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重圧(プレッシャー)
第89話 顔で笑って心で泣いて
「行ってきます・・・」
俺はボソッとした声で藍と唯に言ったけど、二人とも俺を無視するかのように話に夢中になっている。
結局、昨日の俺は風紀委員室で藍と唯の追及(罵声と言った方が正しい?)が終わって無罪放免された後、黙って下校した。というより鞄を取りに第二音楽室へ戻ったら、誰もいなかった。俺は仕方なく一人で帰った。
藍と唯は夕飯の少し前に帰ってきたけど、全然俺と目を合わせる事なくツンツンしていたから、母さんが「たくまー、藍ちゃんと唯ちゃんと喧嘩したねー」とか言って笑ってた。
俺は黙々と夕飯を食べた後は、真っ直ぐ部屋へ戻った。
暫くして部屋の扉を『バーーーン!』と勢いよく叩く音がしたから、驚いた俺は扉を開けたけど誰もいなかった。「おかしいなあ・・・」と思って扉を見たら、そこには1枚のルーズリーフがセロテープで貼り付けられていて、桜高祭の会議の内容が詳細に記されていた。
どうやら唯が、ルーズリーフを扉に貼り付ける時に、怒りに任せて扉を叩きつけたようだ・・・
唯が会議の内容を詳しく書いてくれてあったから、俺は会議内容を克明に知る事が出来た。議事録そのものは唯の丁寧な字で書いてあったが、一番下に超がつく程の筆圧の強い字で『以上!』と書かれていたから、ここだけ後で追加したというのが容易に分かった・・・
ただ、俺は夜の9時頃に外出した。
絢瀬先輩に連絡するためだ。
家の中にいると、藍と唯に聞き耳を立てられる(?)恐れがあったから、わざと無人の桜高のグラウンド周囲を、無言でグルグルと歩きながら絢瀬先輩にショートメールを入れた後、折り返し掛かってきた絢瀬先輩からの着信を受けて、10分くらい話をした。
ただ、電話をしならも時折後ろを振り返ったり左右を何度もキョロキョロしたりと、もし警察がいたら職務質問されてもおかしくなかったから、結構ヒヤヒヤしてたのも事実だ。
絢瀬先輩と直接会うのは・・・次の土曜日だ。
今朝の藍と唯は、昨日と違って怒ってなかったけど、俺と目を合わせる事なく、二人だけで会話に夢中になっていた。当然だが、俺は二人に挟まれながら、小さくなってるしか出来なかった。
しかも今日の俺は日直だから、ご飯を食べたら殆ど間を置かずに登校だ。
俺は一人でトボトボと歩きながら登校してるけど、周囲の視線が気になる。
この時間は登校している人が少ないとはいえ、それでも桜岡高校のブレザーを来た生徒は何人か見受けられる。もちろん、それ以外の高校の制服や、俺の出身校である浜砂市立東部中学校の制服を着た生徒も、歩いていたり自転車に乗っていたりしている。
まあ、俺に冷たい目を向けるのはFAIRY'sの人だけだ。
当たり前だけどFAIRY'sは3年生が多いから、俺は縮こまっているしかない。
恐らくだけど、FAIRY'sの人たちは、内心は俺に罵声を浴びせたり脅迫メールのような物を送り付けたいんだろう。でも、そんな事をやったら、確実に藍が『桜高の女王様』の顔に加えて風紀委員の顔を使って指導(?)するのが目に見えているから、逆に恐ろしくて何も出来ない。
間接的ではあるが、昨日の藍の大激怒が、FAIRY'sの人たちの暴走(?)を抑えているのは間違いない。
藍が再従姉かつ下宿(と誰もが思っている)してるというのが、目に見えぬ形で俺を助けている(?)のは皮肉だ。
”カンカンカンカン・・・”
俺は『桜岡高校前』駅の踏切で西神島行きの電車が発車するのを待っているが、その電車から桜岡高校の生徒が何人か降りて学校へ向かっている。別にこれはおかしい事でも何でもないのだが・・・
あれっ?
あれは・・・高坂さんだ。
しかも高坂さんと一緒にいるのは・・・ダンス部の副部長で3年C組の南野先輩、3年F組の矢澤先輩、それと去年は俺と同じクラスだった2年E組の星空さんだ・・・
その4人が楽しそうにお喋りしながら駅から出てきた。
昨日の絢瀬先輩の話では、矢澤先輩と星空さんが高坂さんの事を相当怒っていたと言っていたのに、今朝は楽しそうに話している・・・
という事は、絢瀬先輩の目論見通り、ダンス部の亀裂は回避できたんだろう・・・
でも、その時、俺と南野先輩の視線が合った。
南野先輩は高坂さんに何か一生懸命話し掛けて、挙句の果て、矢澤先輩と二人で高坂さんに何か言ってるし、星空さんは左手で高坂さんの手を引っ張って、右手は俺の方を指差している。
一体、何をしてるんだあ?
