僕と旅人さん【声劇台本】【二人用】

僕と旅人さん

街外れで、僕は旅人さんに出会った。
外の世界を知らない僕は言った。


「僕も旅に出たい」


旅人さんは興味深い顔で僕を見た。


「なぜ旅に出たいんだい？」


だから僕はこう答えた。


「街の外を知らないから」


旅人さんは不思議そうな顔で、さらに言った。


「街の外の、何を知らないんだい？」


僕は答えた。


「……わからない」


旅人さんは、僕を見て少し笑った。


「私はこの街を知らない。君がこの街を教えてくれるのなら、外の街を教えよう」


僕は答えられなかった。


旅人さんは街の外の、遠くの灯りを見て言った。


「君は、知らないことを知りたいだけじゃないかい？」


僕は答えなかった。


旅人さんの影が、すっぽりと僕を覆った。

旅人さんは言った。


「知らないことは前ばかりではない。後ろにも、知らないことは広がっているんだよ」