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救出②
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アジトは死神海賊団に制圧されていた。
「ガーハッハッハー! おめぇら! ここにあるもんは全部俺たちのもんだ!! 金もダイヤも奪い尽くせ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおー!」
周辺から恐れられているマフィア「ケミエド」も、世界を相手に航海する彼らには歯が立たない。
まだ必死で抗戦する者もいるが、数の暴力でひねり潰されている。
海賊団のおかげで最上階への道は拓かれた!
「シプリアーノはウォルトンさんを監禁してるって言ったんです。彼の部屋に鍵が提げられているのを見ました」
「じゃあ、それを持っていこう」
最上階へは螺旋階段が長い螺旋階段が続いていた。
とても人が暮らすには快適とは言えない場所にウォルトンの部屋はあった。
鍵で錠前を外し、鉄製の重い扉を押し開ける――。
ムワッとする甘い香りは、私にも覚えがあった。
クロエにもらった宝石よりも、香りが濃厚で頭が痛くなりそうだ。
「アーアーアーアー」
机に向かって奇妙な唸り声を上げる男がいた。
ガリガリに痩せ頭頂部が禿げているのが、後ろ姿で分かる。
オリヴァーはズカズカと部屋に入ると、男の胸ぐらを掴んだ。
「ウォルトン! お前一体何してるんだ!」
確かにウォルトンと呼ばれたし、私たちは「ウォルトンの部屋」に入ったのだからこの男がそうに違いない。
しかしオリヴァーより一回り二回りも年上に見え、イワンもウォルトンだとは信じられないようで様子見に徹している。
「ウォルトン! ……何で泣いてるんだよ!!」
ウォルトンは涙を流しながらオリヴァーを見ている。
ポロポロと流れる涙は、ここでの辛い生活を想像させた。
この部屋はまるで牢屋だ。
硬い床に寝かされ、冬はあの薄っぺらい毛布で暖を取っていたのだろう。
排泄と食事が同じ空間なのはもちろん、唯一外を感じられる窓は換気用の小さなものだけだ。
最上階から小さな窓を通して助けを呼んでも、誰にも届かない。
部屋に貼られたカレンダーには、日付に〇と×で印が付けられている。
3日ごとに付いた×印……。
猛毒「スイレンのトゲ」は、薄めても継続的に摂取すれば命を落としかねない。
だから完成するまでは死なないように、適度に休ませていたのだろう。
完成したらシプリアーノが取る行動は容易に想像できる。
ウォルトンもキャボット親子も、シプリアーノの掌上だったのだ。
オリヴァーはなおもコミュニケーションを試みるが、ウォルトンは虚ろな目でヨダレを垂らしている。
突然ウォルトンが笑いだした。
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
泣いたと思えば笑い出し、人間どころか動物としても形を成さないウォルトン。
オリヴァーの心はぐちゃぐちゃにかき乱されていた。
あんなに傷ついた顔のオリヴァーを初めて見た。
今まさに彼の心には深い傷が刻み込まれている。
イワンは、笑いを止めようとしないウォルトンを手刀で気絶させた。
「申し訳ないッス。パラスリリーに連れて帰るまでが任務ッス」
「あぁ、分かってるよ」
オリヴァーは力なく答えた。
私たちがやろうとしていることは、ナリスバーグ政府から見れば国民の拉致に他ならない。
大ごとになる前にナリスバーグを出航する必要がある。
イワンがウォルトンを背負い、手当たり次第資料や薬品を持って私たちは螺旋階段を下りた。
「ガーハッハッハー! おめぇら! ここにあるもんは全部俺たちのもんだ!! 金もダイヤも奪い尽くせ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおー!」
周辺から恐れられているマフィア「ケミエド」も、世界を相手に航海する彼らには歯が立たない。
まだ必死で抗戦する者もいるが、数の暴力でひねり潰されている。
海賊団のおかげで最上階への道は拓かれた!
「シプリアーノはウォルトンさんを監禁してるって言ったんです。彼の部屋に鍵が提げられているのを見ました」
「じゃあ、それを持っていこう」
最上階へは螺旋階段が長い螺旋階段が続いていた。
とても人が暮らすには快適とは言えない場所にウォルトンの部屋はあった。
鍵で錠前を外し、鉄製の重い扉を押し開ける――。
ムワッとする甘い香りは、私にも覚えがあった。
クロエにもらった宝石よりも、香りが濃厚で頭が痛くなりそうだ。
「アーアーアーアー」
机に向かって奇妙な唸り声を上げる男がいた。
ガリガリに痩せ頭頂部が禿げているのが、後ろ姿で分かる。
オリヴァーはズカズカと部屋に入ると、男の胸ぐらを掴んだ。
「ウォルトン! お前一体何してるんだ!」
確かにウォルトンと呼ばれたし、私たちは「ウォルトンの部屋」に入ったのだからこの男がそうに違いない。
しかしオリヴァーより一回り二回りも年上に見え、イワンもウォルトンだとは信じられないようで様子見に徹している。
「ウォルトン! ……何で泣いてるんだよ!!」
ウォルトンは涙を流しながらオリヴァーを見ている。
ポロポロと流れる涙は、ここでの辛い生活を想像させた。
この部屋はまるで牢屋だ。
硬い床に寝かされ、冬はあの薄っぺらい毛布で暖を取っていたのだろう。
排泄と食事が同じ空間なのはもちろん、唯一外を感じられる窓は換気用の小さなものだけだ。
最上階から小さな窓を通して助けを呼んでも、誰にも届かない。
部屋に貼られたカレンダーには、日付に〇と×で印が付けられている。
3日ごとに付いた×印……。
猛毒「スイレンのトゲ」は、薄めても継続的に摂取すれば命を落としかねない。
だから完成するまでは死なないように、適度に休ませていたのだろう。
完成したらシプリアーノが取る行動は容易に想像できる。
ウォルトンもキャボット親子も、シプリアーノの掌上だったのだ。
オリヴァーはなおもコミュニケーションを試みるが、ウォルトンは虚ろな目でヨダレを垂らしている。
突然ウォルトンが笑いだした。
「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
泣いたと思えば笑い出し、人間どころか動物としても形を成さないウォルトン。
オリヴァーの心はぐちゃぐちゃにかき乱されていた。
あんなに傷ついた顔のオリヴァーを初めて見た。
今まさに彼の心には深い傷が刻み込まれている。
イワンは、笑いを止めようとしないウォルトンを手刀で気絶させた。
「申し訳ないッス。パラスリリーに連れて帰るまでが任務ッス」
「あぁ、分かってるよ」
オリヴァーは力なく答えた。
私たちがやろうとしていることは、ナリスバーグ政府から見れば国民の拉致に他ならない。
大ごとになる前にナリスバーグを出航する必要がある。
イワンがウォルトンを背負い、手当たり次第資料や薬品を持って私たちは螺旋階段を下りた。
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