像が消える。
それを見ていた者達が驚く中、上座に座っていた者が急に椅子から転げ落ちた。
ガラガラ、ガッシャーン!!
「無理、無理無理無理! アレは、アレだけはダメ! 絶対に近づかない事! そんな事をしたら、私は今すぐここから逃げるから!」
涙目を浮かべながら懇願するその姿に、傍に居たデモンが問い掛ける。
「魔王デモウミナ様、どうされましたか!?」
デモウミナと呼ばれた女性、いや外見は少女に近いかもしれない。
小さな黒い角と羽、おまけに尻尾まで生やした少女は、室内に轟く大声で叫んだ!
「私は前世で、あの女に殺されているのよ!!」
デモンの幹部の間で、強い衝撃が走った……。
「例の者達はいつ頃到着するのだ? 大臣」
「明日出立の予定ですが、恐らく陸路を選ぶと思われます陛下」
大臣の報告を聞いて、陛下と呼ばれた国王が到着時期を予想する。
「そうか……では、王都に到着するのはおよそ1ヵ月半後か」
「念の為、王都周辺に出没する野盗達は近衛兵に討伐させておりますが……」
「その心遣いだけで十分だ、もう下がってよい」
頭を下げ部屋を退出しようとする大臣に、王がふと思い出したように声をかけた。
「すまぬが、ウミナをここへ呼んではもらえぬか? 大事な話を思い出した」
コンコン……。
ドアが数回ノックされる。
「どうぞ」
「し、失礼します」
静かにドアが開くと、桃色の髪を持つ少女が中に入ってきた。
「お義父様、お待たせしました」
「よい、呼び出したのは私だ。 こんな時間にすまない」
「い、いいえ。 ところで、どんなご用件ですか?」
少し俯きながら少女が訊ねると、王は用件を話し出す。
「彼の者達は明日出立の予定だ、恐らく王都の到着は1ヵ月半後だろう」
「お義父様には、無理なお願いをして本当に申し訳ありません」
デモンの襲撃と撃退の報が齎(もたら)された時、偶然王の隣にこの少女が居た事が今回リア達が王都に招請された大きな理由である。
「この報告書にある『カイ』という男が、そなたの探している者なのか?」
「おそらく間違いない筈です」
「……そうか」
王は立ち上がると、ウミナをそっと抱きしめた。
「そなたには長い間苦労を掛けてしまったな、許しておくれ」
「いいえ! 失踪中の王女が無事発見された事にして、召喚された私を匿ってくれた恩を返せると思えば、これくらいの事は苦労ではありません」
今から数年前、魔王が再び現れる事を予期した王は勇者の召喚を決意する。
そして一部の側近のみ知る中で召喚されたのが、現在ウミナと呼ばれている異世界より来た少女だった。
しかし誤算だったのは、この少女が勇者としての力を封印されていた事である!
「本来そなたではなく、そのカイという者が召喚される予定だったとは……。 私も最初に聞いた時は、流石に驚いたぞ」
王は行方不明となっていた第二王女の身代わりとする事を咄嗟に思いつき、少女にこの話を持ちかけたのだ。
病気で静養中の第ニ王女のウミナの屋敷が何者かに襲われ、馬車で逃走を図ったが1番近い集落の手前で崖から転落した。
襲撃した犯人達は近衛騎士が到着した際には既に全員自害しており、第三者からの依頼を受けて襲撃を行ったのは明らかだ。
しかしウミナ王女の遺体は発見されず、また遺留品も発見されなかったので安否の確認が取れないまま行方不明の扱いが続いていた。
ウミナがこれまで病気療養中を理由に、公の場でお披露目してこなかった事も幸いし、秘かに救出され匿っていたという王の言葉を疑う者は居なかったのである。
一部の人間を除いては……。
ベルモンド・グレイウッド公爵。
王の甥に当たるこの男がウミナとの婚姻を申し込んできたのは、ウミナが生まれた直後からだった。
地位欲の塊であるこの甥の申し出を、王は頑なに拒絶する。
玉座に座る為にウミナを妻にしようという魂胆を、隠そうともしないからだ。
「叔父上。 後継者となる王子が居ない以上、高貴な血を残すにはウミナと私が婚姻する事こそが、最良の案だとは思いませんか?」
「その話は何度もしている。 ウミナの夫となる者は、私とウミナの双方が認めた相手で無ければならぬ。 この国の未来を託すに相応しい、素晴らしき人間をな」
