壺の中にはご馳走を

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バンギャ?②

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「ただ、トラブルが続出しました。

 ギターの弦が2本も切れたり、マイクがプツプツになったり……。

 普通に準備していれば起こらないトラブルです。


 当然客は盛り下がって、ライブ終わりの雰囲気は最悪でした。

 俺たちが準備を怠ったみたいじゃないですか。
 
 いつもはパーっと飲みに行ってライブの自画自賛が始まるんですが、その日は即解散しました。


 夜明け前の帰宅は久しぶりでした。

 最寄駅から自宅までは10分ほど歩かなくてはなりません。

 人通りの多い道ですし、街灯もあるんで、どちらかと言えば幽霊より通り魔や変質者の方が怖いです。

 最初は軽い足取りでしたが、無事に帰れたなら俺はここに来てないっつーか……。


 急に人の気配がなくなって、俺1人になったんです。

(おい、勘弁してくれよ)

 追い打ちをかけるように街灯はチカチカと不規則に点いたり消えたりを繰り返します。


 背後からはカツカツと音が聞こえました。

 跳ね上がる心臓を落ち着けるために、俺は一旦足を止めました。

 ナニモノかが走ってきたなら、俺はその倍の速さで逃げれば良いと思って。

 
 カツカツという音に耳を澄ませます。

 カツカツ、カツカツ。

 一定のリズムに奇妙な心地良さを感じながら、心拍が安定し始めました。

 カツカツ、カツカツ、カツカツ、カツカツン。

 音が止まりました――。


 あれほど恐れた音が止んだのに、今度静寂に怯え出す俺。

 再び心臓は爆発しそうになり、呼吸を整えて覚悟を決めました。

 ゆっくりと後ろを振り向くと、そこには何もいませんでした。

(良かったぁ。……待てよ? ここで正面を向いたら何かいるってのがお決まりパターンだろ?)


 次から次へと襲ってくる恐怖と不安。

 でも振り返らないと家に帰ることができません。


『ビビってんじゃねーよ笑』

 わざとらしく大声を出し、体を前に向けました。


(やっぱ何もいねーし。クソだせぇ)

 ふと目線を上に向けると、目をひん剥き、大きな口を真横に開いて剥き出しになった歯をカチカチと鳴らす女の生首が、手に届く位置で浮かんでいました。


『ギャーーーーーーーーーー!!!!!!』

 無我夢中で走り、帰宅した時、汗はダラダラで顔は真っ青でした。


 あれヒールの音じゃなくて、上下の歯を強くぶつける音だったんですよ。
 
 俺、変な女に目ェ付けられたみたいで……」


 園川翔は

「ハハッ、マジでビビったんですよねー」

 と笑っていたが、アイスティーを3杯も飲み干していた。

 ぐっしょりと汗で濡れたTシャツが、この体験が彼のトラウマになっていることを物語っていた。


 店内には2人だけとなり、茉美が

「人気商売にストーカーは付き物さ。生きている人間も死んだ人間も、執着する対象は変わらない。お前も芸能人を友達や恋人と勘違いしてないか?」

 真也は現在進行形で、とあるアイドルを推している。

「あー、ハハハ……。別に付き合えると思ってライブに行ってるわけじゃないですよ。……でも付き合えるなら付き合ってみたいかも……」


 口ごもる真也を茉美はフンッと鼻で笑った。

「しかしまぁ、惜しいことをしたな。祓ってしまったせいで、ファンが1人減った」


 ゴチソウサマ、ゴチソウサマ。
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