スキルメーカー ~運命を変えた非常識なスキル~

いけお

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第49話 災厄を起こす理由

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「とりあえず、あなたの質問から先に答えましょう。私の国の名はデモンライン、場所はこの世界中が国の領土と言っても差し支えないわ」

「国の名は分かったけど、場所が世界中が領土って意味がよく分からないや」

ウィルは意味が分からず考え込むが、タツトは国の名前から世界中が領土の意味を理解する事が出来た。

「その国の名が真であれば、世界中が国の領土と言って間違いないでしょう」

「あなたの従者は理解するのが早くて助かるわ、あなたも見習った方が良いわよ。そこまで分かれば私がどうやって中に入れたかも理解したわね?」

「無論です、俺は主達を今までずっと命の危険に晒していた事が分かりました。魔王様、心から感謝致します。この教訓を肝に銘じ2度と起こさない様にする所存」

タツトは魔王に跪き頭を垂れる。魔王はタツトの頭を撫でる様にしながら微笑むと何か思い付いた様にウィルの顔を見た。

「ねえ、この子あなたには勿体無いから私にくれないかしら?国を出奔して闇の女王を名乗った眷属が就いていた席が1つ空いたままになっているのよ。あなたも身体を少し作り変えられるけど龍魔人ドラゴニュートデーモンロードになってみたいと思わない?」

ファーナの視線に誘われる様にタツトは引き寄せられるが、寸前で正気を取り戻し提案を丁重に断った。

「魔王様のお誘い大変有難く思いますが、俺はウィル様を生涯唯1人の主と決めております。非常識な所が多々見受けられますが、それを見るのも結構楽しみになっているのですよ」

タツトが笑顔で返すので、ファーナはそれ以上言うのを止めた。

「残念、そこまで忠義心に厚い人を取っちゃったら本当に悪役に見えちゃうしね。これ位にしておくわ」

「魔王様!あの、お母様が就いていたという席と言うのは一体何なのでしょうか?」

レーメルは闇の女王の事を魔王の口から出てきたので思わず質問してしまった。

「あなたが眷属の義娘ね、あの子に似ず思慮深く育った様だけど男に入れ込み過ぎると引き返せなくなるから程々にしておきなさい」

「・・・はい」

「あの子が就いていたのは七厄魔の1席よ」

「七厄魔?」

「七人の厄を齎す高位魔族に与えた職よ」

「お母様はそれほどの役目を捨ててしまったのですね」

レーメルが感慨深げに言うがその直後に魔王は有り難味が無くなる言葉を続けた。

「まあ、他にも双璧・三魔将・四天王・五虎将軍etcも有るけどね」

「職を与えられた高位魔族は一体何人居るのですか!?」

「1番多い役職が百八煩悩魔だから・・・数えてないけど数百人居るんじゃない?」

あまりの数の多さにレーメルは唖然とするしか無かった、それだけ居れば1人位減っても問題無い気がするからだ。

「数百人も居るから大丈夫では?って思うかもしれないけど、世界の広さを考えれば人数はとても足りないのよ」

ファーナの補足で事の重大さにレーメルも気付いた、1人減るだけで管理しなくてはいけない面積がその分広くなるのだ。残された高位魔族の方達はさぞかし大変だっただろう、ましてやそれらを統括する魔王はもっと忙しかった筈だ。

「お母様が魔王様にもご迷惑を掛けてしまった様ですいませんでした」

「いいの、いいの、気にしないで。あの子の抜けた分は残った人達に全部押し付けて私はこれまで通りソファーでくつろいでいただけだから」

(うわ!この人、何気に部下泣かせの丸投げ上司だ)

ウィル達の顔を見て、どんな風に思われたかファーナも気付いた様だ。

「あなた達の顔を見るだけで部下泣かせの上司みたいに思われてるのが丸分かりね、だけど魔王は魔族の最後の砦なの。そして全世界の魔脈の流れを常に見つめ暴走を抑えるのも大切な役目、1人で誰にも分かって貰えない重責を背負うのだからストレスの発散に各国の重鎮達の生活を覗き見てその様子を教えちゃう位見逃して欲しいわ」

