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第13話 トリーの加入

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村の宿で一泊させてもらった俺達だったが、翌朝俺は二日酔いでベッドからすぐに出る事が出来なかった。

「昨晩は少し飲みすぎたかな?・・・気持ち悪い」

『大丈夫ですか!?護さん』

『なんだなんだ、あれしきの量飲んだ位で!?男だったらもっと浴びる程飲めて一人前になるんだぞ!』

「文句言う気力も起きない・・・酔い覚まし何か無いかな?」

『癒しの神よ、来たれ!護さんの二日酔いを何とか出来ませんか?』

『それ位お安い御用よ、しかし随分と雰囲気が変わったのね天照』

『どういう意味ですか?』

『ほんの数日見ない間に、感情が豊かになってきた様に見えたからね』

『気のせいです!とりあえず護さんの具合を良くしてあげて下さい』

『はいはい、わかりました!(ふ~ん、彼が原因か。帰る際にも彼の頬に口付けしたのを見て軽い嫉妬を見せていたから人間的には良い傾向なのだろうけど神様としては良からぬ方向に進まなければいいのだけれど)』

癒しの神は俺に近寄ってきて様子を見ると、呆れた顔を見せた。

『これってスサノヲ、あんたが彼に酒を飲ませ過ぎたのが原因でしょ!?酒豪と一般人の飲める酒の量を同じに考えないで!』

ため息を吐きながら、癒しの神は俺に右手をかざす。するとその右手から温かい光が降り注ぐような感覚がしてきて、数秒もすると二日酔いの吐き気などはすっかり無くなっていた。

「おお、二日酔いがすっかり良くなった!!助かったよ癒しの神!」

『お礼も良いけど、次からは飲むお酒の量には気を付けなさいね。無理して飲まずにスサノヲに酒を注がれようとしてもきちんと断る事!あまり天照を心配させないであげてね』

そう言って、癒しの神は姿を消した。去り際に俺に向けた微笑の意味は良く分からなかったが。

「具合は良くなりましたか、護さん?」『ちょっと具合はどう、護?』

トリーとレミアも心配になって寝ていた部屋まで様子を見に来てくれた。

「ああ、もう大丈夫だよ。天照が癒しの神を呼んでくれたお陰ですっかり元通りだ」

『そう、それは良かったわ。それはそうと、うふふふ・・・』

『さ、さあ護さんの体調も良くなりましたし朝食を食べに行きましょう!』

レミアが何か言おうとして、天照が必死に誤魔化そうとしている。何か有ったのか?

『ねえ護、天照の膝の感触はどうだった?』

「え、何それどういう事!?」

「昨晩、護さんはスサノヲさんから酒を飲まされすぎて広場でそのまま寝ちゃったんですよ。わたくしが介抱しようとしたら天照さんが『護さんのお世話は私がします!』って落ち着くまで膝枕してそれからこの宿まで運んで来たんですよ」

トリーが昨晩の俺が覚えていない事を教えてくれた、振り返ると顔を真っ赤にした天照が両手で顔を隠している。レミアの奴はこれをネタに天照を茶化そうとしていた訳か。

「教えてくれてありがとうトリー、それからレミアは茶化さない!え、ええと昨夜は介抱してくれたみたいで有難うな天照」

『い、いえ別に当たり前の事をしたまでです・・・』

2人の間で微妙な空気が流れる、それを見ているレミアとトリーが

『ね、言ったでしょ。口から砂を吐きそうになるって!?』

「この甘ったるい空気は、確かに歯軋り立てたくなりますね。水でもぶっかけておきます?」

おい、何か物騒な事を言っていないかトリー!?

