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謎の漂着物
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買い出しに行く無駄飯喰い3人衆が乗る馬車を見送ったカイ達一行は、のんびりと午後のティータイムを楽しんでいた。
魚を獲りに行くと言ってスラミンが出かけたが、何故か5分もしない内に戻ってくる。
「カイ様、砂浜に何か人の首が落ちてる。 拾ってきた方が良い?」
戻ってきたスラミンの物騒な質問を聞いて、優雅に飲んでいた一同は同時に吹き出す。
「げほげほっ! 人の首だって!?」
「うん、まだ生きてた」
「まだ生きてたって……。 普通、首だけになったら死んでるわよ」
スラミンのどこかおかしい返事を聞いて、カイはあごに手を当てて考え始める。
(またカイったら、考え事を始めて……)
すっかり見慣れてしまった光景にリアが呆れていると、カイがやけに真面目な顔をして皆に指示を与え始めた。
「とりあえず皆で見に行こう、何か嫌な予感がする。 念の為、1人は周囲にシールドを張っておく事。 油断すると痛い目を見るかもしれないぞ」
カイは真剣だが、他の4人はそこまで本気で聞こうとはしない。
デタラメな強さを誇る彼を上回るような存在を、想像出来なかったのである。
砂浜に着くとたしかに生首が1つ、打ち上げられていた。
透き通るような青く長い髪、どうやら女性みたいである。
カイが恐る恐る近づこうとした時、首が突如転がり彼と目が合う。
まだあどけさも残る、少女の顔。
「……………」
「……………」
無言で見つめ合う事ほんの数秒だったが、少女の口が異様な大きさに開くと聞いた全員の背筋が凍る声で短く呟いた。
「……見つけた」
『周囲の空気が、その瞬間凍りついたように感じた』
リア達はこの時の出来事を、後にそう語っている。
元魔王や勇者達に恐怖を感じさせる声、凡人には検討も付かない。
硬直していると少女の首の根元から、無数の触手が伸び始める。
全員の本能が警報を鳴らし始めた、この場に居るのは危険だと。
その内の数本が、1番近くに居たウミに襲い掛かった!
勇者の力に目覚めているとはいえ、その力を他の仲間と同じように使いこなせないウミは、避けるのが一瞬遅れる。
「遅い」
眼前に迫る触手、ウミは思わず目を塞いだ。
「あぶない!」
その時、ウミのピンチを救ったのは義兄でもあるカイ。
触手を手で弾きながら、少し離れた場所まで義妹を抱き抱えて移動した。
「お義兄ちゃん!?」
「ったく、だから油断すると痛い目を見ると言っただろうが! お前の今の力じゃ戦闘は無理だ、離れた所で他に被害を出さないようシールドを張っていてくれ」
「分かった……ごめんね、お義兄ちゃん」
唇をかみ締めながら答えるウミ、悔しさで涙をこらえているのが分かる。
カイはそんな義妹の頭を撫でて慰めると、生首少女の前に立った。
「よくも、俺の可愛い義妹を傷つけようとしてくれたな。 容赦しねぇから覚悟しろ」
普段は意識的に抑えている力の封印を、カイは自ら解いた。
その途端、膨大な量の魔力が奔流となって溢れ出し、ウミが張ろうとしていたシールドを内側から破ろうとする。
(これが……お義兄ちゃんの本気!? このままじゃ、シールドがもたない!)
急いでシールドを展開させようと、力を込めるウミ。
だがカイの力はそれを上回り、シールドに少しずつ細かいヒビが入り始めた。
「このままだとウミが耐え切れないか……。 リア、ウミの援護に回ってくれ!」
「何で私なの? 他にも得意そうなのが居るじゃない!」
「黙って言うことを聞け! こいつがヤバイってのは、お前でも分かるだろうが!?」
有無を言わせない口調で叫ぶカイ、ならば尚の事攻撃に秀でた自分も加わるべきだろうとリアは考える。
その疑問に対する答えをカイは、彼女だけに見せた。
「頼む、俺が持ち堪えている間にアニス達も出来るだけ離してくれ。 少しでも気を抜くと、こうなっちまうからな」
リアの瞳には腹部に穴を空けて、痛みに耐えているカイの姿が映る。
(出血を止めてアニス達の目を誤魔化してはいるが、いつまで騙し続けられるか……)
本来であればすぐに傷の再生が始まるのに、この敵の攻撃に対してはそれが働かない。
恐らく勇者や魔王などの再生能力を熟知した上で、このような化け物を産み出せる存在が居るのだとカイは確信した。
被害をまったく気にしなければ、幾らでもこの化け物に近づける。
しかし近づく間にこの化け物の触手は、大切な義妹や主であるリア達を襲う。
一歩間違えば致命傷にもなりかねない攻撃に、彼女達を晒させる訳にいかない。
カイは化け物の放つ攻撃を全て防ぐ一方で、仲間に指示を与えつつ反撃の機会を窺う。
だが時間が経つにつれて負うケガも増え、誰の目も誤魔化せない程になっていた。
(カイ様……)
強敵を前に一歩も退かないカイを、スラミンはじっと見つめている。
(カイ様を、これ以上傷つけさせたりはしない!)
