異世界では香りに包まれて幸せに暮らします

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胡蝶の夢②

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 恥ずかしいなどと言っていられない!!

 地上に届きそうなほど大きな声で叫んだ。

「愛する人とっ! 愛する人とずっと一緒にいたいですっ!!」

 ユスティーナは笑うことも怒鳴ることもなく、私を見つめて言った。

「汝の願い、聞き入れた――」

 目の前を無数の細かな泡を覆い、ユスティーナや館が歪む。

 やがて何も見えなくなり、体が急に軽くなった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 サクラを地上へ返した後、従者がユスティーナの耳元で呟く。

「……何と!? 願いは既に叶っておるのか?」

 ユスティーナは腕を組み思案する。

「はて……いつ叶えたのかのう……。ま、良い良い! それより妾の新しいローブはまだか? 妾の美しさにさらなる磨きがかかるのじゃ。早う早う」

 特に大きな問題になることはなく、ユスティーナの頭からは、いつの日か思い出す時までサクラという名前すら消え去っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「サクラー! しっかりしてー!!」

 アリアが頬をぺちぺちと叩く。

「あっ、やっと起きた! また倒れたのかと心配したわよ」

「ごめんごめん」

 どうやら池のそばで眠っていたのをアリアに発見されたようだ。

 服は全く濡れておらず、本当に眠っていただけかもしれない。

(……夢?)

 ユスティーナが現実か夢なのか判断できないが、寝起きにしては頭はすっきりしていた。

「ねぇ、アリア。池の中に大きな館があって、森を守る神様みたいな人がいるって言ったらどうする?」

 アリアはププッと笑った。

「どうするって、どうもしないわよ~。 そんなおとぎ話みたいなこと、あるわけないでしょ。寝ぼけてるんじゃない?」

 やっぱり夢だったのかもしれない。

「不思議な森に浮かれて変な夢見ちゃったのかも。もう帰ろっか」

 
 森に来た成果はあったか、なかったか。

 それすら分からぬまま1日が終わった。
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