「とりあえず、朝食を食べに行こうか?宿の人が用意してくれている筈だし」

「そうしますか、今日の予定も決めないといけませんし」

俺・天照・レミア・オッサン・トリーの5人で宿の食堂へ向かい、やや遅い朝食を始める。レミアは別のテーブルにイギリス料理を用意した。

『今日はこれからどうしますか護さん?』

「そうだな、朝食を済ませたら昨日笛の音が聞こえてきた辺りまで戻って日が暮れる頃まで次の町か村を目指して歩こうと思うのだけどどうかな?」

「わたくしはそれで構いませんよ」

「聞くのを忘れていたんだけどさ、トリー。ドードの町まで元野盗達を連れてきた、無事に町で受け入れてくれたのを確認して約束を果たしてくれた。なのに何故未だに付いて来ている訳?」

「それは・・・あなた達の近くに居た方がきっと面白い事が起きるからよ!」

「はい!?」

「実はわたくしは小説を時折書いてその収入で暮らしておりましたの。それがこの十数年、良いネタが思い浮かばずスランプになりました。そこで気分転換に色々な地を巡って新しいネタになりそうな物を探そうと旅している最中にあなた達と出会えた訳です」

「平たく言えば、俺達の存在自体が最早ネタだと?」

「そうですね、歩くネタ帳にしか見えません」

俺達は一体何なんだよ・・・。

「じゃあ、レミアはお前から見てどうなんだ?」

悔しいのでレミアに矛先を変えようとしてみたが

「確かに人と怪が仲良く生活しているのには驚かされるけど、もう既にマンネリ化しているネタなのよね」

確かにすぐに思い付きそうなネタかもしれない。

『私は別にご一緒でも構いませんが、護さんがお嫌の様でしたらお断りされるのは如何でしょう?』

天照はトリーも一緒で構わないと言ってくれているし、仕方ないか。

「トリー、いいよ一緒に付いてきても。とりあえず今現在の目的地はレミアが礼拝に行こうとしていた教会の在る街だ。そういえば、街の名前を聞いてなかったけどレミア何ていう街なのかな?」

『ロレッツよ、国境に近いから道中で前に話していた周辺で1番大きな町も通るわね』

「それじゃあ、ロレッツの街を目指して旅を再開しますか」

朝食を終えると、各自宿を出る準備を始める。その最中にトリーが話しかけてきた。

「護、ちょっといい?」

「まだ時間に余裕有るから平気だけどどうした?」

「ロレッツについてだけどさ・・・」

「ロレッツに何か問題でも有るのか?」

「実はロレッツって街はもう存在しない、かなり前に神族が国境近くに神都を突如築いてその際に目障りだからと徹底的に破壊されて住人は全て逃げ出し廃墟と化した。彼女に見せるのは瓦礫の山となった教会になるけどそれでも良い?」

何だって、ロレッツの街はもう存在していないのか!?しかし、彼女を送り届けると約束したのだから果たすべきだろう。

「それでも・・・ロレッツの街へ行く。約束したんだ連れて行くって、連れて行ってもしも彼女が我を忘れる様な事があれば俺や天照達で止める。トリーは心配しなくて大丈夫さ」

「それなら止めないけど、言うまでも無い事だけど今あの地は神族の支配化にあるわ。街が破壊された件も含め神都を治めている神族達はかなり傲慢なタイプだと思う。他種族の者を見つけた場合、見下したあげくに殺そうとしてくるかもしれないから十分気を付けてね」

ゴキッゴキッ・・・何やら鈍い音がするので横を見るといつの間にかスサノヲが立っていた。

『護よ、もしもそのロレッツとやらでこの世界の神族が襲って来る様だったら我輩が代わりに戦ってやる。こういう自分勝手な事をする神が我輩が最も嫌うタイプなのでな』

力一杯言っているがスサノヲよ、お前も高天原でやんちゃのレベルを超えた事幾つもやらかしているよな。同属嫌悪とかいう奴だろうか?

「とりあえず、改めて宜しくね護。これだけ多くの神様が居るとわたくしの出番はほとんど無いだろうけど、話し相手位にはなれると思うから仲良くしましょうね」

こうして、トリーは俺達(歩くネタ帳)の新しい仲間となった。早とちりしやすいこのお姉さんは、後日俺と天照の関係にも変化を起こさせ更には他の女まで巻き込む風を起こすのだった。
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