喧嘩してる訳ではないのは高坂さんの態度を見れば分かるけど、何をしたいんだあ?
そんな俺の前を4両編成の電車が通過していき、遮断機が上がったけど・・・
あれっ?
高坂さんしかいない・・・
しかも高坂さんは、右手を軽く上げながら「おはよう」と言ってるけど、その表情は怒ってるのではなく、かといって笑ってるのでもなく、どちらかといえば「勘弁してよー」と言いたそうな表情だ。
俺は踏切を渡り始めた。
「・・・高坂さーん」
「平山くーん、おっはよー」
そう言うと高坂さんは俺の右に並んだけど、その途端に「はーーー・・・」と溜め息をついたかと思ったら、前屈みになって両手をダラーッとさせている。
「・・・なーんか、朝から疲れてるようだけど、大丈夫?」
「うーん、平山君にはそう見える?」
「うん」
「はあああーーー・・・わたしとしては『勘違い第2号』なのよねー」
「はあ!?」
俺は思わず聞き返してしまったが、高坂さんはそれに返事をする事なく歩き始めたから、俺も高坂さんに合わせる形で歩き始めた。
「・・・昨日、わたしがダンス部の練習に行ってないのは知ってる?」
「うん・・・絢瀬先輩が言ってた」
「どうして練習に行ってなかったのかは聞いてるかもしれないけど、わたしが家に帰ってスマホのLINEを見たら、もの凄い事になってたからねー」
「物凄い事?」
「そう、物凄い事。だから、思わず『えーっ!』とか叫んじゃったから、お母さんに『静かにしなさい!』とか怒られちゃったよー」
高坂さんはそう言うと、何度目かは覚えてないくらいの「はーー」という溜め息をした。
俺は今の今になって、高坂さんがため息を連発している理由を思いついた。
「・・・あのー」
「ん?平山君、何か質問?」
「それって、もしかして、俺が原因・・・」
「そりゃあそうでしょー」
「やっぱりー」
「昨日、平山君と絢瀬先輩のラブラブタイムを、真紀ちゃんがライブでLINEに流してたって知ってる?」
「うっそー!」
「ホントだよー。なんなら証拠を見せましょうか?」
「いや、とてもではないけど、恐ろしくて見る気になれない・・・西野さん、結構大胆不敵ですねえ。練習をサボって食堂に張り付いていたって事だよなあ」
「そうらしいよー。さっき、南野先輩と矢澤先輩が言ってた」
「はあああーーーー・・・」
俺は思わず長ーい溜め息をついてしまったが、覚悟はしていたとはいえ、こうやって聞かされると結構グサッとくるなあ、とほほ・・・
「でさあ、ホントに平山君のカノジョは絢瀬先輩でいいの?」
「そ、それは・・・」
高坂さんは極々普通の質問をしてきたけど、覚悟していたとはいえ、実際に聞かれると返事に窮する・・・
俺の彼女は唯であり、絢瀬先輩は彼女でも何でもなく、言い方は悪いけどクライアントだ。しかもダンス部を、高坂さんを守るために自分を犠牲にしているのだから、俺としては「イエス」とは口が裂けても言えない。
でも、周囲はそう見てないという事だろう・・・
「・・・まあ、平山君が表立って言いたくない気持ちは分かるけどね。でもさあ、これはこれで別にいいんだけどー、昨夜からさあ、わたしのところへ『落ち込まないでね』とか『頑張ってね』とかの同情メールがウジャウジャ入ってくるしー、挙句の果てには電車の中で南野先輩とか矢澤先輩とかからね、『カッコいいオトコを紹介してやるから元気出しなさいよー』とか言われちゃってさあ、ホントに勘弁して欲しいわよー」
そう言って高坂さんは「はあああーーー・・・」と今度は超長ーい溜め息をついているけど、俺にはどうして高坂さんがため息をつくのか、全然分からない・・・
「・・・昨日の放課後まではさあ、わたしと平山君が付き合ってるとかー、有りもしない話が飛び交っていてー、南野先輩が火消しに躍起になっていたらしいけど、真紀ちゃんの実況中継が始まってからはさあ、どういう経緯でこうなったかは知らないけど『平山君には絢瀬先輩というカノジョがいたから、わたしの努力は報われなかった』という話になっちゃってるのよねー」
「はあ!?それって、どういう意味?」