「……その口ぶりからすると、私にはその資質が無いと仰りたいのですか?」
怒りで身を震わせるベルモンド、相手が王で無ければ腰の剣を抜いていただろう。
「第一王女が帝国の后となって嫁いだ結果、次の王位継承者はウミナ王女を妻に娶った者となります。 だがその王女が居なくなった場合、王位を継承出来るのは一体誰か、よくお考えになる事ですな」
捨て台詞を吐いてその場を跡にするベルモンドを、王は呆れながら見ていた。
(愚かな……その場合真っ先に帝国が名乗りを上げると、想像する事も出来ないのか!? 帝国が娘を后に選んだ理由、それは近い将来この国を支配下に置く大義名分を得る為だ。 まあ、もっともその目論見はすぐに破綻するだろうが……)
このやり取りのすぐ後で、ウミナ王女が襲撃されていたのである。
ベルモンドへと繋がる証拠が見つからなかったので、それ以上の追求はされなかったがこの男が関与しているのは間違いない。
そして匿う為とはいえ娘の名を呼んでいる内に、王はこの少女に肉親と変わらない愛情を注ぐようになっていった。
それは王妃も同様で、ウミナは異世界で孤立せずに過ごす事が出来たのである。
「お義父様、ウミナ様はきっと生きております。 もしかしたら、私と同じように異世界で召喚されているかもしれません。 再び会える日を信じましょう」
「そうだな、そなたの願いも叶うのだ。 私も娘が無事戻ってくる日を、楽しみに待つ事にしよう」
部屋を退出したウミナは自室へ戻りながら、1度も会った事も無い本物の王女に思いを馳せる。
(本物のウミナ王女は今頃、どこで何をなされているのかしら?)
自身を助けてくれた義父の望みが叶う事を、心から願わずにはいられなかった。
プルルル……♪
自室に戻ったウミナの胸元から、突然何やら電子音が鳴り始める。
懐から取り出した物、それは1台のスマホだった!
「もしもし?」
『海(うみ)、久しぶりだな。 そちらの世界でも、相変わらず元気か?』
「パパ! うん、お義父様やお義母様のお陰で無事に過ごせているわ」
『そうか、良かった。 こうして1ヶ月ぶりにお前の無事を確認出来て、ホッとしたよ』
理屈はよく分からないが、何故か1ヶ月に1度だけ日本と電波が通じる時が有る。
1時間ほどだが、テレビ通話も可能だ。
そして不思議な事に、携帯電話のバッテリーも減らなくなっていた。
『界(かい)の奴がいつ頃到着するか、分かったか海?』
「明日出発らしいけど海路ではなく陸路を使うみたいだから、義兄さんが王都に着くのは1ヵ月半後みたい」
『分かった、来月電話する時はまた王と話をさせてくれないか? 今までの礼をぜひ伝えておきたい』
「うん、分かった。 それじゃあ、また来月。 ママにもよろしく言っておいてね」
プツッ、ツーツーツー。
通話を終えたウミナは、ベッドへとダイブする。
「はぁ、あと1ヵ月半か……」
スマホを手に持つと、画面を操作して1枚の写真を表示した。
そこに映し出されていたのは、在りし日の海と界が並んで撮った写真だ。
「元の世界に帰る前にお義兄ちゃんへ……この想いを伝えないと」
王都で新たなライバルが待ち構えている事など、リアとアニスには知る由も無い。
義理の妹というオプションまで装備した強敵が……。
一方その頃人々を苦しめ世界の滅亡を企む諸悪の根源たる妖魔(デモン)の巣窟においても、1つの大きな波が起きようとしている。
『我が名はリアベル、破壊と殺戮を司る魔王リアベルじゃ』
目の前の娘がそう言って指を鳴らすと、黒い炎に包まれて映像が消える。
それを見ていた者達が驚く中、上座に座っていた者が急に椅子から転げ落ちた。
ガラガラ、ガッシャーン!!
「無理、無理無理無理! アレは、アレだけはダメ! 絶対に近づかない事! そんな事をしたら、私は今すぐここから逃げるから!」
涙目を浮かべながら懇願するその姿に、傍に居たデモンが問い掛ける。
「魔王デモウミナ様、どうされましたか!?」
デモウミナと呼ばれた女性、いや外見は少女に近いかもしれない。
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