雑文エッセイ

越川千太郎

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15、職業

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大工、建具職、仕立て、コック、配管工、電気工事といった職種が近ごろ若ものの間で見直されている。という話をきいた。まだまだ一部のことかも知れないが….
それぞれ、一人前になるまでの修行はきびしい。しかし、自分の手で直接ものをつくる喜びがある。腕をみがけば、だれはばかるところない自前の生活をみつけられる。大企業のセールスマンを辞めた大学卒が旋盤を習っている。修行の場を求めて英国に仕立てを習いにいく。
パリでお針子さん修行をして帰った娘さんの話をきいた。裁断前に服地の布目を正しく直角に直すこと。これが着くずれしない仕立て上がりのイロハで、親方に恐ろしく厳格にしつけられた。
日本でも、みんな知識としては承知しているが、イロハを守って布目をきちっと直す人は意外に初対面で相手の職業をきくのに、日本では「どちらにお勤めですか」とたずね、たいてい会社名で答える。欧米では職種をたずね、職種で答えるのがふつうで、まず会社の名は出ない。あいつの慣習の違いではなくて、根は職業観の違いだと思うと、これも欧米レストラン修行から三年ぶりで帰ってきた若ものの観察だ。
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