「だーかーらー、こっちの方が聞きたいよー。勘違いの上塗りとでも言おうか、いつの間にか『わたしが平山君に片想いしてたけど空振りに終わった』にすり替わっちゃったのー」
「あらあら」
「まあ、わたしとしては疑惑が晴れて助かったのは事実だけどさあ、平山君も分かると思うけど、一番ガッカリしてるのはさあ、君を狙ってた子だよー」
「う、うん・・・」
「その子、見た目は元気に振舞ってるけど、絶対に『顔で笑って心で泣いて』だよ」
「だろうね・・・」
「南野先輩を始めとして、みーんなそれに気付いてないから結構ズケズケと言ってるけど、わたし、逆に声を掛け辛くてさあ、あの子に代わって絢瀬先輩に文句を言ってやりたいのも事実だけど、相手が『桜高の妖精』じゃあ諦めるしか無いのかなあ、っていう気持ちもあるから、正直複雑だよー」
「・・・・・」
高坂さんの言いたい事も分かる。
ある意味、絢瀬先輩の行動は高坂さんとダンス部を救ったけど、一人の女の子を傷つけた。
まあ、仮にその女の子が俺に自分から「わたしと付き合って」と言ってきたとしても「ノー」としか言えないけど、俺の相手が唯と絢瀬先輩では受け取り方が全然違うだろうし、見方によっては、俺は絢瀬先輩と唯の両方を天秤にかけていると捉えられなくもない。
それに、昨日の藍は、明らかに「絢瀬先輩の行動は不自然だ」というのを見抜いていたとしか思えない。
藍がゴールデンウィークに言った言葉を真に受けるなら、絢瀬先輩が本気で俺をカレシにしたいと思って行動したなら、黙って引き下がる筈だ。
だけど、そうしなかったという事は、絢瀬先輩の行動に疑問を抱いているのに違いない。
だから藍は、俺を徹底的に追及して俺の本音を聞き出そうとしたけど、俺が中途半端な答えを繰り返すから、昨日は追及を断念した形だ。
唯も恐らく藍と同じ考えの筈だ・・・
俺はボソッとした声で藍と唯に言ったけど、二人とも俺を無視するかのように話に夢中になっている。
結局、昨日の俺は風紀委員室で藍と唯の追及(罵声と言った方が正しい?)が終わって無罪放免された後、黙って下校した。というより鞄を取りに第二音楽室へ戻ったら、誰もいなかった。俺は仕方なく一人で帰った。
藍と唯は夕飯の少し前に帰ってきたけど、全然俺と目を合わせる事なくツンツンしていたから、母さんが「たくまー、藍ちゃんと唯ちゃんと喧嘩したねー」とか言って笑ってた。
俺は黙々と夕飯を食べた後は、真っ直ぐ部屋へ戻った。
暫くして部屋の扉を『バーーーン!』と勢いよく叩く音がしたから、驚いた俺は扉を開けたけど誰もいなかった。「おかしいなあ・・・」と思って扉を見たら、そこには1枚のルーズリーフがセロテープで貼り付けられていて、桜高祭の会議の内容が詳細に記されていた。
どうやら唯が、ルーズリーフを扉に貼り付ける時に、怒りに任せて扉を叩きつけたようだ・・・
唯が会議の内容を詳しく書いてくれてあったから、俺は会議内容を克明に知る事が出来た。議事録そのものは唯の丁寧な字で書いてあったが、一番下に超がつく程の筆圧の強い字で『以上!』と書かれていたから、ここだけ後で追加したというのが容易に分かった・・・
ただ、俺は夜の9時頃に外出した。
絢瀬先輩に連絡するためだ。
家の中にいると、藍と唯に聞き耳を立てられる(?)恐れがあったから、わざと無人の桜高のグラウンド周囲を、無言でグルグルと歩きながら絢瀬先輩にショートメールを入れた後、折り返し掛かってきた絢瀬先輩からの着信を受けて、10分くらい話をした。
ただ、電話をしならも時折後ろを振り返ったり左右を何度もキョロキョロしたりと、もし警察がいたら職務質問されてもおかしくなかったから、結構ヒヤヒヤしてたのも事実だ。
絢瀬先輩と直接会うのは・・・次の土曜日だ。
今朝の藍と唯は、昨日と違って怒ってなかったけど、俺と目を合わせる事なく、二人だけで会話に夢中になっていた。当然だが、俺は二人に挟まれながら、小さくなってるしか出来なかった。
しかも今日の俺は日直だから、ご飯を食べたら殆ど間を置かずに登校だ。
