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地下独房 Sideリチャード
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サクラが倒れてから3日目。
リチャードはルイスとクロエ親子を屯所地下にある独房に収監した。
サクラからネックレスが見つかり、大規模な貿易を行うキャボット商会しか入手できない宝石が使われていたからだ。
リチャードの声が冷たく響く。
「毒殺なんて穏やかじゃないな。お前たちは何を企んでる?」
ルイスもクロエの無言の抵抗を続けるが、最初に口を開いたのはルイスだった。
「リチャード君も大きくなったなあ。わしらをこんなところに押し込めてひどいじゃないかぁ。何も知らんのだよ」
知らばっくれるルイスだが、リチャードは態度を緩めない。
「お前たちがパラスリリーの脅威になるなら、俺は対処しなければならない。だが昔馴染みの縁で忠告してやる。口を慎め、俺は冗談が嫌いだ」
リチャードを手懐けられないと理解したルイスは、急に横柄な態度に転じた。
「この恩知らずめ! わしらがどれだけ金を生んだと? 小国が大国に勝るとも劣らない豊かさを手に入れたのは誰のおかげだ! キャボット商会のおかげで、馬鹿の一つ覚えで何百年も香水しか産業のなかったこの国が、今日まで存続できたんじゃないか! ……ケッ、人を罰することしかできない能無しはお前の父親も同じだったなあ」
ガンッ――――。
鉄格子に強く打ち付けたリチャードの拳の音が重く響く。
驚いたルイスは侮辱するのを止め、腕を組みふんぞり返る。
「あまり驕るなよ! お前が答えないのなら、娘に聞くだけだ。髪の毛も爪も歯も全て引き剥がしてやる。俺にはそれしかできないからな」
リチャードが鋭い視線を隣の独房に向けると、すぐさまルイスが土下座をしながら懇願する。
「たっ頼む! この子は宝物なんだ! クロエだけは、クロエだけは国外追放で許してやってくれ。わしは処刑で構わない! 何でも話す――」
「最初から素直に質問に答えろ。もし嘘だったら、クロエは目を潰して海に放り込んでやろう」
あからさまに従順になったルイスは、ちぎれそうなほど首を縦に振った。
「あのネックレスは何だ? 毒物を染み込ませてあるようだが」
「ネックレス? ああ、あのネックレスはナリスバーグのヘッツェンドルフ宰相がクロエに……」
ナリスバーグはパラスリリーから西に5000km先に位置する大国だ。
発達した都市を持ち、貿易業も盛んである。
「ヘッツェンドルフ宰相の指示か?」
ルイスは何かをためらうように口ごもる。
「約束を破棄するなら、俺も相応の手段を取ろう」
ルイスはクロエの独房へと向かおうとするリチャードを止める。
「……っ、ウォルトンだ。毒を作っているのも、宝石に毒を染み込ませるという方法を考えたのもウォルトンだ」
リチャードの動きが止まり、恫喝しながらルイスに迫る。
「もう一度言ってみろ! 裏でお前たちを動かしているのは誰だ? この期に及んでお前は虚言を吐く余裕があるのか!」
ルイスは愛する娘の命を案じるあまり、涙で顔をグチャグチャにさせている。
リチャードの恫喝に負けないほどの大きな声で泣き叫んだ。
「ウォルトンだよ! お前が国外に逃がしたんじゃないか! 『スイレンのトゲ』を使って政府の要人を暗殺すれば、キャボット家は世界の支配者層の仲間入りだって言ったんだよ!! でっ、でも信じてくれ!!クロエは何も知らないんだ。わしが一人でやったんだよぉ……」
泣き崩れるルイスを見てリチャードは
(こいつからこれ以上の情報は引き出せない)
と経験から察した。
「そうか。お前は実に忠実に約束を守ってくれたな。次は娘に聞く番だ」
無表情のリチャードが向けた銃口は、鉄格子の隙間からはっきり見える。
「ヒッ」
