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3年後②

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 そこには緊張で表情を硬くしたリチャードと、朗らかな顔のオリヴァーがいた。

 アリアの体から力が抜けるのが分かった。

「ふふっ。あの人、あたしより緊張してる」

 失笑するアリアと、緊張なのか元来の真面目な性格によるものなのか、まっすぐアリアだけを見つめるリチャードの距離が近づく。

 
 ある程度まで近づいたところでオリヴァーと私は離れ、他のゲスト同様、着席した。
 そして顔を寄せて小声で話す。

「上手く行きましたね」

「リチャードはあれでもリラックスした方なんだ」


 2人の距離が急接近したのは、3年前にナリスバーグに行った時だった。
 私たちの不在のフォローするため、リチャードとアリアは顔を会わせる機会が増えた。

 多くの若い女性同様、「リチャード様」と敬称を遣いキャッキャと持て囃していたアリアが、今や新婦として対等な場所に立っている。


 新郎新婦が揃ったところで、司会のイワンが進行する。

「えー皆様お集まりいただきありがとうこざいますッス! ただいまよりリチャード団っ、リチャードさんとアリアさんの結婚式を始めますッス。どうぞ皆様楽しんでくださいッス!!」

 大きな拍手に包まれる中、大号泣する人物がいる。

 アリアの父だ。

 アリアの母になだめられているが涙が止まらないようで、アリアも呆れ顔で見ている。


「それでは新郎から挨拶をお願いしますッス」

 リチャードは会場全体を見回した後、大きく息を吸った。

「私たちのためにこのような立派な場を設けていただきありがとうございます。皆様の貴重な1日をいただけて、私たちは幸せ物です。私はこれまで以上に自警団長としての誇りを傷付けぬよう精進いたします。そして生涯をかけ妻アリアを幸せにすると誓います」

 深々と頭を下げるリチャードには、祝福の拍手が鳴り止まない。

「老若男女が揃った宴の場です。どうか、形式にこだわらず皆様が思うように楽しんでください」

 
 再び深い礼をしてリチャードの挨拶が終わり、自由時間になると思われた。

 その時!!

「ねーきすしないのー?」

 無邪気な子供の野次が飛び、人々は「キスコール」でまくし立てる。

 私とオリヴァーも手拍子に参加し、イワンも制止しない。
 唯一このノリに参加していないのは、泣いているアリアの父だけだ。

 
 逃げることのできない空気に押され、リチャードは意を決してアリアの方へ体を向ける。

 リチャードに向き合ったアリアは目を伏せている。

 リチャードがアリアの肩に手を載せてからなかなか動かない。

 私の席からはリチャードの表情は見えないが、耳が真っ赤になっている。

 容赦なく続くキスコール。

 勢いが足りないリチャード、もじもじし始めるアリア。

 
 いよいよ心配になった時、アリアが背伸びして勢い良く顔を近づけ、2人の唇が軽く触れた。

 驚きで固まるリチャードと同じくらい耳を真っ赤にしたアリアに、会場のテンションは急上昇だ。

「おめでとうー!!」

「アハッハッハ!! アリアちゃん良くやった!!」

「団長は顔が真っ赤だぞー」

「若いもんたちが! めでてぇなー」

 最初から最後まで2人らしさを見せつけられ、宴が始まった。
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