俺は一人でトボトボと歩きながら登校してるけど、周囲の視線が気になる。
この時間は登校している人が少ないとはいえ、それでも桜岡高校のブレザーを来た生徒は何人か見受けられる。もちろん、それ以外の高校の制服や、俺の出身校である浜砂市立東部中学校の制服を着た生徒も、歩いていたり自転車に乗っていたりしている。
まあ、俺に冷たい目を向けるのはFAIRY'sの人だけだ。
当たり前だけどFAIRY'sは3年生が多いから、俺は縮こまっているしかない。
恐らくだけど、FAIRY'sの人たちは、内心は俺に罵声を浴びせたり脅迫メールのような物を送り付けたいんだろう。でも、そんな事をやったら、確実に藍が『桜高の女王様』の顔に加えて風紀委員の顔を使って指導(?)するのが目に見えているから、逆に恐ろしくて何も出来ない。
間接的ではあるが、昨日の藍の大激怒が、FAIRY'sの人たちの暴走(?)を抑えているのは間違いない。
藍が再従姉かつ下宿(と誰もが思っている)してるというのが、目に見えぬ形で俺を助けている(?)のは皮肉だ。
”カンカンカンカン・・・”
俺は『桜岡高校前』駅の踏切で西神島行きの電車が発車するのを待っているが、その電車から桜岡高校の生徒が何人か降りて学校へ向かっている。別にこれはおかしい事でも何でもないのだが・・・
あれっ?
あれは・・・高坂さんだ。
しかも高坂さんと一緒にいるのは・・・ダンス部の副部長で3年C組の南野先輩、3年F組の矢澤先輩、それと去年は俺と同じクラスだった2年E組の星空さんだ・・・
その4人が楽しそうにお喋りしながら駅から出てきた。
昨日の絢瀬先輩の話では、矢澤先輩と星空さんが高坂さんの事を相当怒っていたと言っていたのに、今朝は楽しそうに話している・・・
という事は、絢瀬先輩の目論見通り、ダンス部の亀裂は回避できたんだろう・・・
でも、その時、俺と南野先輩の視線が合った。
南野先輩は高坂さんに何か一生懸命話し掛けて、挙句の果て、矢澤先輩と二人で高坂さんに何か言ってるし、星空さんは左手で高坂さんの手を引っ張って、右手は俺の方を指差している。
一体、何をしてるんだあ?
喧嘩してる訳ではないのは高坂さんの態度を見れば分かるけど、何をしたいんだあ?
そんな俺の前を4両編成の電車が通過していき、遮断機が上がったけど・・・
あれっ?
高坂さんしかいない・・・
しかも高坂さんは、右手を軽く上げながら「おはよう」と言ってるけど、その表情は怒ってるのではなく、かといって笑ってるのでもなく、どちらかといえば「勘弁してよー」と言いたそうな表情だ。
俺は踏切を渡り始めた。
「・・・高坂さーん」
「平山くーん、おっはよー」
そう言うと高坂さんは俺の右に並んだけど、その途端に「はーーー・・・」と溜め息をついたかと思ったら、前屈みになって両手をダラーッとさせている。
「・・・なーんか、朝から疲れてるようだけど、大丈夫?」
「うーん、平山君にはそう見える?」
「うん」
「はあああーーー・・・わたしとしては『勘違い第2号』なのよねー」
「はあ!?」
俺は思わず聞き返してしまったが、高坂さんはそれに返事をする事なく歩き始めたから、俺も高坂さんに合わせる形で歩き始めた。
「・・・昨日、わたしがダンス部の練習に行ってないのは知ってる?」
「うん・・・絢瀬先輩が言ってた」
「どうして練習に行ってなかったのかは聞いてるかもしれないけど、わたしが家に帰ってスマホのLINEを見たら、もの凄い事になってたからねー」
「物凄い事?」
「そう、物凄い事。だから、思わず『えーっ!』とか叫んじゃったから、お母さんに『静かにしなさい!』とか怒られちゃったよー」
高坂さんはそう言うと、何度目かは覚えてないくらいの「はーー」という溜め息をした。
俺は今の今になって、高坂さんがため息を連発している理由を思いついた。
「・・・あのー」
「ん?平山君、何か質問?」
「それって、もしかして、俺が原因・・・」
「そりゃあそうでしょー」
「やっぱりー」
「昨日、平山君と絢瀬先輩のラブラブタイムを、真紀ちゃんがライブでLINEに流してたって知ってる?」