ある決心を固めたスラミンは身体を液状に変えると、砂の中に潜り移動を開始した。
身体を細かく分裂させながら……。
魚を獲りに行くと言ってスラミンが出かけたが、何故か5分もしない内に戻ってくる。
「カイ様、砂浜に何か人の首が落ちてる。 拾ってきた方が良い?」
戻ってきたスラミンの物騒な質問を聞いて、優雅に飲んでいた一同は同時に吹き出す。
「げほげほっ! 人の首だって!?」
「うん、まだ生きてた」
「まだ生きてたって……。 普通、首だけになったら死んでるわよ」
スラミンのどこかおかしい返事を聞いて、カイはあごに手を当てて考え始める。
(またカイったら、考え事を始めて……)
すっかり見慣れてしまった光景にリアが呆れていると、カイがやけに真面目な顔をして皆に指示を与え始めた。
「とりあえず皆で見に行こう、何か嫌な予感がする。 念の為、1人は周囲にシールドを張っておく事。 油断すると痛い目を見るかもしれないぞ」
カイは真剣だが、他の4人はそこまで本気で聞こうとはしない。
デタラメな強さを誇る彼を上回るような存在を、想像出来なかったのである。
砂浜に着くとたしかに生首が1つ、打ち上げられていた。
透き通るような青く長い髪、どうやら女性みたいである。
カイが恐る恐る近づこうとした時、首が突如転がり彼と目が合う。
まだあどけさも残る、少女の顔。
「……………」
「……………」
無言で見つめ合う事ほんの数秒だったが、少女の口が異様な大きさに開くと聞いた全員の背筋が凍る声で短く呟いた。
「……見つけた」
『周囲の空気が、その瞬間凍りついたように感じた』
リア達はこの時の出来事を、後にそう語っている。
元魔王や勇者達に恐怖を感じさせる声、凡人には検討も付かない。
硬直していると少女の首の根元から、無数の触手が伸び始める。
全員の本能が警報を鳴らし始めた、この場に居るのは危険だと。
その内の数本が、1番近くに居たウミに襲い掛かった!
勇者の力に目覚めているとはいえ、その力を他の仲間と同じように使いこなせないウミは、避けるのが一瞬遅れる。
「遅い」
眼前に迫る触手、ウミは思わず目を塞いだ。
「あぶない!」
その時、ウミのピンチを救ったのは義兄でもあるカイ。
触手を手で弾きながら、少し離れた場所まで義妹を抱き抱えて移動した。
「お義兄ちゃん!?」
「ったく、だから油断すると痛い目を見ると言っただろうが! お前の今の力じゃ戦闘は無理だ、離れた所で他に被害を出さないようシールドを張っていてくれ」
「分かった……ごめんね、お義兄ちゃん」
唇をかみ締めながら答えるウミ、悔しさで涙をこらえているのが分かる。
カイはそんな義妹の頭を撫でて慰めると、生首少女の前に立った。
「よくも、俺の可愛い義妹を傷つけようとしてくれたな。 容赦しねぇから覚悟しろ」
普段は意識的に抑えている力の封印を、カイは自ら解いた。
その途端、膨大な量の魔力が奔流となって溢れ出し、ウミが張ろうとしていたシールドを内側から破ろうとする。
(これが……お義兄ちゃんの本気!? このままじゃ、シールドがもたない!)
急いでシールドを展開させようと、力を込めるウミ。
だがカイの力はそれを上回り、シールドに少しずつ細かいヒビが入り始めた。
「このままだとウミが耐え切れないか……。 リア、ウミの援護に回ってくれ!」
「何で私なの? 他にも得意そうなのが居るじゃない!」
「黙って言うことを聞け! こいつがヤバイってのは、お前でも分かるだろうが!?」
有無を言わせない口調で叫ぶカイ、ならば尚の事攻撃に秀でた自分も加わるべきだろうとリアは考える。
その疑問に対する答えをカイは、彼女だけに見せた。
「頼む、俺が持ち堪えている間にアニス達も出来るだけ離してくれ。 少しでも気を抜くと、こうなっちまうからな」
リアの瞳には腹部に穴を空けて、痛みに耐えているカイの姿が映る。
(出血を止めてアニス達の目を誤魔化してはいるが、いつまで騙し続けられるか……)
本来であればすぐに傷の再生が始まるのに、この敵の攻撃に対してはそれが働かない。
恐らく勇者や魔王などの再生能力を熟知した上で、このような化け物を産み出せる存在が居るのだとカイは確信した。
被害をまったく気にしなければ、幾らでもこの化け物に近づける。
しかし近づく間にこの化け物の触手は、大切な義妹や主であるリア達を襲う。
一歩間違えば致命傷にもなりかねない攻撃に、彼女達を晒させる訳にいかない。
カイは化け物の放つ攻撃を全て防ぐ一方で、仲間に指示を与えつつ反撃の機会を窺う。
だが時間が経つにつれて負うケガも増え、誰の目も誤魔化せない程になっていた。
(カイ様……)
強敵を前に一歩も退かないカイを、スラミンはじっと見つめている。
(カイ様を、これ以上傷つけさせたりはしない!)
ある決心を固めたスラミンは身体を液状に変えると、砂の中に潜り移動を開始した。
身体を細かく分裂させながら……。
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