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2.初めての舞踏会
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「オリヴェル、相変わらず頑張っているようだな。だが、我々がこうして元気に剣を持つことができるのは偏に王太子殿下のおかげなのだ。それを忘れてはならない」
王太子の筆頭護衛騎士であるアーペリが珍しく騎士団の訓練所へ顔を出し、一人黙々と剣を振っている弟に声をかけた。オリヴェルはいきなりやって来た兄の真意が掴めず、剣を振る手を休めて声がする方に不審そうな顔を向ける。
「兄上、そんなことは重々承知しております。殿下が川の氾濫が起こると教えてくださらなければ、俺たちは川に流されてしまったでしょう。あの激流では絶対に助からなかった」
オリヴェルがそう答えると、アーペリは満足そうに頷いた。
「先ほど王太子殿下が先読みをなされた。殿下がアルヴォネン公爵の息女エリーサ嬢と婚約するようなことがあれば、わが国は危機に陥るとのことだ」
王太子の先読みは今まで大規模な災害や疫病、隣国からの侵略等、国を揺るがすような大事だったので、先読みと聞いて思わず緊張してしまったオリヴェルだったが、婚約というあまりに平和的な事柄に気が抜けていく。
「その令嬢と婚約しなければいいだけだと思うけど。殿下はオラスマー伯爵家の令嬢と仲が良いと騎士団でも噂になっている。殿下にはさっさと結婚を決めていただくよう、兄上が進言すればいい」
アーペリは王太子の護衛騎士であると同時に、幼少の頃に選ばれた長い付き合いの友人でもある。そんな兄ならば王太子の結婚にも口出しできそうだとオリヴェルは感じている。そこにオリヴェルの出る幕などない。
「ことはそう簡単ではない。殿下がエリーサ嬢に気に入られてしまい、宰相であるアルヴォネン公爵が強引にねじ込んできた場合、抵抗する間もなく婚約が調ってしまう恐れがある。現に、王太子の先読みではそうなったらしい。だから、エリーサ嬢が殿下に惹かれてしまう前に彼女の心を奪うのだ」
「兄上がするのか?」
アーペリには身重の妻と二歳になる天使のような娘がいる。他の令嬢を誘惑するようなことをすれば彼女たちが悲しむとオリヴェルは心配した。
「私には妻も子もいるし、特に誇るものもない平凡な男だからそのような任務に向いていない。そんな私と違ってオリヴェルは剣の才に恵まれ、今では英雄と呼ばれている。それに見目も悪くない。何より婚約者も恋人もいない。この任務にはうってつけだろう? 国のために引き受けてくれるよな」
「ちょっと待ってくれ! 俺には無理だ!」
オリヴェルだって王太子殿下や国のためならば、令嬢を誘惑する覚悟くらい持っている。しかし、幼少の時から剣の訓練に明け暮れ、正騎士になってからも隣国との紛争地帯に赴いたり、猛獣や盗賊の討伐に向かったりと、オリヴェルには女性と付き合う暇もなかった。そんな彼が令嬢を誘惑するなど、高難易度にも程がある。
「大丈夫だ。おまえならできる。とにかくエリーサ嬢を褒め倒せ。顔はもちろん、髪や目の色、ドレスや宝飾品、彼女の所作、何でもかんでも褒めたらいい。褒められて嫌な気分になる女性はいない。それに彼女だけに笑顔を見せろ。他の女には今まで通りのそっけない対応で押し通せ。エリーサ嬢だけを特別扱いするんだ」
アーペリは胸の前で拳を握って力説するが、オリヴェルは力なく首を横に振る。
「女性の前に出ると緊張して顔が強張ってしまうのに、エリーサ嬢に向かって笑いかけるなんて絶対に無理だと思う……」
本当に自信がないのか、俯いてしまったオリヴェルの言葉の語尾が消えていく。
「そんな時はマリアンネを思い浮かべろ」
マリアンネとはアーペリの二歳になる娘である。
オリヴェルは隣国侵攻の際の活躍で子爵位を賜っていた。しかし、未婚の彼は未だに王都のフリクセル侯爵邸で暮らしているので、マリアンネには『おじちゃま』と呼ばれ懐かれている。天使のように可愛い彼女を思い浮かべると、オリヴェルも形相がつい崩れてしまう。
