雑文エッセイ

7、許さないっ！

イケメンタレントの方が「許さないっ！」と言ってたので思い出したが、「許さない」「許せない」｢許されない」と、三通りのいい方があって、文法上は同じ不可能を表す言葉なのだけれど、いうときの気持ちには三者少しずつ微妙な違いがある。時々その使い方が気になる。
「許さない」というのは「私は許さない」とか「いや、許さない」とか、調子が強く、断定的で、まっすぐに意思を表す言葉である。ところが「許されない」のほうは「道義的に許されない」「 世間では許されない」などと客観的で、遠回りな、少々まるい表情になる。
日ごろ、いちいち言葉づかいを厳密に考えて話すことはないにしても、どうもこの｢許さない」と 「許されない」の区別があいまいになってきたような気がする。また、本来なら 「許さない」といいたいところを｢許されない」 といっている人が多いような気がするのだが、どうだろう。
テレビの影響ではないか、という説がある。 解説者や評論家が、客観的にいおうとして｢許されない」をよく使う。 これが何か高尚ないい方のように聞こえる。 あるいは何か意見をいう時、これなら責任を取らずにすむようで、便利でもある。人々がまねをしだした。
ひとりだけ「許さない」と力んでみても説得力は弱い。から回りしてしまう。 公害、物価、いまなら選挙制度の矛盾もそうだ。｢許さない」といいたいが、いいきれない。無力感がある