とあるVRMMOにおける平凡じゃない日常

いけお

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第19話 ようやく出てきた、ソーリー(総理)のフルネーム

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「ねえ、総理。名前何でしたっけ?」

ラッキーこと多音は夕食時にそんな事を言い出し、ゲーム内での報告を兼ねて私邸に来ていた裁居田を含む他の全員が啜っていた味噌汁を吹きそうになった。

「おいっ多音!いきなり何て事を聞こうとするんだ!?かなり失礼だぞ、それって」

「え~!?いつも『総理』か『ソーリー』としか言ってなかったから、名前忘れちゃいましたよ~」

多音は失礼な事を言っているが、もっと失礼なのはこの話を書こうとする直前まで総理のフルネームを全く考えていなかった書いている自分かもしれないが・・・。なので、総理にフルネームを付ける事に致します。

「私の名前は清水 真泉(すみ ますみ)だ。しみず と書いて すみ と読むからよく間違われるがな」

「あ~だから、すみません で ソーリーなんですね!総理をもじってソーリーにしているのかと思ってましたよ~♪」

多音はソーリーの名前の由来に気が付いて笑いながら話す。だが、自分も今まで総理だからソーリーと思い込んでいたので内心動揺していた。見ると静流と裁居田さんの視線が自分に向いていた、多分気付かれている!

「あ~その~なんだ~裁居田さん、ゲーム内の報告で来たそうですが自分達もこの場で聞いていて問題無いですか?まずい様でしたら、夕食を食べたら席を外しますが」

上手く誤魔化したつもりだったが、2人のやや生暖かい視線にバレバレだと気付かされ落ち込みそうになった。

「あ、大丈夫ですよ。実は今日の報告の中には皆さんが先日関わった1件も含まれておりますので」

(先日関わった?俺達4人何かしたっけ!?)

裁居田さんはソーリーの名の由来に関する自分の罰の悪さを感じ取ってくれたのか、そのままスルーしてくれた。有難う、裁居田さん!代わりに静流の向けてくれる微笑ましい笑みがこの後寝室でお説教を受ける事を予感させてくれた・・・。

その後、何事も無かった様に夕食を食べ終え皆で食器を片付けた後居間でゲーム内の報告を一緒に聞く事となった。まずはゲームのユーザー数の変化に付いてでサービス開始直後のお仕置き事件でかなりの数の退会者を出したものの、それ以降は他のゲームよりも晒し行為やPK行為等に対する罰が重く複数の国が絡んでいるのが分かっている所為かアカウント類のセキュリティへの安心感でユーザーの数は徐々に戻りつつあるそうとの事だった。

「では次ですが、これは皆さんが先日24人計4つのパーティーを狩りの余波に巻き込んでしまった件なのですが・・・」

(あ、あの時の事かそういえばジャッジ(裁居田さん)に結局報告するの忘れてた)

「会話のログの内容から大体予想が付くのですが・・・イセアさん、もっと感情を込めておいてください。棒読み丸出しで他のスタッフも聞いていて呆れてましたよ。それと、ソーリー。裁きの槍雨で地面に突き刺さった槍の何本かがギャンブルメテオの衝撃波で飛ばされたプレイヤーに刺さるのを見てスルーするのは止して下さい!そして1番問題なのはラッキー!あの24人は全員死に戻りしているのにこの件の報告もしないで隕石が落ちる所を見てはしゃぎ回らない!!お前は一応、公務員だっていう自覚を持て!?」

だんだん裁居田さんの口調が怒り始めてきたっていうかソーリー、あのメテオで飛ばされているプレイヤーに槍が刺さるのに気が付いていたのにスルーしてたの!?自分や静流に見せていないけど結構怖い一面を持っているのかもしれないな。

「一応って何ですか!一応って!?わたしは毎日一生懸命働いていますよ~!そりゃ時々は小さな失敗する時だって有りますけど・・・」

「お前の言う小さな失敗は大問題なんだよ!?今日やらかした事を皆に言ってみろ、全員納得するから!?」

(何かまたやっちゃったのかな?先日みたいな重婚騒動みたいな大事になってなければいいんだけど)

「え~別に大した事じゃ無かったじゃないですか?えとですね、今日うっかりPCのボタンを押し間違えたら警視総監が巡査に降格の上に離島の駐在所勤務になりそうになっただけです」

「今、同僚の間でドジッタネをゲーム内に24時間常駐させた方が国の為になるのかもしれないって意見まで出る始末ですよ!?怒りたくなる気持ち分かってもらえますよね?」

ラッキーを除く3人は納得して頷いた、確かにゲーム内に隔離した方が良いレベルかもしれない。

「みんなヒッド~い!ふんだ、明日は失敗しない所をみんなに見せ付けてやりますから!」

「頼むからムキにならないでくれ、お前がムキになるとかえって被害が大きくなる」

その後、ラッキーをなだめたジャッジは例の24人の中から通報が有った事やこれまでにも同様の問題を起こしていた事から通報を却下した事などを報告してくれた。そして、更に幾つかの報告をした後におもむろに俺とシズル、ラッキーに視線を向けるとやや重い口調で言ってきた。