「そうだ。その笑顔だ! 普段の厳しい顔つきとの落差で女性は落ちてしまうに違いない」
そんなに簡単ではないだろうとオリヴェルは思うが、国が危機に陥ると言われてしまうと、苦手だろうが何だろうがやらねばならない。それが、この国を護る騎士の務めだ。
体の弱い母と領地で暮らしていたエリーサも今年で十七歳になり、社交界にデビューするため王都に出てきていた。母親は馬車での長旅は無理とのことで領地に残ることになった。エリーサのデビュタント姿を見ることができなくて残念がったが、もし倒れてしまうと娘のデビューを邪魔してしまうかもしれないと思うと無理もできなかった。その代わり、エリーサの肖像画を夫に頼んである。妻にも娘にも甘いアルヴォネン公爵なので、きっと素晴らしい絵師を頼んでくれると母は信じている。
アルヴォネン公爵が王都一と評判の服飾店で作らせた純白のドレスも出来上がり、あとはデビューとなる舞踏会を待つばかりだ。
王族も参加する大きな舞踏会なので、エリーサは少し緊張を感じるものの、綺麗なドレスで着飾るのも、貴公子たちとダンスを踊るのも楽しみにしていた。
それから数日後、王家主催の舞踏会の夜がやってきた。
エリーサのエスコートを巡って父と兄が揉めたため、結局二人に伴われてエリーサは会場に入った。
「残念ながら王太子殿下は体調不良のため参加を見合わせたらしい」
宰相であるアルヴォネン公爵は事前に王太子の欠席を知らされていた。
「王太子殿下には母を救ってくださったお礼を申し上げたいと思っておりましたのに、本当に残念です」
父の言葉にエリーサは少し気落ちした。溺愛してくる父や兄と違い、母はエリーサに厳しい。しかし、それはどこにも出しても恥ずかしくない貴婦人に育てるための愛情故だとエリーサは知っている。だから、彼女は母のことも大好きである。
そんな母が十年ほど前に流行り病に倒れた。元々体が強くなかったので家族は弱っていく母の死を覚悟するしかなかった。だが王太子の先読みのおかげで特効薬が開発され、母の病気は完治することができたのだった。
力なく病床に臥せっていた母親が、特効薬を飲むことで徐々に元気になっていくのを目の当たりにした幼い日のエリーサは、それ以来ずっと王太子に感謝している。そのため王太子に会って直接礼を言う機会を得られたことをとても喜んでいた。
「でも、珍しく社交嫌いと有名なカウペルス子爵が参加しているよ。エリーサは彼にも礼を言いたかったのだろう?」
落ち込んだ妹を元気づけようと、ヴァルトは一人の青年の方に目を向ける。エリーサもつられてそちらを向くと、背が高く整った容姿をしているが、眼光があまりに鋭い青年と目が合った。
『あの方が隣国の侵攻を止めたという英雄のオリヴェル・カウペルス子爵なのね。まだ若いのに凄い迫力がある。さすが英雄だわ』
他国に侵攻されると領民たちがどれほど悲惨な目に遭うか、エリーサの母親はいつも語っていた。貴族として生まれたのならば国のために命を散らすことも覚悟しなければならないが、日々生活するために働き続け税を納める領民は守られるべき存在だ。そんな彼らの生活を守った騎士団には感謝しなければならないと母はエリーサに教えていた。だから、騎士団に中でも一番活躍して英雄と呼ばれたオリヴェルにお礼を言いたいと彼女は常々思っていたのだった。
エリーサはオリヴェルの存在感に圧倒されるようにただ見つめていた。するとオリヴェルが大股で彼女に方に歩いてくる。
迫力のありすぎるオリヴェルを邪魔する者などいるはずもなく、彼はすぐにエリーサたちの近くにやって来た。
「カウペルス卿。こんなところで君に会えるとは思わなかったよ。我々は幸運だな。こちらが本日デビューする娘のエリーサだ。よろしく頼む」
まずは高位のアルヴォネン公爵がオリヴェルに声をかけ、エリーサを紹介した。エリーサのダンスの相手を王太子にお願いするつもりだったが、王太子が不在なのでオリヴェルに頼むことにした。
