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帰国②
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「ウォルトン……」
リチャードは海賊に背負われたウォルトンを見て、悲しそうに呟いた。
あのような姿を受け入れたくないというニュアンスも感じられる。
しかしいつまでも感傷に浸ることなく、すぐに切り替えイワンに伝える。
「戻って早々で悪いが、ウォルトンを独房に連れていけ」
ウォルトンは海賊からイワンに引き渡された。
私はここで言うしかないと、勇気を振り絞った。
「待ってください!」
皆に視線が私に集まる。
「このままだとウォルトンさんは処刑されちゃうんですよね?」
眉をぴくりと上げてリチャードが淡々と答えた。
「あぁ、ウォルトンは世界の秩序をも脅かす重罪を犯した。お前だって殺されかけただろう」
ウォルトンたちの行動全てを容認することはできない。
しかし諸悪の根源は絶たれ、ウォルトンは解放されたのだ。
「ウォルトンさんはマフィアに監禁されていました。『スイレンのトゲ』に関して、彼の意思でない可能性があるんです」
「それは本人に聞けばいいだろう。ここからは俺の仕事だ」
リチャードにはこれ以上立ち入らせないという強い意思が見える。
そんなリチャードにオリヴァーは研究者として助言する。
「イワンも言っていたように、ウォルトンはまともに話せる状態じゃない。自白剤を使っても無理だと思うよ」
パラスリリーの自白剤は、尋問に使えるほどの効果を持たない。
そもそも精神喪失している人間から引き出した情報に信ぴょう性はないだろう。
「私、処刑には反対です!!」
これにはアリアからの制止がかかった。
「ちょっと、どうしちゃったのよ!? この子疲れておかしなことを言ったのね。だからあまり咎めないであげて……」
私を守るための気遣いだが、今はその優しさに甘えてはいけない。
「ありがとう。でも私は本気です」
リチャードの計画では、私たちがウォルトンを連行した後、自らの手で処刑することになっている。
それを承知で出航し帰ってきたら異を唱えるでは、リチャードが腹を立てても仕方ない。
「ナリスバーグで自由主義でも叩き込まれたか? ここはパラスリリーだ。そして俺の仕事はパラスリリーの平和を、人々の心を守ることだ。ウォルトンを自由にすれば『スイレンのトゲ』が真実だったと知れ渡る。猛毒を恐れ疑心暗鬼になる者、人間関係のトラブルに猛毒を持ち出す者が出てきたらどうする?」
苛立ってもリチャードは論理的で、切り崩すのは難しい。
私情を捨てたリチャードの結論が出てしまった以上、自分でもそれが正しいように思えてくる。
今すぐパラスリリーから驚異を取り除く方法として処刑が最適なのだ。
リチャードは海賊に背負われたウォルトンを見て、悲しそうに呟いた。
あのような姿を受け入れたくないというニュアンスも感じられる。
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ウォルトンは海賊からイワンに引き渡された。
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「それは本人に聞けばいいだろう。ここからは俺の仕事だ」
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リチャードの計画では、私たちがウォルトンを連行した後、自らの手で処刑することになっている。
それを承知で出航し帰ってきたら異を唱えるでは、リチャードが腹を立てても仕方ない。
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今すぐパラスリリーから驚異を取り除く方法として処刑が最適なのだ。
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