「え、じゃあこの写し絵は魔王さんの手描きなの!?」

「うむ、完成した絵を複製したら配下共に配らせていたがな」

「素晴らしい!!」

突如、アリアが目を輝かせて魔王に近付くと手を握り締めた。

「この見事な写し絵を描かれた方があなただったとは思いもしませんでした。ここまで細かく綺麗な描写を見たのは生まれて初めてです。今後ともこの素晴らしい写し絵を世界に広めてください、題材になれるのでしたら覗くのでは無く直接見に来られても大丈夫です」

スパァアアアアアン!! ウィルのツッコミ用に準備していたハリセンがアリアの頭に振り下ろされた。

「あなたが良くても、他の皆は良くありません!!」

頭を抑えて痛がるアリアと後ろには憤怒の表情でハリセンを持つリーン、レーメルとタツトは呆然としているがウィルは1人だけ神妙な顔をしている。

「1人だけ神妙な顔をして何を考えている?」

ファーナが興味を持ったのかウィルに聞いてみた。

「いや、今思ったんだけど魔王さんはどうやってこのタツトの作ったダンジョンに入れたのかな?って」

スパン、スパン、スパン、スパン、スパン・・・・・・・それからしばらくの間、ウィルは正座させられこの場に居る他の面子全員から交互にハリセンで頭を叩かれた。

「ねえウィル、国の名前や場所よりも普通はどうやって入ってきたかの方が重要なのよ。これからは考える順番に気を付けましょうね」

「リーン様の言う通りです、頭を叩いたショックで回転も早くなってくれると助かるのですが」

「叩き過ぎて回転の向きが余計変になる可能性も有った事に今頃気付くなんて、俺も主に浅はかな事をしてしまった~!」

「何か皆がウィルの頭を叩いていたから混ざったが何か有ったのか?」

「聞きしに勝る非常識さね、ここまで空気やこれまでの会話の流れを平気で無視出来るのは稀有よ」

「頭を皆に何で叩かれるのか納得出来ないけど、結局どうやってこのダンジョンに入れたの?」

ファーナはこめかみに指を当てた、どう言えばこの男に理解出来る様に説明出来るだろうか?

「詳しい方法はお前には難しいだろうから省くぞ。我々魔族は普段はこの身体を魔脈を流れる魔力と同質に変化させている、だからダンジョンを作る際やモンスターをポップさせる際に魔脈から魔力を取り込もうとする流れに紛れ込めば簡単に入れるという訳だ。だから空気を漂う魔力に似せれば好きな場所へも忍び込めるし誰にも気付かれずに出歯亀行為も楽しめるのだ」

「これの対策はダンジョンマスターで有れば可能ですが、他の者には不可能ですね」

「もう対策を思いついた様な口ぶりね」

「ええ、ある程度は。けれどもそれを話してしまうとすぐに破る方法を考え出すと思うのでこの場では言いません」

「ならばその対策の性能評価にこのダンジョンの寝室で非常識男共が乱交に耽っている様子を出歯亀しに来てやろうではないか」

「ふふふ、望む所です。では主、魔王様が出歯亀に来ても構わない日が有れば教えて頂けませんか?」

スパァアアアアアアアアアアン! この日、初めてタツトは自分の作ったハリセンで頭を叩かれた。

「タツト・・・出歯亀に来ても良い日など有りません。自分の主の無防備な姿を晒そうとしてはいけません」

「ふむ、ではリーンよ。出歯亀で無ければ良いのか?」

「ええと、どういう意味でしょうか?」

「お主らが乱交を終えてからでも良い、この男の具合を私も味わいに来るのなら別に構わないか?」

「平たく言うと?」

「出歯亀が駄目なら、夜這いなら良いのか?と聞いているのよ」

「そっちの方が駄目に決まっているでしょうが~!!」

リーンは即座にハリセンを振り下ろすがファーナは簡単にそれを避ける、その後リーンは疲れ果てて動けなくなるまで魔王の頭をハリセンで叩く為に追い掛け回したが結局徒労に終わった。リーンが魔王の退屈しのぎの遊び相手にされていた事に気付いたのはもう少し後になってからである。
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