「宰相閣下、ヴァルト殿、そしてエリーサ嬢。オリヴェル・カウペルスです。お会いできて光栄です」
「エリーサ・アルヴォネンと申します。どうかお見知りおき下さい」
少し怖いと思いながらエリーサが挨拶すると、オリヴェルはふわっと微笑んだ。その優しそうな笑顔にエリーサは魅入られてしまう。
王太子の筆頭護衛騎士であるアーペリが珍しく騎士団の訓練所へ顔を出し、一人黙々と剣を振っている弟に声をかけた。オリヴェルはいきなりやって来た兄の真意が掴めず、剣を振る手を休めて声がする方に不審そうな顔を向ける。
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オリヴェルがそう答えると、アーペリは満足そうに頷いた。
「先ほど王太子殿下が先読みをなされた。殿下がアルヴォネン公爵の息女エリーサ嬢と婚約するようなことがあれば、わが国は危機に陥るとのことだ」
王太子の先読みは今まで大規模な災害や疫病、隣国からの侵略等、国を揺るがすような大事だったので、先読みと聞いて思わず緊張してしまったオリヴェルだったが、婚約というあまりに平和的な事柄に気が抜けていく。
「その令嬢と婚約しなければいいだけだと思うけど。殿下はオラスマー伯爵家の令嬢と仲が良いと騎士団でも噂になっている。殿下にはさっさと結婚を決めていただくよう、兄上が進言すればいい」
アーペリは王太子の護衛騎士であると同時に、幼少の頃に選ばれた長い付き合いの友人でもある。そんな兄ならば王太子の結婚にも口出しできそうだとオリヴェルは感じている。そこにオリヴェルの出る幕などない。
「ことはそう簡単ではない。殿下がエリーサ嬢に気に入られてしまい、宰相であるアルヴォネン公爵が強引にねじ込んできた場合、抵抗する間もなく婚約が調ってしまう恐れがある。現に、王太子の先読みではそうなったらしい。だから、エリーサ嬢が殿下に惹かれてしまう前に彼女の心を奪うのだ」
「兄上がするのか?」
アーペリには身重の妻と二歳になる天使のような娘がいる。他の令嬢を誘惑するようなことをすれば彼女たちが悲しむとオリヴェルは心配した。
「私には妻も子もいるし、特に誇るものもない平凡な男だからそのような任務に向いていない。そんな私と違ってオリヴェルは剣の才に恵まれ、今では英雄と呼ばれている。それに見目も悪くない。何より婚約者も恋人もいない。この任務にはうってつけだろう? 国のために引き受けてくれるよな」
「ちょっと待ってくれ! 俺には無理だ!」
オリヴェルだって王太子殿下や国のためならば、令嬢を誘惑する覚悟くらい持っている。しかし、幼少の時から剣の訓練に明け暮れ、正騎士になってからも隣国との紛争地帯に赴いたり、猛獣や盗賊の討伐に向かったりと、オリヴェルには女性と付き合う暇もなかった。そんな彼が令嬢を誘惑するなど、高難易度にも程がある。
「大丈夫だ。おまえならできる。とにかくエリーサ嬢を褒め倒せ。顔はもちろん、髪や目の色、ドレスや宝飾品、彼女の所作、何でもかんでも褒めたらいい。褒められて嫌な気分になる女性はいない。それに彼女だけに笑顔を見せろ。他の女には今まで通りのそっけない対応で押し通せ。エリーサ嬢だけを特別扱いするんだ」
アーペリは胸の前で拳を握って力説するが、オリヴェルは力なく首を横に振る。
「女性の前に出ると緊張して顔が強張ってしまうのに、エリーサ嬢に向かって笑いかけるなんて絶対に無理だと思う……」
本当に自信がないのか、俯いてしまったオリヴェルの言葉の語尾が消えていく。
「そんな時はマリアンネを思い浮かべろ」
マリアンネとはアーペリの二歳になる娘である。
オリヴェルは隣国侵攻の際の活躍で子爵位を賜っていた。しかし、未婚の彼は未だに王都のフリクセル侯爵邸で暮らしているので、マリアンネには『おじちゃま』と呼ばれ懐かれている。天使のように可愛い彼女を思い浮かべると、オリヴェルも形相がつい崩れてしまう。
「そうだ。その笑顔だ! 普段の厳しい顔つきとの落差で女性は落ちてしまうに違いない」