「うっそー!」
「ホントだよー。なんなら証拠を見せましょうか?」
「いや、とてもではないけど、恐ろしくて見る気になれない・・・西野さん、結構大胆不敵ですねえ。練習をサボって食堂に張り付いていたって事だよなあ」
「そうらしいよー。さっき、南野先輩と矢澤先輩が言ってた」
「はあああーーーー・・・」
俺は思わず長ーい溜め息をついてしまったが、覚悟はしていたとはいえ、こうやって聞かされると結構グサッとくるなあ、とほほ・・・
「でさあ、ホントに平山君のカノジョは絢瀬先輩でいいの?」
「そ、それは・・・」
高坂さんは極々普通の質問をしてきたけど、覚悟していたとはいえ、実際に聞かれると返事に窮する・・・
俺の彼女は唯であり、絢瀬先輩は彼女でも何でもなく、言い方は悪いけどクライアントだ。しかもダンス部を、高坂さんを守るために自分を犠牲にしているのだから、俺としては「イエス」とは口が裂けても言えない。
でも、周囲はそう見てないという事だろう・・・
「・・・まあ、平山君が表立って言いたくない気持ちは分かるけどね。でもさあ、これはこれで別にいいんだけどー、昨夜からさあ、わたしのところへ『落ち込まないでね』とか『頑張ってね』とかの同情メールがウジャウジャ入ってくるしー、挙句の果てには電車の中で南野先輩とか矢澤先輩とかからね、『カッコいいオトコを紹介してやるから元気出しなさいよー』とか言われちゃってさあ、ホントに勘弁して欲しいわよー」
そう言って高坂さんは「はあああーーー・・・」と今度は超長ーい溜め息をついているけど、俺にはどうして高坂さんがため息をつくのか、全然分からない・・・
「・・・昨日の放課後まではさあ、わたしと平山君が付き合ってるとかー、有りもしない話が飛び交っていてー、南野先輩が火消しに躍起になっていたらしいけど、真紀ちゃんの実況中継が始まってからはさあ、どういう経緯でこうなったかは知らないけど『平山君には絢瀬先輩というカノジョがいたから、わたしの努力は報われなかった』という話になっちゃってるのよねー」
「はあ!?それって、どういう意味?」
「だーかーらー、こっちの方が聞きたいよー。勘違いの上塗りとでも言おうか、いつの間にか『わたしが平山君に片想いしてたけど空振りに終わった』にすり替わっちゃったのー」
「あらあら」
「まあ、わたしとしては疑惑が晴れて助かったのは事実だけどさあ、平山君も分かると思うけど、一番ガッカリしてるのはさあ、君を狙ってた子だよー」
「う、うん・・・」
「その子、見た目は元気に振舞ってるけど、絶対に『顔で笑って心で泣いて』だよ」
「だろうね・・・」
「南野先輩を始めとして、みーんなそれに気付いてないから結構ズケズケと言ってるけど、わたし、逆に声を掛け辛くてさあ、あの子に代わって絢瀬先輩に文句を言ってやりたいのも事実だけど、相手が『桜高の妖精』じゃあ諦めるしか無いのかなあ、っていう気持ちもあるから、正直複雑だよー」
「・・・・・」
高坂さんの言いたい事も分かる。
ある意味、絢瀬先輩の行動は高坂さんとダンス部を救ったけど、一人の女の子を傷つけた。
まあ、仮にその女の子が俺に自分から「わたしと付き合って」と言ってきたとしても「ノー」としか言えないけど、俺の相手が唯と絢瀬先輩では受け取り方が全然違うだろうし、見方によっては、俺は絢瀬先輩と唯の両方を天秤にかけていると捉えられなくもない。
それに、昨日の藍は、明らかに「絢瀬先輩の行動は不自然だ」というのを見抜いていたとしか思えない。
藍がゴールデンウィークに言った言葉を真に受けるなら、絢瀬先輩が本気で俺をカレシにしたいと思って行動したなら、黙って引き下がる筈だ。
だけど、そうしなかったという事は、絢瀬先輩の行動に疑問を抱いているのに違いない。
だから藍は、俺を徹底的に追及して俺の本音を聞き出そうとしたけど、俺が中途半端な答えを繰り返すから、昨日は追及を断念した形だ。
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