と絶望と恐怖に飲み込まれるルイスに命乞いする時間さえ与えず、リチャードは引き金を絞った。
狙い通り脳天に撃ち込まれ、ルイスはゴトッと音を立てて倒れた。
リチャードはルイスとクロエ親子を屯所地下にある独房に収監した。
サクラからネックレスが見つかり、大規模な貿易を行うキャボット商会しか入手できない宝石が使われていたからだ。
リチャードの声が冷たく響く。
「毒殺なんて穏やかじゃないな。お前たちは何を企んでる?」
ルイスもクロエの無言の抵抗を続けるが、最初に口を開いたのはルイスだった。
「リチャード君も大きくなったなあ。わしらをこんなところに押し込めてひどいじゃないかぁ。何も知らんのだよ」
知らばっくれるルイスだが、リチャードは態度を緩めない。
「お前たちがパラスリリーの脅威になるなら、俺は対処しなければならない。だが昔馴染みの縁で忠告してやる。口を慎め、俺は冗談が嫌いだ」
リチャードを手懐けられないと理解したルイスは、急に横柄な態度に転じた。
「この恩知らずめ! わしらがどれだけ金を生んだと? 小国が大国に勝るとも劣らない豊かさを手に入れたのは誰のおかげだ! キャボット商会のおかげで、馬鹿の一つ覚えで何百年も香水しか産業のなかったこの国が、今日まで存続できたんじゃないか! ……ケッ、人を罰することしかできない能無しはお前の父親も同じだったなあ」
ガンッ――――。
鉄格子に強く打ち付けたリチャードの拳の音が重く響く。
驚いたルイスは侮辱するのを止め、腕を組みふんぞり返る。
「あまり驕るなよ! お前が答えないのなら、娘に聞くだけだ。髪の毛も爪も歯も全て引き剥がしてやる。俺にはそれしかできないからな」
リチャードが鋭い視線を隣の独房に向けると、すぐさまルイスが土下座をしながら懇願する。
「たっ頼む! この子は宝物なんだ! クロエだけは、クロエだけは国外追放で許してやってくれ。わしは処刑で構わない! 何でも話す――」
「最初から素直に質問に答えろ。もし嘘だったら、クロエは目を潰して海に放り込んでやろう」
あからさまに従順になったルイスは、ちぎれそうなほど首を縦に振った。
「あのネックレスは何だ? 毒物を染み込ませてあるようだが」
「ネックレス? ああ、あのネックレスはナリスバーグのヘッツェンドルフ宰相がクロエに……」
ナリスバーグはパラスリリーから西に5000km先に位置する大国だ。
発達した都市を持ち、貿易業も盛んである。
「ヘッツェンドルフ宰相の指示か?」
ルイスは何かをためらうように口ごもる。
「約束を破棄するなら、俺も相応の手段を取ろう」
ルイスはクロエの独房へと向かおうとするリチャードを止める。
「……っ、ウォルトンだ。毒を作っているのも、宝石に毒を染み込ませるという方法を考えたのもウォルトンだ」
リチャードの動きが止まり、恫喝しながらルイスに迫る。
「もう一度言ってみろ! 裏でお前たちを動かしているのは誰だ? この期に及んでお前は虚言を吐く余裕があるのか!」
ルイスは愛する娘の命を案じるあまり、涙で顔をグチャグチャにさせている。
リチャードの恫喝に負けないほどの大きな声で泣き叫んだ。
「ウォルトンだよ! お前が国外に逃がしたんじゃないか! 『スイレンのトゲ』を使って政府の要人を暗殺すれば、キャボット家は世界の支配者層の仲間入りだって言ったんだよ!! でっ、でも信じてくれ!!クロエは何も知らないんだ。わしが一人でやったんだよぉ……」
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無表情のリチャードが向けた銃口は、鉄格子の隙間からはっきり見える。
「ヒッ」
と絶望と恐怖に飲み込まれるルイスに命乞いする時間さえ与えず、リチャードは引き金を絞った。
狙い通り脳天に撃ち込まれ、ルイスはゴトッと音を立てて倒れた。
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