そんなに簡単ではないだろうとオリヴェルは思うが、国が危機に陥ると言われてしまうと、苦手だろうが何だろうがやらねばならない。それが、この国を護る騎士の務めだ。
体の弱い母と領地で暮らしていたエリーサも今年で十七歳になり、社交界にデビューするため王都に出てきていた。母親は馬車での長旅は無理とのことで領地に残ることになった。エリーサのデビュタント姿を見ることができなくて残念がったが、もし倒れてしまうと娘のデビューを邪魔してしまうかもしれないと思うと無理もできなかった。その代わり、エリーサの肖像画を夫に頼んである。妻にも娘にも甘いアルヴォネン公爵なので、きっと素晴らしい絵師を頼んでくれると母は信じている。
アルヴォネン公爵が王都一と評判の服飾店で作らせた純白のドレスも出来上がり、あとはデビューとなる舞踏会を待つばかりだ。
王族も参加する大きな舞踏会なので、エリーサは少し緊張を感じるものの、綺麗なドレスで着飾るのも、貴公子たちとダンスを踊るのも楽しみにしていた。
それから数日後、王家主催の舞踏会の夜がやってきた。
エリーサのエスコートを巡って父と兄が揉めたため、結局二人に伴われてエリーサは会場に入った。
「残念ながら王太子殿下は体調不良のため参加を見合わせたらしい」
宰相であるアルヴォネン公爵は事前に王太子の欠席を知らされていた。
「王太子殿下には母を救ってくださったお礼を申し上げたいと思っておりましたのに、本当に残念です」
父の言葉にエリーサは少し気落ちした。溺愛してくる父や兄と違い、母はエリーサに厳しい。しかし、それはどこにも出しても恥ずかしくない貴婦人に育てるための愛情故だとエリーサは知っている。だから、彼女は母のことも大好きである。
そんな母が十年ほど前に流行り病に倒れた。元々体が強くなかったので家族は弱っていく母の死を覚悟するしかなかった。だが王太子の先読みのおかげで特効薬が開発され、母の病気は完治することができたのだった。
力なく病床に臥せっていた母親が、特効薬を飲むことで徐々に元気になっていくのを目の当たりにした幼い日のエリーサは、それ以来ずっと王太子に感謝している。そのため王太子に会って直接礼を言う機会を得られたことをとても喜んでいた。
「でも、珍しく社交嫌いと有名なカウペルス子爵が参加しているよ。エリーサは彼にも礼を言いたかったのだろう?」
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『あの方が隣国の侵攻を止めたという英雄のオリヴェル・カウペルス子爵なのね。まだ若いのに凄い迫力がある。さすが英雄だわ』
他国に侵攻されると領民たちがどれほど悲惨な目に遭うか、エリーサの母親はいつも語っていた。貴族として生まれたのならば国のために命を散らすことも覚悟しなければならないが、日々生活するために働き続け税を納める領民は守られるべき存在だ。そんな彼らの生活を守った騎士団には感謝しなければならないと母はエリーサに教えていた。だから、騎士団に中でも一番活躍して英雄と呼ばれたオリヴェルにお礼を言いたいと彼女は常々思っていたのだった。
エリーサはオリヴェルの存在感に圧倒されるようにただ見つめていた。するとオリヴェルが大股で彼女に方に歩いてくる。
迫力のありすぎるオリヴェルを邪魔する者などいるはずもなく、彼はすぐにエリーサたちの近くにやって来た。
「カウペルス卿。こんなところで君に会えるとは思わなかったよ。我々は幸運だな。こちらが本日デビューする娘のエリーサだ。よろしく頼む」
まずは高位のアルヴォネン公爵がオリヴェルに声をかけ、エリーサを紹介した。エリーサのダンスの相手を王太子にお願いするつもりだったが、王太子が不在なのでオリヴェルに頼むことにした。
「宰相閣下、ヴァルト殿、そしてエリーサ嬢。オリヴェル・カウペルスです。お会いできて光栄です」
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