異世界では香りに包まれて幸せに暮らします

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3年後

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 雲一つない晴天。
 爽やかな風が甘い花の香りを運ぶ。

 研究所ブロックにある広場には多くの人が集まっている。

 あちこちに花のアーチとテーブル、椅子が並び、ワイワイガヤガヤと人々は談笑している。

 テーブルには白いクロスが敷かれ、子供からお年寄りまで楽しめる飲み物とご馳走が食べ放題だ。

 そして何より目を引くのが「結婚おめでとう」の看板。

 今日は街中の皆で祝う結婚式。

 周りから見えないように不自然に区切られたスペースには、いつになく緊張した新婦がいた。



「今日の主役なんだから、胸張って!! 大丈夫だよ、アリアはとっても綺麗だから!!」

 アリアは何度も鏡を見ては緊張に押し潰されていた。

「サクラぁ~。こんな大勢の前なんて無理~。」

 さすがのアリアも人の多さに驚いている。

「仕方ないよ。パラスリリーの大イベントなんだから」

 
 パラスリリーの結婚式は、新郎と新婦が別々の場所で待機し、お互いの姿を見るのは入場する時だ。

 入場時にはお互いの友人がエスコートする習わしがあり、私も重要な任務を担っている。

 しかしアリアのあまりの緊張感で、自分のプレッシャーがバカバカしくなる。

「向こうは準備できたかなー? アリアのドレス姿見たら顔真っ赤にして倒れるんじゃない?」

 気持ちを紛らわそうと軽快なトークを試みるが、アリアは顔色まで悪くなってきた。

 いつも強気なアリアが、ここまで弱気になるのは初めてだ。

 それくらいアリアにとって結婚式は重要な意味があるのだろう。

 
 アリアに今朝作ったばかりの香水を吹きかけた。

「……良い香り。サクラが作ったの?」

「これは『自分を解放する』おまじないサクラバージョンだよ! ベーシックな組み合わせにちょっと手を加えてみたの」

 アリアに精神的に救われたことはたくさんある。

 前にアリアはこうやって私を励ましてくれた。

 今日は私がアリアの背中を押す番だ。

「うふふ。そうよね! こんなに美しく着飾ったあたしを皆に見てもらわないともったいないわ!!」

 吹っ切れたアリアは背筋がピンと伸び、スラリとしたシルエットのウェディングドレスが良く似合っている。

 外から有志たちによる楽器の生演奏が聴こえる。

 ついに結婚式が始まったのだ。


「新郎新婦の入場ーッスー!!」

 私たちは腕を組み、一歩一歩踏み出した。

 正面からはぼんやりと新郎の姿が見える。

 人々の拍手と歓声が大きくなった時、私たちはお互いの姿を確認した。
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