「すいませんが、ここから先は総理と2人きりで話をさせて頂きます。別室に場所を移しますので、3人はそのままで結構です」

そう言うと総理と裁居田さんは別室の俺達3人も入る事を禁じられている部屋に場所を移した、残された俺達は明日以降の狩りの予定などを話しながら2人が戻ってくるのを待つ事にした。別室に入った総理は、部屋の鍵をかけた。この部屋は内側にしか鍵が無い為外から鍵を開ける事は出来ない、本当に秘密にしておきたい話し合いをする為に防音設備も整え外部に会話の内容が漏れない様にされている。

「さてと、裁居田君。今日の本題に入るとするか」

「ええ、総理。これからする会話は3人には絶対に聞かせられませんからね。特にイセア君やシズルさんには」

「そうだな、この事を2人が知ったら我々に不信感を持たれてしまうだろうか?」

「2人でしたら大丈夫ですよ、最初はショックを受けるでしょうが我々の本意にもきっと気付いてもらえる筈です」

「そうあって欲しいものだな、それで例の件はどんな状況で推移している?」

「はい、Aはこれまでに仮想世界で身体の1部を失う体感を50回と銃弾や刃物による死の体感を20回に化学兵器や爆発物等による死傷体験を30回の計100回体感して頂き貴重なデータを回収させて貰いました。彼の脳波などのデータは関係国に既に転送済みで近い内に各国でもAと同様の囚人から臨床データを回収する模様です。死刑が世界から廃止される日も徐々に近づいてきています」

「うむ、それと以前提案したフリーファンタジーオンラインの完全無料化は実現しそうかね?」

「規約の1部に事故防止の為に脳波などのデータをサンプリングする場合がございます等付け加える必要が有りますが、プレイヤー達がゲーム内で受ける5感を蓄積していけばそのデータの価値は無料化しても十分採算の取れる物になると判断します」

「なるほど分かった、ゲームを使った人体実験と以前言われたがやっている事はその通りだから正直反論出来ないよ」

「ですが、現実では目の見えない方でもあちらの世界では見える様になり耳の聞こえない方も普通に会話が出来る様になります。まだ後どれ位の時間が掛かるか分かりませんが、今の私達の子供たちが大人になる頃にはARとVRを融合させて目の見えない方や耳の不自由の方でも現実世界で普通に暮らせる様になっていると期待しています」

「そうだな、更に将来的には何らかの理由で手足を失ってしまった人達の為に義手や義足も思い通りに動かせる様にしていきたいものだ」

「ええ、ただ死刑を廃止する為のデータ収集目的でこのゲームを開発した訳では無いのですがあのお仕置き事件の際は説明が不足していましたからね」

「うむ、将来的な希望の為のデータ収集が本来の目的だったのだがあの時は正直に話してしまうと文字通りの人体実験と叩かれてサービス中止にまで追い込まれていただろう」

「今の現状から見ても、まだ本当の目的を公表出来る段階では無いですね。あと数年、いや十数年は必要かもしれません」

「公表出来る頃には私も政界を引退しているだろうから、この希望の芽が枯れない事を祈るよ」

「そう言いながら、実際はゲームを楽しんでいたいだけなのでは?」

「そ、そんな事は無いぞ!?ただ、サービス開始前に幾つもの仮想の死を体感してきた私だが水晶狐に噛まれた時は本当に痛かったぞ」

「アレは歯も水晶で出来ている設定ですからね、大変貴重なデータを提供して頂き感謝しています」

「これからもきっと色々なデータを提供出来るだろう、あの3人は他のプレイヤー達とは確実に違うプレイをし続けてくれるだろうから」

2人はそう言って笑っていたが、徐々に笑いから今後の不安へのため息に変わるのだった。
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感想 11

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みんなの感想(11件)

山田羽人
2017.07.31 山田羽人
ネタバレ含む
2017.07.31 いけお

そっちの心配はご安心下さい、シズルは傷付きません。シズルが現実の方でこれ以上被害者の側に立つ事はさせない予定です。両親を失ったりとこれまで不幸を重ねてきた分を聖亜と取り戻していく形になります。例のゲーム内ではメテオで加害者になりかねないのが問題ですがW

解除
山田羽人
2017.07.31 山田羽人
ネタバレ含む
2017.07.31 いけお

主人公は死にませんが、刺した相手に対して懲役では無くVRMMOで同じ痛みを受けて貰う罰を望みます。そしてそれは総理の手を借りて秘密裏に実行される展開になる予定です。ここら辺は賛否分かれると思いますが、この後はVRMMOの世界を優先していきます。久々の更新で望まれない展開にしていた様でしたら申し訳ないですがご容赦ください。

解除
シグリット
2017.04.08 シグリット

被害者だったはずが無意識ではあるけど加害者に……何やってんだか。

2017.04.08 いけお

イセアのスキルで昭和の伝説のお笑い番組を思い出す方が居たら、自分と同年代でしょうw

あれを生放送でやっていた事が今でもとても信じられないですね。何度もリハーサルを重ねて本番に臨んでいた5人のコントを毎週見てたあの頃が何もかも懐かしいです。

解除

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