壺の中にはご馳走を

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もの言う花

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 本日は邦ロックが流れている。

 真也がスマートフォンの音量を最大にして、茉美に聴かせているのだ。

 スマートフォンの画面には、「夏とアイスクリーム ~マジカルグラッシーイズ」の文字。

 以前ティサで自身の体験を話した園川翔が所属するバンドだ。


「気になって検索してみたら、1曲だけ配信されてたんですよ! 結構良くないですか?」

「悪くないねぇ」

 キャッチーなサビに、自然と2人の体は揺れる。


 曲の終わりを見計らったように、扉が開いた。

「どうも」

 南川莉歩はペコリと頭を下げた。


 真也はカフェラテとビターチョコレートを置く時、南川莉歩の長いまつ毛に目を奪われた。

 5つほど年上に見え、大人の余裕を感じさせる雰囲気が、真也の社会人女性への憧れを一層強くさせた。

 南川莉歩は真也と目を合わせると、口角をキュッと上げた。


「今日こちらに伺ったのは、祓って欲しいものがあるからよ。

 そうね、まずは事の経緯を話すわ。


 私の仕事はエステティシャン。

 仕事柄たくさんのお客様と接する機会が多いのだけど、ほとんどが美容に関する話。

 次に恋愛や仕事の悩みで、まぁ話を聞くのは嫌いじゃないかな。

 お客様と仲良くなることは、次の指名にも繋がるしね。


 それで1人の常連が、ある話をしたの。

『女なら一度は訪れてたい滝があるのよ』

 って。

 聞けば、それは観光地としてもよく知られている名瀑。

 
 その方が言うには、女が一人で行くと良いことがある。

 滝の奥に入ることができるらしく、そこは鍾乳洞になっている。

 鍾乳洞の最奥に水たまりがあって、その水を両手で掬って化粧水みたいに顔につけると……。

 永遠の若さを手に入られる――。


 面白い話だったけど、あまり信じてはいなかった。

 だって本当にそんな場所があったら、SNSで話題になってるでしょ?

 確かにその方の肌はキメが細かくなってたけど、定期的に施術を受ければ誰だって綺麗になるものよ。


 でもその話をしてから、常連だったはずが一度も来なくなったの。

 ウチは勧誘はしない方針だから、催促の連絡も出来ずに、来なくなった理由を推測するしかなかった。

 で、永遠の若さって話と関係があると思うのは当然よね。

 ついに好奇心を原動力として、件の滝に行ってみたの」
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